「いつ、誰が6名を推薦から外したのか? 菅総理の関与はあったのか?」
日本学術会議が新規会員として推薦した105名のうち、6名が菅義偉総理により任命されなかった問題で、9月24日に内閣府から菅総理に提出された任命発令の起案決裁文書で、すでに99名に絞られていたことが明らかになった。
10月6日、衆院本館で行われた2回目の「学術会議任命拒否問題 野党合同ヒアリング」で、内閣府の提出した「日本学術会議会員の任命について」という、9月24日起案、9月28日決裁の文書には、日本学術会議の推薦105人の名簿が添付されながら、候補者99名が記され、「標記について、別添案の通り発令してよろしいか伺います」と書かれていた。
つまり、9月24日に内閣府から菅総理へ「お伺い」する段階で、すでに6人が排除されていたことがわかる。
これについて、立憲民主党の黒岩宇洋衆議院議員、山井和則衆議院議員、原口一博衆議院議員、辻元清美衆議院議員、社会民主党の福島瑞穂参議院議員らが「いつ、誰が外したのか? 菅総理の関与はあったのか?」と追及したが、文書の起案者でもある内閣府大臣官房人事課参事官の矢作修己氏は「人事に関することなので」の一点張りで、回答を拒否し続けた。
一方矢作氏は、福島議員の「9月24日以前に総理と相談したことがあるか」との質問に、日時を明かすことは拒否しながらも「総理に説明に行った」と認めた。
これに対して立憲民主党の小西洋之参議院議員、川内博史衆議院議員が「任命しないと意思決定した決裁文書はあるのか?」と質問すると存在しないことが判明。川内議員は「ないというなら、まだ日本学術会議から推薦されたままということでいいか?」と確認したが、これには明確な回答がなかった。
また、この日のヒアリングには2018年(平成30年)11月13日付の「日本学術会議法第17条による推薦と内閣総理大臣による会員の任命と関係について」と題された日本学術会議事務局の書類が提出された。これは日本学術会議事務局と内閣法制局の合議を記録した文書である。
この中の「日学法第7条第2項に基づく内閣総理大臣の任命権のあり方について」という項目には、次のような記載がある。
「憲法第15条第1項の規定に明らかにされているところの公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理からすれば、任命権者たる内閣総理大臣が、会員の任命について国民及び国会に対して責任を負えるものではなければならないことからすれば、内閣総理大臣に、日学法第17条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられる」
これは1983年11月24日の参院文教委員会で、内閣法制局が「学会から推薦したものは拒否しない、形だけの任命をしていく、政府が干渉したり中傷したり、そういうものではない」と答弁したことと矛盾する内容だが、「解釈変更したのか」との野党側の追及に対し、内閣法制局第一部参事官の江崎崇氏は「解釈変更ではない」と回答。内閣府の矢作氏は「従来から一貫したものだ」と主張した。
しかしこの「国民及び国会に対して責任を負えるものではなければならないことからすれば」という記述を根拠に6人の学者を任命しなかったのであれば、6人には「国民に責任を負えない」と判断されるべき重大な理由が存在することになり、菅総理の任命拒否の理由説明が一層強く求められることになる。