【第402-408号】岩上安身のIWJ特報!いつでも独裁が可能!? いつまでも独裁が可能!? 憲法で堂々と独裁を肯定!? より危険性が高まった自民党新改憲の緊急事態条項!岩上安身による永井幸寿弁護士インタビュー(後編) 2018.11.3

記事公開日:2018.12.29 テキスト独自
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「岩上安身のIWJ特報」 まぐまぐ アワード2018ジャーナリズム部門5位受賞!

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 自民党憲法改正推進本部の下村博文本部長は2018年11月15日、国会での改憲論議に否定的な野党を「職場放棄」と罵った。自らの疑惑についての説明責任は棚に上げ、暴言を吐きつつ、強行採決に向けて暴走をする。この下村氏の強引で、自らを省みない猪突猛進ぶりは、自民党が憲法改正に向けてなりふりかまわず猛進しようとする姿勢を如実に表している。

 結果として批判を浴びた下村氏は、この暴言がきっかけで衆議院憲法審査会の幹事の辞退に追い込まれ、20日には委員からも外されることになったが、与党の姿勢は変わらず、緊急事態条項を含む憲法改正の発議の危機が目前に迫っていることには何も変わりもない。

※「職場放棄」発言の自民 下村氏 憲法審査会の委員も外れる(NHK NEWS WEB、2018年11月21日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181121/k10011718041000.html

 民放連(日本民間放送連盟)は2018/11/25年9月20日、憲法改正の国民投票に関して、テレビCMの上限規制を自主的に設けることはしないことを表明した。つまり、改憲CMが青天井で、量的制限なく、民放各社で朝から晩まで流されるというのである。影響を受ける人は山ほどいるだろう。民放は中立ではなく、改憲に積極的に加担した、と言わねばならない。

 臨時国会で改憲が発議されてしまえば、改憲賛成派は、圧倒的な資金力で改憲に肯定的なCMを打ち、草の根で改憲運動を推進する日本会議などを通じて組織票を動員するだろう。

※国民投票CM、量的規制せず 民放連(朝日新聞デジタル、2018年9月21日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13688535.html

 2017年5月3日の憲法記念日に、安倍総理が「2020年を新しい憲法が施行される年に」と発言したことを受けて策定が進められ、2018年3月25日の自民党大会において条文の形で発表された、「改憲たたき台素案」4項目のひとつ、自民党新「緊急事態条項創設」案。

 2012年に発表された自民党改憲草案における、あの居丈高なトーンは鳴りをひそめ、一見「おとなしい」規定に変わったように見える、この新「緊急事態条項創設」案のはらむ危険性にいち早く気づいた永井幸寿弁護士は、岩上安身によるインタビューで、そこに仕込まれたいくつものトラップを暴いてみせた。

 「自然」災害だけでなく、「武力攻撃災害」も含めた「大規模な災害」時に、内閣が制定できるとある「政令」は、第73条6号に規定される通常の意味での災害対策の政令ではなく、大日本帝国憲法下の「緊急勅令」に相当する「独立命令」=独裁権限であること。

 旧案にはあった「内閣総理大臣による緊急事態の宣言」も解除規定としての「事前または事後の国会の承認」も、今回はすべて取り払われ、内閣が「国会による法律の制定を待ついとまがない」と「主観的」に判断すればいつでも国会を無視して立法ができるしつらえになっていること。

 そして、内閣が制定できる「政令」の内容についても、「国民の生命、身体および財産を保護するため」以外の何の限定もなく、内閣がそれを名目にして人権制限や報道規制、核保有、さらには、先制核攻撃や他国の戦争への参加など、何でもできるようになっていること。

 こうした「いつでも独裁、何でも独裁」に加えて、今回お届けするインタビュー後編では、この新「緊急事態条項」が、いかに内閣による「いつまでも独裁」を可能にするか、が明らかにされる。

▲永井幸寿弁護士

 そして岩上安身は、安倍政権となって以来加速的に進行する国内外のさまざまな動きや出来事が、中東や極東での有事の際に日本の自衛隊を米軍の指揮下で実戦に使うための、米国による「傀儡政権」への支配の強化であり、そのための改憲であるとの確信を深める。

 「国体護持」を標榜しながら、きわめて反皇室的な言動を繰り出し、卑屈な対米従属姿勢を恥じない改憲勢力が目指すディストピアが、インタビュー後編で明確に見えてくる。

記事目次

危険度アップの新「緊急事態条項」とその手口(7)「第64条の2」の改正〜「大地震その他の異常かつ大規模な災害」という「災害」規定には、武力攻撃災害が含まれる!これらが本命!「決めるのは国会」とは言っても「国会の多数派」次第!」

岩上「さて、話を自民党の新「緊急事態条項」に戻しますと、旧案では98条・99条で新設だったのに、今回は73条と64条という離れた条文の改正という形を取るんですね。73条についてここまでお話をうかがってきたわけですが、64条の2、これがまた問題であると。『第64条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により』、ここに例の武力攻撃災害という概念(※1)が入ってくるんですね?」

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▲緊急事態条項第64条の2

永井「はい」

岩上「で、『衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の三分の二以上の多数で、その任期の特例を定めることができる』と。何か、ああそうですかって感じですが、しかしこれは、参議院の緊急集会とか、現行憲法もそういう非常時における対応をちゃんと記しているわけですよね?(※2)」

永井「はい」

岩上「にもかかわらず、これを敢えて定めることには何か目論見があると。その辺りをまず教えていただきたいのですが」

永井「はい。まず要件として、『大地震その他の異常かつ大規模な災害により』。繰り返しますように、この『災害』にはさっきの『武力攻撃災害』が入りますが、そういう『災害』によって、『衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるとき』。認定権者は『国会』です。国会が災害等で『選挙の適正な実施が困難』だと認定したら、というわけですが、そうしたら何ができるかというと、任期の延長ができてしまうと。

 つまりは、国会自身が自分達の任期を延長することを決められる。国会の多数派が、自分達の利益のためにですね、任期延長を定められるということなんです。

 事実の如何は問わず、とにかく国会の多数派が『選挙の適正な実施が困難だ』と評価すればいいんです」

危険度アップの新「緊急事態条項」とその手口(8)条文にはその『災害』がいつの災害か、一切書いてない!過去の災害を持ち出して都合のよい時に緊急事態宣言ができる!?

永井「例えば、災害が起きた時にたくさんの人が避難することはよくありますでしょう?そういう時にですね、多数の被災者が他県に移動していて本来の住所地で投票ができない。だから投票が難しいから『選挙の適正な実施が困難だ』なんていうこともできるわけです。

 事実、今でもですね、東日本大震災の被災者の方が6万8千人、避難しているんですが、条文にはその『災害』がいつの災害か、一切書いてありません。だから、『東日本大震災で多数の被災者が避難しているから、選挙の適正な実施が困難だ』などと言って、任期の延長ができるということになります」

▲特例制定の要件

岩上「権力側にとって、この辺で任期の延長やりたいなと思った時に、都合よく天災が起きてくれるとは限らない。そこで、『そういえば、東日本大震災が起こって以来、仮設住宅にいる皆さんになかなかご不便おかけしてる。従って、今回は任期延長しちゃおうじゃないか』っていう理屈も成り立つと?」

永井「はい。そういうことができるようになります」

危険度アップの新「緊急事態条項」とその手口(9)条文には地理的限定がない!『武力災害』の現地が日本列島とは限らない!海外の戦争に集団的自衛権で巻き込まれた場合にも使える!?

岩上「ほお… ということは、『災害』に武力攻撃も含まれるわけですから、というか、僕はこちらが本命だと思うんですけど、武力攻撃による『災害』も実際に日本列島が受けたものかどうかは関係ないってことになりますよね。戦争というものは自分が攻め入ることもあるわけですから。

 実際、今だって日本は『来いよ』って中東に呼ばれてるわけですからね。イランで一丁、事が起こったんで、じゃあ…ってことになりますよね。だって、条文に『日本列島に限る』なんて書いてあります?」

永井「(笑)そうですね」

岩上「書いてないでしょ?地理的限定ないじゃないですか。『国内』なんて一言も書いてないですよね。それから極東条項もないですよね?ということはこれ、地球規模の話ですよ。地球大の武力攻撃が対象になってますよ。いやいや、冗談ではなくて。

 イランのヒズボラとイスラエルがぶつかり合う。するとアメリカが出てきて有志連合組むと言い出す。そうなると当然日本も入る。もうすでに出てますよ、有志連合の話。

 そうなった時に、実際がどうだろうと、『選挙の適正な実施ができない』と国会の多数派が決めちゃえばいいわけですよね。自公プラス維新、あるいは希望。希望5人ぐらい、まだ残党いますからね。で、もう議席の三分の二以上とってますから、いくらでも決めちゃえるわけですよ」

永井「たしかにそういうことになりますね……」

岩上「だからこの話は、安保法制の集団的自衛権とセットで考えなきゃいけない。あれ、地理的限定ないじゃないですか。地球規模で動くんですから」

永井「…… 私ね、災害のことばっかり頭にあって(笑)」

岩上「本命はこっちですよ。災害の時に国民を助けるために何かやろうなんて、彼らはちっとも思っちゃいませんから。たしかに、災害のタイミングでこれをやるっていうのも、僕もちょっと引っかかってました。確かに災害は、昔の災害の事を理由にしてもいいんだ」

永井「そうです」

岩上「でも、もはや災害は理由にしないでしょうよ。だって、『災害』に武力攻撃を含んでいるんでしたら、世界のどこかで起こされた武力攻撃を理由にできるんですから。そうでしょう?」

永井「すごい話ですね……」

岩上「時間的・空間的制約がないわけですから。制約がないってすごいことですよね。それを憲法に書いちゃうんですからね」


※1)国民保護法における「武力攻撃災害」という概念:
 「国民保護法」とは「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」の略称。「備えあれば憂いなし」のキャッチフレーズとともに、小泉政権が推進した有事法制立法の一環として、2004年に制定された。
 全10章194条と附則から成り、前年の「武力攻撃事態対処法」にいう「武力攻撃から国民の生命,身体及び財産を保護するため,又は武力攻撃が国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小になるようにするための措置」(第22条1号)について、主に有事に際する国と地方公共団体の役割を規定する。
 だが、こうした「戦後日本の本格的な緊急事態・危機管理法制」としての意義のかたわら、2001年の「9.11同時多発テロ事件」を機に対テロ戦争に乗り出した米軍の「後方支援法・軍事協力法」としての性格 (高野眞澄)を色濃く持ち合わせ、「米国の『予防先制攻撃戦略』に積極的に協力するため、相手方からのあらゆるリアクションに対処するための『楯』の整備をはかるもの」(水島朝穂)などと激しく批判されている。
 何より問題視されたのは、同法第4条の定める「国民の協力」(「第4条 国民は、この法律の規定により国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。」)および「武力攻撃災害」なる造語の導入である。
 「武力攻撃災害」とは、同法第2条第4項によれば「「武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出その他の人的又は物的災害」。つまりは、人為的行為によってもたらされる被害と天災のそれと同じ次元の「災害」として扱っているわけだが、こうした「人間の英知で止められるはずのテロや戦争と台風や地震の自然災害を線引きできなくする発想」(纐纈厚)は、一般の消防や災害救援システムを「軍事的合理性の観点から組み換え」、救援組織や各種訓練への参加についても、ゆくゆくは「戦前の『隣組防空群』と同様、市民生活の相互監視・相互統制機能も果たし」ていく危険性はらむ(以下、引用は水島朝穂)。
 また、同法は「基本的人権の最大限の尊重」(第5条)をうたい、あくまで「協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたることがあってはならない」(第4条第2項)と強調するが、「ことが『武力攻撃』という破壊と殺傷の世界である以上、それに対する対処措置が人権尊重を貫くというのは至難である」うえ、「『敵性』国民のレッテルを貼られる」ことを恐れて個人の良心が曲げられる可能性もある。
 「武力攻撃災害」は、こうして「国家の防衛体制強化のために、国民および自治体が協力するという構図」を作り上げる、まことに危険な概念なのである。
参照:
・Wikipedia「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」【URL】https://bit.ly/2CQ3eD9
・水島朝穂「「国民保護法制」をどう考えるか」『法律時報』2004年5月24日【URL】https://bit.ly/2CA7FBL
・高野眞澄「「国民保護法制」の法的構造」『高松大学紀要』43号、2005年【URL】https://bit.ly/2MhPGzz
・東京新聞「武力攻撃災害訓練って?」2006年8月28日(リンク切れ)
・早稲田大学 水島朝穂のホームページ「直言:「新たな戦前」なのかーー日本国憲法施行70年」2017年5月1日【URL】https://bit.ly/2NteWaM

※2)参議院の緊急集会があるから緊急事態条項は必要ない:
 自民党改憲旧案は、緊急事態宣言発令中は内閣は解散権を制限され、かつ参議院及び衆議院議員の任期を延長できるとしていた(第99条4項「緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし,両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる」)。
 衆議院の解散または任期満了により国会が開けないときに緊急事態が生じ、かつ選挙も実施できなければ事態に対処するための必要な措置を講じられない、だからこうした規定が憲法に必要だというのが改憲派の言い分であるが、現行憲法はまさにそのような事態を想定し、すでにしかるべき仕組みを確立していることは、多くの識者が指摘してきたことである。
 永井幸寿弁護士自身、今回の前のインタビューで、この現行憲法の仕組みについて詳しく語っている。
 衆議院の解散に伴い衆議院議員全員が議員資格を喪失しても、参議院はそのまま残ることは言うまでもない。また、衆院解散が参院の任期満了と重なった場合も、参議院議員は3年ごとの半数改選(第46条)であるに加え、通常選挙は任期満了前30日以内に行われる(公職選挙法32条1項)ため、参議院議員が国会定足数(総議員の3分1)に足りなくなることはあり得ない。
 たしかに、国会は衆参両院が同時に活動することを原則とするため、衆議院の解散とともに参議院も閉会となるが、その時に国会の議決を要する「緊急の必要」が生じた場合に備え、日本国憲法は「参議院の緊急集会」という制度を設けており、内閣の要請を受けて参議院が暫定的に国会の権能を代行できると規定している(第54条第2項)。
参照:
・Wikipedia「参議院の緊急集会」【URL】https://bit.ly/2oQh0vs
・弁護士ドットコム「参議院の緊急集会」【URL】https://bit.ly/2MbTn9W
・いつでも独裁が可能!? いつまでも独裁が可能!? 憲法で堂々と独裁を肯定!? より危険性が高まった自民党新改憲の緊急事態条項!~5.21岩上安身による永井幸寿弁護士インタビュー 2018.5.21【URL】https://iwj.co.jp/wj/open/archives/421982

危険度アップの新「緊急事態条項」とその手口(10)〜衆議院の任期延長に制限がない!?「お手盛り貴族院化条項」!? 緊急事態条項と共に衆議院が終身議員になる!

永井「さらに、その任期延長の特例についてですが、期間の限定がないんです」

岩上「ほおーーー!衆議院の期間の限定がないと!」

永井「さっきも言いましたように、衆議院議員の場合本来は4年、あるいは解散までです。参議院議員だったら6年なんですが、こうした期間の限定がないから、10年20年にできるし、あるいは『終身』ですね。その議員さんが亡くなるまで」

▲特例の期間の限定、災害での必要性

岩上「欠員が出たら選挙やるかもしれないけど、終身議員にしてしまうと」

永井「そういう制度は、例えば大日本帝国憲法の貴族院議員は終身議員だったわけですし、現にあり得るわけです」

岩上「貴族院は、選挙をその都度やってたんじゃないんですか?」

永井「全員じゃないですよ、でも、その中での大方は終身議員でした(※3)」

岩上「終身議員制度って、じゃ、衆議院が緊急事態条項と共に貴族院化するんですか」

永井「そういうことになりますね。いわば『お手盛り貴族院化条項』ですね」

岩上「すごい!『お手盛り貴族院化条項』!」

永井「任期延長論というものは、結局のところ、災害が発生した後に任期を延ばして対策の法律を作ろうという、そういう考え方を前提にしてるんですが、繰り返しますように、準備してないことはできません。つまり、平常時から災害対策のための法律を作っておくことが一番重要なのであって、こんなものはいらないということなんです」

岩上「災害のために考えてるわけじゃないことが見え見えですよね。議会は完全なお飾りになるわけだし。だって、立法権は内閣に渡っちゃうんですから」


※3)貴族院議員の多くが終身任期:
 大日本帝国憲法のもとで衆議院とともに国会(帝国議会)を構成した貴族院。公選議員からなる衆議院に対し、貴族院は「皇族」「華族」(旧公家、旧有力武家、国家功労者などの家柄)および「勅任セラレタル議員」によって組織されるとされ(大日本帝国憲法第34条)、さらに1889(明治22)年2月の「貴族院令」によって次の五種のカテゴリーが定められた。
(1)皇族:
成年(満20歳。皇太子・皇太孫のみ18歳)に達すると自動的に議員となる。
(2)華族のうち公爵・侯爵:
満25歳(大正14年の改正後は満30歳)に達すると自前的に議員となる。
(3)華族のうち伯爵・子爵・男爵:
各々の爵位の満25歳以上の者から互選で選出(伯爵20人以内、子爵と男爵は各73人以内。数度の改正を経て、最終的に大正14年の改正により伯爵18人、子爵66人、男爵66人に)。任期7年。
(4)勅選議員:
「国家に勲労アリ又ハ学識アル者」の中から天皇陛下(実質的には政府)に特に選ばれた、満30歳以上の男子125人以内。終身議員。
(5)高額納税議員:
各府県ごとの高額直接国税者上位15人の中から1名(大正14年の改正以後、庁府県ごとに多額納付者100名につき1名または200名につき2名)を互選で選出。満30歳以上、任期7年。
 これに加えて、大正14年の改正により(6)学士院会員議員(帝国学士院会員より互選される任期7年、満30歳以上の議員4名)が、戦争末期の昭和20年4月には(7)朝鮮・台湾勅撰議員(朝鮮または台湾在住の満30歳以上の男子で、「名望アル者ヨリ特ニ勅任セラレタル者」10人以内、任期7年)がそれぞれ新設されている。貴族院は、こうして当時の上流階級を代表し、天皇制を、そして一部特権支配層をいっそう強固にする役目を果たしたのである。
参照:
・Wikipedia「貴族院 (日本)」【URL】https://bit.ly/2NNohWO
・中野文庫「貴族院令(明治22年勅令第11号)」【URL】https://bit.ly/2PaPVCc
・元京都大学人文科学研究所教授 古屋哲夫の足跡「第五五回帝国議会 貴族院・衆議院解説」【URL】https://bit.ly/2Co5fEo

大災害があっても、現行憲法下の諸制度でほとんどの対処はできる! 立法事実のない国会議員の任期延長には正当性がない!

永井「災害があっても、現行の制度でほとんどの対処はできるわけです。まず憲法の規定から言えば、参議院の通常選挙、つまり任期満了の時の通常選挙の時に大災害があって、選挙が難しくなった場合。この場合、非改選議員が参議院の二分の一います。で、国会の定足数は三分の一なんですね。だから、参議院で審議議決ができるわけです(前出註※2参照)」

▲現行の制度で対処1

岩上「現行憲法はよくできてるってことですね」

永井「はい。現行憲法はよくできてます。それから衆議院の解散後ですね。衆議院がなくなっちゃった時に大災害等があって、総選挙ができなかった場合。そういう時は、さっきから言っているように、参議院の緊急集会、これで国会に代替できる。参議院の緊急集会が、法律、予算、審議議決できるということです」

岩上「なるほど」

永井「あと、ダブル選挙の時。ダブル選挙というのは、参議院議員の任期満了の時に衆議院を解散して、衆参同日選挙を行うようなケースです。この時に災害等で選挙が困難になった場合はどうするか。この時も参議院の緊急集会があります。非改選議員が二分の一いますから、その人達で緊急集会を開き、国会に代替できるわけです。

▲現行制度での対処2

 与党の方がよく言われることに、『衆議院の議員の任期満了で選挙が困難な場合はどうするのか』というものがあります。この場合も参議院の緊急集会ができるんじゃないかと一瞬思ってしまいますが、参議院の緊急集会は、憲法では『衆議院解散の時』と書いてあるわけですね(※4)。だから、衆議院議員の任期満了の時には、文言上は当てはまらないように読めるわけです。

 ただ、衆議院ってしょっちゅう解散してるでしょう?解散しなくていい時も解散していますよね。じっさい、衆議院が任期満了で選挙をやったのは、戦後70年の間に1度しかないんです。三木内閣の時です(※5)。しかも、選挙が困難な程の大災害というものは、2回しか起きてない」

▲三木武夫 元総理(Wikipediaより)

岩上「その2回しかない、選挙が困難な程の大災害というのは、どの災害ですか?」

永井「東日本大震災と阪神淡路大震災です。ただ、あの時は国会議員の選挙の時じゃなかったので、全然それは問題にならなかったんですけどね。地方議会の選挙がちょっと難しくなっただけで(※6)。いずれにしても、そういうものは戦後2回しかなかった。

 だから、稀にしか起きない任期満了による衆議院議員の選挙の時に、更に稀な大災害が重なる確率なんて、ものすごい低いんです。ある計算によると、12万分の1とか、そういう数字なんですよ。ようするに、現実には憲法改正の正当性を支える事実、「立法事実」(※7)といいますが、そういう社会的事実を欠く憲法改正をやろうとしているんです。そもそもニーズがないんですね。

 万が一、そういう稀なことが起きたとしても、この「参議院の緊急集会」というものは、衆議院が解散されて国会が機能しない時に、参議院を一時的に国会に代替させるという制度ですから、その趣旨からすれば、衆議院の解散であろうと、任期満了であろうと、衆議院議員がいなくて国会が機能しない点では同じなんですね。だから、その場合にこれを準用すればいいと」

岩上「全然問題ないですよね。細かい事を言う必要もないくらい」

永井「ないですね。そうなんです」

岩上「参議院で代替すればいい、だけの話ですよね」

永井「はい。まず起こらない。起こったとしてもそれ使えばいいじゃないかという話です」

岩上「現行憲法の文言がちょっと不明確だというなら、『万が一の時もそれを準用することができる』というふうに一言入れる。そういう微修正だったらいいんですがね」

永井「万が一憲法改正するのであれば、です」

岩上「あるいは憲法改正でなくてもいいんじゃないですか?それは法律レベルではできませんか?」

永井「法律レベルでは、できなくはないと思いますが、やっぱり憲法の文言があるので…でも、準用であれば、解釈上ということで、法律も作る必要はないと思うんです」

岩上「ああ、そうか。解釈でいいんですよね。では、内閣法制局に、ひとつよろしくお願いしましょうかね。最近権威なくなりましたけど(笑)(※8)」

永井「こうやって憲法でも対処できますが、法律の規定でもちゃんと対処できるようになっています。公職選挙法という法律で、任期満了時の際の選挙の方法が書いてあるんですが、任期満了の時は『選挙をその任期満了の30日前までにしときなさい』という規定があります(※9)。つまり、任期満了の時にドカンと災害が起きても、次の議員さんはもう選ばれているんですよ。

 それから『繰り延べ投票』と言って、『天災等の事故で投票ができないときは、都道府県の選挙管理委員会は期日を延期できる』という規定があります(※10)。これで十分対処できちゃいます」

▲現行での対処3

岩上「十分ですよね」

永井「さらには、法律の改正・制定によって早期の選挙実現方法の工夫ができます。憲法47条で『両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める』と書いてありますから、法律で定めてやればいい」

▲現行制度での対処4

岩上「例えばどんな工夫が考えられるのですか」

永井「住所を離れた被災者に対しては、公職選挙法改正して郵便投票の制度を導入するとか。今、障害のある方だけを対象にしています(※11)が、これを被災者にも拡大するとか、そういう形で対処する事は可能です。ようするに、すでに現行の憲法と法律で十分対処可能だということなんです」

岩上「なるほど……」


※4)参議院の緊急集会について、憲法は「衆議院解散の時」と書いてあるが…:
 「日本国憲法第54条第2項
 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」
 このように、「参議院の緊急集会」を定める日本国憲法第54条第2項の条文は、その要件としては「衆議院が解散されたとき」としか述べておらず、衆議院の任期満了に伴う同様の事態では「緊急集会」は開けないとする主張もある。改憲派もまさにこの点を以て現行憲法の「不備」としているふしがあるが、それも条文解釈次第で、あるいは公職選挙法第31条を用いた「任期満了」を「解散」にしてしまう方法で、やすやすとクリアできるとのこと。
 そもそも「衆議院議員の任期満了による選挙」ということそれ自体、1976年12月の第34回衆院総選挙が唯一の例という非常に稀なケース(次註※5参照)であり、改憲および緊急事態条項導入の正当な理由にはなり得ない。
参照:
・Wikipedia「参議院の緊急集会」【URL】https://bit.ly/2oQh0vs
・弁護士ドットコム「参議院の緊急集会」【URL】https://bit.ly/2MbTn9W
・マガジン9「「お試し改憲」ではすまされない!?危険で不必要な「国会議員の任期延長 小口幸人(弁護士)」2016年7月20日【URL】https://bit.ly/2N2dson
・日本弁護士連合会「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書 2017年(平成29年)2月17日」【URL】http://bit.ly/2FxaepH

※5)衆議院が任期満了で選挙を行ったのは、戦後70年の間にただ1度:
 三木武夫内閣時の1976年12月5日に実施された、第34回衆議院議員総選挙のこと。
 大抵の政権は、支持率が上昇した時など選挙で勝てると判断した時に任期満了前の衆議院を解散し、総選挙に持ち込んで政権の長期安定化や強化、法案の成立などを企図するが、このときは同年2月に発覚した「ロッキード事件」(アメリカの大手航空機メーカー、ロッキード社の大型旅客機の売り込みにさいし、巨額の賄賂が政界に流れた戦後最大の疑獄事件。田中角栄・前総理大臣の関与で大問題となった)に厳しい態度で臨む三木首相に対して自民党内で倒閣運動(「三木おろし」)が激化しており、三木首相は解散権行使を阻止されたまま衆議院の任期満了を迎えることになった。
 結果、自民党は過半数割れの大敗。保守系無所属の当選者を追加公認してかろうじて過半数を確保したものの、三木内閣は退陣を余儀なくされた。
 なお、こうした任期満了による衆院総選挙は、この第34回衆議院議員総選挙以前も大日本帝国憲法下の4例(1902年、1908年、1912年、1942年)しかなく、きわめて稀なケースであることがわかる。
参照:
・Wikipedia「第34回衆議院議員総選挙」【URL】https://bit.ly/2ycjqd9
・毎日新聞「1976年衆院選 任期満了のロッキード選挙」2016年9月1日【URL】https://bit.ly/2y0sTUA
・Wikipedia「三木おろし」【URL】https://bit.ly/2NmWaOd

※6)阪神淡路大震災・東日本大震災の際の選挙:
 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災によって甚大な被害を受けた兵庫県では、4月9日に予定されていた兵庫県議会議員選挙(第13回統一地方選挙)が、「阪神・淡路大震災に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律(平成7年3月13日法律第25号)」によって2か月延期された。
 2011年3月11日の東日本大震災においても、翌月に第17回地方選挙が控えていたが、「平成二十三年東北地方太平洋沖地震に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律(平成23年3月22日法律第2号)」が制定され、被災県(岩手、宮城、福島、茨城)内の選挙期日を最長9月22日まで延期(その後法改正により12月31日まで再延期)できるようにしている。
参照:
・Wikipedia「繰り延べ投票」【URL】https://bit.ly/2pBOqP2
・Wikipedia「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律」【URL】https://bit.ly/2BXnMY0

※7)立法事実:
 法律や条例、憲法解釈の変更など、あらゆる法規範の制定・改廃に際して求められる、その法の必要性や合理性を根拠づける「社会的、経済的、政治的もしくは科学的事実」(芦部信喜)のこと。
 国民への説明責任を果たせるよう、また、場合によっては裁判所の審査に耐えられる主張ができるよう、行政の実態調査や各種統計はもちろん、判例・学説の動向、他の法令との関係なども精査したうえで提示されねばならないとされる。
 安倍政権は2014年7月1日、そうした立法事実を欠いたまま解釈改憲により集団的自衛権を容認、2015年9月に安保法制成立を強行した。すなわち、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」があり、かつ「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない」ケースを想定してとのことだが、日本が武力攻撃を受けない局面で国内の日本人が直接死の危険に晒されるようなことはまず考えられないうえ、仮にそのような事態が生じても個別的自衛権の行使や外交努力で対処できるため、集団的自衛権容認に関する「立法事実」は不存在であると指摘されていた。
 そのうえ、安倍政権は「昭和47年政府見解」が「限定的な集団的自衛権行使」の法理を容認していたとも主張したが、それがでっち上げだったことも判明している。
 加えて、最近では憲法9条に自衛隊を明記する改憲案について、「(自衛隊を明記した場合にも)任務や権限に変更が生じることはない」(安倍総理、2018年1月24日衆院本会議)にもかかわらずこれを強行しようとしており、「自衛隊の役割が変わらないなら立法事実がない」(希望・玉木雄一郎議員ほか)と野党から激しい反発を招いている。
参照:
・Yahoo!ニュース「「立法事実」を考えるーその法律はなぜ必要なのか?」2014年7月18日【URL】https://bit.ly/2RFCyYN
・小西ひろゆき『私たちの平和憲法と解釈改憲のからくり』「第三章 からくりその3 「立法事実」のでっちあげ」【URL】https://bit.ly/2OQYTnU
・毎日新聞「衆院代表質問「改憲、幅広く合意を」首相、議論前進期待」2018年1月24日【URL】https://bit.ly/2C6z6kJ
・民進党HP「「憲法改正論議にはうそを言わない真摯な受け答えを」安倍答弁に大塚代表苦言」2018年1月25日【URL】https://bit.ly/2E8pHfb

