2020年10月9日(金)10時より、東京都千代田区の衆議院本館にて、第3回「学術会議任命拒否問題 野党合同ヒアリング」が行われた。
広渡清吾氏(元日本学術会議会長、東京大学名誉教授)、大西隆氏(元日本学術会議会長、豊橋技術科学大学学長、東京大学名誉教授)が出席した第1部では、広渡・大西両氏が、日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかった問題に対する政府の説明に対して異議を唱えた。
(取材・文:塩澤由子 記事構成:IWJ編集部)
特集野党合同ヒアリング
※2020年10月29日 テキストを追加しました。
2020年10月9日(金)10時より、東京都千代田区の衆議院本館にて、第3回「学術会議任命拒否問題 野党合同ヒアリング」が行われた。
広渡清吾氏(元日本学術会議会長、東京大学名誉教授)、大西隆氏(元日本学術会議会長、豊橋技術科学大学学長、東京大学名誉教授)が出席した第1部では、広渡・大西両氏が、日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかった問題に対する政府の説明に対して異議を唱えた。
■全編動画
■大西隆前日本学術会議会長 緊急囲み取材(音声のみ)
※IWJ記者の質問は35分37秒から始まります。
広渡氏は、「政府の科学に対する態度で一番大事なのは、科学が独立して自由に真理を追究することを保証すること」であるとして、「これは日本国憲法の『学問の自由』から引き出される当然の帰結であり、日本学術会議法の全文にも示されている」と述べた。その上で、今回の任命拒否は、こうした学術会議の設立の趣旨に反し、科学の独立を侵害するものであるために、「政治と科学の関係という根本的な問題」だと指摘した。
広渡氏は続けて、日本学術会議法は会員の選出について、「優れた研究または業績のある者から会員を選ぶ」と定めていることに触れ、「任命を否認するのであれば、なぜ今回拒否された6人を『優れた研究または業績のある者』ではないと判断したのか説明しなければならない。こうした規定に関係なく、単に政治的な問題で否認したのだとすると、制度の趣旨に反しており法に背いている」と批判した。
続いて大西氏が、菅義偉総理や加藤勝信官房長官が6人の任命拒否について説明する際に、「総合的・俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と発言していることについて批判を行った。
そもそも、この「総合的・俯瞰的」という言葉は、学術会議の再編や廃止論が出てくるたびに使われてきた言葉である。学術会議の廃止論が出ていた2003年には、政府の総合科学技術会議の下の調査会がまとめた報告書に、会議の存続を認める条件として「総合的、俯瞰的な活動」が書き込まれていたという。
実際、岩上安身が10月9日に「傍聴者」として参加した菅総理への2回目のグループ・インタビューにおいても、菅総理はほとんどの質問に対して「総合的・俯瞰的な視野」をもった人材という言葉を何十回も繰り返した。
大西氏は、「総合的・俯瞰的というのは制度の話であるはず」と指摘した。
大西氏は「学術会議は、現代社会の様々に入り組んだ問題に対処するために、学問分野で切り分けられていた委員会を、課題ごとに切り分けられた委員会に変革した」と説明し、「学術会議の会員となる科学者は、その基礎は優れた専門性を持つ研究業績のある科学者」なのであり、「一人ひとりの研究者について『総合的・俯瞰的』な人物とは言えない」と指摘した。
広渡氏もこれに続けて、「そもそもこの6名を削ったら総合的・俯瞰的になるのか?」と政府の説明を揶揄した。
大西氏は続けて、学術会議を行政改革の対象にしてそのあり方を見直そうとする政府の動きについて、「学術会議のあり方については2004年に議論されていたが、2015年に、設置のあり方や、人事選考の仕方はこのままでよいということになった。今後見直すにあたってはそれを踏まえた議論をすべきではないか」と指摘した。
さらに広渡氏が、学術会議のあり方をめぐって自民党の下村博文政調会長が「学術会議の政府に対する答申が2007年以降、ほとんど行われていない」として「活動が見えない」と発言したことに対しても批判を行った。
広渡氏は、「政府が諮問してくれなければ答申を返すことはできない。答申がないのは、あなた方が諮問しなかったからだ」として、「どうぞ諮問してください」と反論した。
続けて「学術会議は期末には必ず提言をしていて、それを生かすも殺すも政府だ。下村さんどうぞ学術会議のホームページを御覧になってください。政府が社会、政治を良くするために採用できる提案がたくさんあります」とはねつけた。
実際、日本学術会議は2008年以降、321の提言と10の報告を提出している。下村政調会長の発言は事実誤認にもとづく悪意ある発言であり、ただちに謝罪と訂正をすべきだろう。
広渡・大西両氏は、今回の野党合同ヒアリングで、会員候補6人が任命されなかった理由について政府に説明するよう一貫して強く求めた。
第一部ヒアリングの終了後、衆議院本館の廊下で大西元会長の囲み取材が行われた。
衆議院では「部屋の外で映像を撮ってはいけない」という規則があるため、音声のみとなっている。
IWJ記者の質問と大西元会長の答えは、以下のとおりである。
(…会員ページにつづく)