【国会ハイライト】「災害をダシに憲法を変えてはいけない」〜永井幸寿弁護士が憲法審査会で意見陳述!緊急時の国会議員の任期問題は「参議院緊急集会」と公選法「繰延選挙」で対処可能!(前編) 2017.3.27

記事公開日:2017.3.27 テキスト
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(取材協力:原佑介 文責: 岩上安身)

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 学校法人「森友学園」をめぐる問題に日本中の注目が集まるなか、2017年3月16日から衆院憲法審査会が議論をスタートさせた。

 現在、議論の柱となっているのが「緊急事態条項」の創設だ。同条項には、大震災などの有事と選挙が重なった場合、国会議員の任期を延長する規定も含まれている。自民、公明、民進の3党は、いずれも国会議員の任期延長規定について「検討が必要」との見解を示している。

 しかし、「緊急事態条項」の要は議員の任期延長規定ではない。自民党が用意する改憲草案の「緊急事態条項」の条文を一読すれば、その狙いがかつてナチス・ドイツの築いた「独裁体制」の確立にあると、誰にでも理解できるはずだ。

▲議場で全権委任法への賛成を求めるアドルフ・ヒトラー(ウィキペディアより)

 緊急事態条項の本質は、戦争や大災害などの有事に国家を維持するため、一時的に法の秩序を停止することにある。自民党の掲げる緊急事態条項は、「緊急事態の宣言があった時、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定できる」とし、行政府のトップが立法府の権限をも一手に握ると定めている。文字通りの独裁である。

 さらに、自民党改憲草案には、緊急事態宣言の確実な解除も設けられておらず、事実上、「戒厳令」が永続化してしまう可能性も否定できない。実際、仏パリでは2015年11月の同時多発テロで「非常事態宣言」が出されて以降、5度にわたって延長が繰り返され、今も解除されていない。その間には、治安当局の権限が徐々に強化されてきたといわれている。

 「歴史的にも不当な目的や期間延長、過度の人権制限、司法の抑制など、多くの国で軍人や政治家に濫用されてきた。自民党の緊急事態条項は、ナチスの全権委任法にあたる独裁条項だ」──。

 こう指摘するのは、日弁連災害復興支援委員会・前委員長の永井幸寿弁護士だ。災害現場をよく知る永井弁護士は2015年12月19日、IWJ代表・岩上安身のインタビューにこたえ、いかに緊急事態条項が日本にとって不要なものであるかを説いた。

▲阪神・淡路大震災による火災の様子(ウィキメディア・コモンズより)


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 2017年3月23日、衆院憲法審査会で「参政権の保障をめぐる諸問題」をテーマに参考人質疑が行われ、参考人として招かれた永井弁護士は緊急事態条項の危険性を論じ、「災害をダシにして憲法を変えてはいけない」と突きつけた。

 「災害は事前の準備なくして対策できない」と永井弁護士は説き、「災害のあとに国家に権力を集中しても、泥棒を見て縄をなうようなもので、災害対策にはまったく役に立たない」と断言する。

 政府・与党そして野党の一部(民進党の細野グループなど)が緊急事態条項を災害対策名目で導入を図ろうとするのは、多くの人の災害への苦しみ、不安につけこむ、「泥棒」的な魂胆があるからである。人の弱みにつけこみ、一挙に権力を奪いつくす。ヒトラー並みの、最悪のワルが考えつく「手口」である。災害がダシにされていることに、国民皆が気づかなくてはならない。

 以下、永井弁護士の意見陳述を全文掲載する。

日本国憲法の考え方は「国家緊急権はあえて設けず、緊急事態は平常時から法律で備える」

▲衆院憲法審査会で意見陳述する永井幸寿弁護士

永井幸寿弁護士(以下、永井氏)「私は阪神・淡路大震災で事務所が全壊して以来、22年間、被災者支援に関わってきた者です。その立場でお話を致します。

 第一に、災害を理由に『緊急事態条項』を憲法に設けるべきか、ということです。私は災害を理由とした緊急事態条項を憲法に創設することには反対です。

 『緊急事態条項』とは、『国家緊急権』を憲法に創設する条項です。国家緊急権とは、戦争、内乱、大規模災害など、平時の統治機構では対処できない非常事態に、国家の存立を維持するために、人権保障と権力分立を停止する制度です。