※8)内閣法制局:
 内閣のもとで法案や法制についての審査・調査等を行う機関。職員数(定員)は77人。
 1875年、太政官正院に設置されていた「法制課」を改組して発足した「法制局」が、1885年における内閣制度発足の際、内閣による国務の統一を確保するための補助機関であった参事院の権限を引きつぎ、内閣の一組織としてスタートしたことに始まる。
 戦後、現行日本国憲法によって裁判所に違憲立法審査権が付与されたことにともない、1948年に司法省と統合されて「法務庁」に、翌1949年には改組されて「法務府」となったが、1952年4月に平和条約が発効し日本が独立を回復すると「法務府」は解体され、法務省と分離して内閣下の「法制局」が復活。1962年、「内閣法制局設置法」の制定とともに現在の「内閣法制局」となった。
 内閣が任命する内閣法制局長官を長とし(内閣法制局設置法第二条)、主として次のような事務を行う。
(1)閣議に付される法律案、政令案および条約案を事前審査。これに意見を付すとともに、必要な修正を加えて内閣に上申する(第三条一号)
(2)法律案および政令案を立案し、内閣に上申する(同条二号)
(3)法律問題について、内閣・内閣総理大臣・各省大臣に意見具申する(同条三号)
(4)国内外の法制や国際法制についての調査・研究を行う(同条四号)
(5)その他法制一般に関することを審査、調査、研究する(同条五号)
 こうした業務はさらに、審査・調査される法の適用領域や性質に応じ、四つの部局に割り振られる。すなわち、法制一般を扱う事務は第一部が、内閣、内閣府、法務省、文部科学省、国土交通省、防衛省等の所管に属する法律案および政令案の事務は第二部が、金融庁、総務省、外務省、財務省等の所管に属する法律案および政令案の事務は第三部が、そして、公正取引委員会、公害等調整委員会、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省等の所管に属する法律案および政令案の事務は第四部が、それぞれ担当する。
 このような責務に加え、法律上の明確な規定はないものの、内閣法制局には事実上憲法解釈の権限が与えられている。条文は、各省庁において憲法解釈に疑義や争いがあった場合、求めに応じて意見を聴取するとともに法制局内で議論・検討し、意見を付すと定めるにとどまっているが、内閣法制局による憲法解釈についての意見具申は行政府内における憲法解釈の統一を図るという観点からなされるがゆえに、法的拘束力はなくとも「政治的拘束力」を有するものとして最大限に尊重され、内閣によって採用されることが慣習化している。
 その憲法解釈は厳格であり、解釈の変更は原則として認めないという態度を貫いてきたため、内閣法制局は「法の番人」とも呼ばれてきた。ところが、安倍政権はこの内閣法制局長官を交替させ、意のままに憲法を改変しようとし始めた。
 すなわち、安倍政権は2013年8月、内閣法制局の慣例(総務主幹→第二部~第四部(審査部)のいずれかの部長→第一部(意見部)の部長→次長→長官、という出世コースを辿り、長官と次長には法務省、旧大蔵省、旧通産省、旧自治省いずれかの省の出身者が就く習わしになっていた)を無視し、解釈改憲で集団的自衛権行使を容認できると言っていた外務官僚の小松一郎氏を長官に抜擢。憲法解釈そのものを変えさせたうえで、国家安全保障基本法制定を強行するという暴挙に出たのである。
 以来、内閣法制局の「法の番人」としての権威は失墜し、権力の手足に成り下がっている。
参照:
・Wikipedia「内閣法制局」【URL】http://bit.ly/1HBU2JN
・「内閣法制局の憲法解釈権限(1)」弁護士川口創のブログ【URL】http://bit.ly/1bZ5LIw
・週刊金曜日オンライン「安倍政権が“忖度”か?ーー内閣法制局で異例人事」2017年4月26日【URL】https://bit.ly/2CPQ1IE
・週刊金曜日オンライン「横畠内閣法制局長官に執着する安倍政権」2018年4月26日【URL】https://bit.ly/2P3dDRC

※9)選挙は任期満了の30日までに行われる:
 公職選挙法第32条第1項に定めのある、衆議院の任期満了時の選挙に関する規定。条文は次のとおり:「第三十二条 参議院議員の通常選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う」。
参照:e-Gov法令検索「公職選挙法」【URL】https://bit.ly/2KjtNAu

※10)繰り延べ投票:
 公職選挙法第57条に定めのある、「天災その他避けることのできない事故により、投票所において、投票を行うことができないとき」に、選挙管理委員会が「更に期日を定めて投票を行」えるようにする制度のこと。
 国政選挙での実施例は同法施行以後では2回。すなわち、1965年の参議院選の際に熊本県五木村全域および坂本村の一部が、また、1974年の参議院選の際の三重県御薗村全域および伊勢市の一部が、各々集中豪雨により1週間の繰り延べ投票が実施されている。地方選挙のケースとしては、台風の影響による1992年8月の沖縄県竹富町議補選、2004年6月の鹿児島県住用村の村長のリコールに伴う住民投票、2012年8月の鹿児島県和泊町(沖永良部島)、知名町(同)、与論町(与論島)各議会選と沖縄県竹富町長選、2014年10月の沖縄県豊見城市長選が、また、チリ地震発生後の大津波警報による2010年2月の青森県のおいらせ町長選などが挙げられる。
 なお、阪神・淡路大震災および東日本大震災の際の選挙期日延期(前出註※6参照)は、この公職選挙法第57条ではなく、同法の特別法である「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律」のさらに特別措置法という位置付けの臨時特特例法による。
参照:
・Wikipedia「繰り延べ投票」【URL】https://bit.ly/2pBOqP2
・選挙ドットコム「台風直撃で投票時間・投票日が変わる? 「早まる」「延期」などにご注意を!」2017年10月20日【URL】https://bit.ly/2PhBYiE

※11)郵便投票制度:
 不在者投票制度を定める公職選挙法第49条は、障害の度合いが重く投票所まで足を運ぶのが困難な身体障害者や要介護者について、「その現在する場所において投票用紙に投票の記載」を行い、「郵便又は民間事業者による信書」便によってこれを不在者投票管理者に提出できるとしている(第2項)。
 現在、「両下肢、体幹、移動機能の障害の程度が1級又は2級」「心臓、じん臓、呼吸器、ぼうこう、直腸、小腸の障害の程度が1級又は3級」「免疫、肝臓の障害の程度が1級から3級」と認定され身体障害者手帳にその旨記載のある人、または介護保険の被保険者証の要介護状態区分が「要介護5」の人が対象であり、次のような手続きで行われる。
(1)投票に先立ち、有権者本人が署名をした申請書と身体障害者手帳または介護保険の被保険者証を添えて、名簿登録地の市区町村の選挙管理委員会に「郵便等投票証明書」の交付を申請する。
(2)次に、本人が署名をした請求書に(1)で受け取った「郵便等投票証明書」を添えて、選挙管理委員会に「投票用紙」と「投票用封筒」を請求する。
(3)自宅等の現在する場所で、選挙管理委員会から郵便等により送付された「投票用紙」に候補者名を記載し、同「投票用封筒」に入れて表面に署名、選挙管理委員会に郵便等により送付する。
 こうして不在者投票された封筒は、その有権者の属する投票区にある投票所に送られ、投票日に投票立会人の確認のもとで開封される。そして取り出された投票用紙を、投票管理人が投票箱に投票する。
参照:
・e-Gov法令検索「公職選挙法」【URL】https://bit.ly/2Np799P
・Wikipedia「不在者投票制度」【URL】https://bit.ly/2y134DK
・総務省HP「郵便等による不在者投票」【URL】https://bit.ly/2DY5Uil

災害が起きた時は、被災者・被災現場に一番近い市町村が、その対策に従って行動する、というのが災害対策の本来の原則!「国家緊急権がなかったから被災者を助けられなかった」などという真っ赤なウソで、災害をダシにして憲法を変えてはいけない!

永井「私らからすれば、災害対策というものは現場が一番大事なんですね。目の前にいる被災者をどうやって救済するかというのが、すべての出発点なんです。国家にどんな権力を持たせるかが出発点じゃない。

 被災者の話を聞いて、被災地を自分の足で歩いて、そして被災自治体から話を聞いて、そこでの問題点を抽出して、将来の対策を立てる。で、災害が起きた時は、被災者に一番近い市町村が、その対策に従って行動する、というのが災害対策の本来の原則なんです。『災害をダシにして憲法変えてはいけない』というのは、東日本大震災の被災者の言葉です。これはぜひ、皆さんに理解していただきたい」

▲災害対策の方法

岩上「実際にお会いになった方が、そういう風におっしゃっていたのですね?」

永井「はい」

岩上「そうなんです。実はダシにされてるんです。で、まだダシを取ろうとしてるんですね。もう、二番ダシ三番ダシのようにね、ダシにしてるんですけど。でも、『災害』という言葉に『武力攻撃災害』という概念が込められているということがわかった今、もうそこが狙い。災害論はほとんど無意味!ということです。

 ちょっと前までなら、先生、例えば櫻井よしこさんとかね、ああいうような人達は、いかに国家緊急権が必要かを言おうとして、『東日本大震災の時に、緊急事態条項があれば、死ななくていい命が助かったんです』と(※12)。でも、全部嘘ですよね。これはデマですよ。倒壊したたくさんの建物をパーッとどかして、車両を通せるようにするために、国家緊急権が必要なんだ。そういう法律がなかったために、どれだけたくさんの命が失われたか、なんて言っていますが、これ、嘘でしょう?」

永井「そんなこと聞いたことないですよ。私、23年被災者支援やってますけど、聞いたことありません。そういうことが仮にあったのなら、いつどこの災害で、どの場所であったのか、知りたいです。

 例えば、建物の中に人が閉じ込められていたとしましょう。建物壊さなければ命が助けられないのであれば、平時だったら建造物損壊罪とかに問われて、民事上の損害賠償責任も発生するんでしょうけど、緊急避難とか正当防衛ということで、建造物損壊罪にならないし、賠償責任も負いません(※13)」

岩上「道に崩れ落ちていた瓦礫を片付けられなかったために緊急車両が通れなかった、なんていうのは、あり得ない話ですよね?」

永井「あり得ない」

岩上「みんな必ずやってますよね?そんなこと」

永井「やってますし、災害対策基本法に根拠法令がありますから。法律知らなくても皆、助けに行ったりした時には、ぶち壊して助けますよ。法律も常識に適うようになってますから」

岩上「阪神大震災、それから東日本大震災、最近の熊本、あらゆる災害現場で、どこでもまず最初にやるのは、道のかき分けですよね。そして、車両通すようにしています。あれが通せなかったのは『国家緊急権がなかったからだ』なんて、 嘘に決まっているじゃないですか。真っ赤な嘘を言ってるわけですよ。櫻井さんたちは日本会議の憲法集会等でずーっとそういうデマを言い続けてきたんです。

 災害をダシに憲法を変えようと、彼らはそうやって何度も何度もダシを取り続けて来たんですが、ところが最近ですね、ダシを取らなくてもいいようになってきてるんです。ストレートに独裁について語るようになってきてるんですよ」


※12)櫻井よしこ氏「東日本大震災の時に、緊急事態条項があれば、死ななくていい命が助かった」:
 2016年の憲法記念日に都内で開かれた、「すみやかな憲法改正発議の実現を!――各党に緊急事態に対応する憲法論議を提唱する」と題した日本会議系の集会において、演壇に立った櫻井よしこ氏が展開したトンデモ論。
 櫻井氏によれば、日本国憲法に財産権の保障規定があるために、現場で被災者の救出作業に当たった人々は、瓦礫や残された車、荷物の撤去に躊躇いを感じ、緊急道路の建設が遅れた。そのために救出が遅れ、数多くの犠牲者が出たという。
 要するに、緊急事態条項を持たない日本国憲法のせいで、人命救助に尽力した人々の努力は無駄にされ、助けを待つ人々は虚しく命を落としたというわけだが、永井氏をはじめ多くの識者が指摘するとおり、日本国憲法は、法律で財産権に一定の制限を加えることを認めており(第29条「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」)、これにもとづいてすでに十分な災害法制が整備されている。
 したがって、たとえば災害対策基本法第64条第2項(「市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生 しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、現場の災害を受けた工作物又は物件で当該応急措置の実施の支障となるものの除去その他必要な措置をとることができる」)を適用すれば、「車や荷物」の所有者の同意を得ずに瓦礫置き場に移動させることができるほか、市場価値がないと判断される場合はそれらを廃棄することができる。
 そもそも、憲法の定める所有権に抵触することを恐れて救出作業が進まなかったとは、「複数の証言」にもとづくと櫻井氏は言うが、その「証言」はどこで誰が得たものか一切明らかにしておらず、むしろ日弁連毎日新聞社が実施した被災地アンケートでは、「憲法が災害対応の障害になった」と答えた自治体はほとんどない。
 自分たちに事が都合よく運ぶよう、櫻井氏が被災者をダシにしたのであることは明白であり、犠牲者の無念はいかばかりかと言わんばかりに時折見せた、その涙ぐむ仕草は、偽善をとおり越して邪悪ささえ感じさせる。
参照:IWJ「『3.11では助けることのできる命が助からなかった』――自称『ジャーナリスト』の櫻井よしこ氏が事実無根のデタラメで改憲による『緊急事態条項創設』を煽動! 日本会議系集会で~根拠なきプロパガンダに永井幸寿弁護士が徹底反論!(前編) 2016.5.3」【URL】https://bit.ly/2NHXUCr

※13)緊急避難や正当防衛であれば建造物損壊罪に問われない:
 「建造物等損壊罪」とは、刑法260条に定めのある、「他人の建造物又は艦船を損壊」(物理的意味にとどまらず、心理的に使用できなくすることも含め「その物の効用を害する行為」全般をいう)した者に「5年以下の懲役」を課す罪であるが、故意犯に対する罰則のみで過失で建造物を損壊させた場合は犯罪には問われない。
 刑法はまた、「正当防衛」(第36条)および「緊急避難」(第37条)についても規定しており、前者なら他人による「急迫不正の侵害」に対して、後者であれば他人の物から生じた「現在の危難」に対して、各々「生命、身体、自由又は財産」といった「自己又は他人の権利を防衛する」ために「やむを得ずにした行為」はこれを「罰しない」としている。
 民法においても、「正当防衛」および「緊急避難」にともなう行為については、建物や器物の損壊に対する賠償責任を問わない旨の規定がある(民法第720条)。
参照:
・Wikipedia「建造物等損壊罪」【URL】https://bit.ly/2yb0VFL
・Wikipedia「正当防衛」【URL】https://bit.ly/2E7kPH8
・Wikipedia「緊急避難」【URL】https://bit.ly/2OESSdV
・宅建通信学院 サイバー六法「民法720条(正当防衛及び緊急避難)」【URL】https://bit.ly/2Rwl2X0

改憲アピールと連動して行われる「独裁バンザイ」のプロパガンダ(1)〜NHKの岩田明子解説委員、ドゥテルテ比大統領の麻薬撲滅対策=超法規的殺人を「成功」と評し、公共放送で独裁を堂々肯定!?

岩上「ここへきて、急に『独裁バンザイ』の声が出てきているんです。この点を、皆さん気付いてない。こんなこと、それぞれバラバラに活動をやっていて、こんなふうにふっと横並びにできるもんじゃありません。これはやっぱり、足並み揃えているんですよ。安倍政治を支える独裁擁護論者たちというものは、お馴染みの面々なわけです。

 例えばNHKの岩田明子さん。もはや『岩田明子閣下』と呼んだ方がいいんじゃないかなと思うんですけど、この方、4月30日放送のMHKの解説委員による討論番組『解説スタジアム』に出演してですね、なんとフィリピンのドゥテルテ大統領の麻薬対策に言及し、『独裁者のレッテルを貼られているが、成功した例』と、突然そんな事を言い出した(※14)」

▲ドゥテルテ比大統領は「独裁者のレッテルを貼られているが、成功した例」独裁を堂々と肯定し始めたNHKの岩田明子解説委員

永井「成功してないですよ。あんなに基本的人権害して。無茶苦茶ですよ。あれは失敗例ですね。とんでもない話ですよ」

岩上「『中国とも上手くやり、日本からも金を引き出し、すごく上手な外交をやり、国権を強化し、実に巧みな政治家だ』と。でもね、『成功した』と賞賛したのが麻薬対策ですよ!? ドゥテルテがやった麻薬犯罪の対応策って、容疑者を超法規的に殺人、つまりその場で殺していったわけです(※15)。これは、法治主義に著しく反する政策ですよね。

 ドゥテルテの政策で、例えば外交の大胆さとか、見るべきものがあるのも確かかもしれないですけど、問題のある麻薬対策をわざわざ賞揚します?『良い独裁者』と言わんばかりに?」

永井「『良い独裁者』…とんでもない!」

岩上「岩田さんはそうやって独裁を肯定し始めたんです。もちろんNHKがこれを流していいと思ってやってるわけですよ」

永井「うわあ…」

岩上「NHKは一記者の話をなんとなく垂れ流す流すような、そんな局じゃありません。原稿は全部上層部のチェックが入っていて、一番上まで通ったものを流す。下の記者が本当に頑張って、本当に良いニュースが出ても、編集局長がボコボコボコボコ、毎日毎日、もぐら叩きのように良いニュースを潰してる。NHKっていうのは、そういう所なんです。

 本当に官邸にとってダメージになるような、例えばモリカケでも、NHKは日本で最大の報道陣容を誇りますからね、その記者たちが本気で動けば、いろんなスクープを取ってくるんですけれど、全部叩き潰して、自社では流さない。

 加計学園問題は朝日が一番最初にスクープをしたと言われていますけれども、例えば前川さんのインタビュー、一番最初に撮ったのはNHKなんですよ(※16)。なのに、いまだにお蔵入りなんです。政権に都合の悪いことは、こうやって全部潰してる」

永井「ひどいですね」

岩上「すべて、小池報道局長というたった一人の人物のもとに行くんです。この人がポンポンポンポンと潰していく。官邸に電話をかけまくっては、『これはいけますか、いけませんか?』と了解を取っているとのもっぱらの話です(※17)」

永井「仮にそうだったらば、憲法違反ですよ、憲法21条に違反します(※18)」

岩上「『仮に』じゃありません、事実なんです。憲法違反なら、違憲訴訟やりましょうよ。本当にもう危機的状況ですよ。こうやって言わせ始めたのが『独裁バンザイ』ですよ!? これがどういう意味を持っているか、皆さんよく考えてもらいたい」


※14)NHKの岩田明子氏、『解説スタジアム』でドゥテルテ比大統領の「独裁」を称揚:
 『解説スタジアム』とは、基本的に祝日の午前中に放送される、NHK解説委員による討論番組。毎回タイムリーな政治的・社会的テーマをひとつ取り上げ、それについて出演者たちが各々の見解を披瀝し合う。
 ここで言及されているのは、2018年4月30日(月・振替休日)午前11時放送の同番組。西川吉郎解説委員長と岩渕梢アナの司会のもと、「平成が終わるまでに考えておきたいこと“力と民主主義”」をテーマに、石川一洋・出石直・伊藤雅之・岩田明子・土屋敏之・別府正一郎・百瀬好道の各解説委員が意見を述べあった。
 岩田氏の問題発言は、冷戦終結とともに始まった平成の30年の歩みのなかで世界は強権化へ向かい、民主主義が大きく揺らいでいることに話題が及んだその時に飛び出した。
 「フィリピンのドゥテルテ大統領はかなり強権的なイメージで誕生しましたけれども、やっていることというのは、まず国内で深刻な麻薬対策ですね。この被害者の救出。それから中国とうまく交渉して資金を引っ張り、日本とも良い関係を築いて資金を引っ張り、それでいて中国の船は追っ払い、かなり国益をもたらしているという。独裁者のレッテルを貼られていますけれども、成功した例とも言えるのではないかなと」
 国益をもたらす独裁ならばそれは「良い独裁」といわんばかりの主張に、隣に座っていた別府解説委員がすかさず(ソフトなやり方で)たしなめたほか、国民からも批判の声が巻き起こった。
 ドゥテルテ大統領は麻薬犯罪撲滅対策として超法規的殺人を実施し、国際的に激しい非難を浴びている人物。
 岩田氏は安倍総理に最も近い記者のひとりと言われ、放送で安倍総理を擁護する発言を繰り返すことで知られるが、ここでもまた、民主主義を否定し明らかに「独裁」を志向している安倍政権を正当化しようとしたのであろうとは想像に難くなく、「公共放送として見過ごすことができない」と国会でも問題視された(2018年6月7日参議院・総務委員会(NHK決算報告)立憲民主党・杉尾秀哉議員)。
参照:
・NHK「解説委員室 解説スタジアム バックナンバー『平成が終わるまでに考えておきたいこと“力と民主主義”』」【URL】https://bit.ly/2CaK4Wi
・LITERA「NHK岩田明子、櫻井よしこら安倍応援団が『良い独裁もある』と大合唱!トンデモ論で安倍独裁政治を正当化」2018年5月10日【URL】https://bit.ly/2OZTiLS
・国会会議録検索システム「【005/007】196-参-総務委員会-12号 平成30年06月07日」【URL】https://bit.ly/2CIfAME

※15)ドゥテルテ大統領による超法規的殺人:
 麻薬撲滅を掲げてフィリピン大統領に当選したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、「人権は犯罪者を守る言い訳にはならない」との考えにもとづき、超法規的なやり方で麻薬犯罪者を一掃する政策を2016年6月30日の就任直後から実施してきた。
 すなわち、麻薬犯罪の容疑者を裁判にかけることなく逮捕の現場で射殺するというもので、就任後2ヶ月余りで殺害件数は警察当局の発表だけでも1800人。7ヶ月後には7000人以上に達したという。
 フィリピン国内の治安改善に役立ったかもしれないが、このような殺害は国際法や国際基準が禁止する人権蹂躙であり、アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウオッチ等の人権団体が虐殺の即時中止を繰り返し求めてきたほか、国際社会からも非難の声が上がっている。
参照:
・Wikipedia「ロドリゴ・ドゥテルテ」【URL】https://bit.ly/2Ds9dN3
・ロイター「フィリピン大統領が麻薬撲滅対策、施政方針演説で決意」2016年7月26日【URL】https://bit.ly/2zie5kJ
・ロイター「フィリピン、麻薬絡みの殺人1800件に 大統領就任後=国家警察」2016年8月23日【URL】https://bit.ly/2KhrGNB
・ブルームバーグ「就任から1年のドゥテルテ大統領、麻薬撲滅への戦い続く」2017年7月4日【URL】https://bit.ly/2KgrVZ7

※16)加計学園問題を一番最初にスクープしていたのはNHK:
 安倍総理の「腹心の友」が理事長を務める学校法人加計学園の獣医学部新設計画について、これが早期に実現するよう官邸が文科省に圧力をかけていたことを裏付ける文科省の内部文書、いわゆる「総理のご意向文書」。
 2017年5月17日の朝日新聞朝刊が一面でスクープ、同25日に前川喜平・前文部科学事務次官が記者会見でその存在を証言し、安倍政権のもとでいかに「行政がゆがめられ」ているか、その事実が世に広く知れ渡るきっかけとなったわけだが、前川氏はこれを「最初に“スクープ”していたのはNHKだった」ことを明かしている。
 5月の大型連休前に自宅前でNHKの取材陣に捕まり、カメラの前で話す羽目になったが、そこに来たNHKの記者は「かなり早い時期に、恐らく現役の職員から内部文書を入手していたようで、その後に朝日新聞が確認に来た時に持っていたものも、それよりももっと詳しいものも持っていた」とのこと。
 NHKはこの取材をすぐには報じず、ようやく朝日報道の前日の5月16日の深夜、「大学設置委員会による審査中の加計学園獣医学部新設について実地調査が行われることになった」などと報じるニュース(「ニュースチェック11」)の中で、ほんの一瞬、圧力文書を映した映像を流した。それも、映像の文書について説明は一切なく、しかも「官邸の最高レベルが言っている」という部分は黒塗りにされていた。
 どこよりも先んじて得た情報を報じず、しかも文書は映すが肝心なところは黒塗りという事態に、前川氏は「上からの圧力があったのでしょう。私に接触してきた記者さんは、ものすごく悔しがっていました」と語りつつ、第一報の栄誉をみすみす逃したNHK記者の心情に思いを寄せている。
 なお、これらはすべて、安倍政権との密接なつながりが指摘される小池報道局長(後註※17参照)の指示だったと報じられている。
参照:
・日経ビジネスONLINE「前川喜平氏独白「NHKや読売新聞には同情する」ーーみんな組織で四苦八苦しながら生きている」2017年9月7日【URL】 http://nkbp.jp/2pxReNf
・毎日新聞「メディア時評 際立つNHKの消極姿勢=浮田哲・羽衣国際大教授(メディア論)」 2017年6月1日【URL】 https://bit.ly/2rrqFcA
・NEWSポストセブン「NHK記者 “官邸の最高レベル”スクープを不発弾にされ不満」2017年6月12日【URL】 https://bit.ly/2tfppZA
・IWJ「『読売記事は官邸の関与あった』『NHKはいまだに私のインタビューを報じていない』〜前川喜平・元文科事務次官が再び会見!『権力と報道』の危険な関係に危機感示すも記者クラブの記者らは完全スルー! 2017.6.23」
【URL】 https://bit.ly/2o1lrD2

※17)小池局長:
 小池英夫氏はNHKの報道局長。2017年4月の人事異動で報道局編集主幹から報道局長に就任した。
 政治部で長く自民党を担当、政治部長も務めたこともあって、安倍政権との太いパイプを有することが知られる。政権に都合の悪いネタや要素を削るよう、『ニュース7』『おはよう日本』『ニュースウオッチ9』『ニュースチェック11』といったニュース番組の編集責任者たちを5階の自室から電話で呼びつけたり指示を飛ばしてきたりするといい、部下に対して非常に厳しい態度をとることもあって、NHKニュースセンターの中では「Kアラート」(「K」は小池氏のイニシャルと思われる)と呼ばれ恐れられているとのこと。
 森友学園問題にまつわる安倍昭恵夫人の「いい土地なので前に進めてください」発言の削除や、自殺した近畿財務局職員が残したメモのスクープのトップニュース外し、加計学園問題では前川喜平氏への最初のインタビュー封印、文科省に対する官邸の圧力文書(「総理のご意向」文書)に記載されていた「官邸の最高レベル」という衝撃的文言の黒塗りなどが、この「Kアラート」によるものという。
 その他にも、天皇退位についてや防衛省日報問題など、官邸の意向に沿わないようなニュースに対してことごとく口を挟んでくるというが、その小池局長が直接やりとりをしているのが、安倍総理の懐刀とも称される今井尚也秘書官であると報じられている。
参照:
・デイリー新潮「「みなさまの声」より「官邸の声」 NHK報道局長の“忖度”放送」週刊新潮 2018年4月19日号【URL】https://bit.ly/2PlQFkq
・NEWSポストセブン「NHK記者 “官邸の最高レベル”スクープを不発弾にされ不満」2017年6月12日【URL】https://bit.ly/2y8Fe9h

※18)憲法第21条:
 思想や意見、感情などを外部に向かって表現したり発表したりする際に、国家権力によってその内容を制限されたり禁止されたりしないこと、いわゆる「表現の自由」を定める憲法規定。
 条文は次のとおり。「第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」
参照:
・Wikipedia「日本国憲法第21条」【URL】https://bit.ly/2y5ffj4
・Wikipedia「表現の自由」【URL】https://bit.ly/23IuUjR

記者たちの「粛清」が始まっている!? 森友問題でスクープを連発していたNHKのA記者は窓際に左遷!

岩上「森友問題でスクープを連発していたあるNHK記者のことをお話しましょう。僕も本当によく知っている人で、詳しくは明かしませんが、NHK大阪放送局の報道部の副部長に当たる記者です。この人が誰だかもう特定されていますから、イニシャルAさんと言っていいでしょう(※19)。

 4月4日のNHK WEBに、『財務省が森友側に口裏合わせを求めた疑い』という、例の問題で、『「トラックを何千台も使ってゴミを撤去したと言ってほしい」などと、嘘の説明をするようにするよう求めていたことが関係者の取材でわかった』という記事が出ました。Aさんのスクープですが、これを出すために彼がどれだけ苦労したか。それはもう、局内で潰されないように、秘匿しながら秘匿しながら、ある日やっとねじ込んだんですよ。

 ところが、局内では『なんて事をしてくれたんだ!』ってことになって。それはもう、すごく一生懸命やった揚げ句、そんなことになって、もう『異動させられるかもしれない』と本人は感じるようになっていた。

 そしてやっぱり、6月8日付で記者職から『考査室』へ異動のお達しが…ここは日々のニュースのチェックをやるだけの、全くの窓際です。Aさん、エース記者ですよ?」

▲森友問題でスクープを連発していたNHK記者が記者職から「考査室」へ「左遷」!

