歴史的に行われてきた科学者の軍事動員。「研究費」の甘い罠で、科学者に戦争協力を強いる国家の罪は重い。一方、2度の大戦で軍事研究に加担した科学者らの中には、激しく後悔したものも多かったという。アインシュタインも、湯川秀樹も、朝永振一郎もみな、戦時協力を悔いた。
しかし実際には、戦争協力の事実を問われても「軍事転用されるとは思っていなかった」と言い訳を述べる科学者も多かった。ほんとうに科学者に責任はなかったのだろうか?
宇宙論・銀河物理学などを専門とする名古屋大学名誉教授の池内了氏は、2016年9月21日、岩上安身のインタビューで「科学者の社会的責任は問われるべきである」と強く主張した。技術はいつでも、「民生」にも「軍用」にも転化される可能性をはらむという。
2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故が「安全神話」をみごとに崩壊させた今、「科学者の社会的責任」はもう一度見直されるべきときに来ている。国家の命令への無批判な従属が「安全神話」を生み出したのであれば、科学者の責任は、池内氏によれば「科学の限界を語ること」であるという。