 日本国憲法は国家緊急権を置いていませんが、その趣旨は昭和21年7月15日、帝国憲法改正案委員会の議事録の中での政府の答弁(※)で、明確に明らかにされております。国家緊急権の乱用の危険から、あえて憲法には国家緊急権は設けないが、緊急事態には平常時から法律などで準備する、というものです」

※昭和21年7月15日、帝国憲法改正案委員会議事録で、金森徳次郎国務大臣が、「1. 民主主義。民主政治を徹底させて国民の権利を擁護するためには、非常事態に政府の一存で行う措置を防止する。2. 立憲主義。非常という口実に、政府の自由判断を大幅に残しておくと憲法が破壊される可能性がある。3. 憲法の制度。特殊な必要があれば臨時国会を招集。衆院解散中は参議院の緊急召集で対処できる。4. 法律などによる準備。特殊な事態に濫用されないよう、平時から政令制定で完備する」と答弁した記録が残っている。濫用防止のため、国家緊急権は憲法に制定せず、平常時から厳重な要件で、法律で整備すると明言している。

災害関連法は完備済み! 総理大臣に認められている「政令制定権」「首長への指示権」「自衛隊派遣要請」「警察統制権」

永井氏「では、災害関連の法規は整備されているのでしょうか。これは大変、よく整備されております

 例えば内閣は、災害緊急事態には国会のコントロールのもとで4つの項目に限り、罰則付きの政令制定権が認められております。また、内閣総理大臣は、関係指定行政機関の長、地方公共団体の長などに対する指示権が認められ、防衛大臣に対する、自衛隊の部隊派遣要請ができる。警察庁長官を直接指揮監督して、一時的に警察を統制するなど、権力が集中するシステムとなっております。

▲自衛隊航空隊による、陸前高田市での行方不明者捜索の様子(ウィキメディア・コモンズより)

 また、人権の制限に関してみると、都道府県知事に、医療関係者に対する従事命令、財産権の管理・使用、物資の保管命令、収容の権限、職員の立入検査などが認められ、これらを罰則付きで強制しています。さらに市町村長に対しても、瓦礫の撤去などにつき、強制権が十分認められております

 では被災者にとって一番、重要な国のルールとは何でしょう。これは憲法ではなく、それよりも下位のルールである、法律、通知、条例などです。

 例えば、仮設住宅に断熱材が入るのか、あるいは、復興住宅に入居するには連帯保証人が必要か。これらは被災者にとって大変重要な問題ではありますが、法の運用や条例の問題であって、憲法の問題ではありません。

 災害対策の原則は何でしょう

 これは、医療の専門家、あるいは建築の専門家など、災害の専門家が口をそろえて言うのは、『準備していないことはできない』ということです」

東日本大震災の際の「不手際」は「安全神話」で事前準備を怠った結果!

永井氏「国家緊急権は、災害が発生した後、泥縄式に権力を集中する制度です。しかし、災害後にどのような権力を強力に集中しても、対処することはできません。東日本大震災で、国や自治体の不手際というものが言われましたが、その多くが、事前に準備していなかったことが原因です。

 例えば原発事故で、原発から4.5kmの双葉病院では、寝たきりの高齢者が、避難の混乱で50人亡くなりました。これは、なぜこういうことが起きたのでしょう。

 法律の制度では、国は防災基本計画、都道府県、市町村がこれに基づいて地域防災計画を策定する義務があり、そして、指定行政機関、自治体の長は、防災計画の実施に努め、防災訓練の実施義務が認められています

 しかし、国、自治体、事業者において、事実上、災害で原発事故は起こらないということになっていたんです。つまり、事前に県境を超えた避難者の避難経路、あるいは、渋滞のときのサブの経路、あるいは事前にドライバーや車両の確保、そして避難した後の、長期の生活の場の確保の計画、あるいはその訓練、これについての自治体の連携や、住民参画がなかったことが原因です。

 法律の適正な運用による事前の準備がなかったことが原因であり、緊急事態条項を創設しても、対処することはできません

被災市町村アンケートで「市町村が権限を持つべき、または市町村の権限を強化すべき」が計96%に!

