日本学術会議は、2017年2月4日東京都港区にある日本学術会議講堂で、「安全保障と学術の関係:日本学術会議の立場」と題した学術フォーラムを開催した。
日本学術会議は、先の大戦で軍事動員に協力した反省から、1950年と1967年に、「軍事目的のための科学研究を行なわない声明」を発表し、戦争を目的とする科学の研究には加担しないと宣言している。
他方、防衛装備庁が大学などの軍事転用可能な研究に助成金を出す「安全保障技術研究推進制度」を2015年度から始めたことを受け、日本学術会議は「近年、軍事と学術が各方面で接近を見せている」と指摘。この声明を堅持していくか否かについて審議するために、2016年5月に「安全保障と学術に関する検討委員会」を設置した。これまでに9回の委員会が開催されている。今回の学術フォーラムでの討論を踏まえ、今春までに最終のとりまとめを目指している。
前回の検討会については、以下の記事にまとめているので、ぜひあわせてお読みいただきたい。
- 総合司会 大政謙次氏(日本学術会議第2部会員、東京大学名誉教授)
- 開会挨拶 大西隆氏(日本学術会議会長・第3部会員、豊橋技術科学大学学長、東京大学名誉教授)
- 第Iパート 委員会中間とりまとめの状況報告
- 杉田敦氏(日本学術会議第1部会員、法政大学法学部教授)
- 第IIパート 日本学術会議の内外の意見(進行 小松利光氏〔日本学術会議第3部会員、九州大学名誉教授〕)
- 兵藤友博氏(日本学術会議第1部会員、立命館大学経営学部教授)
- 須藤靖氏(日本学術会議第3部会員、東京大学大学院理学系研究科教授)「『学術研究のために』という視点」
- 佐野正博氏(日本学術会議連携会員、明治大学経営学部教授)
- 福島雅典氏(日本学術会議連携会員、先端医療振興財団臨床研究情報センター長・研究事業統括)「軍民両用(デュアルユース)研究とは何か―科学者の使命と責任について」
- 西山淳一氏(未来工学研究所政策調査分析センター研究参与)「防衛技術とデュアルユース」(予定)
- 根本清樹氏(朝日新聞社論説主幹)「安全保障と学術について」(予定)
- 第IIIパート 総合討論(進行 杉田敦氏)
- 学術フォーラム参加者と安全保障と学術に関する検討委員会委員による質疑応答
- 閉会挨拶 花木啓祐氏(日本学術会議副会長・第3部会員、東京大学大学院工学系研究科教授)
- タイトル 日本学術会議主催 学術フォーラム「安全保障と学術の関係:日本学術会議の立場」について
- 日時 2017年2月4日(土)13:00〜17:00
- 場所 日本学術会議講堂(東京都港区)
- 主催 日本学術会議(詳細、PDF)
防衛装備庁の介入の度合いが大きい「安全保障技術研究推進制度」。学問の自由、開かれた場としての大学への影響を懸念
フォーラムの最初に、「安全保障と学術に関する検討委員会」の委員長で、法政大教授である杉田敦氏が、中間とりまとめの報告を行なった。報告では「安全保障技術研究推進制度」について、防衛装備庁の介入の度合いが大きく、学問の自由や開かれた場としての大学への影響があるとして、懸念を表明した。
続いて、意見表明を行なった6名のうち、立命館大学経営学部教授である兵藤友博氏、東京大学大学院理学系研究科教授である須藤靖氏、明治大学経営学部教授である佐野正博氏、財団法人先端医療振興財団臨床研究情報センター長で研究事業統括である福島雅典氏、そして、朝日新聞社論説主幹の根本清樹氏の5名は、杉田氏が報告した中間とりまとめを支持した。
▲日本学術会議主催学術フォーラム「安全保障と学術の関係:日本学術会議の立場」
他方、未来工学研究所政策調査分析センター研究参与である西山淳一氏は、軍民両用研究に賛成の立場から「弾道ミサイルと宇宙ロケットは同じ。乗っけるものが爆弾か人工衛星か」などと持論を述べた。
「(日本学術会議会長の大西隆氏は)自らが学術声明に違反することをやっている」――新潟大学名誉教授・赤井純治氏
