【特別寄稿】英エセックス大人権センター・フェロー藤田早苗氏のイギリス・ロックダウンレポート(その2-1)〜ちょっとだけ緩和されたロックダウン:原発工事再開編 2020.6.13

記事公開日:2020.6.13取材地: | テキスト
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(藤田早苗)

 世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。英国では6月5日、死者が欧州で初めて4万人を超えた。

 しかしボリス・ジョンソン英首相は4月30日、感染拡大はピークを超えたと宣言し、5月10日、ロックダウンを緩和し、経済を再開させる計画を発表した。

▲Thank you NHS(藤田早苗氏提供)

 一方、ロンドン近郊では中国資本の原発建設計画が進行中。建設工事はロックダウンで中断していたが、予定されていたコンサルテーション(協議)も行わないまま、工事を再開しようとしている。

 前回、ロックダウン中の英国からレポートを寄稿していただいた、エセックス大学人権センター・フェローの藤田早苗氏から、第2弾となるレポートが届いた。長文の寄稿なので、本日から5回に分けて、ロックダウンの緩和を迎えた英国の現状を連日お伝えする。

(前文・IWJ編集部)

記事目次

時間を決めて人に会える

 5月10日(日)の夜7時に首相のアナウンスがあった。ロックダウンの一部緩和についてだ。

 在宅ワークができない工場や建設現場などは、仕事を再開してよい。できるだけ徒歩や自転車で通勤して、公共交通機関は避けながら。そして水曜日からは、一般人も運動には制限がなくなる。運動での外出は「1日1回1種類」でなくてよくなるというのだ。

 そして同じ家に住む人に加えて、ほかの家の人とも、待ち合わせて二人までなら外で会うのはOKだということだ。家の中に入ってはいけないが、外で誰か一人に会うことは許される。これはうれしかった。

 さっそく大学の同僚と連絡をとり、散歩をしながら話すことにした。彼女は私の住む街のエリアから大学を経た向こう側の小さな村に住んでいる。

 時間を決めて人と会うなんて何週間ぶりだろうか、そして、なんて新鮮なんだろうか。

 自転車で30分ほどの川沿いの気持ちのよい道を走りながら、そう考えた。ロックダウン前は当たり前だったこんな小さなことも、奪われてみて初めていかに貴重だったかわかる。自由とか人権というのは失ってはじめてその大切さがわかる、とよく言われるがその意味を実感する。

 5月中旬とはいえ、その日は気温はまだ12度くらい。暖かめの服を着てフットパスを歩いた。イギリスは国中にこのパブリック・フットパスがある。自転車と歩行者だけの道が張り巡らされている。歩きながら話したが、人とすれ違うときはソーシャルディスタンスを守るために、どちらかが道のわきによって待つ必要がある。みんなそれをわきまえている。

 カナダ出身のその同僚は、長年国連や国際人権NGOで人権の現場で働いて、2年前に大学の教員としてエセックス大学に赴任した。「ロックダウンはかなり精神的にこたえた」と彼女も言っていた。

 毎日ZOOMのミーティングはあるが、それも連日で頭痛がするとか。だから、お互い人と直接会って話すのは本当に新鮮だった。緩和の前の7週間、唯一可能だった「道でばったり会って」数分立ち話するのとは違う。

 コロナのパンデミックにより、世界各国で様々な人権に関する問題が露わになっている。そこで、早速エセックス大学のヒューマンライツ・センターはリサーチチームを立ち上げて、出版物を作ることにした。彼女がその編集をする。難民、少数者、DV、健康への権利、政府の権限行使、様々なテーマや地域。だが、アジアからの寄稿者がいないということだ。そこで私も日本の問題について1章担当することになった。

(…会員ページにつづく)

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