永井氏「では、国と市町村の役割分担について、被災市町村はどう考えているのでしょうか。このグラフの資料をご覧いただきたいと思います。

 私は平成27年7月から9月まで、被災3県、岩手、宮城、福島の市町村を訪問して、市長にヒアリングを行い、また、日本弁護士連合会は9月に、37市町村にアンケートを実施し、27市町村から回答を得ました。

 アンケートでは、国と市町村の役割分担について、市町村の権限は強化すべきか、現状維持にすべきか、軽減すべきかと聞きました。『現状』とは、災害対策基本法による、『第一次的な災害対策の権限は市町村にあり、国はその後方支援を行う』ということです。

 そのアンケートの結果は、『(市町村の)権限強化』というのが29%、『現状維持』が67%、『(市町村の)権限減少』が4%でした。つまり、これらを総合すると、市町村は第一次的権限を持つ、または権限を強化するというのが96%でした。

 なぜこのような結果になるのでしょう?

 関東大震災では、死者の80%が焼死したということです。阪神・淡路大震災では、死者の80%が圧死しました。自宅に押し潰されたんです。東日本大震災では、死者の80%以上が溺死しました。津波に流されたんです。

 このように、同じ災害というのはふたつとしてありません。そして、ひとつの災害でも、時間の経過によって、命を救う72時間以内、避難所、仮設住宅の設置、あるいは復興住宅の設置などの過程でニーズは刻々と変わってきます

 このニーズに関する情報がただちに入り、これに対し、もっとも効果的な対処ができるのは、国ではありません。被災者に一番近い、市町村です。逆に、国がこれを対処すると、情報が入らず、また、公平性や確実性が求められてしまい、妥当性を欠く対応をしてしまうことになります

震災時のドタバタ劇!東日本大震災で官庁が送った「通知」は一自治体につき1000通!?

永井氏「では国の役割は何か。これは『後方支援』です。『人、物、金』を出すことです。

 『人』について言えば、マンパワーや専門性の補完のための職員の派遣です。『物』は、被災地の求めに応じて、物資を送ることです。そして『金』、これが一番重要です。市町村を信用して、予算の裁量を認めるということです。

 問題なのは、市町村に予算や災害対応の裁量を認めないことです。国の許認可権など、法制度運用が平常時対応であり、縦割り行政であることです。そこで、市長は国との折衝に膨大な時間と労力を費やしてしまい、この時間が、被災者の時間に費やしたいというのが、市長の願いです。

 福島県の浪江町長は、被災者のために、一時的な医療施設を作ろうとしました。しかし、これは医療法、建築基準法、消防法、景観法に違反するということで反対されました。

 災害対策はこのような災害時に、包括的な適用除外法令を作ることによって、対処すべきものです。また、東日本大震災では、多くの官庁が法律の弾力的運用について、通知を送りました。しかし、その数は一自治体に1000通送られたんです。これによって被災自治体は、対応することは到底できませんでした

 これらは、平常時から過去の災害を調査、検討して、災害時の適用除外の法律や、法律の特例について、恒久的な法律を制定すべきことです。そしてこれは、皆さんがいらっしゃる国会が行うべきことです。

▲福島県双葉郡浪江町(IWJ取材)

 また、自治体はいつ起こるかわからない災害のために、費用や時間をかけて準備するのは、現実には困難な面があります。そこで、災害時には自治体は何をどうしていいかわからない、ということがあります。で、このノウハウを持っているのは、過去の被災経験のある自治体であり、国ではありません。

 東日本大震災でも、神戸市や新潟県など、被災経験のある自治体の職員が派遣され、適正な対応が初動期から実施することができました。これをシステム化したのが、関西広域連合であり、また、災害対策基本法30条2項の職員派遣の調整の制度であります。

 国が行うべきことは、職員派遣について、予算面で後方支援することであります」

被災市町村で「災害時に憲法が障害にならなかった」が96%!残る4%も「法律を知らなかった」

永井氏「東日本大震災では、災害対策について『憲法が障害になることが明らかになった』という意見が繰り返し述べられたことがありました

<ここから特別公開中>

▲「緊急事態条項さえあれば、人命を救えたのに」と主張する櫻井よしこ氏。

 そこで先程のアンケートでは、災害対策について『憲法は障害になりましたか? なったとすれば具体的にどんな事例ですか? 憲法の何条が障害になりましたか?』ということを質問しました。すると、『障害にならなかった』という回答が96%、『(障害に)なった』という回答が4%でした。

