エセックス大学人権センター・フェローの藤田早苗氏から、ロックダウン緩和時期のレポートが届いた。
藤田氏には、ロックダウン中と、ロックダウン緩和が始まった時期の英国から、第1弾と第2弾の現地レポートを寄稿していただいていた。今回はその続編、第3弾になる。
長文の寄稿なので、本日から6回に分けて、ロックダウン緩和時期以降の英国の状況を連日お伝えする。
藤田氏のレポートによると、英国の感染率は9月に急激に悪化し、10月には警報レベルが「高」や「非常に高い」になる地域が出て危機感が高まったという。そして10月31日夜(日本時間11月1日未明)にはついに、ジョンソン首相が、首都ロンドンのあるイングランドで11月5日から12月2日まで再びロックダウンを実施すると発表したことが報じられた。
- 英、再び都市封鎖へ イングランドで約1カ月(日本経済新聞、2020年11月1日)
英国を含む欧州の「第2波」による感染者の急増は、下記グラフで如実に示されている。厚生労働省が11月1日に発表した英国の感染者数は101万4793人である。
- 世界の感染者4611万人に : 米国、欧州の拡大ハイペース【新型コロナの国別感染者数】11月1日夜更新(nippon.comホームページ)
- 新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年11月1日版)(厚生労働省ホームページ)
一方、藤田氏のレポートで、ロックダウンが緩和された夏の時期を振り返ると、ロックダウン中にサイクリングや庭いじりで心を癒した英国人も、緩和時期には、日本の「Go to Eat」に似た「Eat out to help out(外食して応援)」という政府のキャンペーンに参加し、ホリデー(夏季休暇)には欧州旅行に出かけた人も多かったことが伝えられている。9月からは若者を中心に感染が拡大したという。
来年の東京五輪開催強行をにらみすえて、海外からの入国も再開しようとしている日本にとって、欧米での感染の再拡大は、「対岸の火事」ではすまされない。
日本政府はアジア太平洋諸国16ヵ国・地域を対象に、海外と日本双方のビジネスパーソン等の日本への入国・帰国時の14日間待機を緩和する措置を順次進めており、11月1日時点で10ヵ国に実施した(対象16ヵ国:ベトナム、タイ、豪州、ニュージーランド、カンボジア、シンガポール、韓国、中国、香港、マカオ、ブルネイ、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、ラオス、台湾)。
さらに11月1日から、日本居住のビジネスパーソンに対しては、原則全世界の国・地域の短期出張からの帰国・再入国時の14日間待機を緩和するなど、海外からの入国制限を順次緩和し始めている。
- 国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省ホームページ)
しかし、この欧米での感染再拡大の現状についての政府と大手記者クラブメディアの反応は鈍い。大手メディアが東京五輪開催が絶望的となる入国規制再強化に対して、消極的な姿勢を見せているのは、大手メディアが五輪スポンサーであり、五輪放映による収入増を見込んでいるためではないかと疑わざるをえない。
藤田氏による今回のレポートでは、マスク義務化について、大学進学やキャンパス・ライフへの影響、さらにコロナ対策がスコットランド独立に与える影響などについてもお伝えしていく予定である。
短期集中連載第3弾の1回目である今回はまず、冒頭で9、10月の感染拡大状況の報告、続いて夏の緩和期の様子をふり返っていく。教会再開の一方で、9月から若者の感染拡大と「ローカル・ロックダウン」の発生、衣料品店や飲食店等が再開するなかでの「営業再開=閉店セール」の様子、英国政府の休業補償や「英国版Go To Eat」政策等についてお伝えする。
以下は藤田氏の5月の第1弾と6月の第2弾レポートである。こちらもぜひご覧いただきたい。
- 【特別寄稿】英エセックス大人権センター・フェロー藤田早苗氏のイギリス・ロックダウンレポート(その1)〜ロックダウンが始まった! 2020.5.5
- 【特別寄稿】英エセックス大人権センター・フェロー藤田早苗氏のイギリス・ロックダウンレポート(その2-1)〜ちょっとだけ緩和されたロックダウン:原発工事再開編 2020.6.13
- 【特別寄稿】英エセックス大人権センター・フェロー藤田早苗氏のイギリス・ロックダウンレポート(その2-2)〜ちょっとだけ緩和されたロックダウン:非常時の警察権力の監視を怠るな!編 2020.6.14
- 【特別寄稿】英エセックス大人権センター・フェロー藤田早苗氏のイギリス・ロックダウンレポート(その2-3)〜ちょっとだけ緩和されたロックダウン:国民保健サービスを助けてください編 2020.6.14
- 【特別寄稿】英エセックス大人権センター・フェロー藤田早苗氏のイギリス・ロックダウンレポート(その2-4)〜ちょっとだけ緩和されたロックダウン:医療従事者やケアワーカーへの格差が危険を広げている 編 2020.6.19
- 【特別寄稿】英エセックス大人権センター・フェロー藤田早苗氏のイギリス・ロックダウンレポート(その2-5)〜ちょっとだけ緩和されたロックダウン:ソーシャルディスタンス編 (藤田早苗) 2020.6.19
(前文・IWJ編集部)