永井「ひどいですね……」

岩上「彼は本当にいい仕事をし続けたからこそ、いつも怒られていたんです。いつも目を付けられていたんですよ。そして、『ここは抜いたぞ!』といって、ついにスクープを出した。その結果が、事実上の左遷です。

 でも、こういうことは、NHK局内ではもはや常識です。つまり、真面目に仕事をしたら必ず上から潰される。だから、まともな記者は、もう絶対に上に見つからないように、何とかくぐり抜けてやろうと思ってるんです。で、やると、ものっすごく睨みつけられるんですよ。『なんて事したんだお前!』って」

永井「時々、NHKがいい報道をする時があるもんですから、頑張ってるんだなと思ってましたが」

岩上「それは、今言った小池報道局長が、バッチンバッチン潰してる中、スルッとすり抜けたのがあって」

永井「日本の訴訟の構図は事件性と言って、当事者として具体的な権利義務に関わるものじゃないと訴訟は起こせないんですね(※20)。ドイツなんかの場合には、憲法裁判所(※21)というものがあって、抽象的に法律が憲法違反かどうか判断ができるんですけれども、日本の場合には、たとえば岩上さんとか私の個人の権利が侵害される状態じゃないと、訴訟の当事者になれないんです」

岩上「ご本人が腹をくくるかどうかですよね。僕が『NHKはもう腐りきってる』って言っても、抽象論でしか言えないわけですよ。僕は、いろんな記者たちの、そして各マスコミの、裏の事情を知っています。僕の所に話を持って来て教えてくれる人もいます。でも、皆、内情は同じ。だけど、心ある記者は持って来ない。本当に心ある記者が一生懸命がまんすると、こういうことになるんです。

 NHKが変わることなんて、絶対ないです。小池が『俺は官邸の藩塀(はんぺい)なんだから、いい記事は絶対出さないぞ』ってもぐら叩きをやっている以上はね。Aさんの記事は、そうやって小池がもぐらを叩いてるつもりの所をすり抜けて出たってこと。だから、官邸からしたら、『フザケんなよ、お前、何やってんだ!』って話だと、僕は推測してます。何か文句あるんだったら言ってきてくださいね、小池さん。話がしたいです。一体、携帯で誰と話してるのかな?聞きたいな。

 でも、それが実情ですよ。テレビのコメンテーターなんかも、こういうことの一部でも言ったら降ろされるわけですよ、だからもう、テレビでは絶対言えないですよね。僕はもう、テレビには一切出るつもりはないから、こうやって内情も全部言ってますが」

永井「なるほど……」

▲A記者こと相沢冬樹氏(現大阪日日新聞論説委員、2018年10月2日IWJ撮影)

岩上「実はどんな風にコメンテーターが影響されてるかとか、こういう裏事情をテレビで話したりしようものなら、他のところでどんな良いことを言っても、当然降ろされますよ。みんなよくわかっている話ですけど、ついにAさんは異動させられることになったというので、気の毒で仕方がない。

 A記者は、今、何も言えないです。何も言えないから、彼にどんな圧力がかかっているのか、僕は知っているけど言えません。かわいそうだし、迷惑がかかりますから。彼が何かもう、腹をくくる、ということでもない限りは。

 この話は日刊ゲンダイに出たんですが、僕は隅から隅まで知ってることです。そしてそれは全部事実。もっと知ってることがあるけれど、彼の立場もあるから言えない。こういうことって他にもあります。その記者の立場があって、言えないことがいっぱいある。メディアは今、どこも、ことごとく同じ状況にあります」

永井「ひどいですね、今の状態ね、本当にね」

岩上「ひどいです。だからみんな勘違いしてもらっては…… NHKが良くなるなんて可能性は、一つもありません。優れたスクープは、何かの事故のように出るだけなんです。A記者の時だけ、特異日のように、クロ現もやったんです。

 でも、こういうことをやった人間は、その直後であろうと直後でなかろうと、必ず報復される。みんな、自分の一発のそのスクープのために一生懸命やって、その後は異動でもう二度と戻って来れない。優秀な記者は一回だけ。みんなこうやって粛清されてるんですよ。これは粛清です、すごくソフトな」

永井「そうですね」

岩上「スターリンや毛沢東や、ヒットラーがやったように、記者をそのまますぐ連行するとかそんなやり方ではないけど、もう記者として働けないようにされるんですから、粛清ですよ。粛清が起きてるんですよ。でも、誰もそれに目を向けようとしない。

 僕がいくら伝えても、みんな聞かない。Aさん以外もそういう思いをしてる記者はたくさんいるのに、『僕はいつでも出すからさ、本当のこと言いなよ』って言っても、話してくれる人はほとんどいない」
永井「NHKの報道は傍目から見てもかなり偏ってしまいましたね。昔と全然違います」

岩上「いまや完全な官報ですよ」

永井「本当に官報ですね」

岩上「NHKは今、完全にプロパガンダ機関として、『独裁バンザイ』なんてことを言っているんです。独裁に向かってるんですよ。本当にね、真剣に考えるべきことです」


※19)NHK「A記者」に起こった出来事:
 「A記者」とは、元NHK大阪放送局記者で2018年9月に大阪日日新聞に移籍した相沢冬樹氏のこと。このインタビュー時点ではまだ、NHKを離職し他の報道機関に転職することが決まっていなかったので、A記者と表現していた。なお、ここで話題になっている日刊ゲンダイの記事とは、『日刊ゲンダイ』2018年5月18日付記事「森友問題スクープ記者を“左遷” NHK『官邸忖度人事』の衝撃」である。この記事で、「A記者」こと相沢氏が森友学園問題に関するスクープを連発していたNHKのエース記者でありながら、突然「閑職」の「考査室」への異動を命じられたことが論じられている。
 大阪日日新聞に移籍後、相沢氏自身が同新聞で語ったところによれば、「近畿財務局が国有地売却前に森友学園側から支払える上限額を聞き出し、その金額以下で売った」ことや、「財務省が学園側に対し、実際にごみを大量に撤去したように説明してほしいと口裏合わせを求めていた」ことなど、相沢氏がスクープしたニュースが放送されるたびに、報道局幹部から怒りの電話がかかってくる、ボツにされかける、ニュース番組の中で不当に低い位置づけで報じられるなどの圧力がかかった。そして、財務省に対する大阪地検特捜部の捜査がヤマ場を迎えた2018年5月、異動が伝えられたというのである。
 異動先の「考査部」は番組放送後にそれを講評する部署。この異動は、「左遷」をとおり越して「記者という生きがいを奪う行為」に等しかったと相沢氏はいう。
 なお、岩上安身は移籍後の相沢氏にインタビューを行っている。ぜひご参照いただきたい。
参照:
・日刊ゲンダイDIGITAL「森友問題スクープ記者を“左遷” NHK『官邸忖度人事』の衝撃」2018年5月17日【URL】https://bit.ly/2LbjnCS
・大阪日日新聞「相沢記者が語る「森友事件の本質」と「移籍の思い」」2018年9月28日【URL】https://bit.ly/2xQbii9
・IWJ「上層部からの圧力か!? 森友問題でスクープを連発した元NHK記者の『考査室への異動』の真相に迫る! 岩上安身による大阪日日新聞論説委員・相澤冬樹氏インタビュー 2018.10.2」【URL】https://bit.ly/2QRLHNm

※20)日本の訴訟の構図は「事件性」:
 日本国憲法第76条第1項は、「司法権」は裁判所に属すると規定する(「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」)。
 そして、「司法権」は伝統的に、「法律上の争訟を裁判する国家作用」(宮沢俊義)、「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用」(清宮四郎)、「当事者間に、具体的事件に関する紛争がある場合において、当事者からの争訟の提起を前提として、独立の裁判所が統治権にもとづき、一定の争訟手続によって、紛争解決の為に、何が法であるかの判断をなし、正しい法の適用を保障する作用」(芦部信喜)などと定義されてきた。
 要するに、裁判所による司法権の発動には、当事者間の権利・法律関係に関する具体的な法的紛争が提起されることが必要であるというわけであり、この特徴を「具体的事件性」という。
 たとえば、障害者に不利益となる法律があった場合、具体的に不利益を被った障害者個人は権利の侵害を理由に裁判を起こすことができるが、障害者団体やその支援団体は訴訟を起こすことはできない。
 違憲審査権を付与された最高裁判所(憲法第81条)についてもそれは同様であり、たとえば「警察予備隊違憲訴訟」(1950年に創設された警察予備隊(のちの自衛隊)が憲法9条に反し違憲であるとして、警察予備隊に係る一切の無効確認を求め、1951年に最高裁に提訴された訴訟)では、最高裁は「我が裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない」(田中耕太郎裁判長)と断じつつ、訴えを却下している。
参照:
・渋谷秀樹「司法の概念についての覚書き」『立教法務研究』第3号、2010年【URL】https://bit.ly/2AbbPwN
・野澤克哉「具体的事件性」『ノーマライゼーション 障害者の福祉』2000年10月号(財)障害者リハビリテーション協会発行【URL】https://bit.ly/2IU6n40
・Wikipedia「警察予備隊違憲訴訟」【URL】https://bit.ly/2OVE6PV
・リラックス法学部「【行政判例】具体的事件を離れて最高裁判所は抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるか (昭和27年10月8日最高裁)」【URL】https://bit.ly/2NEgFG9

※21)憲法裁判所:
 通常の裁判所のように具体的な争訟の存在を必ずしも必要とせず、一般的・抽象的に法令それ自体の合憲性について判断する特別の裁判所。
 1920年制定のオーストリア憲法が創設(ハンス・ケルゼン起草)した制度で、最高裁判所が行政・立法行為の審査権限を持つアメリカ型の「付随的規範審査」制度(日本はこれを採用している)に対し、「抽象的規範審査」制度という。
 現在では、オーストリアに加えてドイツ、フランス、イタリア、ポルトガル、ポーランド、チェコ、スロバキア、スロベニア、韓国、タイ、インドネシアなどがこの制度を採用している。
 なかでもドイツの連邦憲法裁判所は、憲法秩序の保障を担う機関に相応しく、強力かつ広範な権限を付与されており、連邦政府、州政府、連邦議会議員の3分の1以上の提訴によって「抽象的規範審査」の権限を行使できるほか、「憲法訴願」(基本権を侵害された個人が、通常の裁判所による救済手段が尽くされたことを前提に、救済を申立てることができる制度)の審査や国家機関相互の争訟の裁定、連邦国家とラント(州)、あるいは異なるラント間の紛争の裁判なども行うことができる。また、これを構成する裁判官も連邦議会と連邦参議院の両方から党派比例的な選出方法によって選ばれ、政治的に偏らぬよう配慮されていると言われる。
参照:
・日本大百科全書(ニッポニカ)「憲法裁判所」【URL】https://bit.ly/2NKUnmp
・クリストフ・ベツェメク(戸波江二訳)「オーストリア憲法裁判所ーーその制度と手続」『比較法学』45巻3号、早稲田大学比較法研究所、2012年【URL】https://bit.ly/2pUxS4F
・Wikipedia(en), Federal Constitutional Court 【URL】https://bit.ly/2EjJxjL
・衆議院「ドイツ連邦憲法裁判所の権限について」【URL】https://bit.ly/2CKHqHV

改憲アピールと連動して行われる「独裁バンザイ」のプロパガンダ(2)〜櫻井よしこ氏と日本会議会長の田久保忠衛氏が『WiLL』で「独裁のススメ」!? 「民主主義を通じて全体主義に向かう国が増えている。日本もこの新しい流れに乗り遅れるな」!? なりふり構わぬ独裁擁護作戦が同時多発的に発動中!

岩上「そして、『危機の宰相は独裁でいい』とは櫻井よしこさん。さあ出た!デマの、プロパガンダの専門家。『WiLL』2018年6月号で、日本会議会長の田久保忠衛さんと対談して独裁擁護(※22)。『独裁のすすめ』ですよ、もう独裁でやっていこうと。

 岩田さんがNHKで独裁擁護したのとは、NHKは日本で一番影響力のあるメディアですから、格が違うじゃないかと言われるかもしれませんが、思想的には同じようなレベルですし、彼女(櫻井氏)のような人でも、どんなことを言っているのか定期的にウォッチングしなきゃいけないわけですよ。日本会議とか、あういう人たちが何をしたいのかっていう事を、はっきり示してくれるわけですからね。彼女(櫻井氏)はもう、独立したジャーナリストじゃありません。一つの機関、一つの組織の中の一員としてプロパガンダしてる、『自称』ジャーナリストですから。言うなれば日本会議のマドンナであり、広報だと思えばいいわけです。

 そんな櫻井さんがものすごく影響を及ぼしているわけですが、対談の中で、『世界の中で物事を決める国がほとんど独裁国家になりつつあります』と。国家緊急権がなかったから東日本大震災の時に人が死んだという、さっきのあの論調で、飛躍も飛躍、デマなんですけどね。

 それで、『片や非常に速いスピードで決定が下され物事が動いている一方、日本は何も決められない国になってしまった』と。え!? 何でも閣議決定で決めてるじゃないですかね?『昭恵夫人は私人』だし、『セクハラ罪という罪はない』(※23)。いやいや、あれ、不法行為でしょう?」

▲「危機の宰相は独裁でいい」と櫻井よしこ氏と日本会議会長の田久保忠衛氏も対談で「独裁擁護」!?

永井「もちろん不法行為です(※24)」

岩上「不法行為ですよね。あれ、閣議決定していいんですか?」

永井「『セクハラ罪』という罪名の罰条はない、という、それ自体は事実だけれども」

岩上「そうであっても、じゃあ、セクハラ行為は罪にならないんだ、という風に、国民が受け取るような閣議決定をするなんてけしからん、取り消せと、日弁連とか法律家の団体が声を上げていただきたいものです。だって、セクハラというのは十分『不法行為』、あるいは『非違行為』というか……」

永井「まあ、『不法行為』でいいと思いますけどね。民法上の損害賠償請求権が発生しましてね(※25)」

岩上「刑事罰にならないからいいなんて話じゃないですよね。強制わいせつまで行けば、それは刑事的な罪ですけど」

永井「おっしゃるとおりです」

岩上「そこまで行かなくとも、人に不快な思いを与えて傷つけるようなことは、それだけで十分『不法行為』ですよね。とまあ、こういう風に、すごくレベルの低いことは(内閣の閣議決定で)何でも決められる国になってるくせに、『日本は何も決められない国になってしまった』なんて。中国やロシア、北朝鮮、アメリカなどを念頭に置いての発言らしいんですが、この辺の国々はもっと大きなことを決めていましてね、我が安倍内閣は、そこでは全部蚊帳の外なんですよ(※26)」

永井「中国、ロシア、北朝鮮って、元社会主義国か現社会主義国ですよね。こういう時だけもち上げるんですかね?で、アメリカも、今たまたまトランプ大統領で……」

▲日本会議のマドンナ、櫻井よしこ氏も独裁のすすめ!? 「世界の中で、物事を決める国がほとんど独裁国家になりつつあります」

岩上「要するに日本がそういう国になって欲しいんですよ。だから、日本会議は反共団体ですらなく、国粋主義団体でもないかもしれない。日本会議の正体についも、よくよく考えた方がいいですよね。日本のためにやってるわけではないっていう。少なくともリベラルデモクラシーのためにやってるわけはないですね。独裁を喜んでるわけですから。

 日本会議会長の田久保さんは、この対談の中で、『エジプト、ハンガリー、ポーランド…民主主義を通じて全体主義に向かう国が増えている』『独裁に向かう国と民主主義を堅持する国の対立軸が世界の中心となるでしょう。日本も、この新しい流れに乗り遅れてはいけません』なんて主張していますよ。これってもう、まるで漫画じゃないですか。
 『対立軸』って、あなた、一体どっちなんですかと。民主主義堅持の方じゃないじゃないか、だって、我が国も独裁に向かえって言ってるわけでしょ?何を言ってるんですかって話ですよ。これはバカにできません。こんなふうに、同時多発的に出てきているんです」

▲日本会議会長の田久保氏も独裁擁護!? 「民主主義を通じて全体主義に向かう国が増えている」「日本もこの新しい流れに乗り遅れてはいけません」


※22)櫻井よしこ氏が日本会議会長の田久保忠衛氏と独裁擁護の対談:
 『WiLL』2018年6月号掲載、「日米首脳会談以後 危機の宰相は独裁でいい」と題された、櫻井よしこ氏と田久保忠衛氏との対談のこと。
 まずは櫻井氏が、中国やロシア、北朝鮮、アメリカなどを念頭に置きつつ、「世界の中で、物事を決める国がほとんど独裁国家になりつつある」と指摘。「非常に速いスピードで決定が下され物事が動いている」というこのような国々とは対照的に「日本は何も決められない国になってしまった」と嘆けば、田久保氏がこれに答えて曰く、「エジプト、ハンガリー、ポーランド……民主主義を通じて全体主義に向かう国が増えている」「独裁に向かう国と民主主義を堅持する国の対立軸が世界の中心となるでしょう。日本も、この新しい流れに乗り遅れてはいけません」と。
 こうして日本も独裁へ向かえとしたうえで、櫻井氏が「民主主義国家は、国民の考え方や選択によって決まります。それが民主主義の素晴らしさであると同時に、民主主義の怖さでもある。国民が愚かであれば国は亡び、国民が賢ければ国家が守られる。モリカケ騒動からいまだに脱しきれない日本の行く末が心配でなりません」と締めくくる。
 強引なやり方でも物事を素早く決定するのがいい国なのか、そのような国があるからといって、日本がなぜそれに「乗り遅れるな」なのか、日本国民は民主主義に相応しくない「愚か」者だというのか、国会を停滞させるモリカケ騒動の元凶はそもそも安倍総理夫妻ではないのか等々、ツッコミどころ満載の対談ではあるが、何よりも、もはやあらゆる議論をすっ飛ばし、独裁そのものを堂々肯定し始めたことに、戦慄を覚える読者は多いだろう。
参照:LITERA「NHK岩田明子、櫻井よしこら安倍応援団が『良い独裁もある』と大合唱!トンデモ論で安倍独裁政治を正当化」2018年5月10日【URL】https://bit.ly/2OZTiLS

※23)「昭恵夫人は私人」だし、「セクハラ罪という罪はない」:
 「閣議決定」とは、内閣法第4条および第1条第2項にもとづいてなされる、内閣総理大臣および全閣僚の合意を原則とする内閣の意思決定。国政に関する基本方針や法律案、予算案、国会議員からの質問主意書に対する答弁書などを主な案件とし、政府はこの決定にもとづいて行政権を行使する義務を負う(内閣法第6条)。
 内閣の意思決定の中でかくも高い位置付けの閣議決定だが、安倍政権は、集団的自衛権の行使は容認できないとする従来の憲法解釈を閣議決定で強引に変えた(2014年7月1日)「成功体験」に味を占めたのか、以来、歴史の教訓も先人の議論も政権に都合よく曲解した珍説を振りかざし、野党の追及や国民の批判を門前払いするのにこれを用いるようになった。
 「憲法9条は一切の核兵器の保有や使用をおよそ禁止しているわけではない」(2016年4月1日)、「教育勅語は憲法や教育基本法に反しないなら教材にしてもよい」(2017年3月31日)、「ヒトラーの『わが闘争』は教材使用できる」(2017年4月14日)、「銃剣道は戦前回帰ではない」(2017年4月14日)等々と。
 加えて、最近は失言・失態を繰り返す安倍総理夫妻やその「お友達」を庇うため、幼稚で馬鹿馬鹿しい「閣議決定」を連発している。
 安倍総理が国会で『ポツダム宣言をつまびらかに読んでいない』と答弁し無知との批判を浴びると、「安倍首相はポツダム宣言を当然読んでいる」(2015年6月2日)。
 島尻北方相が記者会見で『歯舞諸島』の漢字が読めず、北方相としての資質に欠けると非難されると、「島尻沖縄北方担当大臣は『歯舞』の読み方を知っていた」(2016年2月22日)。
 森友問題で安倍昭恵・総理夫人の証人喚問を求める声が高まると「安倍昭恵氏は私人」(2017年3月14日)。
 安倍総理が国会で「『そもそも』という言葉には基本的という意味がある」と答弁し、専門家から疑問の声が上がると、「そもそもという言葉には、基本的なという意味もある」(2017年5月12日)、次いで「首相が自ら辞書を引いて意味を調べたものではない」(同26日)等々。
 2018年5月18日には、福田淳一・前財務相事務次官のセクハラ問題について麻生太郎・財務相が「セクハラ罪っていう罪はない」と発言し物議を醸した件で、「『セクハラ罪』という罪は存在しない」とする答弁書を決定。安倍政権の「閣議決定」のラインナップは、もはやコメディの様相を呈している。参照:
・Wikipedia「閣議(日本)」【URL】http://bit.ly/2FtU4gl
・e-Gov法令検索「内閣法」【URL】http://bit.ly/2p7ee4N
・毎日新聞「閣議決定は万能か 昭恵氏「私人」に疑問/「政府が好きなように現実作る」【URL】http://bit.ly/2HpLXOd
・週プレNEWS「「隠す」「封殺」「ゴリ押し」…安倍政権の“低レベル”な閣議決定をパターン別に分析すると?」2017年6月21日【URL】http://exci.to/2wZsbpj
・LITERA「今度は麻生財相の「武装難民は射殺」発言を肯定する閣議決定!トンデモ閣議決定を乱発する安倍政権の異常」2017年11月17日【URL】https://bit.ly/2A6lQfF
・朝日新聞DIGITAL「「セクハラ罪という罪はない」の答弁書、政府が閣議決定」2018年5月18日【URL】https://bit.ly/2x1EqTj

※24)セクハラは不法行為:
 不法行為とは、故意または過失によって違法に他人の権利を侵害し、結果その人に損害を与える行為のこと。民法第709条に規定される、加害者は被害者の損害を賠償する責務を負う違法行為である。
 相手の意に反する「性的言動」によって不快感を与えたり、不利益や労働環境の悪化などの損害をもたらすセクシャルハラスメント(セクハラ)もまた、1989年8月に福岡で日本初の民事裁判が起こされ1992年に被害女性の全面勝訴で決着して以来、憲法が保障する相手の人権を踏みにじる不法行為として広く認知されるようになった。
 問題の性的言動がセクハラに該当するか否かの判断について、判例は「女性の意に反する性的言動がすべて違法となるわけではなく、その行為の態様、行為者である男性の職務上の地位、年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的に見て、社会的見地から不相当とされる程度の場合には、違法となる」(名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日判決)という基準を示しているほか、加害者側の性的意図の有無が考慮される場合もあるが、最近では被害者が不快と感ずるなら不法行為として認定される潮流にあるとのこと。
参照:
・Wikipedia「不法行為」【URL】https://bit.ly/2Eyq2b6
・Wikipedia「セクシャルハラスメント」【URL】https://bit.ly/2P7WnK0
・川村法務事務所「セクハラ(セクシャルハラスメント)」【URL】https://bit.ly/2S1mhOe
・アスクミー「永野 海さん 弁護士 『セクハラ罪』はないが刑法上の犯罪に該当するセクハラ行為はある!」2018年5月29日【URL】https://bit.ly/2AjdLU2

※25)セクハラには民法上の損害賠償請求権が発生:
 セクハラの本質は人権問題であり、民法第709条も加害者は被害者に損害賠償責任を負うと定める不法行為である。
 慰謝料としては、言葉だけの場合は100万円以下となることが多い(たとえば東京セクハラT菓子店事件(東京高裁平成20年9月10日)。店長が契約社員の女性に性的で侮辱的な言葉を投げつけ、女性に訴えられた事案。慰謝料50万円)が、身体、特に性的部位に触れた場合、慰謝料は跳ね上がる。
 たとえば、家政婦の業務に従事していた女性に対し、上司が胸を触る、抱きつこうとする、性的関係を求めるなどした金沢セクハラ事件(名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日、最高裁平成11年7月16日判決)では120万円。二人の上司が部下の女性に身体や下着に触れたりといった行為をした上、性的交渉を迫って断られると社内に不名誉な噂を流した沼津セクハラ事件(静岡地裁沼津支部平成11年2月26日)では200万円の慰謝料が認められている。
 さらに、被害者にPTSDなどの後遺症が生じた場合は、逸失利益も含めて賠償額は非常に高額になるといい、大学教授が論文指導中の大学院生の女性の身体に触れる、交際を迫る、抱きつくなどの行為を繰り返し、女性に神経症を発症せしめた東北大学事件(仙台地判平成11年5月24日)では、慰謝料750万円の判決が下された。
 こうしたセクハラ行為が社内で行われた場合は、会社も安全配慮義務違反を問われ損害賠償責任が生じるのであるし、行為の内容によっては刑事事件、すなわち、公然わいせつ罪(刑法174条)、強制わいせつ罪(同175条)、強姦罪(同177条)、準強制わいせつ罪(同178条)、名誉毀損罪(同230条)及び侮辱罪(同231条)などにも問われることはいうまでもない。
参照:
・法務省リーフレット「企業における人権研修シリーズ セクシュアル・ハラスメント」【URL】https://bit.ly/2KJ4qI3
・野中法律事務所「セクハラ」【URL】https://bit.ly/2CrBP8t
・アスクミー「永野 海さん 弁護士 『セクハラ罪』はないが刑法上の犯罪に該当するセクハラ行為はある!」2018年5月29日【URL】https://bit.ly/2AjdLU2

※26)日本は「蚊帳の外」:
 2017年5月の文在寅(ムン・ジェイン)大統領就任後、一触即発の危機にあると見られていた韓国と北朝鮮の関係改善が急速に進み、2018年2月の平昌オリンピックでは統一旗を掲げた合同での入場行進や南北合同チームの参加(女子アイスホッケー)が実現、さらに4月の南北首脳会談で朝鮮半島の非核化や朝鮮戦争終結に向けて合意した「板門店宣言」が出される。
 トランプ米大統領も文大統領の仲介に応じ、6月にシンガポールでの史上初の米朝首脳会談に臨むなど、朝鮮半島情勢は長らく望まれた和平に向けて大きく動きつつある。
 この間、安倍政権は北朝鮮への圧力強化を唱えつづけ、これに同調する外務省・マスコミともども、「米国を盟主と崇めてその斜め後ろに控えて、韓国を叱咤激励しつつ北に対する国際包囲網を作り上げているというのは、日本だけが思い描いている虚像で、実は朝鮮半島問題の対話による解決のための国際的包囲網が作られつつあって、そこで包囲されているのは唯一人、対話を拒否している日本なのである」(高野孟氏)という状況が現出している。
 この10月には、ロシア外務省が、ロシア・北朝鮮・中国の外務次官による3カ国協議の結果、朝鮮半島の緊張緩和のためには米国・ロシア・中国・韓国・北朝鮮の「5カ国協議」が必要との認識で一致したと発表した(ロイター報)。朝鮮半島問題については、これに日本を加えた「6カ国協議」で話し合われるのが常だっただけに、安倍外交の失墜はここに極まったといえよう。
参照:
・MAG2NEWS「日本だけが蚊帳の外。北朝鮮問題の対話路線に乗り遅れた安倍官邸」(2018.01.09 by 高野孟『高野孟のTHE JOURNAL』)【URL】https://bit.ly/2S1VHUd
・日刊ゲンダイDIGITAL「ドン詰まり安倍外交 北核問題「6カ国協議」日本外しの動き」2018年10月12日【URL】https://bit.ly/2EgynjN

安倍政権の改憲案は、日本会議系「日本政策研究センター」の『改憲アジェンダ』そのまんま! 閣僚も日本会議だらけ! 宗教右翼に操られる安倍政権、お笑い芸人も取り込みつつ、大日本帝国下でも展開された「庶民の生活に根差すプロパガンダ」で一挙に改憲の空気作り!?

