2020年10月9日(金)10時より、東京都千代田区の衆議院本館にて、第3回「学術会議任命拒否問題 野党合同ヒアリング」が行われた。
第二部のヒアリングは、任命を拒否された6人のうちの一人、東京慈恵医大の小澤隆一教授(憲法学)と内閣府、内閣法制局が出席した。
小澤教授は、前回の第2回ヒアリングで内閣府が任命拒否の根拠として提出した、2018年11月13日付の「日本学術会議法第17条による推薦と内閣総理大臣による会員の任命と関係について」と題された日本学術会議事務局の書類について、「解釈を誤っている」と強調した。
この文書は日本学術会議事務局と内閣法制局の合議を記録したもので、その中の「日学法第7条第2項に基づく内閣総理大臣の任命権のあり方について」という項目には、次のような記載がある。
「憲法第15条第1項の規定に明らかにされているところの公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理からすれば、任命権者たる内閣総理大臣が、会員の任命について国民及び国会に対して責任を負えるものではなければならないことからすれば、内閣総理大臣に、日学法第17条による推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられる」
これについて小澤教授は「この文書自体が、学術会議の会員選考方法について、憲法や法律の誤った解釈にもとづいている」と指摘した。日本学術会議法第17条には「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」と記されている。
小澤教授は、この文書における「『17条による推薦の通りに内閣総理大臣が会員を任命すべき義務があるかどうかについて検討する』という項目の立て方自体が、非常にミスリーディングだ」と、真っ向から批判。「学術会議の会員の任命という行為は権利か義務かという問題ではない。最初からそこでは義務はないという結論を導き出すための問題の立て方をしている」と強調した。
さらに小澤教授は「日本学術会議が内閣総理大臣の所轄のもとの国の行政機関であることから憲法65条および72条の規定の趣旨に照らし総理は会員の任命権者として学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使することができるものであると考えられる」という記述にも、次のように反論した。
「確かに学術会議は内閣総理大臣の所轄のもとの国の行政機関ですけれども、しかし一般の行政機関と違う。内閣府設置法に規定されるところの特別の機関であって、特別の機関というのは『別に法律の定めるところにより内閣に置かれる』となっている。
じゃあ『別の法律』というのは何かといえば、これは学術会議法です。
ですから、学術会議法の定めによって人事等が行われるという、特別の機関としての性格を全く度外視して、一般の行政機関が任命権者としての内閣総理大臣に人事を通じて監督権を行使されるのと同じような文脈で書かれている」
その上で小澤教授は「学術会議法の中では26条によって『会員に不適当な行為があるときには学術会議の申し出に基づいてその会員を退職させることができる』となっており、会員の任命も退職も、その判断は学術会議自体に委ねられている、人事についての監督権は学術会議自身が持っているという法の仕組みになっている」と訴えた。
しかし、これを聞いた内閣法制局は「貴重な意見として承りたい」としながら「政府としてそれに対して何か申し述べるというのは差し控えさせていただきたい」と逃げるように回答した。
また、小澤教授に「任命拒否の論拠にならない」と指摘された内閣府もまた、「内閣総理大臣の任命権にもとづいて、日学法の規定にもとづいて任命をしたということでございまして、詳細な理由に関しましては人事に関することですので、お答えを差し控えたい」と、これまでと全く変わらない答弁を繰り返した。