 『障害になった』という一自治体は、『瓦礫に含まれる車両は所有者の同意が得られないので処理できなかった、憲法の財産権の改正が必要だ』と回答しました。しかし、憲法の財産権はもともと法律の制限を認めております。

※日本国憲法第29条――財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる

 そして災害対策基本法64条2項は、『市町村長は災害を受けた工作物または物件などに必要な措置を取れる』としています

※「災害対策基本法」第64条2項――市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、現場の災害を受けた工作物又は物件で当該応急措置の実施の支障となるもの(以下この条において「工作物等」という。)の除去その他必要な措置をとることができる。この場合において、工作物等を除去したときは、市町村長は、当該工作物等を保管しなければならない。

 この『必要な措置』には、最小限の破壊も含まれます。瓦礫の車両は、所有者の同意を得ずに、瓦礫置き場に搬送することができ、市場価値がなければ廃棄することができます。失礼ながら、この一自治体は、法律のことをご存じなかったということです

「災害をダシにして憲法を変えてはいけない」――国会は被災者の言葉に耳を傾けるべき

永井氏「国会の『東京電力福島原子力発電所調査委員会』の国会事後調査報告書でも、憲法が災害対策の障害になったという記載はありません。あるいは災害対策に政府の権力を集中すべきだ、あるいは人権の大幅な制約が必要だという記載もありません。

 憲法改正ではなく、原子力規制法規という、法律の制度の改正を提言しているのです。また、新しい規制組織の設置を提案していますが、政府からの強い独立性を求めており、権力の集中とは真逆のことを述べているのです。この報告からも、憲法改正の立法事実、改正の正当性を支える社会的事実は認められません。

 災害対策でもっとも重要なのは、現場です。目の前にいる個々の被災者を救済するにはどうすればいいのか。それがすべての出発点です。国家にどのような権力を持たせるかが出発点ではありません

 災害対策は被災者から話を聞き、被災の現場を見て、そして課題を抽出して、将来の災害を予想して策定するものです。そして、災害が発生したときは、被災者にもっとも近い自治体が、この準備に基づいて行動すべきものです。

 災害をダシにして憲法を変えてはいけない――これは東日本大震災の被災者の言葉です。立法府の皆さまには、是非この言葉を理解していただきたいと思います。

 以上から、災害を理由にした緊急事態条項を憲法に創設することに、私は反対いたします

議員の任期延長規定は必要か? 憲法が明記するふたつの「大規模災害の制度」

永井氏「第二に、緊急事態条項における国会議員の任期について申し上げます。

 衆議院議員の任期は4年、または衆議院解散の時は期間満了前、これは憲法45条に書いてあります。参議院議員の任期は6年、これは憲法46条に書かれています。

※日本国憲法第45条――衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
※日本国憲法第46条――参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

 そこで、大規模災害が選挙の時に発生した場合のために、憲法改正して議員の任期を延長すべきかが議論されています。特に衆議院の解散や、任期満了が問題となります。

 結論から申し上げますと、私は憲法改正して議員の任期を延長することに反対です

 まず、憲法は大規模災害の制度をふたつ設けています

 ひとつは憲法54条2項の『参議院の緊急集会』です。衆議院が解散された時で、国に緊急の必要があるとき、内閣は、参議院の緊急集会を求めることができます。緊急集会でとられた措置は、次の国会開会の後、10日以内に衆議院の同意がない場合は、効力を失います。

日本国憲法第54条2項――衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

 ふたつめは、憲法73条6項の『法律による政令への罰則委任』です。永田町での直下型地震が発生した場合のように、参議院の緊急集会も請求できない場合は、内閣は法律に基づいて、政令で対処することになり、政令に実効性を持たせるためには、罰則が必要となります。

 他方で、内閣の権力の乱用の危険があるので、特に法律の委任がないと、政令に罰則が設けられないとする制度です。これを受けて、災害対策基本法の厳格な要件のもとで緊急時に内閣が罰則付きの政令、緊急政令が制定できます

日本国憲法第73条6項――この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない

いきなり「改憲議論」は早計〜まずは法律対処、そして憲法解釈!