岩上「中でもいちばん注意しなければいけないのが、日本政策研究センター代表で日本会議の政策委員の伊藤哲夫さん(※27)。安倍首相がやっていることは、この人のほぼ言うとおりなんですね。

 安倍首相、例の9条3項追加(※28)っていうのを言い出したじゃないですか、あれ、もともと自民党の改憲草案に入っていませんでしたよね?あれは伊藤氏の入れ知恵ですよ。それほどこの日本政策研究センターは、安倍晋三個人に大変大きな影響を与えているところなんです。ここが掲げる『改憲アジェンダ』(※29)の中に緊急事態の追加が盛り込まれているんですが、そこで『非常事態に際し、「三権分立」「基本的人権」等の原則を一時無効化し、内閣総理大臣に一種の独裁権限を与える』とはっきり書いてあるんですね。

 それから、家族保護条項の追加もうたっていて、憲法13条の『すべての国民は、個人として尊重される』という文言と、憲法24条の『個人の尊厳』の文言を削除し、新たに『家族保護条項』を追加すると。国民は個人としては尊重されないと。これがまた、統一教会にそっくりなんですよ(※30)。すごく背景がわかりやすい。

 さらには『自衛隊の国軍化』。『憲法9条2項を見直し、明確に戦力の保持を認める』と。こんなことを言ってるんです。これ、法律の専門家としてどう思われますか、先生? 自民党の緊急事態条項は独裁条項ですよね?」

▲日本会議政策委員で伊藤哲夫氏率いる日本政策研究センターが掲げる「改憲アジェンダ」

永井「おっしゃるとおり、あれは内閣独裁条項です」

岩上「それも、今日先生にお話いただいたおかげで、細かく書いていなくても完全にフリーハンドな条項だという事がわかった。すごくシンプルに独裁が可能な国になるんです。

 自民党が『発議はこれで行こうぜ』『今年中に発議の可決しちゃおうぜ』と言ってるわけですね。今年か来年かわからないですけど、もう近々に。この動きと独裁バンザイっていう世論作り。これは無関係だと思います?」

永井「関係あります。新しい自民党の緊急事態条項案は、要するに、立憲主義を破壊する制度なんですね。立憲主義というのは、人権保障と権力分立のことを言うわけですが、これ、『三権分立』『基本的人権』の原則を無力化する、でしょう? まさに立憲主義を破壊するという考え方です。で、『内閣総理大臣に独裁権限を与える』というわけですから、これがピッタシ、自民党案の根底にあるものと合致するわけですね」

岩上「自民党はこの日本政策研究センターが考えたとおりやってるんですから。だいたい日本会議の人達ですよ。その日本会議の会長が、さあ、やりましょう皆さん、って言ってるわけですよ。『乗り遅れちゃいけませんよ』って。

 『WiLL』だの日本会議だの、こういう輩がまだ世の中の片隅にいる人たちだと思っていたら大間違いです。日本会議の国会議員連盟があるわけですよ。そこにどれほど多くの国会議員が所属していることか。安倍内閣の閣僚は、内閣改造とかで替わりますけれども、だいたいその8割が日本会議ですよ(※31)」

永井「怖いですね」

岩上「立憲主義を破壊して独裁にしようというその狙いも、今までだったら、櫻井さんみたいに嘘をつきながら主張していた。『国家緊急権がなかったから、大震災の時に、助かる命が助からなかった』とか、涙流しながらね。でもいまや、そんな嘘すら言わないで、ずばり『独裁で行きましょうよ』って言うようになったんです。NHKですらこの状態ですよ。岩田明子が『ドゥテルテの独裁はいいわよね』って。超法規的殺人を行ったことも含めて、麻薬対策を『成功』って」

永井「考えられないですね」

岩上「NHKが良い方向に変わることなんて、金輪際ないです。NHKはもっとプロパガンダ機関としての性格を強めていきますよ。プロパガンダと法律の改正という、こう、非常に堅い所と空気作りというのは、同時に動かなければ成功はしませんからね」

永井「ナチスはプロパガンダ上手かったですからね」

岩上「日本もプロパガンダのものすごく上手い国ですよ。大日本帝国はドイツよりもプロパガンダが成功した国だと思います。プロパガンダを研究されている方々へのインタビューもいろいろやりましたが、大日本帝国のプロパガンダはそれはもう徹底していて、庶民の隅々に至るまでやったわけです。

 ナチスのプロパガンダは崇高さが売りでしたから、ハイカルチャー的な感じがするんですが、大日本帝国は漫才とか落語とか、張り紙とかポスターとか、とにかくありとあらゆる国民生活の、微に入り細にわたり、庶民の生活に根差すプロパガンダを展開した。

 ゲッベルスのように表に出てやるような人ではありませんでしたが、プロパガンダを展開する部長とかそういうクラスが軍にいて、それが徹底的に監視統制したんです。新聞はもちろん、漫才も浪曲も落語も、演芸まで(※32)。

 今、松本人志みたいに安倍さんに迎合するお笑い芸人が出ているバラエティー番組が増えていますが、これはものすごく影響力ありますよね。こうやってプロパガンダが展開されているわけです」


※27)伊藤哲夫さん:
 伊藤哲夫氏は1947年新潟県生まれの政治活動家。
 新潟大学卒業後、大日本帝国憲法の復原、伊勢神宮・靖国神社の皇室への帰属などを掲げ、政界内外で大規模な政治運動を展開していた新興宗教団体「生長の家」(1930年創設、教祖:谷口雅春)の青年会幹部を務めていた。その後、教団の政治活動からの撤退を機に、1984年、民間シンクタンク「日本政策研究センター」を設立。以後、評論執筆や各地での講演活動を通じ、「正しい」歴史認識への回帰、選択的夫婦別姓反対、反ジェンダーフリー、そして改憲を主な論点とする「保守革命」なるものを標榜して活動してきた。
 同センター代表として国会議員や各種政策グループに政策の提言やアドバイスを行うかたわら、「日本会議」の政策委員や「日本李登輝友の会」の常務理事なども務める、保守勢力の要人である。
 『チャンネル桜』開局記念番組(2004年8月15日)に当時自民党幹事長だった安倍氏を呼ぶなど、2006年9月の第一次安倍政権誕生前から安倍晋三を「保守革命」のリーダーとして強力にプッシュしてきた人物としても知られ、「日本政策研究センター」の機関誌『明日への選択』の、「まるで安倍政権が提案する諸政策の代弁を行っているかのよう」(菅野完氏)な毎月の紙面構成からしても、「安倍政権の生みの親」「安倍氏の有力なブレーン」の評に違わぬ存在であることが見て取れる。
参照:
・Wikipedia「伊藤哲夫 (政治活動家)」【URL】https://bit.ly/2EDMyPU
・日本政策研究センターHP「ホーム:日本政策研究センターとは」【URL】https://bit.ly/2z12cyJ
・菅野完『日本会議の研究』扶桑社、2016年【URL】https://amzn.to/2TyPCjQ

※28)9条3項追加:
 日本国憲法が施行70周年を迎えた2017年の憲法記念日に、東京都千代田区で開かれた改憲派の集会(「第19回公開憲法フォーラム」主催・民間憲法臨調、美しい日本の憲法をつくる国民の会)に寄せたビデオメッセージの中で、安倍総理が言及した新たな改憲案。
 自民党が野党時代の2012年に発表した憲法改正草案では、戦力の不保持を規定した憲法第9条第2項を廃し、国防軍の創設をうたっていたが、ここで安倍総理は、「学者や政党の間で自衛隊違憲論がいまなお根強くあるが、その自衛隊に対し、いざというときに命を張って守ってくれというのはあまりに無責任」と言いつつ、自衛隊の明文化を主張。憲法9条1項2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込んだ条項を第3項として追加するという案を示したのである。
 政府は長年、自衛隊は「わが国を防衛するための必要最小限度の実力組織であり、第2項が禁止する戦力に当たらない」とする見解を示してきたのであり、国民もこれを広く受け入れてきた。
 第3項の追加はこうした現状の追認にすぎず、平和主義を覆すものではない、というのが安倍総理の言い分だが、自衛隊が憲法に明文化されることで、これまで違憲論が歯止めをかけてきた軍備や任務の拡大が加速的に進むことは明らかであり、識者や野党から激しい批判の声が巻き起こった。
参照:
・自民党憲法改正推進本部「公開憲法フォーラム 安倍総裁あいさつ(全文)」2017年5月3日【URL】https://bit.ly/2Pkyb7a
・弁護士ドットコムNEWS「安倍首相が改憲案、9条3項「自衛隊の明文化」主張…どんな意味があるのか?」2017年5月20日【URL】https://bit.ly/2SddWa2
・週プレNEWS「日本国憲法9条の危機ーー「第3項」の追加は改憲ではなく“壊憲”!?」2017年5月27日【URL】https://bit.ly/2PK6t0G
・Sputnik日本「憲法9条3項追加は何がダメなのか?日本メディアが伝えない加憲の裏の意味」2017年5月19日【URL】https://bit.ly/2PNVLGz

※29)日本政策研究センターの改憲アジェンダ:
 伊藤哲夫氏と彼が代表を務める「日本政策研究センター」(前出註※27参照)は、月刊機関誌『明日への選択』や一般書籍を通じた論評活動のかたわら、「明日への選択セミナー」と称するセミナーを頻繁に開催し、彼らの主張する「保守革命」を全国各地に広める活動を積極的に行っている。
 岩上安身がここで言及するのもそのひとつ、2015年8月2日東京都千代田区で開催された「第4回『明日への選択』首都圏セミナー」における、同センターの小坂実研究部長の講演「なぜ今、憲法改正を語るのか−−誰でもわかる憲法改正の必要性」で示された、彼らが目指す改憲の具体的内容である。
 セミナー参加者に取材しこれを報じた菅野完氏によれば、それは(1)緊急事態の追加(非常事態に際し、「三権分立」「基本的人権」等の原則を一時無効化。内閣総理大臣に一種の独裁権限を与える)、(2)家族保護条項の追加(憲法13条の「すべての国民は、個人として尊重される」の文言と、憲法24条の「個人の尊厳」の文言を削除、新たに「家族保護条項」を追加)、(3)自衛隊の国軍化(憲法9条2項を見直し、明確に戦力の保持を認める)の3点を骨子とし、「最もウエイトを置いて語られたのは緊急事態条項の箇所」であったという。
参照:
・ハーバー・ビジネス・オンライン「【草の根保守の蠢動 第17回】安倍政権と筆頭ブレーンが目指す「憲法改正」。そして明言された「明治憲法復元]」2015年10月17日【URL】https://bit.ly/2OOWpqV
・菅野完『日本会議の研究』扶桑社、2016年【URL】https://amzn.to/2TyPCjQ

※30)「家族保護条項」統一教会にそっくり:
 統一教会(正式名称:世界平和統一家庭連合)は、1954年、韓国において、文鮮明(1920年- 2012年)という人物が創設した宗教団体。旧名称を世界基督教統一神霊協会といい、キリスト教を自称するが、東アジアの豊穣神信仰に通ずる独特な聖書解釈にもとづく『原理講論』という経典を持ち、伝統的キリスト教の観点からは異端とみなされている。
 政権と強く結びつきながら教団を拡大・強化してきた経緯に加え、大学構内などに潜入し正体を隠しての勧誘活動や霊感商法などと呼ばれた資金獲得法、「献身者」錬成のためのマインドコントロール、そして、「再臨のメシア」文鮮明が配偶者を指定する教団内婚制(集団結婚)は、一時期大きく社会問題化した。
 統一教会はまた同時に、旗下の「国際勝共連合」なる団体を通じて活発な反共政治運動を展開してきた。
 近年では、選択的夫婦別姓やジェンダーフリーの潮流(彼らによれば、これらの動きは「文化共産主義者」たちによる国家解体の策動とのこと)の阻止や、集団的自衛権の確立および日韓米による安全保障体制の構築、スパイ防止法の制定などを掲げている。
 さらには、日本国憲法を「過剰な人権主義、歴史と伝統を否定した偏った国民主権が謳われ」た、「マッカーサー草案の直訳で翻訳特有の悪文、かつ連合諸国への『詫び状』、占領体制への『植民地宣言』」と断じ、「歴史・文化・伝統をふまえた憲法とする」「『人権』の過剰を是正し『義務』を示す」「『家族条項』をもる」「9条を改め、軍事力の保持を明記する」の4点を要とする改憲案を標榜。
 安倍自民党の改憲案に極めてよく似た主張だが、じっさい、勝共連合の1968年の設立には安倍総理の祖父・岸信介元総理が深く関わっていたほか、70年代から国際勝共連合は自民党の有力な支持団体となり、会員を国会議員や公設秘書として政権内部に送り込んでいたという。
参照:
・Wikipedia「世界平和統一家庭連合」【URL】https://bit.ly/2cjHDF8
・櫻井義秀・中西尋子『統一教会ーー日本宣教の戦略と韓日祝福』北海道大学出版会、2010年
・Wikipedia「国際勝共連合」【URL】https://bit.ly/1OGTmWR
・国際勝共連合HP「勝共運動とは」【URL】https://bit.ly/2rc5Tkf
・BUZZAP !「憲法改正デモを行った「大学生遊説隊 UNITE(ユナイト)」を率いる韓国発カルト「統一教会」と安倍政権のつながりとは?」2016年6月3日【URL】https://bit.ly/2AFNQpL
・IWJ「文鮮明という『メシア』が『再臨した国』韓国に貢がされる『エバ国家』日本!? 自民党に深く浸透する統一教会の『正体』! 岩上安身による北海道大学大学院 櫻井義秀教授インタビュー 2018.8.17」【URL】https://bit.ly/2zgGW8

※31)安倍内閣の閣僚は日本会議だらけ:
 「日本会議」の主張に賛同し、これを全面的に支援する超党派の議員連盟がある。1997年5月、「日本会議」の設立と同時に、自民党の小渕恵三や森喜朗を発起人として結成された「日本会議国会議員懇談会」である。
 自民党を中心に180人ほどの議員で出発したこの議員連盟だが、いまやこれに所属する議員は、衆参の総議員数の4割にあたる約280人にも上る。
 安倍政権は「日本会議」との結びつきがとりわけ強く、「日本会議国会議員懇談会」会員の入閣者は第一次安倍内閣では総理を始め12人、第二次安倍内閣では13人、第二次安倍改造内閣および第三次安倍改造内閣では19人中15人。先日(2018年10月2日)発足した第四次改造安倍内閣もまた、閣僚19人中14人が「日本会議」所属であり、日本はもはや、国民の0.03%に過ぎない日本会議勢力に乗っ取られたと言っても過言ではない状況になっている。
参照:
・Wikipedia「日本会議国会議員懇談会」【URL】https://bit.ly/2nXIYTZ
・Peace Philosophy Centre「「日本会議」84%、「神道議連」95%、「靖国議連」84%・・・チャートで一目瞭然「第2次安倍晋三改造内閣の超タカ派の大臣たち」(俵義文氏提供)」2014年9月24日【URL】https://bit.ly/2yLpREj
・週刊現代「日本最大の右派団体「日本会議」と安倍政権のただならぬ関係~なんと閣僚の8割が所属(魚住昭)」2015年7月12日【URL】https://bit.ly/2AwFZur
・しんぶん赤旗「自民全閣僚が「靖国」派 日本会議など関連議連に所属歴」2016年8月5日【URL】https://bit.ly/2qUDGdE
・Wikipedia「第4次安倍内閣 (改造)」【URL】https://bit.ly/2Rl9sgj

※32)大衆娯楽を活用した大日本帝国のプロパガンダ政策:
 これについては、各国の軍歌蒐集・研究で知られる著述家の辻田真佐憲氏の著書、『たのしいプロパガンダ』(イースト・プレス、2015年)において、わかりやすく紹介されている。
 それによれば、第一次大戦における軍事大国ドイツの敗北に衝撃を受けた日本の軍部は、敗因が列強の経済封鎖による栄養不足と革命思想の台頭による国民の戦意喪失にあると結論。「新聞雑誌、通信、パンフレット、講演等の言論及報道機関、ラヂオ、映画其他の娯楽機関、展覧会、博覧会等」を通じて「平時より是等の国家的統制を実行」し、国家総動員体制を堅固にする方針を固める。
 日中戦争開戦後の1937年9月には、そうした「思想戦」の指導的機関として「内閣情報部」が設置された。そこに情報官として着任、翌年12月には陸軍省情報部長となった思想戦のエキスパート、清水盛明中佐は、「由来宣伝は強制的ではいけないのでありまして、楽しみながら不知不識(しらずしらず)の裡(うち)に自然に感興の中に浸つて啓発教化されて行くといふことにならなければいけない」として、庶民のあらゆる娯楽をプロパガンダの手段として用いることを提唱。
 かくして軍部は、反発を生みがちな「強制的で退屈なプロパガンダ」だけでなく、「民衆の嗜好を知り尽くしたエンタメ産業」と結びながら、巧みに国民を戦争へ向かわせていった。
 なお、IWJは辻田氏をお招きし、大日本帝国下のこうした「たのしいプロパガンダ」について、詳しく話をうかがっている。こちらもぜひ参照いただきたい。
参照:
・IWJ「歌劇、講談、浪花節・・・そして『萌えミリ』から『シン・ゴジラ』まで!? 日本軍が注目した『たのしいプロパガンダ』、その実態とは? 岩上安身が近現代史研究者の辻田真佐憲氏に訊く!前編 2016.10.27」【URL】https://bit.ly/2EvB9Ba
・IWJ「撤退」は「転進」に、「全滅」は「玉砕」に――嘘とデタラメと捏造の限りを尽くした「大本営発表」、その知られざる実態とは? 岩上安身が近現代史研究者の辻田真佐憲氏に訊く!後編 2016.11.25
【URL】https://iwj.co.jp/wj/open/archives/347519
・IWJ『主婦の友』が「アメリカ人をぶち殺せ!」――大日本帝国の過激で珍妙な「戦争プロパガンダ」~現在に至る「自画自賛」の系譜を岩上安身が『神国日本のトンデモ決戦生活』著者・早川タダノリ氏に訊く! 前編 2016.10.18【URL】https://bit.ly/2o3Pf2p
・「平和」「未来」「安全」・・・ってホント!? 読売新聞にはじまる膨大な広告群がでっち上げてきた「原発の安全神話」を解体する!~岩上安身が『原発ユートピア日本』著者・早川タダノリ氏に訊く 中編 2016.11.5【URL】https://bit.ly/2R4ThUK
・恋愛も妊娠も再婚も禁止…って大きなお世話!「銃後の妻」の性をも監視した大日本帝国~岩上安身が『「日本スゴイ」のディストピア』著者・早川タダノリ氏に訊く 後編 2016.12.9【URL】https://bit.ly/2Fz2Vha

改憲集会で、国民主権、基本的人権も平和主義をなくせ!と演説する長勢甚遠元法務大臣!? 「革命」とも「クーデター」とも言えない、不可解な「反革命」が始まろうとしている!

岩上「先生に見ていただきたい動画があります。ネットやSNSをよく見ている人の間では有名な動画ですが、知識人はこれを知らない人も多い。娯楽動画じゃないですよ。しゃべっているのは元法務大臣です。

(ビデオ再生)
元法務大臣・長勢甚遠氏「… 国民主権、基本的人権、平和主義、これは堅持するって言ってるんですよ。この三つをなくさなければですね、本当の自主憲法にならないんです。例えば、人権がどうだとか言われたりすると、平和がどうだとか言われたりすると、おじけづくじゃないですか?それは我々が小学校からずっとずっと教え込まれて来たからですよ。これを書き直すのはなかなか大変な作業です。皆で力を合わせて頑張りましょう…」(※33

▲長勢甚遠・元法務大臣(Wikipediaより)

岩上「ステージの上に、ズラーッと、安倍内閣に関わったような政治家が並んでいます。安倍さん自身もいます。話題は2012年度版の自民党改憲草案。長勢法務大臣はそれが気にくわないと言っているんです。基本的人権も平和主義も国民主権もまだ残されてるじゃないか、この三つをなくさなければ本当の憲法にならないんだ、と。この三つって、憲法の根源ですよ」

永井「一番大事なことですよね」

岩上「人権のない国、国民に主権がない国。国家が主権者。お前たちは臣民、もっと言えば奴隷でしかないというわけです。大日本帝国憲法以下ですよ。大日本帝憲法だって、臣民である限りにおいて、人権について最低限書かれていたじゃないですか」

永井「大日本帝憲法の時は、君主の恩恵という形で、法律によって元々ないものが与えられるという体裁をとっていましたから、これを消すときにも法律でという、そういう制度はあったんですが。それでも一応、法律の範囲内での権利は保障されていました(※34)」

岩上「しかも、その『君主』は、恩恵をほどこす『英明の君主』というしつらえになっていたわけでしょ。ありがたき天皇様がいて、その恩恵があって、そして、そういう天皇陛下の下で、臣民たちは平等だったわけです。エリートの家に生まれても、徴兵されたら他の人々と同じように死ななければならないなんてこともありえた。

 でも、今はそういう『一君万民』(※35)でもないんです。特別な国家の中枢、つまり首相を中心にすべての権力が集まるところがあって、そこへと近づくにつれてお友達が優遇される、という… まさにいま、そういう状況になりつつあるわけじゃないですか」

永井「一体どんな国にしたいんでしょう。考えられないですね」

岩上「だから手始めに、トルコのエルドアンとかフィリピンのドゥテルテとか、いろいろ言ってんでしょうよ。この国を先進国から完全に脱落させて、独裁に持っていくために」

永井「日本国憲法はまず、個々人を大事にしようという考え方、個人の尊厳ですね、それが基本にあるわけです。個人の尊厳から発するものだから人権は保障しようと。だから、統治する者とされる者は同じでなければならないというわけで、民主主義ができて。さらに、最大の人権侵害は戦争である、だから平和主義というものも出て来るわけですよね。すべてが個人の尊厳から導き出さ
れているんです」

岩上「だからこそ彼らは『個人』が許せないんでしょう。さっきも話題になったじゃないですか、『個人』を抹殺すると(※36)。で、これはもうクーデターによらなければできないから、緊急事態条項という名前のクーデターを起こしてから、あとは煮るなり焼くなり自由にやれるようにしていく。その後のブループリントは示さない、ということでしょう?」

永井「恐ろしいですね」

岩上「『革命』に近いんじゃないですか?」

永井「『革命』は民衆が政権をひっくり返すことですが、『クーデター』は権力者が交代することですから、おそらくクーデターに近いとは思いますけどね」

岩上「クーデターとも革命とも言えない。『反革命』とでもいいましょうか(※37)。とにかく、一時的に権力を集めてしまって、後は時間かけて変えていく。日本人は、悲しいことに、ちょっと時間かければすぐ忘れていきますからね」

永井「そうなんですよね……」

岩上「ということは、別に血を流さなくても、記者を外せばいいわけでしょ?そしたら黙っちゃいますから。NHKも他も、みーんなそうだから」


※33)長勢法務大臣の動画:
 長勢甚遠(ながせ・じんえん)は1943年富山県富山市生まれの自民党政治家。東大法学部卒業後、労働省(現・厚生労働省)勤務を経て、1990年から衆議院議員を7期務めたほか、法務大臣(第1次安倍内閣)、内閣官房副長官(第3次小泉改造内閣)、法務副大臣(第2次森改造内閣)などを歴任し、創生「日本」、日本会議国会議員懇談会、神道政治連盟国会議員懇談会など右派諸団体に所属する。
 ここで話題になっているのは、平成24年5月10日、会長代理を務める創生「日本」東京研修会における、長勢氏の演説の模様である。
 「憲法草案(自民党改憲草案のこと)というものが発表されました。私は正直言って(この草案に)不満があります。(この草案が)一番最初にどう言っているかといいますとですね、国民主権、基本的人権、平和主義、これは固持するっていってるんですよ!? この三つをなくさなければですね、ほんとの自主憲法にはならないんですよ!」
 「人権がどうとか平和がどうだかと言われると怖気づくではないですか?それは我々が小学校からずっとずっと教え込まれたからですよ。それを書き直すのは大変な作業です。皆で力を合わせて頑張りましょう!」
 長勢氏に続き、他の登壇者も次々気焔を上げる――「日本とって一番大事なのは何かというと、私は皇室であり、国体であると常々思っております。我々の歴史とか伝統とか、しっかりと守る」(城内実氏)、「国防軍を創設する、そんな憲法草案を提出をいたしました」(稲田朋美氏)、「今必要なのは行動すること、実現させることだと思います。みなさん、憲法改正しましょうよ!(中略)ならばいま奪われている領土、取り戻しましょうよ!北方領土っ、竹島っ、(中略)尖閣っ、使っていきましょうよ!軍事利用しましょう!」(新藤義孝氏)等々。
 かくなることを口にしながら拍手と嬌声を送り合うそのありさまは異様であり、IWJも繰り返しこの件を取り上げて警鐘を鳴らしている。
参照:
・Wikipedia「長勢甚遠」【URL】http://bit.ly/2vi3an4
・You Tube「 創生「日本」東京研修会第3回 平成24年5月10日 憲政記念会館」【URL】 http://bit.ly/2xuGMrj
・IWJ「(再々掲)【岩上安身のニュースのトリセツ】「国民の生活が大事なんて政治は間違っている!」と稲田朋美氏が!? 「国民主権、基本的人権、平和主義をなくせ!」と長勢甚遠氏が!? 自民党の改憲勢力の恐るべき本音が明らかに! 2016.6.30」【URL】 http://bit.ly/29Qpkn2

※34)大日本帝国憲法における人権:
 大日本帝国憲法は第2章(第18条~第32条)に人権規定を置いたが、それは「國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬」する天皇(第4条)から恩恵として下賜される、「臣民ノ權利」という位置づけであった。
 しかも、「日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ應シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得」(第19条)、「日本臣民ハ法律ノ範圍內ニ於テ居住及移轉ノ自由ヲ有ス」(第22条)、「日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及搜索セラルヽコトナシ」(第25条)、「日本臣民ハ法律ノ範圍內ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス」(第29条)のように、その権利や自由はあくまで法律の範囲内において保障されるとされた。
 つまり、日本国憲法のもとで我々が「侵すことのない永久の権利」(第11条)として享受している基本的人権は、大日本帝国憲法下では法律にもとづきさえすれば制約することが許された(「法律の留保」と呼ばれる原理)のであり、1925(大正14)年制定の治安維持法はその最たる例である。
参照:
・Wikisource「大日本帝国憲法」【URL】https://bit.ly/2P9MwUX
・Wikipedia「大日本帝国憲法♯特徴」【URL】https://bit.ly/2PxX53x
・日本大百科全書(ニッポニカ)「法律の留保」【URL】https://bit.ly/2P7Tmdx

※35)一君万民論:
 幕末に倒幕論者や草莽(そうもう)の志士によって唱えられた、国家において君主のみがただ一人、生来の権威を具えた者であり、その下で人民はみな平等であるという思想のこと。
 吉田松陰(1830-1859年)が藩校明倫館の元学頭で儒学者の山県太華(1781-1866年)との論争において主張した、「天下は万民の天下にあらず、天下は一人の天下なり」(中国の古典的兵法書『六韜』にある「天下は一人の天下にあらず乃ち天下の天下なり(=天下は君主一人の専有物ではなく、天下の人々の共有物である)」のアンチテーゼ)がよく知られる。
 天皇陛下のもとで万民は平等になるというこの一種の擬似平等主義は、倒幕および明治維新の原動力となったほか、維新後は天皇制強化のかたわらで、廃藩置県、徴兵、秩禄処分といった身分特権の縮小や被差別部落民の解放令、さらにはデモクラシー運動を推進する思想的潮流を形成した。
参照:
・Wikipedia「一君万民論」【URL】https://bit.ly/2QkV07W
・Wikipedia「吉田松陰」【URL】https://bit.ly/2wXEzsl

※36)「個人」を抹殺したい改憲派:
 日本国憲法はすべての国民が「個人」として尊重され、各々の有する生命、自由、幸福追求の権利を保障されると定めている(第13条)。
 だが、人間は本質的に社会生活を営むものであり、ある一個人が自分の権利だけを主張し利益や幸福の追求に邁進すれば、他の個人の権利を侵害しその利益や幸福を害することが当然起こり得る。「公共の福祉」は、こうした自由や利益の相互的衝突を調節し、その共存を可能とする公平の原理である。
 日本国憲法では、第12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は(略)常に公共の福祉のためにこれを利用する」、第13条「国民の権利については、公共の福祉に反しない限り(略)最大の尊重を必要とする」、第22条「公共の福祉に反しない限り、住居、移転及び職業選択の自由を有する」、第29条「財産権は、これを侵してはならない。(略)公共の福祉に適合するように」にその規定がある。
 ところが自民党改憲草案は、それを定めた第12条の「公共の福祉」の文言を削除したうえ、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」という文言を新たに付け加えた。
 「責任・義務」の名のもと、個人の権利が公=権力体制の利益のために制限を加えられることを許容するこの規定は、具体的権利を定めた条文のなかに、ライトモチーフのごとく鏤められている。
 たとえば、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する」としている日本国憲法第21条に次のような条文を「第2項」として新設し、「公益」(その具体的内容は体制によって恣意的に解釈される可能性をはらむ)のために表現の自由や思想・信条の自由が制限されることを明文化している:
 「2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」
 また、勤労者の団結権、大日本帝国憲法にはなかった規定であり、労使関係において立場の弱い労働者が団結することで自分たちに有利な労働条件を確保するためのこの権利を定めた日本国憲法第28条「勤労者の団結する権利及び団体交渉、その他の団体行動をする権利は、これを保障する」にも、改憲草案は次のような条文を新設。「全体」=「公益及び公の秩序」の利益の前に、公務員の個人としての権利は犠牲にすると、はっきり規定されている:
 「2 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。」
 このように、自民党改憲案では、「日本国憲法が『侵すことの出来ない永久の権利』として保障する基本的人権が、明治憲法下での公共の安寧秩序や法律の範囲内での『人権保障』のような統治機構の定める秩序や法益の下位のものと位置づけられ、その許容範囲でしか存在できないものに貶められ」ている。
 そこで尊重されるのは、自立した「個人」ではなく「『公益及び公の秩序』の内側の従順な国民」にほかならない。
参照:
・コトバンク「公共の福祉」【URL】https://bit.ly/2p4zzw7
・社民党「自民党『日本国憲法改正草案』前文批判(案)」【URL】https://bit.ly/1hOli0J

※37)クーデター・革命・反革命:
 「クーデター」coup d’état(「国家に加えられる一撃」を意味するフランス語)は、既存の支配勢力の一部が非合法的な手段(主に武力行使)に訴えて政権を奪うことを指し、支配階級内部での権力移動による政治体制の変革のことである。
 これに対し、「革命」revolution(訳語それ自体は、古代中国の政治思想である「易姓革命」――「姓を易(か)え命を革(あらた)める」。不徳の支配者一族は天命によりその地位を追われ、別の一族に交替させられるという考え方に由来)は、支配階級とは異なる階級が超法規的に既存の体制を打倒し、新たな政治的・社会的体制を作り上げること、つまり、政治権力がある階級から別の階級に移行することによる、統治体制の変革のことを指す。
 「反革命」counter-revolution は、「革命」によって打倒された旧支配層や反動勢力が権力奪回を目指して運動し、新体制を覆して旧体制を復活させようとすることである。
参照:
・日本大百科全書(ニッポニカ)「クーデター」【URL】https://bit.ly/2SIJLrC
・日本大百科全書(ニッポニカ)「革命」【URL】https://bit.ly/2AILzKd
・日本大百科全書(ニッポニカ)「反革命」【URL】https://bit.ly/2SJIn8q

ジャーナリストを黙らせる方法はいろいろある! 岩上安身の言論活動を萎縮させるため、元大阪府知事の橋下徹氏は卑劣なスラップ提訴!