フォーラムの最後となる第三部では、参加者を交えた討論会が行われた。会場からは、科学者が戦争協力した反省を踏まえ、1950年、1967年声明の堅持を求める声が相次いだ。
新潟大学名誉教授である赤井純治氏は、中間とりまとめに賛成する立場で発言した。赤井氏は、日本学術会議の会長である大西隆氏が学長を務める豊橋技術科学大学では、防衛省の制度を利用し、防毒マスクの研究を始めていることを指摘した。
▲日本学術会議会長であり豊橋技術科学大学を務める大西隆氏
その上で、「大西会長は50年、60年声明を言葉の上では守るとおっしゃっているが、実質これは無視し、自らがこの学術声明に違反することをやっている。会長の資格としていかがなものか。委員会の意見がまとまっても、大西会長は会長権限でよもやこれを潰したり、葬ったりしないことをここで明言願いたい」と詰め寄る場面あった。
これに対して、大西会長は「会長の権限はない。委員会の最終とりまとめは、査読というプロセスを経た後、幹事会で再びもんで最終的に取りまとめる。幹事会の委員長は私だが、全体の意見がそこで重きを持つ。過去に2回ほど幹事会に一任されているが、総会で決めた例もある。どういったアウトプットになるのかを含めて、委員会での議論が先行する」と説明した。
「50年声明は憲法9条と同じ」「解釈にいろいろな余地があるが、軍事的な行為を抑制する抗力を持っている」杉田敦委員長
フォーラム終了後に行われた囲み取材で、杉田氏は「全体としては50年声明、67年声明の方向性を堅持すべきだという意見が多かった」と述べた。
他方、「(最終取りまとめでは)『過去の声明を堅持する』という強いメッセージを盛り込んでゆくことになるのか」との記者からの質門に対して、杉田氏は「50年、67年声明を撤回するとか、書き換えるという話は委員会でも一切でてきていない。代わりに、一部の委員の方が解釈変更をするということを考えていると思う」と語った。
▲「安全保障と学術に関する検討委員会」の委員長で、法政大教授である杉田敦氏(右から2番目)
その上で、杉田氏は、「変えるのも難しいが、日本国民全員の解釈も一致しているわけではない」として50年声明を憲法9条に例えた。
杉田氏は続けて、「50年声明の主流の解釈は、『一切の武力行使等に関わるおそれのある科学研究を行なわない』というものだが、中にはそう思っていない人もいるかもしれない」との見方を示し、「それに対して、特定の解釈を固定化することへの反対もいろいろな方面からも多いため、なかなかできない。憲法9条の解釈がいろいろな余地を残すからいっさい規範性がないという人も一部にいるが、多くはそうは思っていない。軍事的な行為を抑制する抗力をもっている。50年声明もそれを持っている」と強調する一方で、最終取りまとめの難しさをにじませた。
IWJ代表の岩上安身は、東京新聞記者で『武器輸出と日本企業』(角川新書)著者である望月衣塑子(いそこ)氏に、単独インタビューを行っている。民間企業による武器の製造を「経済回復の起爆剤」と位置づけ、世界各国への輸出を促す流れを強めている安倍政権下の武器輸出ビジネスの実態に迫っている。こちらもあわせてご視聴いただきたい。
無知な素人の判断で科学的な研究に予算を割り振っても成果は得られない。それが敗戦までの日本がたどった悲しい現実です。社会全体が貧しく、科学の成果が生活には及ばず、歴史が長い農村は貧しく前近代的だった。戦争をやったことでただでさえ少ない物資が不足しまくり、お寺の鐘も供出で無くなった寺が多くあり、現在でもそのまま鐘が無い寺もある。
日本は戦争には向かない国で、工業生産力と資源力がもろに影響することを第二次大戦でほとんどの国民が思い知った。こんな研究方針を立てるよりも、NASAのように全ての科学技術開発に予算をつぎ込む方が結果はマシである。
首相動静を見ると連日贅沢な食事をしているが、沢庵とお茶漬け程度にして余った金を科学気が術開発に振り向けるべきである。税収が限られている以上、誰かが使えば誰かの取り分が無くなるのだ。