自民党憲法改正推進本部の下村博文本部長は2018年11月15日、国会での改憲論議に否定的な野党を「職場放棄」と罵った。自らの疑惑についての説明責任は棚に上げ、暴言を吐きつつ、強行採決に向けて暴走をする。この下村氏の強引で、自らを省みない猪突猛進ぶりは、自民党が憲法改正に向けてなりふりかまわず猛進しようとする姿勢を如実に表している。
結果として批判を浴びた下村氏は、この暴言がきっかけで衆議院憲法審査会の幹事の辞退に追い込まれ、20日には委員からも外されることになったが、与党の姿勢は変わらず、緊急事態条項を含む憲法改正の発議の危機が目前に迫っていることには何も変わりもない。
※「職場放棄」発言の自民 下村氏 憲法審査会の委員も外れる(NHK NEWS WEB、2018年11月21日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181121/k10011718041000.html
民放連(日本民間放送連盟)は2018/11/25年9月20日、憲法改正の国民投票に関して、テレビCMの上限規制を自主的に設けることはしないことを表明した。つまり、改憲CMが青天井で、量的制限なく、民放各社で朝から晩まで流されるというのである。影響を受ける人は山ほどいるだろう。民放は中立ではなく、改憲に積極的に加担した、と言わねばならない。
臨時国会で改憲が発議されてしまえば、改憲賛成派は、圧倒的な資金力で改憲に肯定的なCMを打ち、草の根で改憲運動を推進する日本会議などを通じて組織票を動員するだろう。
※国民投票CM、量的規制せず 民放連(朝日新聞デジタル、2018年9月21日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13688535.html
2017年5月3日の憲法記念日に、安倍総理が「2020年を新しい憲法が施行される年に」と発言したことを受けて策定が進められ、2018年3月25日の自民党大会において条文の形で発表された、「改憲たたき台素案」4項目のひとつ、自民党新「緊急事態条項創設」案。
2012年に発表された自民党改憲草案における、あの居丈高なトーンは鳴りをひそめ、一見「おとなしい」規定に変わったように見える、この新「緊急事態条項創設」案のはらむ危険性にいち早く気づいた永井幸寿弁護士は、岩上安身によるインタビューで、そこに仕込まれたいくつものトラップを暴いてみせた。
「自然」災害だけでなく、「武力攻撃災害」も含めた「大規模な災害」時に、内閣が制定できるとある「政令」は、第73条6号に規定される通常の意味での災害対策の政令ではなく、大日本帝国憲法下の「緊急勅令」に相当する「独立命令」=独裁権限であること。
旧案にはあった「内閣総理大臣による緊急事態の宣言」も解除規定としての「事前または事後の国会の承認」も、今回はすべて取り払われ、内閣が「国会による法律の制定を待ついとまがない」と「主観的」に判断すればいつでも国会を無視して立法ができるしつらえになっていること。
そして、内閣が制定できる「政令」の内容についても、「国民の生命、身体および財産を保護するため」以外の何の限定もなく、内閣がそれを名目にして人権制限や報道規制、核保有、さらには、先制核攻撃や他国の戦争への参加など、何でもできるようになっていること。
こうした「いつでも独裁、何でも独裁」に加えて、今回お届けするインタビュー後編では、この新「緊急事態条項」が、いかに内閣による「いつまでも独裁」を可能にするか、が明らかにされる。
そして岩上安身は、安倍政権となって以来加速的に進行する国内外のさまざまな動きや出来事が、中東や極東での有事の際に日本の自衛隊を米軍の指揮下で実戦に使うための、米国による「傀儡政権」への支配の強化であり、そのための改憲であるとの確信を深める。
「国体護持」を標榜しながら、きわめて反皇室的な言動を繰り出し、卑屈な対米従属姿勢を恥じない改憲勢力が目指すディストピアが、インタビュー後編で明確に見えてくる。