日本学術会議の声明案中間とりまとめが紛糾! 多数の学者が軍事研究に反対する一方で「国家の安全に無責任だと政治から相手にされなくなってしまう」との驚きのコメントも!? 2017.1.16

記事公開日:2017.1.20取材地: テキスト
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(取材・文 城石エマ)

 軍事研究に協力するか、防衛省のアプローチを拒むか――。日本のアカデミズムは今、重大な岐路に立たされている。

 先の戦争の反省から、1950年・67年に「戦争のための科学に従わない声明」「軍事目的のための科学研究を行なわない声明」を発表した日本学術会議が、今後の会議としての態度決定に揺らいでいる。

 背景には、防衛省が2015年度から開始した「安全保障技術研究推進制度」がある。「防衛装備品」への転用を目的とした研究の公募に採用されると、大学などの研究機関は防衛省から研究資金を得られるとする制度である。

 防衛省からのアプローチは、「軍学共同」を歯止めなく進めることにつながるのではないか。科学者たちからは、戦時中の惨事を再び招くのではないかと、懸念の声があがっている。

 日本学術会議は、2017年中にも新たな声明を発表する予定。それに先立ち1月16日、東京・港区の日本学術会議事務局にて、「第8回 安全保障と学術に関する検討委員会」が開催され、中間報告とりまとめに向けた報告がなされた。検討会では、一定の方向性を示されることが期待されたが、意見の対立が目立った。

 軍学共同の問題については、岩上安身が名古屋大学名誉教授の池内了氏や、東京新聞記者の望月衣塑子氏らにインタビューをして明らかにしてきた。以下もぜひ、ご一読いただきたい。

記事目次

  • 日時 2017年1月16日(月)17:00~19:00
  • 場所 日本学術会議(東京都港区)
  • 主催 日本学術会議(告知

過半数の委員が軍事研究に慎重姿勢を示すも、数名の委員との意見対立が明確に

 検討委員会・委員長の杉田敦氏(法政大学教授)が発表した報告には、「安全保障技術研究推進制度」には政府による学問への介入が大きすぎる問題があること、技術を防衛目的と攻撃目的に区別することは難しいことなどが盛り込まれ、概して軍事研究には慎重な姿勢が示された。

▲(左から)大政謙次副委員長(東京大学名誉教授)、杉田敦委員長(法政大学教授)、佐藤岩夫幹事(東京大学教授)

▲(左から)大政謙次副委員長(東京大学名誉教授)、杉田敦委員長(法政大学教授)、佐藤岩夫幹事(東京大学教授)

 これに対し、参加した委員らからコメントが寄せられた。委員10人中、多数がこの声明に賛成、あるいはこの声明を適切であると判断。山極寿一委員(京都大学総長)は、「科学者は国の安全保障より人間の安全保障(※)を優先すべきである」と表明し、日本学術会議会員からなる倫理委員会の立ち上げを声明に入れるべきであると述べた。

人間の安全保障:人間一人ひとりに着目し、生存・生活・尊厳に対する広範かつ深刻な脅威から人々を守り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現するために、保護と能力強化を通じて持続可能な個人の自立と社会づくりを促す考え方(外務省より

 一方、反対意見も出た。

 日本学術会議会長の大西隆氏(豊橋技術科学大学学長)は、「憲法では自衛権を認めているのだから、大学での防衛装備の研究は認めるべき」などとコメントした。大西会長は、昨年4月の総会でも同様の発言をし、学会員から疑問の声が相次いだ。

▲大西会長は遠隔参加となった

▲大西会長は遠隔参加となった

 小松利光委員(九州大学教授)は、国論を二分する「自衛権」の問題を検討委が「さまざまな政治的立場があり、日本学術会議として意思決定することは適切ではない」としていることに対し、「自衛力の是非を判断していないのに、軍事研究を否定するなど独善的」とコメント。さらに、「国家の安全に対して無責任な学者や大学は政治から相手にされなくなってしまう」と述べた。

 こうした反対意見に対し、井野瀬久美惠委員(甲南大学教授)は、「学術会議の設立とともに埋め込まれている『平和』というミッションをどう実現していくかが、議論の本質であるはずだ」と牽制した。また検討委員会の杉田委員長も、以下のように大西会長らに反論した(以下、格納部分へ続く)。

(…会員ページにつづく)

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