安倍政権のもとで、科学技術分野での成果を軍事に転用し、武器輸出を拡大しようとする動きが止まらない。
防衛省は2015年度、「安全保障技術研究推進制度」を創設。軍事に転用可能な研究に対し、「競争的資金」を優先的に配分する仕組みを作った。2015年度は4大学、2016年度は5大学がこの制度に採択されたことから、研究者の間では、「科学の軍への下請け化が始まっている」との批判が高まっている。
こうした声を背景に、名古屋大学名誉教授の池内了氏らが、9月30日に「軍学共同反対連絡会」を発足させた。そしてその記念シンポジウムが、2016年10月28日、東京都港区の明治学院大学で開催された。
第一部では、東京工業大学名誉教授である山崎正勝氏が、「日本の科学者の平和主義、その『節操』と『誇り』~日本学術会議の二つの声明に寄せて~」と題した講演を行なった。
続く第二部では、池内氏、東北大学名誉教授である井原聰氏、そして、「武器輸出反対ネットワーク NAJAT」代表である杉原浩司氏が加わり、シンポジウムが行われた。
- 講演 山崎正勝氏(東京工業大学名誉教授)「日本の科学者の平和主義、その『節操』と『誇り』〜日本学術会議の二つの声明に寄せて〜
- シンポジウム
参加者 池内了氏(名古屋大学名誉教授)/井原聰氏(東北大学名誉教授)/杉原浩司氏(武器輸出反対ネットワーク NAJAT代表)
- タイトル 軍学共同反対連絡会発足シンポジウム―軍に奉仕する科学になるのか―
- 日時 2016年10月28日(金)18:45〜21:00
- 場所 明治学院大学(東京都港区)
- 主催 軍学共同反対連絡会
山崎氏は、「戦争を知らない」世代である現在の学生は、防衛省から軍事研究のための資金提供を受けることに対して、「自衛のためならいいのではないか」「戦争が行われず、少額であればいいのではないか」などと、否定的には考えていない実情を紹介。「これは大きな問題だ」と指摘した。
その上で、「若い人たちと一緒に議論しない限り解決方法はない。現実を直視して、とくに若い人たちの中での議論を活発化するような活動をしていかなければならない。北朝鮮が核武装をするなどの現在の情勢のなかで 今日本の平和外交はどうあるべきか、その平和基本的な枠組みを作っていく必要だ」と訴えた。
▲講演を行う東京工業大学名誉教授・山崎正勝氏――10月28日、東京都港区
安倍政権のもとで進む武器輸出拡大の流れについて、岩上安身は『科学者と戦争』(岩波新書)など多数の著書がある名古屋大学名誉教授の池内了氏、『武器輸出と日本企業』(角川新書)が話題の東京新聞記者・望月衣塑子(いそこ)氏にインタビューを行っている。こちらもあわせてご覧いただきたい。