岩上「黙らせるための方法はいろいろあるわけじゃないですか。僕だって、橋下さんからスラップ訴訟ですからね(※38)。橋下さんひとりが思いついてやったことなのか、そうではないのか、それはわかりませんけれど」

永井「スラップ訴訟という概念(※39)があるくらいですから、嫌がらせのために訴訟を起こすということはあり得ます。通常の一つの行動類型としてね」

岩上「少なくとも、僕の言論にストップをかけるためにやったのは事実です。だって、ご本人がそういう風に言ってますから」

▲橋下徹・元大阪府知事(2015年10月23日、IWJ撮影)

永井「それはひどい」

岩上「ひどいも何も、普通だったら、ある事実があって、それが争点となって…ていうのが訴訟じゃないですか。橋下氏は僕のたったひとつのリツイートで引っ掛けてきたんですが、ところが彼は、ツイッターやなんかで、『大体、岩上というやつは、これまでうちのことをいろいろ書いて面白くなかった』とか、いろいろ言ってるわけです。つまりは、リツイートとは関係ない所に、本当の請求原因があることになるわけですよ。おかしな話じゃないですか。やっちゃいけない訴権の濫用じゃありませんか?」

永井「そうであれば、本当に濫用ですよね。おっしゃるとおり」

岩上「でも、僕が書いてきた文章については、今まで文句は言ってきてないんですよ。僕の言ってることにどこか面白くないことがあるんだったら、名誉棄損に当たるとか、あるいは、言論の自由もあるし、そもそも言論人同士なんだから、裁判の前に議論を戦わせればいいじゃないですか。

 でも、一度も論戦を挑まれたことはない。ある日突然、ただひとつのリツイートで訴えてきたわけです。それなら、そのリツイートが何かしら彼の評判を低下させるような、つまり損害を生じせしめるようなものであったかどうかが問題になりますが」

永井「裁判となれば、争点になるのはそこですわね」

岩上「それだけです。なのに、よそで『岩上の言うことが面白くなかった』って言ってるわけですよ。僕だけでなく、彼はそういう人間に対してすごく威嚇的なことをいっぱいやっているわけです。『自分を悪く言うようなことを発信すれば、お前、やってやるからな』みたいに、気に食わない相手を萎縮させようとしてるようにしか聞こえないですね」

永井「少なくとも、報道陣が訴訟を起こされたら、対応するのにすごい時間と労力かかりますよね」

岩上「そうです、うちもめっちゃかかってます」

永井「それから、また同じような事が起きたらどうしようとかね、そういう心理的効果は相手にもたらしますよね。萎縮させると思いますよ。個人の場合は特に。岩上さんも個人でやってますからね」

岩上「しかもリツイートですよ? そのリツイートがものすごくけしからんと言ったって、内容は公知の事実に関わる話だったんですよ?」

永井「公知の事実をリツイートしたんだとすれば、それによって何か社会的評価が低下するんですかね?」

岩上「下がるわけないじゃないですか。橋下氏に対する批判本なんて、いっぱい出てますよ。例のリツイートについては、まず講談社から橋下氏を批判する本が出ていて、そして更にそれを後押しするような『フライデー』の記事があった(※40)んですが、その『フライデー』の記事の見出しをそのままに書いたツイートがあった。発信者は僕の知らない人です。

 そのツイートには、『恥を知れ』とか個人的な意見が書かれているけれど、話題それ自体はよく知られている事実です。そして、それを僕はリツイートした。でも、こういう文言が行きすぎも何も、ツイートした人が引用している『フライデー』も講談社の批判本も、とっくの昔に出たもので、名誉毀損の公訴時効の3年を過ぎてます。それらに対して彼は名誉棄損で何かアクションを起こしたのか? 何もしてない。なら確定でしょ? つまりは新規性が全くないんですよ。それで何で訴えることができるんですか。なのに訴えられるなんて、おかしな話ですよ」

永井「そういう訴訟起こされても、岩上さん、ちゃんと頑張っていらしてすごいですね」

岩上「応訴しますよ、そんなもの」

永井「いや、この事件に限らず、こうやって活動を続けていらっしゃって…」

岩上「それで手を抜くわけにはいきません。向こうの狙いが僕の活動を弱体化させることだとしたら、負けたくないじゃないですか。だから、いま一番必要なこと、大事なことはやらなきゃという心境です。

 とはいえ、うちは皆さんの会費とカンパで支えられて成り立ってるわけですし、やっぱり応援して下さる人がいて。その人たちが背中を押して下さるのでなければ、僕はここまでやれないです。頑張らないし、頑張れないし、頑張れるわけもない」

永井「大変でしょうけれど、私も応援しています」


※38)橋下徹氏からのスラップ訴訟:
 元大阪府知事・前大阪市長で弁護士の橋下徹氏が、2017年12月15日、大阪簡易裁判所に岩上安身を提訴した件。
 岩上安身は同年10月29日ごろ、前日にツイッター上で発信された「橋下徹氏が府知事だった時代に府の幹部を自殺に追い込んだ」という内容のツイートをリツイート。このことが名誉毀損にあたるとして、事前の警告も交渉もなく、損害賠償100万円、弁護士費用10万円を請求する訴状が橋下氏からいきなり送りつけられてきた。
 元ツイートに記された内容は、すでに何年も前から刊行物や記事等を通じて世に知られた事柄だった(後註※40参照)が、橋下氏は元ツイートの発信者や元ツイートの引用元となった出版物を訴えるでもなく、リツイートしただけ(そこに自身のコメント等は一切付していなく、その後削除した)の岩上安身を狙い撃ちにしたのである。
 岩上安身は、この提訴が自分を精神的・経済的に疲弊させ、その言論活動を封じることを目的としたスラップ訴訟(後註※39参照)であると判断。2018年4月19日の第一回口頭弁論を皮切りに、弁護団(梓澤和幸団長)とともに法廷でその不当性を訴え続けている。
 第三回口頭弁論直前の2018年8月13日には、橋下氏に対する反訴を提起。今後言論空間が恫喝的な訴訟によって萎縮させられることのないよう、橋下氏の訴権の濫用に対して厳しい処罰を求めていく構えである。
参照:
・IWJ「『これは訴権の乱用だ』~橋下徹・元大阪府知事がたった1本の、しかも削除済みの『リツイート』でIWJ代表・岩上安身を不当なスラップ提訴!『言論の自由に対する挑戦であることは間違いない』自由報道協会主催記者会見 2018.1.22」【URL】https://bit.ly/2EJuBOE
・IWJ「橋下徹氏のスラップ訴訟!『請求原因は世界一ちっぽけでギネスものだが言論の自由への侵害はきわめて大きい』IWJ岩上安身が『日本にも反スラップ法が必要』と外国特派員協会で訴え! 2018.2.2」【URL】https://bit.ly/2svNkIL
・IWJ「『原告の訴えは、訴権の濫用にあたるスラップであり、本件請求は却下されるべきである』第一回口頭弁論で、梓澤和幸弁護士がおこなった弁論の要旨を掲載! 2018.10.24」【URL】https://bit.ly/2qufkIY
・IWJ「橋下知事時代の大阪府職員自殺と箝口令! 『自殺に追い込んだ』という表現は、当時広く流布されていた! 第二回口頭弁論で、西晃弁護士がおこなった弁論要旨 2018.10.25」【URL】https://bit.ly/2zqsAlS
・IWJ「台風20号接近による暴風雨が予想されたにもかかわらず、多くの市民が傍聴席にかけつけた!橋下徹氏による岩上安身へのスラップ訴訟・第三回口頭弁論と報告集会 2018.8.23」【URL】https://bit.ly/2PFLteP

※39)スラップ訴訟という概念:
 スラップ(Strategic Lawsuit Against Public Participation)とは、社会的地位や経済力をより多く持つ者(比較強者)が、それらをより少なくしか持たない者(比較弱者)に対し、恫喝や言論封じ、さらには報復(嫌がらせ)を目的として起こす訴訟のこと。被告=被害者が弁護士費用や時間的拘束など多大な負担を強いられるために肉体的・精神的に疲弊してゆき、反対・批判活動を続ける意欲や力を喪失することに加え、そのありさまを目の当たりにした他の反対者・批判者たちも萎縮して発言をためらうようになることがその狙いである。
 「訴訟大国」アメリカ合衆国でまず頻発するようになり、デンバー大学のジョージ・プリング教授とペネロペ・キャナン教授がスラップの概念を提唱。表現の自由をも揺るがす反社会的行為として社会の関心を集め、カリフォルニア州のようにスラップを厳しく規制する法「反SLAPP法」を制定するコミュニティも現れた。「反SLAPP法」では、原告側の提訴がスラップであると法廷で認められれば、その訴えは棄却されたうえ、訴訟費用もすべて原告側の負担となる。
 日本でも2000年ごろから「業務妨害」や「名誉毀損」の名を借りたスラップが多発するようになったが、社会的認知度は低く、被害者や支援団体、弁護士、ジャーナリストらから規制立法を求める声が上がっている。
参照:
・Wikipedia「スラップ」【URL】https://bit.ly/2REi7L3
・東洋経済ONLINE「スラップ訴訟をどう抑止していくか『反社会的な行為』という認識を広めることが重要」2010年2月2日【URL】https://bit.ly/2REPXzs
・IWJ「スラップ訴訟!LEGAL TERRORISMの危険性を訴える!岩上安身によるジャーナリスト烏賀陽弘道氏インタビュー・パート1 2018.4.9」【URL】https://bit.ly/2POG1ao

※40)元ツイートに書かれていたことは、雑誌記事や刊行物を通じてすでに知られている事実:
 元ツイートにある「府知事時代の橋下氏の言動が、大阪府職員を自殺に追い込んだ」とは、『フライデー』2011年10月28日号の記事「大阪府幹部職員が爆弾証言『私の同僚は橋下徹府知事に追い込まれて自殺した!』11月府知事&市長W選挙に持ち込んだ独裁知事。その維新のウソを側近たちが暴く」を下敷きにした記述である。
 講談社のオフィシャルサイトに今も掲げられているこの記事は、同時期に出版された同社の単行本『「仮面の騎士」の騎士~独裁支配の野望と罠』(「大阪の地方自治を考える会」編)のパブ記事的性格のもの。単行本では職員が自殺に至る経緯が、大阪府幹部職員の手でいっそう生々しく綴られている。
 橋下氏はこれらの記事や出版物ではなく、6年も経ってこれに言及した一ツイートの、さらにリツイートを行っただけの岩上安身に対して、名誉毀損の訴えを起こしてきたのである。
参照:
・IWJ「新たなスラップの予告!? 原告の橋下徹氏から『スラップ訴訟と主張すること自体が新たな名誉毀損』という驚くべき反論が! 2018.6.21」【URL】https://bit.ly/2RyQcvZ
・現代ビジネス「大阪府幹部職員が爆弾証言『私の同僚は橋下徹府知事に追い込まれて自殺した!』 11月府知事&市長W選挙に持ち込んだ独裁知事。その維新のウソを側近たちが暴く」2011年10月23日【URL】https://bit.ly/2Qf47XX
・講談社BOOK倶楽部『「仮面の騎士」の騎士~独裁支配の野望と罠』【URL】https://bit.ly/2D0sEw4

「記者の2人も逮捕されれば、日本の報道はもう終わり!」心ある記者が現場を去り、あるいは毎日のように「処刑」されているのが日本の報道機関の現実!?

岩上「『やっぱり、世の中を動かすものは、人々の思いですよ。こうやって既存メディアなんかが屈していくんですよ』といくら警告を発しても、多くの人はそうは思いたくないんでしょう。『NHKはちょっと良くなって来たよね』とか、そんな風に受け取っちゃうんです。いやいやとんでもない。心ある記者が毎日のように『処刑』されているのが現実です」

 A記者のことも、一個の人生としては大変なことなのに、こういう流れの単なるひとコマとして過ぎていくんです。そして、他の記者も次々と同じ目に遭っていく。『俺はひどい目に遭った』といって表に出て行動しようにも、容易いことじゃありません。経済的な損失だって。大人しくしてたら、残りの人生の賃金や退職金だって手に入ったわけですから。

 何よりも問題なのは、やっぱり記者クラブ。ギルドですからね(※41)。例えば、同業の他社に移ろうと思っても、NHKの中で暴れちゃったらもう、どこも入れてくれませんよ。官邸から言われたとおりにやるという、どこも同じ構造になってしまってますからね。つまり、おとなしく言うことを聞く記者以外入れないということです」

永井「報道の自由がものすごく制限されるようになりましたよね。テレビとかを見ても、ちゃんとした仕事をしていない感じがあります。ポイント外したり、変な形でバイアスかけたり、本当にひどいものです」

岩上「そう。少しずつ少しずつ、気付かれないように、そうやってスピンコントロールしていくわけですよ」

永井「こういう状況で、現場の人たちは、それはもう苦しいでしょうね」

岩上「苦しいけれども、どんどん人が入れ替わっていきますからね…。真面目な人なら、辛くなって『もう無理だ』って現場を離れていく人もいれば、諦めている人もいっぱいいます。それはもう、こういうのを受け入れられる人がやっている状況で。

 普通に良心のある人間だったら、やっぱり頭の中が認知的不協和(※42)になりますからね。さもなくば、完全に洗脳される側になっちゃうんですよ。国家がそっちの方向へ向かうんだったら順応しないとって。

 この間、『夜バズ』か何かで、『日本は朝鮮半島を植民地化したことはない』とか言い切った人がいて話題になってますが」

▲左・岩上安身、右・永井幸寿弁護士

永井「誰ですか、それ?」

岩上「知らない奴ですよ。どこぞの馬鹿者が言ってるんですけどね。したのは『植民地化』ではなく『併合』だって(※43)。まさにそれを植民地化というんだよ、バカ野郎が!ていう話なんですけど。

 でも、そういう風に始まっていくんですよ。こういうのを消していくのに、日々追われて大わらわになってるうちに、『併合は植民地化ではないんだ』っていう風に、刷り込まれていくんですよね。こういったレイシズムや歴史の捏造みたいなものが何を狙い、どこへ向かうか、はっきりしてるでしょ?

 そういう中で、人々は今言った認知的不協和みたいなものを解消して、そっちの方へ合わせていく。そうする方が、明らかに経済的に利得があるわけです。仕事があるんだから。合わせずにまともなことを言おうものなら、仕事が来なくなるわけですからね。そりゃ、傷害を受けるとか、暗殺されるとかね、そんないきなり暴力的なことはされないでしょうよ、でも、痴漢冤罪ぐらいはあり得ると思う」

永井「冤罪ね」

岩上「絶対あると思うんで。だから僕は、電車は絶対に一人では乗りません。僕が路上で刺されたりなんかしたら、わかりやすいじゃないですか。そうなることで、僕の社会的信用が失墜することはないわけですよ。でも痴漢冤罪だったら、僕の社会的信用は終わりになりますからね」

永井「なるほど、そうですね」

岩上「僕の身に何かあるとすれば、そっちだろうなと思って。僕はもう何年も前から、絶対電車には一人で乗らない。一人で道を歩かない。日々、仕事仕事で酒は一切飲んでないし、夜の街で会食するなんて全くないし、どこも行きませんけどね」

永井「すいません、私、毎晩飲んでます(笑)」

岩上「先生、いいんです、大丈夫です。先生はもう、痴漢冤罪は大丈夫じゃないかなと思うんです(笑)」

永井「(笑)我が国の民主主義のために、ご苦労様でございます。ありがとうございます」

岩上「いえいえ(笑)。先生も『報道機関であと2人逮捕されたら終わる』とか何か、そういうことをお話しになっておられましたが…」

永井「歴史研究者の半藤一利さん(※44)が言っておられた言葉だったと思います。例えば特定秘密保護法とか、まだ本格的に運用されていないわけですが、ああいうものがどんどん運用されていって、記者の2人も逮捕されれば、日本の報道はもう終わってしまう、という警告でした。

 これも半藤さんがおっしゃっていたことだったと思いますが、例えばドイツの場合、第二次大戦が終わった段階で、ドイツの報道機関はいったん全部潰れたんですよね。で、どこもゼロからやり直したわけですが、日本の場合は潰れず残ったわけです。朝日も毎日もNHKも。つまり、ゼロからやり直したのではないから、権力に対してすごく弱いと。

 それを読んで、私も『ああ、本当にそうだよな』と思ってですね、危機感に捕らわれたんです。だから、岩上さんは大丈夫だろうかと心配でして」

▲半藤一利氏(2013年6月5日、IWJ撮影)

岩上「ゼロからやってるんですから、あっという間にゼロにされるという可能性も(笑)」

永井「いやいやいや」

岩上「いや、それはありますよ。どういう風になるかはわかりませんけど、あるとは思います。だから、僕もたびたびスタッフに聞くわけです、『そうなったらどうする?』って。すると、スタッフは『その時になってから考えます』と(笑)。

 たしかにそれは仕方がないことです。でも、あまり先のことを考えてくれない方がむしろいい。先々まで考えたら、『この会社、ちょっとヤバいから、やっぱり早く辞めようかな』ってなるかもしれない。あまり先々まで考えない奴が集まってくれて、取りあえずいま一生懸命働こう、と思ってくれたらいいと思ってやっています。

 ともかく、先生、今回の独裁への持っていき方はどうもおかしいと思われませんか?」

永井「おかしいですね」

岩上「あまりに唐突過ぎて。先程も話題になったように、『立法事実』があるとかないとか(前出註※7参照)、そんな風に取りざたされますけれども、そもそも目的自体がよくわからない。安倍政権が目指しているのは単なる独裁ではなく、実は「属国的傀儡独裁」なのではないか、私はそういう気がしてならないのですが。最後にそのことについて、先生のご意見をうかがいたいと思います」


※41)ギルドとしての記者クラブ:
 記者クラブとは、公的機関や各種業界団体の各組織を取材するために組織されている、報道機関の記者たちの集まり。「内閣記者会」(「永田クラブ」)、「国会記者会」、「衆議院記者クラブ」、外務省の「霞クラブ」、警視庁の「七社会」および「警視庁記者俱楽部」など、主に大手報道機関の記者が官邸や中央官庁、政党、警察、企業・業界団体等に設置された記者室に集い、各団体から独占的に情報提供を受けながら取材活動を行うという日本独特の制度である。
 1890(明治23)年に第一回帝国議会が開かれるさい、記者団の取材拒否を打ち出した議会に対し、新聞各社が「議会出入記者団」を組織して取材許可と傍聴券交付を要求したことがその起源とされ、現在その数は800にものぼる。
 記者たちにとっては情報を取り逃がすこと(「特オチ」)がない、多忙な政府高官などに取材する場が与えられる、情報提供側にとっては情報を効率的に流すことができる等の利点はあるものの、むしろこのシステムは、その弊害こそがさかんに指摘されてきた。
 記者たちが同じ時間に同じ情報源から記事を書くために横並び報道となる、すなわち「特オチがないかわりに特ダネもない」。政府が発表する情報量の増加(「発表洪水」と呼ばれる)にともない、記者たちはこれに追われて独自の関連調査を行う時間を奪われるため、個々の記事が内容空疎なものと化す。記者たちと情報提供側組織、つまり「権力」とが癒着する、ひいては情報提供者側に批判的な記事が減少する、等々。
 とりわけその閉鎖性・排他性は、外国メディアからもしばしば厳しく批判されてきた。記者クラブの会員は「日本新聞協会に加盟する報道機関」に限られているため、フリーランスのジャーナリストや雑誌記者、外国特派員などはクラブから締め出されており、情報へのアクセスが著しく制限されている。クラブに属していなければジャーナリストにあらずといった、差別的風潮も蔓延している。
 「記者クラブ」という制度は、このように、情報と分析を多角的に市民に提供するという観点からすれば弊害以外のなにものでもないのであり、廃止を求める声はいまなお高い。
参照:
・Wikipedia「記者クラブ」【URL】https://bit.ly/2JApYWj
・「記者クラブ一覧情報館」【URL】http://www.kisha-club.jp
・日本記者クラブHP「日本記者クラブとは」【URL】 https://bit.ly/2JDxKCl
・樋口美智子「日本の「記者クラブ制度」について」『東洋法学』1993年【URL】 https://bit.ly/2Js4XRE
・J-CASTニュース「記者クラブ制度「やっぱり廃止した方がいい」「NEWS23」岸井氏らが「電波停止」発言で会見」2016年3月24日【URL】https://bit.ly/2sVUx1E

※42)認知的不協和:
 相反する複数(通常は二つ)の認識や信念、価値観に直面した個人が置かれる精神的ストレス状態のこと。
 アメリカの心理学者レオン・フェスティンガー(1919-1989)が提唱した用語で、人はこれを解消・低減するために(1)相克を起こしている二つの認識/振る舞い(たとえば「ドーナツを食べる」と「ダイエットする」)のうち、一方を変更する(「私は二度とドーナツを食べない」)、(2)一方の認識/振る舞いを正当化するために、もう一方の認識/振る舞いに変更を加える(「たまにダイエットをサボることぐらいは許されている」)、(3)一方の認識/振る舞いを正当化するような新たな認識/振る舞いを付け加える(「これからジムでの運動を30分長くして、ドーナツで摂ったカロリー分を消費する」)、(4)自分の信念に都合の悪い情報を無視/否定する(「ドーナツは高カロリーではない」)などの行動に出るとされる。
 認知的不協和については、2015年に早稲田大学で岩上安身が講演を行っている。その内容は2015年12月17日に成文堂から出版された『「今を伝える」ということ』の中の「『王様は裸だ』と君は指摘する(できる)だろうか――? メットメディア・市民ジャーナリズムの可能性、あるいは耐え難い認知的不協和について」という項にまとめられている。
参照:
・Wikipedia「認知的不協和」【URL】https://bit.ly/2SX5VXb
・Wikipedia(en) Cognitive dissonance【URL】https://bit.ly/1j1nmT5
・IWJ「「王様は裸だ」と君は指摘する(できる)だろうか?―ネットメディア・市民ジャーナリズムの可能性、あるいは耐えがたい認知的不協和について~『「今を伝える」ということ』岩上安身講演続編 2015.12.20」
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/279798
・「王様は裸だ」と君は指摘する(できる)だろうか ~岩上安身寄稿の新刊 『「今を伝える」ということ」』、(2015年12月20日発売)
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/279778

※43)「日本は朝鮮半島を植民地化したことはない、あれは併合だった」:
 2018年5月19日に配信された、インターネットテレビ局「AbemaTV」の報道番組「みのもんたのよるバズ!」において、出演者のひとりで医師・タレントの友利新氏から飛び出した発言。
 朝鮮半島和平の歩みで「蚊帳の外」に置かれた日本が今後拉致問題をどのように解決してゆくかが話題になった際、同じく出演者でベストセラー『日本会議の研究』の著者・菅野完氏が、かつて朝鮮半島を植民地化し南北分断の原因を作った日本の責任、すなわち戦後賠償に言及した。友利氏はそれをとらえて、次のように言い出したのである。
 「(戦後賠償と言っても)宗主国じゃないですよね、日本は。だって、別に植民地にしたわけじゃないから。統治しただけですよね?」
 韓国領有の経緯からしても、人的・物的資源の搾取や反抗運動の制圧など統治の方法からしても、そもそも当時の政府や軍自身が「殖民地」の語で朝鮮半島を指し示していたことからも、日本による韓国の「植民地化」だったことは明白であり(日韓「併合」という表現は、そのことを隠蔽するために「語調の余りに過激ならざる文字を選ばんと欲し種々苦慮したる」末、案出されたものである)、戦後、日本政府もその認識を正式に認めてきた。
 それをまるで無視した友利氏の主張に、ただちに司会のみのもんたや菅野氏から、「それは認識が違う、植民地ですよ」「近代の歴史に挑戦するようなことを軽々しく言ってはいけない」等々と諌める声が上がった。
 にもかかわらず、友利氏は「併合と植民地って、そこはちゃんとしないといけないですよ」「私のおじさんが平壌の大学に、日本の大学として行っていた。(植民地に)大学とか作りますか?」「おじさんは植民地の大学に行った(とでも言う)んですか!?」「じゃあ台湾はどうなんですか!」等々と、納得いかぬ様子で反論を企て、他の出演者らにやり込められる一幕となった。
参照:
・ゆるねとにゅーす「タレント医師の友利新が仰天発言!『日本は朝鮮を植民地にしたわけじゃない。統治しただけ』みのもんた『植民地ですよ』菅野『歴史に挑戦するようなことを軽々に言ってはいけない』」2018年5月21日【URL】https://bit.ly/2JJr7M9
・個人ブログ「中年速報」、エントリー「【よるバズ】友利新さん、過去に日本が朝鮮半島で行った『植民地支配』を『併合』だったと熱弁し菅野完さんに挑む!」2018年5月21日【URL】https://bit.ly/2PH0ME2
・コトバンク「日韓併合」【URL】https://bit.ly/2RI3mHj

※44)半藤一利さん:
 1930年生まれ。文藝春秋の名編集者として専務まで務めた後、「歴史探偵」を名乗り、ベストセラーとなった『昭和史 1926-1945』(平凡社、2004)をはじめとする多くの著書を発表。近年は、自著やメディアでの発言を通じ、憲法9条の空洞化をもくろむ安倍政権とそれを容認する世相に警鐘を鳴らし続けている。
 2013年12月に成立した特定秘密保護法に関しては、戦前の「軍機保護法」をまねたものだと指摘し、「(安倍政権は)なにもメディアを弾圧しようなどとは思っていない。秘密保護法を厳しく適用するという脅しをかける。あるいは、たった1人の記者を不当な取材という法律違反で引っ掛ける。それだけで昭和でもそうだったように、メディアは自制し萎縮してしまう。それが権力者が望んでいること。戦前と同じ構図です」と語った。
 IWJは、『そして、メディアは日本を戦争に導いた』『日中韓を振り回すナショナリズムの正体』(2013・2014、東洋経済新報社)を半藤氏と共に著した保阪正康氏にロングインタビューを行い、この二冊について詳しいお話しをうかがっている。こちらもぜひご視聴いただきたい。
参照:
・時事ドットコム「作家・半藤一利氏インタビュー 政界インタビュー」【URL】https://bit.ly/2PogeFB
・IWJ「【第214-219号】岩上安身のIWJ特報!『ナショナリズム』とは何か 今こそ、昭和史の教訓に学ぶとき~ノンフィクション作家・保阪正康氏インタビュー 2015.8.6」【URL】https://bit.ly/2DjkbUK

日本は米国にとっての不沈空母、工場、植民地軍隊!? 日本会議にとっての「戦後の国体」とは「日米安保・日米地位協定・日米合同委員会」!

