「アメリカのような『軍産複合体』に舵を切るかどうかの分岐点。市民と大学関係者が一緒に声を上げることが重要です」――。
先の大戦で軍事動員に協力した反省から、「戦争を目的とする科学の研究には従わない決意」を表明してきた日本学術会議は今、軍事研究に対する姿勢の見直しを検討している。防衛省が大学などの研究資金を支援する「安全保障技術研究推進制度」を立ち上げたことに危機感をつのらせたのがきっかけだ。
(ぎぎまき)
「アメリカのような『軍産複合体』に舵を切るかどうかの分岐点。市民と大学関係者が一緒に声を上げることが重要です」――。
先の大戦で軍事動員に協力した反省から、「戦争を目的とする科学の研究には従わない決意」を表明してきた日本学術会議は今、軍事研究に対する姿勢の見直しを検討している。防衛省が大学などの研究資金を支援する「安全保障技術研究推進制度」を立ち上げたことに危機感をつのらせたのがきっかけだ。
■ハイライト
「安全保障と学術に関する検討委員会」を設置して初めてとなる総会が2016年10月7日、東京都内で開かれ、会員からは「軍事に関わる研究には関与しないことを学術会議として確認すべき」「『731部隊』の振り返りもない。科学と軍事がからむ『国家資源』としての科学を見直す必要がある」など、軍事研究に対し否定的な意見が噴出した。
学術会議の会長である大西隆氏が学長を務める豊橋技術科学大学では、防衛省の制度を利用し、防毒マスクの研究を始めている。これは民生にも転用できる「自衛」のための研究だと大西会長は弁明したが、会員の中には「自衛というのは攻撃的であることの裏返し。どこで線を引くのか注意すべき論点」「防衛省の予算を使って研究すること自体、海外から誤解をうけてしまう」など、懸念の声が相次いだ。
IWJは新潟大学の名誉教授であり、「軍学共同反対連絡会」の赤井純治事務局長に総会終了後、話を聞いた。
「行き着く先はアメリカと同じような『軍産複合体』。学術界や大学が率先して協力することは絶対にあってはならない。会員からは否定的な意見が多く安心したが、学術会議の会長がリードして軍学共同を進めているのは非常に大きな問題。市民と大学関係者が一緒に声を上げることが重要です」
学者だけでは、この流れを食い止められない。市民との連帯が必要だ。そう語った赤井名誉教授の言葉が印象に残った。