2020年1月17日までの報告で、感染者数、死亡者数ともに桁違いに多いとされる南アフリカで発見された変異株「501Y.V2」は、ワクチンが効かない可能性が指摘されている。日本をはじめ、ワクチン頼み一点張りの国々には打つ手がなくなるかもしれない、恐るべき報告結果である。
さらに、英国の変異株やブラジルの変異株にも、ワクチン等が効かない可能性も指摘されている。米国からもワシントンでのホワイトハウス騒乱の起きた1月6日からわずか3日後、当のホワイトハウスが米国内で新たな変異株出現の情報を発表した。米国では英国よりゲノム解析が遅れており、まだ詳細な情報が少ない。
ゲノム解析しなければ、変異株かどうかも判明しないので、地球上の至る所で、科学誌「ネイチャー」の記事中の表現を借りれば、「免疫応答を逃避する」変異株が次々と出現していても、人類は大ごとになるまで気づかず、対応は後手後手に回ってしまうだろう。
変異株の同時多発出現、そしてそれらが感染力も致死力も高く、自然感染やワクチンによって生まれた体内の免疫抗体をすり抜けて、人々を再感染させてしまう性格を持つという問題は、きわめて重大な問題である。人類が一年がかりで作り上げた「救済」の決め手であるワクチンが、変異株には効かず、この一年にわたる努力が水泡に帰すかもしれないのだ。人類全体で、対ウイルス戦争の戦略を練り直さなければならないことになる。
フランス科学評議会トップのジャン・フランソワ・デルフレシー氏は、「現在、世界で流行し始めている変異株ウイルスは、新しいパンデミック(第二次パンデミック)であると認識すべきと発言した。
- パリ最新情報「欧州で急拡大中の変異株ウイルスによる新たな脅威」(designstoies、2021年1月25日)
この認識に耳を傾ける必要がある。
こうした現状を背景に、IWJは厚労省に、南アフリカの変異株や英国の変異株を検出する体制について直撃質問したが、回答によると、効率的サーベイランス体制はまったく未整備というのが現状で、頼りない状況にあることが判明した。
都内における10歳未満の女児で英国渡航歴なし、渡航歴ある人との接触歴もなく、しかも無症状、というケースが1月22日に発見されたことに対して、厚労省の担当者は「変異株の感染の面的広がりはない」と言ったが、わずか1453検体の検査から英国と接点のない、感染経路不明の変異株感染者がたまたま見つかっているのであり、これは認識が甘すぎる。大規模な社会的検査を行おうとしない日本においては、すでに水面下で急速に変異株が広がっている可能性は否定できない。データがないため、「面的広がりはない」という言葉には何の根拠もないからだ。
英国では、たった3か月で英国全土で旧来株が変異株に置き換わり、政府が「制御不能」を宣言するはめとなった。しかも変異株には前述のように、ワクチンが効かない可能性もあるのだ。GoToトラベル再開や五輪開催の妄想に溺れている菅政権は、危機意識が薄いどころか、皆無である。日本の真の「緊急事態」は、このような政権が成立して、今も継続していることにある。