岩上「日本では、大正の終わり頃から政党政治が本格的に始まりましたが、満州事変や五・一五の後、『デモクラシーの危機』が叫ばれるようになりました。その時、代替イデオロギーとして現れたのが『立憲主義』。

 立憲主義といっても、『立憲デモクラシー』ではなく、『立憲的独裁』というようなことを言う者が出てきた。蝋山(ろうやま)政道という政治学者です(※45)。言うなれば、ドイツにおけるカール・シュミット(※46)のような存在ですが、いわく、『議会に代わって少数の専門家による国家支配を目指すべきだ』と。

 当時、ドイツやイタリアなどですでに独裁の傾向、イタリアのファシズム、ドイツのナチズムですね、がありました。何より、ロシア革命によってもっと早くに成立していた共産主義。当時共産主義は脅威であり、同時にまた、偉大にも見えたわけです。

 共産主義の、極めて効率のいい計画生産。資本主義というものは非常に脆弱で、恐慌を繰り返すわけですが、そういう時に資源の無駄遣いをせず、一党独裁で計画経済を断行するっていうのは、これはすごいことじゃないか、目覚ましい成果を築くんじゃないかと。

 このことは脅威でもあったわけですが、じゃあ、プロレタリアート独裁じゃなくて、資本家の独裁になればいいじゃないか。そういう考えが出てくるようになっていたわけです。そんな状況と今の状況、とても似てるんじゃないかなと。

 そうは言っても、あの当時は天皇大権(※47)もあったわけですよ。だからこそ『天皇制ファシズム』とも呼ばれたし、また『立憲的な独裁』という言い方もできたんですが、今回の自民党のを見てると全部取っ払っちゃう感じですよね。そこに天皇はいない。日本の伝統が、とか何とか言っていますが、それも何を指しているのかはっきりしない。

 日本会議はB層の国粋主義者やナショナリスト達の寄せ集めですが、彼らに『日本の何を守るのか』と問えば『国体を守る』と。ではその『国体』とは何かと言えば、これがはっきりしないわけです。

 むしろ、例えばリベラルなことを言う今上天皇陛下や美智子皇后、あるいは今の皇太子に対して、批判的ですらある。批判的どころか、匿名のSNSやなんかでボロクソに書いている。極めて反皇室的なわけですよ。つまり、彼らが守りたいのは大日本帝国の『国体』ではない(※48)。

 では、彼らが守りたい『戦後の国体』とは何かといえば、『日米安保・日米地位協定』(※49)とその運用機関である『日米合同委員会』(※50)を頂点にいただく体制。憲法もこの下に置かれているわけです。

 だからこの問題が日本の国民の利益と衝突するような時、たとえば砂川事件のような時ですね、裁判になっても司法は統治行為論で判断をしない、ということになってしまうんです(※51)。

 ということは、彼らが目指すのは、その体制で得する日本国の上層部の連中が、下に全部言うことをきかせるようにできるようになる政府、つまり、日米同盟のための傀儡植民地機関ではないか、というふうに言わざるを得ないんですよね」

▲デモクラシーの危機と独裁

永井「さっきも説明したように、憲法が最高法規として最上位にあり、次に効力があるのが国民の代表が作った法律で、その下に法律に根拠を持つ『命令』がある(※52)わけですが、では『条約』がこの体系の中でどこに位置するかというと、これは国会の承認が必要という点で手続き的には法律と同じなんですが、国際協調主義から、法律より上位で憲法より下位、というのが本来の位置であるはずなんです。

 ところが、日米安保条約によって、例えば米軍人ですね、彼らに対しては裁判権が及ばないとか行政権が及ばないとか、そういうことになってるわけで。これ、事実上の治外法権ですね。つまりは主権が及ばないっていうことになります。たしかに、憲法には主権の範囲とか日本の領域とか、そういうのもは書いてありませんが、当然の事実としてそれは憲法上のものなわけです。

 ですから、条約によって憲法上の主権が及ぶ範囲が限定されてしまうということは、憲法よりも日米安保条約・日米地位協定が上にある、ということになってしまうと考えざるを得ません。これはおかしなことですよね。私は昔からおかしいと思っていました。

 例えば、明治時代に条約改正というものがありましたよね。外国人に対しては日本の裁判権が及ばないということで大騒ぎになって、これを改正するのが明治政府の課題になっていたわけです(※53)。

 で、結局は日本の裁判権が及ぶようになったんですが、いま米軍に対して当たり前のように行政権も裁判権も及ばないなんて、これはあり得ない話だと思います。他の国ではそういうことはないわけですから」

▲永井幸寿弁護士

岩上「これはですね、サンフランシスコ講和条約のとき、日本が独立を果たしたというポーズを取らせる代わりに、同時に日米安保に吉田茂がサインしたわけです。もちろん日米行政協定もセットで。つまりは軍事的な保護国化したってこと。

 実際、日本は有り体に言えば保護国であるとか属国であるとか、歯に衣着せず書くような学者はたくさんいますよ。日本通で通産省の研究もやったチャルマーズ・ジョンソンもそうです(※54)。日本に愛を持って、深い理解がある人でも、皆厳しく日本を突き放して、『日本は属国である』というようなことを言っていたりするんです。

 ちょっと古いですが、オーエン・ラティモアという人の『アジアの情勢』という本があります。1948年頃、アメリカ歴史協会の会合に報告書として提出され、『アトランティック・マンスリー』誌に掲載された論文なんですけれども。その第6章、『日本は誰の味方でもない』という部分で、日本はこんな事を言われてるんですよね(※55)。

▲オーエン・ラティモア著、小川修訳『アジアの情勢』(河出書房、1953年、原著1949年)

▲同書第6章、「日本は誰の味方でもない」の冒頭

 『アメリカの対日政策は、日本の歩む方向に、アジアは進ませる事ができるという仮説の上に立っている。仮説の連鎖第一環は、日本をアジアの向上とロシアに対する防壁とに仕立てあげることができる、という考えである。この仮説は、アメリカの政策の道具としての日本は、イギリスとドイツとネパール王国とがもつすべての価値を、一身に兼ね具えているというおどろくべき理論の上に立っているのだ。日本は、イギリスと同じように据付けの航空母艦として使うことができるし、ドイツと同じように周囲の国々のどれよりも発達した工業をもっているので、ドイツのように付近の主な国々の工業の発達を利用しまたそれを統制して反ロシア的方向に指導するための中心とすることができる』

 これ、第2は確実に成功したわけです。第1も間違いなく、中曽根が言ってた『不沈空母』(※56)の先取りですよね。

 次いで、『インドから独立しており、インドとイギリスに凶暴なグルカ人傭兵を供給しているネパール王国と同じように、「生まれつき訓練された」日本人は、「伝統的に反ロシア的」であるから、時とともに、独自の政治をもたず、自国の「工場」を支持するアメリカに固い忠誠を致すところの、新しい種類の植民地軍隊を供給する国となるだろう、と期待されているのである』

 とまあ、こういうことを、彼らは1948年から、しかも日本にも翻訳が紹介されるような形で言ってきた。つまり日本はアジアの工場で反共の砦、専守防衛ではあるけれど、日米同盟の枠組みで米軍を置いてきたんです。自衛隊はそれを補佐するものとして作っただけです。実際自衛隊は、それだけで完結できるような配備装備になってない。完結した国防軍ではなく、在日米軍の補完部隊として作られているんです。

 そのアメリカの戦略によって、今、アメリカは今度は自分は退いて、日本に攻撃能力を渡そうとしている(※57)。でも、その指揮権は基本的には渡す気はないし、情報も渡す気はない。

 韓国では、有事の指揮権については米韓での真剣な話し合いがあります。国民も皆、この問題について知っている。日本では、いざという時の指揮権は自衛隊にないことを皆全く知らない。要するに、日本では外国軍が最上位にあるわけです。

 だから日本は、アメリカ・ワシントンにではなく米太平洋軍に支配された、軍事植民地軍隊国家だと思うんです(※58)。安倍政権は、それの完成形をやろうとしてるんじゃないかと。米軍の都合に合わせてくれる、便利な植民地軍隊国家。『時代がそういう時代になったから、ちょっとお前、今度は工場からグルカ兵になれよ』と。全くいい譬えですよ。そう考えると、『立憲独裁』ですらないかもしれません」


※45)蠟山政道と「立憲的独裁」:
 蠟山政道(1895-1980年)は群馬県出身の政治学者。東京帝国大学法学部政治学科卒業後、同大学法学部助手を経て、1922年助教授、28年教授に就任。1927年から新設の行政学講座を担当した、日本における行政学研究のパイオニアである。
 三谷太一郎・東京大学名誉教授によれば、蠟山は犬養毅政友会内閣のもとでその前途を悲観し(実際、ほどなく五・一五事件が起こり、犬養内閣は最後の政党内閣となった)、「『立憲主義』の枠組を前提としながら、議会に代わって『権威をもって決定しうる組織』(専門家支配の組織)を作り出すため」の、「立憲的独裁」の概念を提唱。「一縷残存してゐる立憲主義そのものをも破棄せしむる危機」を回避する「唯一の道」として次の斎藤實内閣に提言した。
 だが、議会制を否定し、「天皇陛下によって正当性を付与された行政権に直結する専門家組織」による独裁を容認する点で、それは近代的意味における「立憲主義」とは似て非なるものだった。
 三谷教授は、今後の日本の権力形態がこうした蝋山の「『立憲的独裁』の傾向、実質的には『専門家支配』の傾向を強めていくのではないか」と懸念を表明。この動きに「『立憲デモクラシー』がいかに対抗するのかが問われてい」ると力説する。
参照:
・Wikipedia「蠟山政道」【URL】https://bit.ly/2QvRp7e
・三谷太一郎『日本の近代とは何であったか 問題史的考察』岩波新書、2017年. 【URL】https://amzn.to/2POp5AC

※46)カール・シュミット:
 カール・シュミット Carl Schmitt (1888-1985年)はドイツの公法学者、政治学者。ウェストファーレン地方プレッテンベルクのカトリック教徒の家庭の生まれ。ベルリン大学、ミュンヘン大学、ストラスブール大学に学び、1916年に『国家の価値と個人の意義』で教授資格を取得。ボン大学、ベルリン商科大学、ケルン大学の各大学で教授を歴任したのち、1930年にベルリン大学教授となる。
 当時ドイツはワイマール共和政期。ヴェルサイユ体制での戦後賠償金など過酷な負担を強いられ、激しいインフレで経済は疲弊していた。
 また、共産主義勢力の拡大、旧体制(帝政)支持派と共和政支持派、中央集権派と地方(州)分権派、自由貿易主義と保護貿易主義というように「古い価値観と新しい価値観が衝突した時代」(石田勇治氏)でもあり、議会における合意形成は困難で、政治的社会的混乱は収まる気配もない。
 そのような危機的状況にあって、カール・シュミットは大統領権限の最大化に活路を見出し、その理論的強化を模索していく。
 古代ローマ共和政からロシア革命に至るまでの膨大な政治史・政治思想史の知識と豊富な事例をもとに、国家の「例外状態」(非常事態)発生時に出現する「独裁」権力について分析と考察を加え、「委任独裁」と「主権独裁」という二つのカテゴリーを抽出した『独裁論』(1921年)。ブルジョワ的議会制民主主義の機能不全を徹底批判した『現代議会主義の精神史的状況』(1923年)。公共の安寧と秩序が脅かされる緊急事態に対処するための大統領大権を定めたワイマール憲法第48条が、事実上「主権独裁のような効力をもっている」ことを明らかにした『大統領の独裁』(1924年)。「大統領緊急令」は法律に代わるもの=「法律代替命令」として通用するという説を展開した『合法性と正当性』(1932)。
 こうしたカール・シュミットの理論は、政権が「大統領緊急令」を大統領に公布せしめては国会の意向を無視した法案を押し通すことを繰り返す状況を作り上げ、ひいてはナチス独裁を生み出すこととなる。
 なお、カール・シュミットはもともとナチ党に対して批判的だったが、1933年にヒトラー内閣が成立するや一転して入党、ナチス法律家連盟の指導的地位に就き、党の法学理論を支える活動に携わるようになる。
 ほどなく党内から批判を受け、第一線から退けられたものの、この短期間のナチ協力ゆえに、シュミットは戦後、占領当局により幾度も身柄を拘束されたうえ、ニュルンベルク裁判では厳しい尋問を受けた。
 学界からも追われたため故郷に隠棲して研究・著述活動を続けたが、1985年に死去するまで、彼について語ることがタブーとされる状況が長く続いた。
参照:
・日本大百科全書(ニッポニカ)「シュミット」【URL】http://bit.ly/2AbOqvr
・長谷部恭男・石田勇治『ナチスの「手口」と緊急事態条項』集英社新書、2017年. 【URL】https://amzn.to/2PMxXqp
・カール・シュミット著/田中浩・原田武雄訳『独裁ーー近代主権論の起源からプロレタリア階級闘争まで』未来社、1991年. 【URL】 https://amzn.to/2PQ42hl
・カール・シュミット著/樋口陽一訳『現代議会主義の精神的状況(1923年)』岩波書店、2015年. 【URL】https://amzn.to/2PJuE3r
・カール・シュミット著・田中浩・原田武雄訳『大統領の独裁』未來社、1974年. 【URL】 https://amzn.to/2PNetSR

※47)天皇大権:
 「大権」とは、大日本帝国憲法がみとめていた「議会の議決を経ることなく又他の機関に委任することなく天皇の親裁に依りて行われる国務に関する天皇の権能」(美濃部達吉)をいい、これにもとづいて発せられる命令を「勅令」という。
 内閣の輔弼(ほひつ)を受けつつ(第55条「国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス」)、「法律ヲ執行スル為」または「公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル為」(第9条)に天皇が発令するとされた。
 なかでも、「帝国議会閉会ノ場合」に「公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要」がある時、「法律ニ代ル」ものとして発せられる勅令(第8条第1項)は「緊急勅令」と呼ばれ、たとえば治安維持法の最高刑を死刑に引き上げた1928年の法改正(田中義一内閣)がこの形で強行されたように、しばしば内閣の暴挙を可能にする装置として機能した。
参照:
・美濃部達吉『改訂 憲法撮要』有斐閣、1946年. 【URL】 https://amzn.to/2DRRZJQ
・Wikipedia「緊急勅令」【URL】https://bit.ly/2wNmICK
・ブリタニカ国際大百科事典小項目事典「治安維持法」【URL】https://bit.ly/2wOk3HY
・法庫「大日本帝国憲法」【URL】https://bit.ly/2M1DR0n

※48)きわめて反皇室的な「保守」派:
 天皇皇后両陛下は、即位直後の「朝見の儀」(平成元(1989)年1月9日)以来、新年やお誕生日、ご成婚記念などの折に触れて、きわめて良識的な歴史認識と平和の尊さ、そして日本国憲法遵守の大切さを、皇太子殿下とともに一貫して強調してこられた。
 ところが、安倍政権下で急増した自称「保守」派は、そんな両陛下・皇太子殿下のお気持ちを尊重するどころか、数々の不敬な発言や心ない誹謗中傷で攻撃し続けてきた。
 宗教学者の山折哲雄氏が『新潮45』に発表した「皇太子殿下、ご退位なさいませ」という失礼極まりないタイトルの論説(2013年3月)。ネット上で盛り上がる「秋篠宮待望論」。「両陛下のご発言が、安倍内閣が進めようとしている憲法改正への懸念の表明のように国民に受け止められかねない」「宮内庁のマネージメントはどうなっているのか」などと、安倍政権擁護の意図も丸出しに、今上天皇への批判を展開した八木秀次氏(2014年『正論』「憲法巡る両陛下のご発言公表への違和感」)。
 皇太子殿下が誕生日の記者会見を開けば(2015年2月20日)、ブログ「保守速報」でスレッドが立てられ悪意に満ちた書き込みがずらり並び、「平民」出の美智子皇后や雅子妃殿下に対する罵詈雑言は数知れず、今では陛下を「反日左翼」呼ばわりする輩まで…
 「万世一系の皇室」をアイデンティティーとする「国体護持」を掲げながら、その実、天皇を自分たちの政治的野心や利益のために利用することしか頭にない者たちであることは明白だが、それは、天皇陛下が2016年8月8日にビデオメッセージを通じて国民に示された「生前退位」のご意向に関する、「有識者」たちの態度によく表れることになった。
 天皇陛下は、ビデオメッセージの中でも繰り返し言及しておられるとおり、「天皇の務め」、とりわけ「象徴としての役割を果たす」とはいかなることか、皇后陛下とともに考え実践してこられた。
 すなわち、「『象徴としての役割を果たす』こととは、ただ単に天皇が生きていればよいというものではなく、また摂政が代行しうるものでもない。文字どおり『全身全霊をもって』国民の平安を祈り、また災害に傷ついた人々や社会的弱者を励ますために東奔西走しなければならない職務である」という思想、「天皇が『働き』、国民との交流を深め、そしてそれにもとづいた『祈り』を実行することによってはじめて、天皇の持つ『象徴』の機能は作用しうる」という思想であって、だからこそおふたりは「多くの被災地に赴き、時に膝を折って被災者と同じ目線に立ちながら、慰めと労いの言葉を掛けてきた」のである(白井聡氏)。
 生前退位に言及されたのも、そのような「象徴としての役割」が、加齢によって不可能になることが予感されるからにほかならない。
 ところが、安倍政権に近い「識者」らは、こうした天皇陛下の真摯なお考えを全く理解しようとせず、保守系論壇誌等で「皇室の継承は、「種」(タネ)の尊さと神話時代から地続きという二点が重要で、天皇は万世一系が揺らがぬようそれだけ考えればよい」(渡部昇一上智大名誉教授(故人))、「『国事行為』や『象徴としての公的行為』などは重要ではなく、『同じ天皇陛下がいつまでもいらっしゃる』という『ご存在』の継続そのものが『国民統合』の根幹」(大原康夫氏)、「天皇の役割の重要性は、神武天皇以来一貫して男系の血だけで継承されてきた血統原理にもとづく存在自体の尊さを大前提とする。在位するだけで役割を十分に果たしている」(八木秀次氏)といった主張を展開。
 彼らはほどなく、生前退位を議論するために組織された総理の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」のメンバーとなるが、そこではヒアリング初日(2017年11月7日)から、「ご自分で定義された天皇の役割、拡大された役割を絶対的条件にして、それを果たせないから退位したいというのは、ちょっとおかしいのではないか」「お年をとられたら宮中にいて、民安かれと祈ってくださればそれでよろしいじゃないか」(平川祐弘東大名誉教授)などという、天皇陛下の生き方を否定するような発言が飛び出したという。
 これに対しては陛下ご自身も大変な不快感を表明された。彼らが望む「万世一系」の天皇を頂点にいただく国家であれば、彼らはまさに「逆賊」に他ならない。「美しい伝統の国日本」を掲げ、安倍政権とともに改憲へひた走る今の「保守」派は、そうしたパラドキシカルな存在なのである。
参照:
・白井聡『国体論 菊と星条旗』集英社新書、2018年. 【URL】https://amzn.to/2KssAXu
・IWJ「【岩上安身のニュースのトリセツ】天皇陛下が『お気持ち』を表明、改憲で天皇の『元首』化を目指す安倍政権への牽制か~良識的な歴史認識を示す皇太子殿下に『ヘイトスピーチ』を向ける『ネトウヨ』たち(第1回) 2016.8.9」【URL】https://bit.ly/2PHDkHC
・LITERA「『天皇はちょっとおかしい』安倍首相が生前退位ヒアリングにゴリ押しした“日本会議系学者”が天皇批判!」2016年11月9日【URL】https://bit.ly/2FvBp4b
・ニュースサイトハンター「安倍晋三 “不敬”の証明(上)-憲法と今上陛下-」2017年1月16日【URL】 http://bit.ly/2ksL2pH
・毎日新聞「皇室 有識者会議での「祈るだけでよい」 陛下、公務否定に衝撃 「一代限り」に不満」2017年5月21日【URL】http://bit.ly/2rFmB80

※49)日米安保と日米地位協定:
 サンフランシスコ講和条約第五条(c)および第六条(a)に則り、独立後も引き続きアメリカ軍の駐留を承認する日米安保条約(1951年、旧安保)を締結した日本政府は、翌1952年2月28日、在日米軍の取扱や権利を具体的に定める「日米行政協定」(「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定」)に調印した。それは前文と29条の本文からなり、占領中に使用していた施設・区域の継続使用や、裁判管轄権や免税などの点での優遇、有事における「統一指揮権」(日本軍が米軍の指揮下に入る)等、占領体制下における米軍の権利をほぼそのまま承認する内容となっていた。
 1960年における日米安保条約改正(新安保)にともない、「日米行政協定」は「日米地位協定」(「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条にもとづく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」)と名称を変更。日米両国議会の承認手続を経て批准書が交換され、条約として正式に締結されたが、内容は、事実上「行政協定」における米軍の特権をそのまま継承するものとなっている。
参照:
・Wikipedia「日米地位協定」【URL】http://bit.ly/1CbUcrR
・前泊博盛編著『本当は憲法より大切な「日米地位協定」入門(「戦後再発見」双書2)』創元社、2013年.【URL】https://bit.ly/2opj1PE

※50)日米合同委員会:
 日米地位協定(在日米軍に施設や用地を提供する方法や、日本国内における米軍人の権利などについて定めた協定。1960年締結。前出註※49参照)第25条にもとづいて設置される、日米両政府間の協議機関。
 日米地位協定の実施・運用に関する「すべての事項」、とくに「合衆国が日米安保条約の目的の遂行に当たって使用するため必要とされる日本国内の基地」に関する問題を協議する(第一項)。
 日本政府の代表者一名およびアメリカ合衆国政府の代表者一名(日本側代表は外務省北米局長、アメリカ側代表は在日米軍司令部副司令官)で組織するが、各代表者は一人または二人以上の代理および職員団を持つほか、必要に応じて「分科委員会」「小委員会」「特別委員会」等の、各種補助機関および事務機関を設けることができる(第2項)。
 会合はいずれか一方の代表者の要請があるときにいつでも開催されるとされ、議長および協議会場は日米が交互に担当。同委員会で合意された事項は、日米両政府を拘束する強大な権限を付与されている。ところが、その内容および文書は原則として不公表扱いにすることが、日米間で合意されている。
 合意事項は米軍基地の周辺住民はもちろん、日本国民の生活に密接に関わるものでありながら、その内実は国民に知らされることがないため、しばしば「密室の委員会」と評される。
 日本国憲法にもとづく日本の国内法をまるで無視し、治外法権に等しい巨大な特権を在日米軍に与える取り決めがここで次々と交わされているといい、日本はかくなる「米軍の特権を維持するためのリモコン装置のようなもの」(吉田敏浩氏)を懐に埋め込まれているのが現実である。
参照:
・コトバンク「日米合同委員会」【URL】https://bit.ly/1U7FgF8
・吉田敏浩『「日米合同委員会」の研究:謎の権力構造の正体に迫る(「戦後再発見」双書5)、創元社、2016年.
・IWJ「『米軍の占領体制は今も継続されている』――謎の権力機関『日米合同委員会』の知られざる実像とは!? 『戦後最大のタブー』について岩上安身がジャーナリスト・吉田敏浩氏に訊く! 2016.12.2」【URL】https://bit.ly/2pRgVv3

※51)砂川事件と統治行為論:
 砂川事件とは、1957年7月8日、在日米軍立川飛行場の拡張計画が持ち上がっていた東京都砂川町(現・立川市)において、強制測量に踏み切った東京調達局および機動隊が、これを阻止しようとする「砂川基地拡張反対同盟」のデモ隊と衝突、デモ隊の一部が米軍基地敷地内に数メートル立ち入ったとして23人が逮捕、うち7人が起訴された事件である。
 裁判は、一義的には日米安保条約にもとづく刑事特別法違反か否かが争われるものであったが、在日米軍基地の憲法適合性をも問う初の裁判として大きな注目を集めた。
 1959年3月30日、東京地方裁判所・伊達秋雄裁判長は、被告らが不当に侵入したとされる米軍基地の存在そのものが日本国憲法第九条二項(戦力保持の禁止)に照らして違憲と判断されるとして、被告全員に無罪判決を下した。伊達裁判長は、憲法第九条を、実質を伴わない空疎な文言にとどめておくまいとしたのである。
 ところが、この伊達判決は異例の跳躍上告によってただちに最高裁に持ち込まれ、同年12月16日、最高裁判所・田中耕太郎裁判長によって、次のような趣旨の判決文とともに棄却された。
(1)憲法第九条は戦争を放棄し、戦力の保持を禁止することを定めてはいるが、わが国が主権国家として持つ固有の自衛権まで否定するものではない。つまり、わが国の憲法の平和主義は、決して無防備、無抵抗を定めたものではない。
(2)憲法第九条第二項がその保持を禁止する戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力のことであり、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しない。
(3)そもそも、米軍の日本駐留に対して違憲か否か判断を下すことは、これが日米安全保障条約にもとづくものである以上、同条約の内容が違憲か否かを判断するに等しい。しかし、この条約はわが国の重大政策として慎重に審議され、適法妥当なものとして国会の承認を経たうえで締結されたものである。つまり、高度の政治性を有するものであり、純司法的機能をその使命とする裁判所の審査権の範囲を逸脱している。
(4)したがって本件の問題は、刑事特別法によって立入りを禁止されている施設内に、被告らが正当の理由もなく立ち入ったことに尽きるのであり、単に同法二条を適用するだけで十分である。
 そして、この(2)のような法理、すなわち、政府が議会の立法活動そのものをリードするような国家行為=「統治行為」については、それが国家統治の根本に直接に関与するような高度な政治性を有するがゆえに、裁判所はたとえ法的判断が可能であってもその審査権限を行使しない(=裁判所独自の判断は下さない、つまりは政治部門の判断をそのまま受け入れる)という法理を「統治行為論」といい、その後も衆議院解散の合憲性が問われた苫米地事件上告審判決(最高裁・昭和35年6月8日)や、自衛隊の合憲性が争われた長沼ナイキ事件第一審判決(札幌地裁・昭和48年9月7日)・長沼事件控訴判決(札幌地裁・昭和51年8月5日)で採用されて、最高裁の憲法判例として定着した。
 欧米諸国ではいまや「統治行為論」は受け入れないのがスタンダードである。憲法の徹底した法支配の原則を没却するものとして批判の声も高い。
参照:
・Wikipedia「砂川事件」【URL】http://bit.ly/1hyTsi9
・砂川事件跳躍上告審判決文【URL】http://bit.ly/1ACOIqG
・吉田敏浩『検証・法治国家崩壊――砂川裁判と日米密約交渉』創元社「戦後再発見」双書3、2014年.
・Wikipedia「統治行為論」【URL】http://bit.ly/1ojq05h
・長谷部恭男・石田勇治『ナチスの「手口」と緊急事態条項』集英社新書、2017年. 【URL】https://amzn.to/2zh3HtJ

※52)「命令」:
 「命令」とは行政機関の制定する法的規律のこと。国会を唯一の立法機関とすると定める(第41条)現行憲法下では、国会が定めた「法律」の規定を執行するための細則を定める法規=「執行命令」と、「法律」が立法権を行政機関に委任することによって定められる法規=「委任命令」の、二種の「命令」(うち内閣が制定するものを「政令」といい、憲法第73条6号に定めが置かれる。次註※27参照)が認められている。
 大日本帝国憲法下では、これに加え、行政機関が法律を根拠とせず独自に制定できる「命令」が認められていた。天皇大権にもとづき、「帝国議会閉会ノ場合」に「公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要」がある時、「法律ニ代ル」ものとして発せられる命令(第8条第1項)=「緊急勅令」(前註※13参照)がそれであり、法律から独立して発せられる命令という意味で「独立命令」と呼ばれる。
 自民党はこの「独立命令」を発する権限を、何かの権威を源泉とする「大権」のような根拠もなしに、抽象的で恣意的な解釈を許す「緊急事態」なるものだけを理由に、内閣に付与しようというわけである。
参照:
・Wikipedia「命令(法規)」【URL】https://bit.ly/2x2YmVM
・日本大百科全書(ニッポニカ)「独立命令」【URL】https://bit.ly/2CGYJub
・日本大百科全書(ニッポニカ)「緊急命令」【URL】https://bit.ly/2OaKlM3

※53)法権回復は明治政府の重要な外交課題:
 江戸幕府が幕末の1858(安政5)年、アメリカ合衆国・ロシア・オランダ・イギリス・フランスの五カ国と結んだ通商条約(安政五カ国条約)は、関税自主権の欠如をはじめ、日本に不利な条項をいくつも含む不平等条約だった。
 外国人が犯罪を犯した場合にその犯罪者を日本の法で裁かず、属する国の在住領事に裁判を委ねるという内容の領事裁判権規約(たとえば「日米修好通商条約」第6条)もそのひとつであり、「ハートレー事件」(アヘン密輸を企てた横浜の外国人居留地在住の英国商人が無罪となった事件。1877年)、「ヘスペリア号事件」(コレラ菌を持ち込ませないために日本政府が定めた検疫停船規則をドイツ船が無視し、横浜入港を強行した事件、1879年)、「ノルマントン号事件」(紀州沖で座礁沈没した英国船の船長が、日本人乗客を見殺しにしたにもかかわらず、責任を問われなかった事件。1886年)といった、不当なまでに外国人に有利な判決が下される事件が多発することになった。
 外国に国家主権を踏みにじられ、国民の生活や生命を脅かされることを容認するこの規約の撤廃を求める国民の声は高まり、第一次伊藤内閣の井上馨から第二次伊藤内閣の陸奥宗光まで、5代にわたる明治政府の外相たちが、その実現へ向けて諸外国との折衝を積み重ねていくことになる。
参照:
・Wikipedia「条約改正」【URL】https://bit.ly/2vFcG6r
・Wikipedia「領事裁判権」【URL】https://bit.ly/2qHnMo8

※54)チャルマーズ・ジョンソン:
 チャルマーズ・アシュビー・ジョンソン Chalmers Ashby Johnson(1931-2010年)はアメリカの国際政治学者。朝鮮戦争に在日米海兵隊将校として従軍したのち、カリフォルニア大学バークレー校でPh.D.(政治学)を取得。1962年から30年間、カリフォルニア大学で教壇に立った。
 中国および日本を始めとする東アジア研究で知られ、1982年上梓の MITI and the Japanese Miracle(邦訳『通産省と日本の奇跡』矢野俊比古訳、ティビーエス・ブリタニカ)では、戦後日本の高度経済成長がいかに通商産業省主導による産業政策を通して達成されたかを明らかにし、大きな話題となった。
 1994年には非営利団体 Japan Policy Research Institute(日本政策研究所)を設立、日本および東アジアに関する知識や理解を世に広める活動を行う。
 1960年代後半から70年代前半にかけてCIAの顧問を務めたこともあり、初めはタカ派の論客として鳴らしたが、のちに反戦主義者に転向。 Blowback(反動)三部作(Blowback: the Costs and Consequences of American Empire, Henry Holt, 2000、鈴木主税訳『アメリカ帝国への報復』・The Sorrows of Empire: Militarism, Secrecy, and the End of the Republic, Verso, 2004、村上和久訳『アメリカ帝国の悲劇』・Nemesis: the Last Days of the American Republic, Metropolitan Books, 2006)でアメリカの帝国主義的政策を厳しく批判している。
 敗戦以来、一貫してそれに追従してきた日本の指導者層(自民党の政治家)に対しても手厳しい批判を加えており、2006年5月にインターネットメディアTomDispatchに寄せた論説 Exporting the American Model :Markets and Democracy(Dismantling the Empire; America’s Last Best Hope[邦訳『帝国解体』]、Metropolitan Books, 2010 に収録)では、「独立した民主主義を発展させるのではなく、日本はアメリカ冷戦の従順な衛星国、それも極端に硬直的な政治システムの国になった」と断じている。
参照:
・Wikipedia(en) Chalmers Johnson【URL】https://bit.ly/2z5Hsa5
・「マスコミに載らない海外記事」エントリー「Dismantling the Empire『帝国解体』チャルマーズ・ジョンソン著」2010年9月2日【URL】https://bit.ly/2OG6ykS

※55)オーエン・ラティモア『アジアの情勢』:
 オーウェン・ラティモア(Owen Lattimore、1900- 1989年)は、中国、中央アジア、特にモンゴルを専門とする学者・著述家・教育者。1930年代に太平洋問題調査会Pacific Affairsの主筆を務め、1938年からバルティモアのジョーンズ・ホプキンズ大学で教鞭を取る。第二次大戦中は、蒋介石の顧問となって、アメリカのアジア戦略策定に関わった。戦後「赤狩り」のターゲットになり渡英。そこで1963年、リーズ大学の初代中国学教授に就任している(~1970年)。
 岩上安身がここで紹介するのは、ラティモアが1949年にLittle, Brown and Companyから上梓したThe Situation in Asia の邦訳、『アジアの情勢』(小川修訳、河出書房、1953年)の、「第六章 日本は誰の味方でもない」の冒頭部(p.110)。アメリカの対日政策の目的は、ずばり「アメリカとヨーロッパのための、ロシアに対する、政治的に信頼できる防壁にする」ことだと指摘した上で、それは「幻想」に過ぎないこと、アメリカは「日本の進む方向にアジアを歩ませることができる」どころか、「アジアの進む方向に日本も歩」んでいくだろうとの見通しを提示する部分である。
 残念ながら、日本はラティモアの見立てに反し、アメリカ政府の期待どおりに「独自の政治をもたず(略)アメリカに固い忠誠を致すところの、新しい種類の植民地軍隊を供給する国」たることを選んでしまったようである。
参照:
・Wikipedia(en) Owen Lattimore【URL】https://bit.ly/2T1yWBg
・オーエン・ラティモア『アジアの情勢』小川修訳、河出書房、1953年.

