2020年2月29日(土)18時30分より、東京都渋谷区の渋谷勤労福祉会館にて、平和力フォーラム主催の連続講座「中世のような日本司法を斬る」の第3回「司法の自白依存症は治療できないのか〜警察・検察はなぜ拷問まがいの取調べに励むのか」が、関東学院大学教授の宮本弘典氏を講師に迎え、開催された。講義は、平和力フォーラムの前田朗氏が宮本氏にインタビューする形で進行した。
冒頭、宮本氏は、カルロス・ゴーン氏の国外脱出事件を引き合いに出し、「日本では、刑事裁判がメディアで取り上げられる際、必ず、町の声か裁判関係者-おもに被害者の声が紹介され、『真実を語って欲しい』と言う」とし、「刑事被告人本人の口から『真実を語って欲しい』というのは、端的に『自白しろ』と言っているのと同じだ」と指摘した。
宮本氏は、続けて「日本では、刑事被告人が、一人前の市民として、社会に受け入れられたければ、黙秘権などの法的な権利を行使するのではなく、真実を語る道徳的な義務を履行しなければならないと考える法文化がある」とし、「お金もあり、日本型の常識にとらわれないゴーン氏のような人間には、このような同調圧力や社会的圧力が通用しないということが明らかとなったのがあの事件だったのではないか」との持論を述べた。
講義の中盤は、参加者と宮本氏・前田氏との間での質疑応答が行われ、「新型コロナウイルス」や「籠池裁判」、そして「日米安保条約」や「日本の検察」などのテーマで活発な意見交換がおこなわれた。
宮本氏は、講義の最後を、会場の参加者と認識を共有したいとして、次のようなことばで、締めくくった。
「我々の歴史が、我々自身の無反省が、 我々自身の省察の無さが、ひとりひとりの刑事被告人の被害を生んでいるのかもしれない。長期勾留の被害者であり、冤罪の被害者であり、そういう人たちの奪われた人生について、我々がなにかを成し得るのだとすれば、やはり『知らないで済まさない』という態度が重要ではないかと思う」