※56)中曽根の「不沈空母」発言:
 「不沈空母」unsinkable aircraft carrier とは、敵国の近くに位置し、そこから軍事行動を展開できる自軍支配の陸地(島)のことを、動かないが破壊される=沈むこともない航空母艦に譬えて表す比喩的表現。太平洋戦争において、爆撃機発着のための軍用飛行場を建設し進軍の拠点となしうる太平洋上の島々や環礁がそう呼ばれ、日米両軍による苛烈な争奪戦が繰り広げられた。
 冷戦期の1983年1月には、訪米中の中曽根康総理が、ワシントン・ポスト会長キャサリーン・グラハム会長との朝食会の席上で、ソ連のバックファイアー爆撃機が太平洋上に侵入し威力を発揮することのないよう、日本列島を「不沈空母」にしてアメリカ政府を支援すると発言。
 この発言は、日本国憲法が定める専守防衛を逸脱し、日本全体がアメリカの兵器となってソ連と戦う決意を表明したとも受け取れるとして、国内で大問題となった。
 通訳による行き過ぎた意訳から生じた誤解などの説も流れたが、中曽根本人は「不沈空母」発言を否定しなかったほか、2017年1月には外務省が公開した文書によって、発言は事実であることが確認されている。
参照:
・Wikipedia「不沈空母」【URL】https://bit.ly/2T0XRon
・Wikipedia「中曽根康弘#外交」【URL】https://bit.ly/2Po0SBd

※57)米軍は日本に攻撃能力を渡したうえで自らは撤退しようとしている:
 『ドナルド・トランプ物語』(緑風出版)の著者トーマス・カトウ氏によれば、トランプ政権の政策の柱のひとつが「パックスアメリカーナ」からの撤退にある。軍事面では、世界各地に米軍を駐留させ紛争にその都度介入するという、戦後の米国がオバマ政権まで維持してきた姿勢がいまや放棄されつつあり、極東においても米軍のプレゼンスの縮小が今後進められるであろうとの見通しが成り立つ。将来の在日米軍撤退や日米安保解消もまったくありえない話ではない。
 いっぽう、トランプのこうした方針は、同盟国への軍事負担の要求とセットになっており、そこには米企業の生産する兵器を買わせることで自国が潤う(「アメリカ・ファースト」)という打算もはたらいている。トランプの登場によって、有事のさいには米国が日本を守ってくれるという右派・左派の別なく日本を覆ってきた幻想が跡形もなく剥ぎ取られる局面を迎えているのである。
参照:IWJ「トランプ政権下の米国は、パックスアメリカーナから撤退するのに軍事力強化!? 自らの血筋を誇るドイツ系米国人大統領の真意とは!? 異例の大統領を徹底研究!! 岩上安身による在米国際コンサルタント トーマス・カトウ氏インタビュー 2018.8.9」【URL】https://bit.ly/2OQsVUQ

※58)日本は米太平洋軍に支配された軍事植民地軍隊国家:
 この問題については、2012年7月に刊行され大きな反響を呼んだ孫崎享氏の『戦後史の正体』とそれに続く「戦後再発見」双書(創元社)の各冊(前泊博盛(編著)『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』、吉田敏浩・新原昭治・末浪靖司『検証・法治国家崩壊』、吉田敏浩『「日米合同委員会」の研究』、末浪靖司『「日米指揮権密約」の研究』ほか)、編集者として同双書に携わった矢部宏治氏の『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社インターナショナル)、それに白井聡氏の『国体論 菊と星条旗』(集英社新書、2018年4月刊)といった著作が、くわしく論じている。
 IWJはこれらの著作をいちはやくとりあげ、著書の各氏には刊行時のインタビューをはじめ、さまざまな機会に登場願ってきた。こちらもぜひご参照いただきたい。
参照:
・IWJ「『日本の国益を真剣に考えた人たちがいたことを伝えたかった』アメリカとの隷属関係を断ち切ろうと奔走した政治家とは? ~岩上安身による孫崎享氏インタビュー 2012.8.23」【URL】https://bit.ly/2zhNww3
・IWJ「[IWJ日米地位協定スペシャルVol.1] 岩上安身による『日米地位協定入門』著者 前泊博盛氏インタビュー 2013.3.5」【URL】https://bit.ly/2opj1PE
・IWJ「『米軍の占領体制は今も継続されている』――謎の権力機関『日米合同委員会』の知られざる実像とは!? 『戦後最大のタブー』について岩上安身がジャーナリスト・吉田敏浩氏に訊く! 2016.12.2」【URL】https://bit.ly/2pRgVv3
・IWJ「【広告連動企画!!】 新刊『「日米指揮権密約」の研究』自衛隊はなぜ、海外へ派兵されるのか 岩上安身によるジャーナリスト末浪靖司氏インタビュー 2017.10.7」【URL】https://bit.ly/2A8ZtEe
・IWJ「『戦後再発見双書』プロデューサーが語る、日米関係に隠された『闇の奥』~岩上安身による『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』著者・矢部宏治氏インタビュー 2014.10.13」【URL】https://bit.ly/2C72DvS
・IWJ「『米国が戦前の天皇の位置を占めるものとして再構成された』!~京都精華大学専任講師・白井聡氏が岩上安身のインタビューで『戦後の国体は頂点にワシントンが乗っかっているに過ぎない』と指摘! 2015.12.17」【URL】https://bit.ly/2QaaYFe

トランプを支えるクリスチャンシオニスト!米国の狙いは集団的自衛権と緊急事態条項で中東や極東の有事の際に日本を参戦させること!

岩上「そう思いながら今の状況を考えてみると、いろいろしっくりくるんです。もし米国と北朝鮮との交渉が不調に終わって、極東有事なんて事態になれば、日本も参戦できるように緊急事態条項を早くしろと。そして集団的自衛権用いてね。反対派も含めて日本人がこれまで持っていた集団的自衛権のイメージは、自衛隊だけが戦争に行くというものだったじゃないですか。でも、今度はそうじゃありません。国家総動員体制にしてしまって、反対も何もできないようにして、総力戦がやれるようにしようってことですよ。

 アメリカはまた同時に、イラン核合意からの離脱ということもやっています(※59)。アメリカが抜けたらみんなバラバラになると思いきや、ならないんですよね。欧州は抜けてないです。イランも抜けてない。つまり、アメリカが抜けただけで、あとは皆、イランとの核合意でこのままやっていこうというわけなんですが、イスラエルは絶対にイランを潰したい。アメリカは、これまではそういうイスラエルとアラブとの対立の間で建前上は中立的立場にあったわけですが、ここへきてそれをやめた。象徴的なことですが、エルサレムに大使館を移転(※60)したということは、これはもう明らかに、中立ではないということの表明です。

 イスラエルは、ユダヤ人国家となってパレスチナ人を完全に粛清すること(※61)、さらには中東における覇権のためにイランを潰すことを公言しています。アメリカはそれに向けて、国際的な枠組みを作るなんてことを言っている。実際、トランプは核合意離脱直後、有志連合のことまで口にした(※62)。

 で、安倍首相はこれですよ、この姿を見てください、トランプが『お手』って(※63)!こんな人に独裁のカリスマがありますか?この人がドゥテルテ?習近平?金正恩?とんでもない!彼らは皆、力づくでのし上がってきたし、その間、独裁権力を確立するために強権的な手段も用いてきたじゃないですか。安倍は、何もしてない坊ちゃんですよ」

▲この独裁条項は何の道具!? 極東でも中東でも、日本が戦争に巻き込まれる!?

永井「カリスマがあろうとなかろうと、独裁はまずいですけどね」

岩上「それはそうですけども、そもそも独裁をやれるような人間じゃないでしょ?どう見たって、彼、ただの中間管理職じゃないですか。下には威張る、だから下はみんな忖度するけれども、上に対してはこんなに忖度しまくってるわけだから、つまるところヒラメでしょ?ヒラメが独裁者なんて笑わせるなって話じゃないですか」

永井「(笑)アメリカの後を、ずーっとついてきましたよね。オバマ大統領がまだその任にあるというのに、トランプに就任前から会いに行ってましたからね(※64)」

岩上「そうすると、今度は対イラン戦争に巻き込まれる恐れもあるわけですよ。アメリカはシェールガス・オイルの規制を取り払ってしまっていますから、いまやもう、中東で産油国に遠慮する理由はひとつもありませんし(※65)」

永井「もはやアラブから石油を買う必要がないということですね」

岩上「そうです。サウジ“アメリカ”になったんです。アメリカ国内では環境破壊も起こります(※66)し、いいことはないんですけども、中東で事を起こすという観点からすれば合理性はある。しかもそれは、イスラエルのためだけにやるんですよ。

 実際、トランプ大統領、次も絶対再選されるつもりでいるんですが、なんと、大統領就任した途端に、次期大統領選の申し込みをしているんです。彼はプアホワイトに支えられていると言われますが、実際に彼を支えているのは8千万人とも言われているエバンジェリスト、つまり福音主義者たちですよ」

永井「福音主義者とは何ですか?」

岩上「キリスト教原理主義者のことです。原理主義というものは、イスラム教原理主義者ではなくキリスト教から生まれたんですよ。シオニズムもそうです。『シオニスト』はユダヤ人からスタートしたのではなくイギリスでスタートした。イギリスのプロテスタントが、『ユダヤ人たちを(パレスチナに)集めよう』といって、始まったことなんです(※67)。

 彼らクリスチャン・シオニストは、聖書を独自に解釈して、こんなふうに信じています。『最後の審判』の前に、イスラエル国家が再建される。そこに離散していたすべてのユダヤ人が集まる。アメリカのユダヤ人ももちろん。そしてハルマゲドンが起きると。

 で、その時神に選ばれし者は『空中携挙』、すなわち異次元空間に上げられて難を逃れてですね、ハルマゲドンの後に地上に降りて、そこにイエスが再臨する。そしてすべてのユダヤ人がキリスト教に改宗して、『千年王国』が始まるという(※68)。とまあ、こんな話なんですけど、それでユダヤ人たちを集めたがってるんですよ、クリスチャン・シオニストは。

 もうほとんどカルトなんですけど、これを真剣に熱狂的に信じて。田舎の州であればあるほど、そういう福音主義者の数は多くてですね、そういう土地柄の高校では、進化論を教えてなかったり、進化論と併説で(旧約聖書の創世記が)書いてあったりするとか。これがアメリカの人口の四分の一、つまり8千万人いると。その8千万人から支持を得られれば、30%取れるんですよ。トランプはそれを狙っているんです(※69)。これプラス、ユダヤロビーとイスラエルロビーで、ピッタリ数が合うんです」

永井「その福音主義というのは、今のお話を聞いていると何かユダヤ系の宗教に聞こえますけど、そうじゃないんですね」

岩上「違いますよ、キリスト教です。それも、プロテスタントの中から出てきたクレイジーバージョン」

永井「それでトランプはエルサレムに大使館を移したと」

▲永井幸寿弁護士

岩上「そうです。彼らが主張してきたことが、恐ろしいことに、こんなふうにして着々現実化してるんです。トランプはまさにその預言の成就のために動いている。もちろん、彼はそれによって票を集めることしか考えてないでしょう。『預言の成就のために』なんて考えてないと思いますよ。だけど、そういう風に信じてる連中は使えると思ってるし、イスラエルロビーも金を出してくれるし。

 あの大使館移転だって、費用かかるじゃないですか。あれはシェルドン・アデルソンという、米国人にしてイスラエルの二重国籍を持ってるカジノ王が出してるわけですよ(※70)。彼はネタニヤフの強烈な支持者で、『イスラエル・ハヨウム』というフリーペーパーを出しているんですが、これが読売新聞も顔負けのペーパーで。ネタニヤフを持ち上げ、それからトランプを持ち上げるという。

▲シェルドン・アデルソン(Wikipediaより)

 そんな彼らが何かやらかそうということに、安倍首相は『もう、なんでもくっついて行くから』って言っているわけです。イスラエル晩餐会でのあの一件は、それをよく物語っています。見てください、イスラエルを訪問した安倍首相夫妻が、ネタニヤフの所でこんなものをデザートとして出されたんですよ、畳の上に置かれた靴の形のデザート。食事をしてる場所に靴なんて異様です。これをお食べ、と(※71)。

 もちろん世界中から非難が起こりました。『侮辱だろう』って。ネタニヤフは『いやいや、これはシェフの創造的なアイディアなのさ』なんて平然として。もちろんこれは『靴を舐めろ』っていう以外に意味はない」

▲畳の上に置かれた靴の形のデザート

永井「すごいですね。これを安倍さん、食べさせられたんですか?」

岩上「そうです。これまたヘラヘラと食べて来たんです。テーブルを蹴っ飛ばしてきたわけじゃないんです。つまり、安倍さんは中間管理職の独裁者。下に向いては独裁なんだけど、上に向いては奴隷。戦前のような大日本帝国を復活させようとしてるんだと言う人がいるでしょ、安倍さんにそんな頭ないですよ。あるのはせいぜい朝鮮ヘイトです。

 極東でも中東でも戦争に巻き込まれる可能性はあるでしょう。でも、アメリカなんかはできるだけ自分で戦争したくないから、それこそさっきの『グルカ兵』にやってもらいたい。大英帝国にとっての精鋭な軍隊、ネパール王国のグルカ兵の役割を、日本が担えと。

 そのときに、平和主義、民主主義、法治主義、三権分立、国民主権、基本的人権を一挙に解消できるようにするために、緊急事態条項が使われるんじゃないかなと私は思ったりするわけです。こう考えないと辻褄が合わない」


※59)アメリカ、イラン核合意から離脱:
 「イラン核合意」とは、2015年7月にイランと米英仏独中ロとの間で結ばれた、イランが核開発を大幅に制限する見返りに、米欧が課していた金融制裁や原油取引制限などの制裁を緩和するという取り決め。
 軍事的手段ではなく、外交を通じて核不拡散体制の構築に成功したとして評価の声も高く、オバマ大統領の最大の外交的成果と言われる。
 だが、次のトランプ大統領は選挙戦でその破棄を公約に掲げて当選。2018年1月には、同合意に含まれる数々の「致命的な欠陥」を改善するようイランに要求し、その期日として5月12日を設定した。
 4月30日、イスラエルのネタニヤフ首相はテレビを通じ、「彼ら(イラン)が核武装の下心を持って嘘をついていたことを証拠立てる10万点の文書類」を入手したと発表。その1週間後の5月8日、欧州3署名国(フランス、ドイツ、イギリス)の激しい反対を尻目に、トランプ大統領はイラン核合意からの離脱を正式に表明し、対イラン制裁を復活・強化する方針を明らかにしたのである。
 欧州3署名国は、反発したイランによる弾道ミサイル開発の強化や、イランとともにアメリカ・イスラエルに敵対するイエメン、シリア、レバノンなどの近東情勢を不安定化させるなど、これが核開発以外にも様々な問題を引き起こす危険性があるとして、同合意堅持の方針を固めた。
参照:
・朝日新聞DIGITAL 関連キーワード「イラン核合意」【URL】https://bit.ly/2OQVstd
・Le Monde, Bataille de communication autour de l’accord nucléaire avec l’Iran, 2018/05/01 【URL】https://lemde.fr/2BjM5ib

※60)エルサレムに大使館を移転:
 トランプ大統領が2018年5月14日に強行した、米大使館のエルサレム移転のこと。
 ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の三宗教の聖地を擁し、古くからその帰属をめぐって争いが繰り返されてきたエルサレム。第1次世界大戦後にはイギリスの委任統治下に入り、1947年の国連パレスチナ分割決議により国連管理下の国際都市となる。
 だが、それと同時に建国されたイスラエルは、まずは第一次中東戦争(1948-49年)で西エルサレムを、次いで第三次中東戦争(1967年)で東エルサレムを占領した挙句、国連決議を無視してエルサレム全域をイスラエルの「永遠かつ不可分の首都」とした。
 国際社会はこれを認めず、各国は大使館をテルアビブに置いてきた。
 アメリカは1995年にエルサレムをイスラエルの首都と認め、大使館をエルサレムに置く「エルサレム大使館法」を制定したが、アラブ諸国に配慮し、移転は実行しないできたのだが、トランプ米大統領は前任者たちの方針を覆して、2017年12月にエルサレムをイスラエルの首都と認めたうえ、イスラエルにとっては独立70周年、パレスチナ人にとっては70回目の「ナクバ(大災厄)の日」に当たる翌年5月14日、大使館をエルサレムに移転したのである。
 トランプ大統領の振る舞いはパレスチナ人や周辺アラブ諸国を激怒させ、各地でアメリカとイスラエルに対する抗議活動が激化。イスラエル軍との武力衝突も生じ、中東情勢を一挙に緊迫化させることとなった。
参照:
・コトバンク「エルサレム問題」【URL】https://bit.ly/1uShxqQ
・IWJ「『トランプ大統領のエルサレム首都認定を弾劾する~パレスチナにおける公正な平和を求める市民社会から日本政府・企業等への要望』――市民団体の連名で発表された声明文を特別掲載! 2017.12.20」【URL】https://bit.ly/2zOSyQ5
・ロイター「焦点:米大使館移転で中東緊迫化、「エルサレム問題」とは何か」2018年5月15日【URL】https://bit.ly/2PXx9hP

※61)イスラエルの「ユダヤ人国家」化とパレスチナ浄化の野望:
 この問題について、IWJは以下の記事で詳しく報じている。ぜひご参照いただきたい。
参照:
・IWJ「【IWJ検証レポート】イスラエル新基本法――イスラエルは『ユダヤ人の』国家、植民活動は『国家の価値』と憲法規定! イスラエル、フランスのメディアで報じられた海外記事からその危険性と極右政権の本質を読み解く! 2018.8.26」【URL】https://bit.ly/2Ko3SYq
・IWJ「【シリーズ『パレスチナの民族浄化』を読む第1弾!】パレスチナ問題の原点であるイスラエルによる『民族浄化』の真実を暴く! 岩上安身による東京経済大学 早尾貴紀准教授インタビュー 2018.1.25【URL】https://bit.ly/2P2sqaw
・IWJ「【シリーズ『パレスチナの民族浄化』を読む第2弾!】イスラエルの暴力的建国は公文書によって裏づけられた!ガザ弾圧の起源!~ 岩上安身が東京経済大学 早尾貴紀准教授にインタビュー 2018.4.14」【URL】https://bit.ly/2BTTQxQ
・IWJ「【シリーズ『パレスチナの民族浄化』を読む第3弾!】~『大災厄(ナクバ)』の日70年を目前に米大使館がエルサレムに移転!ガザでは今日もイスラエルが非武装の市民を殺戮している!岩上安身による 東京経済大学 早尾貴紀准教授インタビュー 2018.5.14」【URL】https://bit.ly/2MwuquJ
・IWJ「【シリーズ『パレスチナの民族浄化』を読む第4弾!】民族浄化を開始したのは第一次中東戦争よりも前!1947年11月末の国連による『分割決議』直後から! 岩上安身による東京経済大学 早尾貴紀准教授インタビュー 2018.6.4」【URL】https://bit.ly/2wezKc9

※62)トランプ政権、イラン核合意離脱直後に有志連合を呼びかける:
 2018年5月8日に「イラン核合意」からの離脱を表明したトランプ政権(前註※59参照)は、その直後からイランに対する経済制裁を次々と復活・強化していった。そこには、「シェール革命」によって世界一の天然ガス産出国となったアメリカの、やはり天然ガス・石油の主要産出国であるイランの市場におけるプレゼンスを低下させようとの狙いも透けて見える。またトランプ政権は同時に、イランが核問題だけでなく弾道ミサイル開発や中東での武装組織支援などを通じて中東情勢を不安定化させているとしつつ、これに武力で対処する方針も表明。
 2018年5月17日には、ナウアート米国務省報道官が、70以上の国や地域、国際機関が参加する有志連合を呼びかける構えであると表明した。その中には日本も含まれているといい、アメリカ従属路線をひた走る安倍政権のもとでは、われわれはその戦争に巻き込まれる可能性がある。
参照:
・産経ニュース「【イラン核合意離脱】対イランで「有志連合」目指す 日本含め米国務省が表明」【URL】https://bit.ly/2ImFLZ3
・天木直人のブログ「日本は米国の対イラン制裁強化要求に応じてはいけない」2018年5月14日【URL】https://bit.ly/2zhKSXc
・天木直人のブログ「日本は米国の対イラン制裁強化要求に応じてはいけない(続)」2018年6月20日【URL】https://bit.ly/2zlXA7n

※63)トランプ、安倍首相に「お手!」!?:
 2017年2月、安倍首相は訪米し、南部フロリダ州でトランプ大統領と会談。その際、二人が握手を交わす様子がメディア向けに撮影されたが、その姿が「握手というより犬にお手させてるよう」だとネット上で話題になった。側面に向けた掌同士を合わせる一般的な握手の仕方とは異なり、掌を真上に向けて差し出されたトランプ大統領の右手に安倍首相が右手を載せる、というものだったからである。
 トランプ大統領は時折、安倍の手が載せられた自分の右手に力を入れて安倍を体ごとぐいと引き寄せ、笑顔を作りながら安倍に何かを話しかけていた。さらには、安倍の手を包み込むように左手を被せ、安倍の手の甲をポンポンと軽く2、3回たたくという仕草も。嬉しそうな満面の笑顔でこれに応える安倍首相の姿に、彼が行ってきた卑屈なまでの対米従属政策を思い出しつつ、多くのネットユーザーが「飼い主に大喜びでしっぽ振ってお手する飼い犬」を想起させられたのだった。
 安倍首相は翌2018年4月にも米国を訪問し、日米首脳会談を行ったが、その際の握手についてもネット上で同様の反応を呼び起こした。
 例の「トランプの手のひらにうれしそうに手をのせてトランプに手の甲をポンポンされる」に加え、この時はトランプ大統領が「同盟国になるべく早く軍事装備を渡せるようにする」などと言いつつ安倍首相に兵器購入を露骨に迫ったこともあり、ツイッターでは握手の画像に「人間対人間の握手ではなく、まるで「お手」の仕草だぞ」「この握手の仕方、マジで犬が『お手』しているようにしか見えない。つらい」「トランプ『お手!』アベシンゾー『ワン』」「トランプ『アメポチ、お手』安倍『喜んで、ワン』トランプ『俺にすべて従えよ』安倍『米国ファーストだワン』」といったコメントを付したツイートが数多く発せられた。
参照:
・NAVERまとめ「『トランプ式握手』をしたあとの安倍総理の顔が話題になっている」2017年2月15日【URL】https://bit.ly/2FmC5bV
・阿修羅「エントリー:日米首脳会見の画像、こういうのもきちんと報道しなきゃ」2018年4月21日【URL】https://bit.ly/2B3CUCu

※64)安倍首相、大統領就任前からトランプに会いにゆく:
 2016年11月17日(米国時間)、ニューヨークに出張中の安倍首相は就任式前のトランプ次期大統領と会うためにトランプタワーを訪問し、1時間半ほど会談を行った。官邸や外務省は各国首脳に先駆けた「一番乗り」の会談と喧伝したが、会談の内容は一切明かされていない。
 そもそも安倍首相は半年前にオバマ大統領を広島に迎え、日米の和解と平和への協力関係を共に確認したばかり。そのオバマ大統領がまだ任にあるこの時点で、オバマ外交を否定するトランプのもとに、最高級のゴルフクラブの貢物を携えて馳せ参じた安倍首相に、国民からは「節操なし」「対米追随のあからさまなゴマすり」「なりふり構わぬ『トランプ詣』」「朝貢外交」といった批判の声が巻き起こった。
参照:
・外務省HP「安倍総理とドナルド・トランプ次期米国大統領との会談」2016年11月18日【URL】
・日刊ゲンダイ「安倍トランプ会談に大騒ぎ “朝貢外交”実況の異常メディア」2016年11月19日.
・メディアゴン「<安倍首相のトランプ詣>対米ロ外交の危うさに控えめな大手メディア(上出義樹)」2016年11月28日【URL】https://bit.ly/2K4FNWl

※65)アメリカ、シェールガス・オイルの規制を撤廃:
 アメリカは元来天然ガスや原油等のエネルギー資源に恵まれた国だが、その輸出入については、国益を守るという観点から厳しい規制を加えてきた国でもある。
 天然ガスの輸出入には、1938年の「天然ガス法」制定以来、エネルギー省の許可が必要とされてきたし、原油に関しても、自給率を高め他の産油国への依存を軽減する「エネルギーの自立」を掲げ、「エネルギー政策・保存法」(1975年)によって国家利益に合致しない原油の輸出を禁止してきた。
 そうした長年の方針を一転させたのが、シェールガスおよびシェールオイルの開発である。
 シェールガスとは、頁岩(けつがん)と呼ばれる堆積岩の層から採取される天然ガス。米国内に豊富に賦存することは確認されていたが、2000m超の深い地層に存在するため、採算の取れる採掘は不可能とみなされてきた。
 ところが、1990年代後半に開発された「水圧破砕法」という新技術により一気に開発が進み、2012年にはロシアを追い抜き、世界最大の天然ガス生産国となる。
 頁岩には油分を含むものがあり、採掘のうえ化学処理を施せば合成石油=シェールオイルになる。かくしてアメリカは、2014年、原油生産ついても世界最大の産油国サウジアラビアを凌ぐにいたる。
 こうした「シェール革命」を背景に、トランプ大統領は、選挙期間中から国内エネルギー生産に関する規制緩和を通じた雇用創出および輸出拡大を主張。就任直後の2017年3月には、オバマ政権が推進した環境保全に配慮する諸政策の廃止を目指す大統領令「エネルギーの自立と経済成長の促進策」に署名した。
 これにもとづき、内務省土地管理局(BLM)は2017年12月、水圧破砕法による環境破壊(後註※66参照)を抑制するためにオバマ政権が設けた諸規制を廃止。米国沖合の大陸棚やアラスカ州北部の北極圏国立野生生物保護区における、原油・天然ガスの掘削制限の解除も決定された。
 このようにしてアメリカは、トランプ大統領のもとで、従来の「エネルギーの自立」に加えて「エネルギーの支配者」となるべく舵を切ったのである。
 アメリカはまた同時に、サウジアラビアなど中東の産油国に配慮する必要はもはやなくなった。すなわち「エネルギーの安全保障を考慮することなく、フリーハンドで経済政策や外交政策を立案できるようになった」(加谷珪一氏)のであり、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領の胸算用のひとつひとつに、中東情勢が翻弄されていくのは必至である。
参照:
・EMIRA「シェールガスとは何か?天然ガス大国・アメリカが進む道」2017年2月10日【URL】https://bit.ly/2B59ST1
・現代ビジネス「アメリカが『世界最強の資源国』になる日ーーシェールガスが国際政治を変える」2017年6月28日【URL】https://bit.ly/2QHylTF
・日本貿易振興機構(JETRO)「米国の石油、天然ガス業界を取り巻く環境変化ーーエネルギー支配構想を視野に入れた規制緩和政策が進行中」2018年4月11日【URL】https://bit.ly/2qNsXmG

※66)シェールガス開発による環境破壊:
 シェールガスを含む頁岩層は、2000~3000メートルの深さに水平に分布する泥岩層の一種。
 粒子が細かく、気体や液体を通す隙間がないため、シェールガスの採掘には頁岩層に沿って水平坑井を掘削し、そこに高圧の水を大量注入して周囲の岩を粉砕、人工的に割れ目を生じさせてガスを取り出すという方法が採られている。「水圧粉砕法」(ハイドロフラクチャリング)といい、1990年代後半に開発され、アメリカを一躍世界一の天然ガス産出国へと押し上げた新技術だが、一方で深刻な環境問題を引き起こすことが知られている。
 岩を粉砕するために注入される高圧の水には、ガスの通り道となる割れ目を安定させるため、プロパントと呼ばれる特殊な砂粒や酸・防腐剤・ゲル化剤・摩擦低減剤などの化学物質が添加されるが、これが地下水を汚染し、周辺住民に健康被害をもたらしている。
 大量に水を使用するため、水不足や地盤沈下が生じた地域もあるほか、使用済み汚染水の地下圧入廃棄はたびたび地震を誘発。さらには、シェールガスの主要成分であるメタンガスが採掘現場から空気中や地下水に高濃度で漏洩し、周辺住民は絶えず健康被害や突然の引火・爆発に怯えて暮らさなければならなくなった(シェールガスの環境問題を告発した2010年のドキュメンタリー映画『ガスランド』では、台所の蛇口から炎が上がる衝撃的な映像が紹介されている)。
 こうした環境問題に対処するため、環境保護庁(EPA)は、シェールガス採掘に用いられる化学物質の情報開示や、天然ガスの漏出を抑制するための汚染防止設計を掘削井戸に義務付けるなど、いくつかの規制を制定したが、2017年1月に就任したトランプ大統領は、EPAのそうした環境規制に異議を唱えてきたオクラホマ州司法長官スコット・プルイットをEPA長官に起用。それらの規制を大幅に緩和し、シェールガス・オイル事業のさらなる拡大を目指す方針を打ち出している。
参照:
・Wikipedia「シェールガス」【URL】https://bit.ly/2qMjOL2
・日経ビジネス「『シェールガスの環境問題』の具体的な中身ーー地下水汚染やメタンガスの漏洩だけではない」2012年4月23日【URL】https://nkbp.jp/2K6P7Jp
・National Geographic「天然ガス採掘でメタン汚染の可能性」2011年5月10日【URL】https://nkbp.jp/2Dq7szE
・FINEV「米国シェールガス開発と環境規制の動向」2013年7月【URL】https://bit.ly/2OKqmUa
・EMIRA「シェールガスとは何か?天然ガス大国・アメリカが進む道」2017年2月10日【URL】https://bit.ly/2B59ST1

※67)福音主義者とシオニズム:
 16世紀、宗教改革者たちは「信仰のみ」「聖書のみ」「万人祭司」の三つの原理を掲げてカトリック教会と袂を分かち、 キリスト教内にプロテスタントと呼ばれる一大勢力を作り上げた。さらに、その「聖書のみ」の原理は、聖書を「誤りなき神の言」とみなし字義的どおりに解釈する、ラジカルな宗派を生み出していく。このようなプロテスタントの聖書原理主義者たちを、とくに「福音派 Evangelicals」と呼ぶ。
 彼らの観点からすれば、『創世記』第15章の「その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。『あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、/カイン人、ケナズ人、カドモニ人、/ヘト人、ペリジ人、レファイム人、/アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える』」は、<パレスチナの地はユダヤ人のもの>ということを、また、『ゼカリヤ書』第8章の「主はこう言われる。わたしは再びシオンに来て/エルサレムの真ん中に住まう」は、<ユダヤ人がシオン=イスラエルへ帰還し国家を建設する>ということを、各々神の摂理として定めた箇所ということになってしまう。
 実際、17世紀以来、ユダヤ人をパレスチナに集めてイスラエル国を再建し、彼らキリスト教徒の救済が成就するために聖書=神自身が語る人類救済計画に積極的に参与すべしとの主張が、主にイギリスの福音派信者たちからなされるようになった。
 19世紀に入ると、それを推進・実現するための組織 The London Society for Promoting Christianity Amongst the Jews (LJS) が設立されたほか、これを熱心に奉じる第7代シャフツベリー伯爵アンソニー・アシュリー・クーパー卿の梃入れでエルサレムにイギリス領事館が開設。初代副領事として、敬虔な福音派信徒であったウィリアム T. ヤングが派遣された。
 一方で、ドレフュス事件をはじめユダヤ人迫害が激化するなか、ユダヤ人問題はユダヤ国家が樹立されないかぎり解決しないとの主張がユダヤ人内部からもなされるようになる。1896年にはテオドール・ヘルツルが『ユダヤ国家』を発表、これを受けて「シオニスト会議」が設立され、外交的手段によりユダヤ人国家を建設する運動(「シオニズム運動」)が展開されるようになった。
 イギリスのユダヤ系貴族院議員ライオネル・ウォルター・ロスチャイルドが外相アーサー・バルフォアからパレスチナにおけるユダヤ人国家建設の同意を獲得した1917年の「バルフォア宣言」は、このようなイギリスにおける宗教改革以来のキリスト教シオニズムに、19世紀のユダヤ・シオニズム運動が合流した帰結である。
参照:
・『岩波 キリスト教辞典』項目「プロテスタンティズム」「福音派」、2002年、岩波書店.
・宇田進『福音主義キリスト教と福音派』いのちのことば社、1984年.
・Wikipedia「クリスチャン・シオニズム」【URL】https://bit.ly/2A1v3Ub
・Wikipedia「シオニズム」【URL】https://bit.ly/2KagW3p
・INRI委員会「『キリスト教シオニスト』の実態 ~シオニズムとキリスト教原理主義の関係~」【URL】https://bit.ly/2jRWisv
・The Jerusalem Post, Britain’s mixed role in the Jewish homeland, 05/03/07【URL】https://bit.ly/2TmkwMe

※68)クリスチャンシオニストの終末思想:
 『マルコ福音書』第13章には、現世界秩序が終焉を迎える時にキリストが「大いなる力と栄光を帯びて雲に乗って」再来し、「天使たちを遣わし、地の果てから天の果てまで、彼によって選ばれた人たちを四方から呼び集め」て神の正義の支配する新しい世界が始まるとある。
 また『ヨハネ黙示録』第20章では、世界史の終わりに義人のみが復活を許されて暮らす、1000年続くとされる黄金時代=「至福千年」が到来すると述べられている。
 キリスト自身は、「その日」の正確な日時や状況は人間の知るところではない、むしろ、いつ訪れてもよいように、個々人は警戒と忍耐を持って生を全うするよう説いているが、疫病や飢饉、戦争、革命といった大きな社会的変動や危機が訪れるたびに、一部の人々はそれを終末的状況ととらえ、「現実世界の根本的変革と集団的救済への期待」を込めて、「キリスト再臨」および「千年王国」の到来を切望する運動が繰り返されてきた。
 アウグスティヌスが「世界史の内なる教会史の歩みこそがすでに到来している至福千年期に他ならないとし、終末論の熱狂を決定的に斥け」て以来、カトリック教会も正統派プロテスタント諸派もこの見解を貫いてきたが、19世紀に入って福音派の一部からまたぞろこの「千年王国」運動が復活。しかも今度は「キリスト再臨」と終末に復興されるべきイスラエルの運命とを結び付けるというもので、勢力を拡大しながら存続することになった。
 そしてその急先鋒が、イギリスの福音派ジョン・ダービーが19世紀後半にアメリカにもたらし、1875年に始まる「聖書預言会議運動」などを通じて広まった「ディスペンセーション主義(天啓主義)」、および、20世紀初頭にアメリカで興った福音派のひとつ、1910年から15年にかけて刊行された12冊の小冊子『根本的なもの 真理への証言』The Fundamentals : A Testimony to the Truth に端を発する「ファンダメンタリスト(根本主義者・原理主義者)」と呼ばれる一派である。
 彼らは聖書の上記箇所に加えて、『ヨハネ黙示録』第16章に言及される「ハルマゲドン(イスラエルにあるメギド山)」の戦い(地上の王たちが神に敵対する勢力に率いられて集結する最終的戦い。神の教会の大敵たるバビロンの破壊に続く)を重視し、終末が次のようなプロセスで進行するとしている。
(1)イスラエル国家の再建。
(2)キリストが空中に再臨。「選ばれた者」たちを空中に引き上げ(「携挙(ラプチャー)」)、来るべき大患難から守る。
(3)ローマ帝国の再現たるアンチキリスト勢力(欧州十ヶ国の指導者に率いられている)が台頭、再建されたイスラエル国と平和条約を締結するが、アンチキリストは途中からこれを反故にし、ユダヤ人を激しく迫害。神は怒り、地上に次々と災厄をもたらす(「大患難時代」。『マルコ福音書』第24章に言及される)。
(4)アンチキリスト率いる諸国の連合軍がイスラエルに侵攻、ハルマゲドンで神とサタンとの最終戦争が勃発。
(5)地上に再臨したキリストがこれを滅ぼし、地上に神が直接統治する新たな王国を建設。「選ばれた者」たちもそこに降り立ち、千年続くこの新王国の民となる。ユダヤ人たちはハルマゲドンで大半が壊滅するが、生き残った者たちがキリスト教に改宗、「千年王国」の民に加わる。
(7)千年を経たのち、新しい天と地(天国)が始まる。
 要するに、彼らキリスト教原理主義者にとって、イスラエル国再建もそこを舞台に繰り広げられる戦争も、「罪深い者たち」が一掃され「選ばれた者」たる自分たちだけの世界となる筋書きの重要なステップを構成するのである。彼らが政治や社会運動に強い関心を示すのも、まさにこの観点から説明することができる。
参照:
・『岩波 キリスト教辞典』項目「アメリカ合衆国のキリスト教」「再臨」「千年王国」「ハルマゲドン」「ファンダメンタリズム」、2002年、岩波書店.
・山本貴裕「反キリスト教国アメリカ『レフト・ビハインド J シリーズの背後にある聖書解釈の伝統一」『広島経済大学研究論集』第28巻第4号、2006年【URL】https://bit.ly/2BdThwl
・INRI委員会「『キリスト教シオニスト』の実態 ~シオニズムとキリスト教原理主義の関係~」【URL】https://bit.ly/2jRWisv
・Wikipedia「携挙」【URL】https://bit.ly/2Fqulph
・ジェームズ・バー著、喜田川信・柳生望・谷本正尚・橋本秀生訳『ファンダメンタリズム―その聖書解釈と教理』ヨルダン社、1982年.

※69)票田としてのクリスチャンシオニスト:
 神の人類救済計画が、イスラエル国家の再建に始まり、キリストの再臨と「携挙」~大患難時代~ハルマゲドンにおける最終戦争~「千年王国」というプロセスでなされると信じるアメリカのキリスト教原理主義者たちは、このプロセスを現実のものとするため、ロビー活動や社会運動を積極的に(時に戦闘的に)展開してきたことが知られる。
 すでに19世紀末には、熱心な福音派伝道師のウィリアム・ユージン・ブラックストンが各地を回り、有力議員や実業界の大物たち(石油王ジョン・D.・ロックフェラーや銀行家のジョン・P・モルガンもそこに含まれていた)の署名を得て、パレスチナにおけるユダヤ人国家の樹立を求める請願書(「ブラックストン・メモリアル」)をベンジャミン・ハリソン大統領に提出している。
 20世紀に入り、神を否定する現代社会の物質主義の蔓延を、聖書が「終末」に起こると予言する悪の勢力の拡大であるとみなした彼らは、来るべきキリスト再来と「携挙」に備えて悔い改めるようキリスト教徒に呼びかける一方、妊娠中絶禁止を掲げてクリニックへの妨害活動を行ったり、学校で進化論を教えることに異を唱えてリベラル派と大論争を巻き起こしたり、政治家を取り込んで「反進化論法」と呼ばれる一連の法律を次々と成立させるなど、きわめて強硬な政治的主張を掲げて影響力を行使するようになった。
 1967年の第三次中東戦争以後は、イスラエル政府に批判的になったリベラル派キリスト教徒と決裂したユダヤ・シオニストと結び、イスラエル支持、軍備増強などを掲げてロビー活動を展開。1970年代後半には「モラル・マジョリティ」のような保守連合を組織して、テレビやラジオを活用した大衆伝道を行い、南部を中心に勢力を拡大していく。
 共和党が彼らの好む政策を打ち出し、票田として取り込み始めたのもこの時であり(レーガン大統領の当選はその最初の成果と言われる)、ブッシュ大統領を経てトランプ大統領に受け継がれ、アメリカの中東政策に色濃く反映されることになった。
参照:
・『岩波 キリスト教辞典』項目「アメリカ合衆国のキリスト教」「ファンダメンタリズム」「テレヴァンジェリスト」2002年、岩波書店.
・INRI委員会「『キリスト教シオニスト』の実態 ~シオニズムとキリスト教原理主義の関係~」【URL】https://bit.ly/2jRWisv
・Wikipedia(en) William E. Blackstone【URL】https://bit.ly/2BfjYko
・Wikipedia「進化論裁判」【URL】https://bit.ly/2OOvF4T
・ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「モラル・マジョリティ」【URL】https://bit.ly/2A0Giw8
・田中宇の国際ニュース解説「キリストの再臨とアメリカの政治」2004年7月21日【URL】https://bit.ly/2DLJyQo
・IWJ「イラン核合意から離脱し、エルサレムに大使館を移したトランプ政権の『異常』な中東政策は、キリスト教福音派の預言成就願望とユダヤロビーに答えたもの!? ~ 岩上安身による放送大学・高橋和夫名誉教授インタビュー 2018.5.17」【URL】https://bit.ly/2PAuo6J
・IWJ「安倍総理は『ジェンタイル・シオニスト』!? 米国の『イスラエルびいき』の背後にある『ジェンタイル・シオニズム』とは!? 岩上安身が『パレスチナの平和を考える会』事務局長・役重善洋氏にインタビュー第1弾 2018.7.24」【URL】https://bit.ly/2o0dYEq
・IWJ「米国によるイスラエル「偏愛」の歴史的起源!「ユダヤ人帰還論」!? 誤解された「オスロ合意」の真実とは!?~岩上安身による『近代日本の植民地主義とジェンタイル・シオニズム』著者・パレスチナの平和を考える会事務局長 役重善洋氏インタビュー 第2弾 2018.8.24【URL】https://bit.ly/2DUNcHL

※70)シェルドン・アデルソン:
 シェルドン・アデルソン氏は1933年ボストン生まれの実業家。ウクライナとリトアニアのユダヤ系移民を父に持つ。
 ネバダ州ラスベガスでのカジノ経営で財をなし、2000年代にはアジアにも進出。外資参入が解禁されたマカオで2004年に開業したラスベガススタイルのカジノ「サンズ・マカオ」や、2011年開業のシンガポールの統合型カジノリゾート「マリーナベイ・サンズ」で莫大な利益をあげ、アメリカの大手経済紙『フォーブス』が毎年発表する世界長者番付の常連となっている(2018年度は世界第21位)。熱心な共和党支持者であり、トランプ大統領の就任式に500万ドル(約5億4500万円)を寄付して話題になった。
 強硬なシオニストとしても知られ、イスラエルではネタニヤフ支持のフリーペーパー『イスラエル・ハヨウム』(=イスラエル・トゥデイ)を発刊。トランプ大統領が米大使館をテルアビブからエルサレムに強行移転した際も、その費用はアデルソンが出したといわれる。
 なお、安倍総理が今年、日本列島を何度も襲った自然災害に対する対処もそっちのけに「統合型リゾート(IR)実施法」の可決を急いだことの背景に、昨年2月にフロリダで行われた日米首脳会談において、トランプ大統領から「アデルソンが経営する会社からのカジノ建設申請についてしっかりと考慮するように」との「厳命」があったことが明らかになっている。
参照:
・Wikipedia「シェルドン・アデルソン」【URL】https://bit.ly/2TaEmtP
・産経ニュース「【トランプ政権】大統領就任式に5億円寄付! カジノ王のシェルドン・アデルソン氏、過去最高額」2017年4月20日【URL】https://bit.ly/2B9E67f
・ニッポン放送「米大使館エルサレム移転と日本のカジノ開業を結ぶ深い関係とは?」2018年2月27日【URL】https://bit.ly/2Kirm0q
・Forbes The World’s Billionaires, The List 2018 Ranking【URL】https://bit.ly/2o1LEn1
・古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ「シェルドン・アデルソンのために日本に厳命するトランプ大統領」2018年10月24日【URL】https://bit.ly/2K75FB3

※71)イスラエルの晩餐会にて「靴を舐めろ」:
 2018年5月2日に安倍総理がイスラエルを訪問した際、エルサレムの首相公邸で開かれた夕食会で提供されたデザートの件。紳士用革靴の形をした金属製の器に盛られたチョコレートで、小さな畳の敷物に載せられていた。
 これを制作したイスラエルの有名料理人が写真をインスタグラムにアップしたところ、イスラエルの市民やメディアから、テーブルの上に靴のようなものを置くこと、それも屋内で靴を脱ぐ文化の国の首相に対してそのようなものを出すとは失礼きわまりないと、非難の声が巻き起こったのである。
 批判を受けて、料理人は笑顔の安倍総理夫妻を写した写真を示しつつ、彼らは自分の料理を喜んでいたと反論。イスラエル首相府は、食事の内容は事前に確認したわけではなく、あくまでシェフの独創性の産物であると説明した。
 イスラエル大使館も靴型の容器に他意はないことを強調しているが、トランプのイスラエル訪問の際のデザート(トランプとネタニヤフの横顔のシルエットが描かれた皿に、チェス駒をかたどったスイーツが載せられていた)と比べてもかなり異様で、「靴へ口を運ぶ」行為に多くのネットユーザーが屈辱的意味を感じ取ったのは当然といえる。
参照:
・時事通信「イスラエル、『靴のデザート』で物議=安倍首相との夕食会で提供」2018年5月8日(リンク切れ)
・NEW’S VISION「安倍首相に夕食会で『靴のデザート』で物議、困惑するイスラエル大使館『靴に悪意はない』」2018年5月9日【URL】https://bit.ly/2TgqvlF
・ハフィントンポスト「イスラエルが安倍首相に出した『デザート』で物議。公邸料理人がつくったのは…(画像)」2018年5月9日【URL】https://bit.ly/2DnIzon

「独裁傀儡国家ニッポン」!? 改憲を通じて安倍政権が目指すのは、日本がどうなろうと構わぬ米国の便利な道具としての日本!

岩上「そもそも、国家の正常な思考とは、利己的思考じゃないですか。まともな主権国家だったらあり得ないですよ、原発抱えたまま戦争に向かうなんて。イスラエルは事実上核武装しています。それを問われれば『ノーコメント』と答えるんだそうですけど、敵の標的になる可能性を考えて、民生の原発は保有していません。

 実際、ネタニヤフが『私達は核電力計画を再考するつもりだ』『日本の状況、福島第一原発を見て、民生の核原子力発電を計画する熱意が薄れた』と語ったとCNNが報じていますが、要するに、実験用の原発は持っていても商業用のは持ってないんです。それはなぜか?標的になるからですよ。イスラエルは常に戦争をしてる国じゃないですか。敵に囲まれてるじゃないですか。だから、弱点になるような原発なんて保有しない。イスラエルは独裁的で強権的な国家ですよね、でも、こうやって戦略的に利己的な思考で動く、『正常な』独裁国家ですよ。

▲ベンヤミン・ネタニヤフ イスラエル首相(Wikipediaより)

 ところが、日本は全国に原発を抱えたまま戦争に向かおうとしている。これ、通常の主権国家の正常な思考ではあり得ないですよね。我々国民の願いも聞かない。で、上にいる連中も分裂したまま。片方に原発を続けたい人らがいて、もう片方には戦争に向かおうとする人たちがいる。

 つまり、経産省のやってることと、外務省・防衛省のやってることは、矛盾するんです。どっちに質問しても、まともな答えが返って来ないし。

 要するに原発抱えて絶望的な戦争をしようっていうことですよね?

 それでこの国家を独裁国家にするというということは、それは正常な主権国家としての統合的な思考能力を持たない『従属的独裁国家』しかあり得ない」

▲正常な利己的思考をする主権国家ではありえない!原発を抱えたまま戦争に向かう愚!

永井「もし戦争して原発がいくつかやられたら、もう日本は、人が住めない国になってしまいますよね。国破れて山河“なし”です」

岩上「そうですよ、国破れて“放射能しかなし”。だから、戦争することを考えるなら、まずは原発を処理することを必死で考えるはずですよね?

 でもやらない。

 しかも、日本周辺での戦争ではなく、はるばる中東まで呼ばれて戦争しに行かなきゃいけないかもしれないと。喜んで他国の戦争に巻き込まれに行くと。実際、イスラエルと武器を共同開発しましょうってことになりましたよね(※72)、何でもかんでも言われたとおり、『はいはいはいはいはい』って言ってやっている。その延長上で、『お前が戦争やれ』と言われたらやっちゃいますよ。

 で、今度は国民が反対できないような体制にしたいってわけでしょう?『緊急事態条項』を入れて、緊急事態だといえば戦争できちゃうように」

永井「東日本大震災までは、原発に対するテロは、高度な専門的知識がなければ起こせないと考えられていましたが、あの東日本の原発事故で、電気を止めればいいんだということがわかってしまいました。だから、たとえば日本が中東の対立に巻き込まれて、テロリストが日本の原発を狙うということになれば、これもう、かなり容易に、原発事故を起こさせることが可能になってしまったんですね。すごく怖いことだと思いますよ」

岩上「だから、お前たちにイスラエルのような国家になる覚悟があるのか、って話ですよ。インタビューの初めの方でも、(緊急事態条項を使って安保法制とか集団的自衛権を強化すれば)核保有や核による先制攻撃も可能という話になりましたが、やると思いますね。だけど原発はそのまま。もはやこれは、曲がりなりにも一主権国家の主人として振る舞おうとする人間の思考じゃないです。この国がどうなろうとどうでもいい人たちの、便利な道具として使われようとする者の思考です。

 そしてそれは、アメリカ以外ないと思うんですよね。先ほど読み上げた、オーエン・ラティモアの言葉どおり、アメリカは対日政策のスタートから日本を便利な道具として使おうとしていた。緊急事態条項による独裁体制の確立は、まさにそれの完成形じゃないですか。大日本帝憲法下での天皇ファシズムじゃない。

 『天皇が主権者』とも書いてない。『天皇大権』も『勅令』にも拠らない、首相あるいは内閣に与えられる絶対的な権限。便利な道具なら首相は傀儡であればいいわけですから、カリスマである必要性もない。『傀儡』という点が重要です。これ、つまりは外患でしょ、国が首相を通して他国に乗っ取られるわけだから?」

永井「『傀儡』であれば、たしかにそういう事になりますね」

岩上「民族主義の右翼も怒ってしかるべきじゃないかと思うんです。どうか怒ってくださいよ、本当に。結局、命令を下す所は官邸じゃない。横田基地か、どこかにあるのかわかりませんが、いずれにしても、『日本は最終的に合衆国の一つの州として、市民権や選挙権は認められない』、そんなような、グアムみたいな属領とか植民地、それも軍事植民地にされてしまうんじゃないか。そんな気がしてならない。

 しかも、今回出してきた改憲案の緊急事態条項、あれは先生が分析されたとおり、『永久独裁条項』ですから、ずーっと命令を受けながら不利益を被り続ける。我々は、日本列島を脱出しない限り、もはや真実を知ることもできないまま…..。

 こうやって、日本がネタニヤフとトランプの手駒、グルカ兵として使われるというのが、安倍政権の『緊急事態条項』の行き着く先じゃないかと思われるんですが、どうでしょうか、先生?」

▲緊急事態条項で宗主国に従属する「属国的傀儡独裁」へ!?

永井「流れとしては、そのような方向に向かっているとは思います。ただ、彼らがそんなことまで計画して意図的にやってるかといえば、それはわからないです。物事をきちんと考えて事を進める方々には到底見えませんからね。でも、流れとしてはその方向になるかと」

岩上「そして『独裁バンザイ』の風潮… そういう中で、IWJはスタッフ一同ふんばっております。『記者の2人も逮捕されたら日本のジャーナリズムは終わり』というようなお話が出ましたけども、僕なんかよりもっと立派なジャーナリストはいますから」

永井「いや、こんなに豊富な情報を常に発信している方はいないですよ。本当にいないです。よく頑張ってますね。素晴らしいことです」

岩上「いやいや、まあ、皆さん、これからもIWJをよろしくお願いします(笑)。それから先生には、僕が逮捕された時にはひとつ面会に」

永井「『接見』ですね」

岩上「接見に来ていただきたいと。僕、拷問には弱いですから」

永井「(笑)」

▲永井幸寿弁護士

岩上「それはもうめちゃくちゃ弱いですから。閉所恐怖症だし。それから検事に脅されたら……僕、脅しにすごい弱いんですよ」

永井「すごく強そうに見えますけどね。拷問なんか耐えそうですが(笑)」

岩上「いやいや、ダメダメ!そんなところに閉じ込められて、『お前あの時何をどうしてた』なんて詰め寄られたら、きっとあっというまに弱音吐いてね……無理です、獄中何とかみたいな、そらもう、絶対無理です」

永井「(笑)その時は弁護団組みますから」

岩上「よろしくお願いします」

永井「(笑)」


※72)日本とイスラエルが共同で武器開発:
 2016年6月30日、共同通信が、防衛装備庁がイスラエルと共同で軍用無人偵察機(ドローン)を研究開発する準備を進めていると報じた。イスラエルの持つ無人機技術に日本の高度なセンサー技術などを組み合わせるというもので、日本側の参加企業として富士重工業、三菱電機、NECの名があがっている。
 安倍政権は2014年4月の閣議決定で「武器輸出三原則」を撤廃、2015年10月には防衛装備庁(海外への武器・防衛技術輸出や海外軍事企業との共同研究・生産のマネージメントを担う防衛省の外局)を設置し、「武器輸出ができる国」への国家改造を進めてきた。度重なるガザ地区やレバノンへの空爆で国際世論から非難を浴びているイスラエルへの接近は、この流れの中でのことである。
 2014年5月の安倍・ネタニヤフ会談後の共同声明で「閣僚級含む両国の防衛当局間の交流拡大」がうたわれ、2016年6月のユーロサトリ(世界最大級の防衛装備見本市)では、堀地(ほっち)徹・防衛装備部長(当時)とイスラエル国防省の対外防衛協力輸出庁(SIBAT)長官との会談が行われていた。
 防衛装備庁のイスラエル無人機への関心には、アメリカの数分の1という価格、アメリカと異なり技術開示も辞さないというイスラエル側の姿勢、それに実戦による性能の裏付け(パレスチナ人殺戮の実績!)、といった要因がはたらいているという。
参照:
・武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)・【武器輸出反対アクションシート2.0】イスラエルとの無人機共同研究に反対!【URL】https://bit.ly/2DRKPFJ
・杉原こうじのブログ【資料】共同通信「イスラエルと無人機共同研究へ」記事(2016年07月06日)【URL】http://exci.to/2DSeVsk
・IWJ「誤爆率9割の殺人兵器『無人戦闘機』の実態! ついには『人工知能 (AI)』による『戦争の無人化・自動化』も実現間近!? ~『武器輸出と日本企業』著者・望月衣塑子氏に岩上安身が訊く(後編) 2016.10.6」【URL】https://bit.ly/2Tt5Nix

実はとんでもなく怖い「いつでも独裁、いつまでも独裁、何でも独裁」の自民党新改憲案の緊急事態条項! 事実がちゃんと伝われば状況は変わっていく!

岩上「ということで、先生が今回、自民党の新改憲案について分析し、ここで教えてくださったことは、今日本の国内外で起こっているさまざまな現実に符合します。

 内閣人事局に力を持たせて、森友学園の公文書改竄問題に関わった役人たちを見てください。あのように、既に安倍夫妻を守るためだったら何でもする役人ばかりになりましたし、審議時間3日間・6時間のみでTPP11は承認。そして、24日に可決見込みの『働かせ放題改革法案』。これ、皆、過労死しますよ。労働権はなし崩しになるって、これ奴隷制に戻るって話ですよね。こうやって、今まさに独裁化しつつあるわけです。とはいえ、大臣が『セクハラ罪っていう罪はない』と発言したら、閣議で『セクハラ罪ではない』と、こうやって自分たちに都合よく、なんでも勝手に決めちゃうわけですが、このレベルでの独裁ですけどね。

 そこへもって、自民党新改憲案の、『いつでも独裁、いつまでも独裁、何でも独裁』条項と。僕は、日本はいま、外交面も含めて、本当にとてつもなく危ない所に差し掛かっているんだなあと痛感しております。永井先生にこうやって教えていただいて本当に良かった。(改憲案の条文が)とてもシンプルになって、怖い文言もなくなっていたものですから、永井先生に教えていただかないとですね、やっぱり僕もうっかりするところでした。実はとんでもなく怖いという。先生、本当にありがとうございました」

永井「こちらこそ、ありがとうございました。すいません、私から『喋らせろ』なんて無理を言って。なのに、きちんと話す場を作っていただけて感謝しています」

岩上「ということで、皆さんにも頑張っていただきまして。たしかに現状は厳しいですよ。衆参三分の二取られてますからね。でもまあ、ここで何とかして、国民投票で阻むとかしないと」

永井「そうですね。その前に発議をさせないことも大事です」

岩上「本当は、安倍退陣、みたいな流れになってくれたら良かったんですが、モリカケ問題でも退陣させられそうにないとあらば、国会発議阻止は望み薄かもしれません。司法はすっかりあちら側、ということになりますから」

永井「でも、事実がこう、皆さんにちゃんと伝わっていけば、状況は変わってくると私は思いますので」

岩上「楽観的ですね、先生」

永井「はい(笑)。極めて楽観的です」

岩上「(笑)極めて楽観的に、ですね。では、その楽観にあやかって、IWJも楽観的なスタッフ募集中です。一緒に頑張って下さる人、あるいは、僕の身に何かあってアウトになった時も、IWJの活動を続けていこうと考えてくださる人、そんな人たちが来てくださればなと思っております。

 先生のこのたびのお話は、本当に、国際状況と日本国内の動きに重ね合わせて考えられるべき、緊急生の高いものです。今日は長々とお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました」

永井「はい、ありがとうございました」

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