永井氏「では、衆議院解散中に大規模災害が発生したときはどう考えるべきでしょう

 先ほどのように、内閣は参議院の緊急集会を求めて対処できます。また、災害・緊急事態においては、国会閉会中や衆議院解散中で、臨時国会や、緊急集会の措置を待つ暇がない場合でも、災害対策基本法による『緊急政令』で対処できます

 では、衆議院の任期満了時に大規模災害が発生した場合はどうすべきでしょう

 参議院の緊急集会の規定は、文言上は『衆議院解散のとき』と定めています。で、何らかのニーズがあった場合、憲法は最高法規でありますので、まず法律で対処することを考え、それができない場合は、憲法の解釈で対処することを考え、それができないときに初めて、憲法改正を検討すべきです

 まずこの場合、公職選挙法では31条で、議員の任期満了の30日前までに選挙を実施すると定めています。そこで、任期満了時に災害があったとしても、次の議員が選出されているので、この場合は問題がありません。

※公職選挙法31条――衆議院議員の任期満了に因る総選挙は、議員の任期が終る日の前三十日以内に行う。

 では、この31条の選挙の公示直前に災害があって、選挙ができないとき、そのときは次の議員が選出されないことになりますが、その場合はどうすべきでしょうか。

 この場合は、憲法の解釈となります。

 参議院の緊急集会は、衆議院が解散され、議員がいなくなった場合に、参議院に国会を代替させる制度です。そして、任期満了の場合も、衆議院議員がいなくなるという事態は、解散と同じです。したがって、同一事項については、同じ扱いをすべきですので、この場合も、緊急集会の規定を適用すべきものと考えます。

 これに対しては少数の参議院議員、例えば(衆参)ダブル選挙のときは、全議員の18%の議員になってします。これで議決をすることになる。あるいは、被災地の民意を反映する議員がいないのではないか、という意見があります。

 しかし、緊急集会による措置というのは、これは暫定的なものでありまして、事態が回復後にすみやかに衆議院の総選挙を行って、国会開会後、10日以内に衆議院の同意を得る、ということで対処できます。被災地の民意の反映は、そこで行うことができるわけです

緊急事態における国会議員の任期問題は「参議院の緊急集会」と公選法の「繰延選挙」で対処できる!

永井氏「また、被災地域については、公職選挙法57条は、天災その他、避けることのできない事故により、投票所において、投票を行うことができないときは、被災地域の選挙管理委員会が、投票期日を延期するという『繰延投票』を規定しています。これによって対処することが可能です。

公職選挙法57条――天災その他避けることのできない事故により、投票所において、投票を行うことができないとき、又は更に投票を行う必要があるときは、都道府県の選挙管理委員会(市町村の議会の議員又は長の選挙については、市町村の選挙管理委員会)は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない。この場合において、当該選挙管理委員会は、直ちにその旨を告示するとともに、更に定めた期日を少なくとも五日前に告示しなければならない。

 これに対しては、『繰延投票では一部選挙区では開票できず、比例代表区の議員が確定しない』ということが考えられますが、比例代表区の議員は、衆議院議員の3分の2を超えることはないので、定足数である3分の1を満たし、衆議院は活動することができます

 ここで私が一番申し上げたいことは、被災地域の住民の意思を、国会に反映することは大切でありますけども、災害対策の法律は、平常時から国会において、整備しておくべきものである、ということであります。

 先程申し上げたとおり、災害対策の原則は『準備していないことはできない』ということです。災害対策の法律の制度は、平常時から過去の災害を検討して、そして十分時間をかけて準備しておくべきものであり、災害が発生してから準備すべきではないというふうに考えます。

 以上から、緊急事態における国会議員の任期の問題は、参議院の緊急集会、公職選挙法の繰延選挙で対処でき、また、平常時から災害対策は行っておくべきであるという点からも、憲法改正による議員の任期延長には反対いたします。以上です」

 なお、IWJが2015年12月に行ったシンポジウム「饗宴VI ――『国民』非常事態宣言! 露わになった『ナチスの手口』/国家緊急権を阻止せよ!――」でも、登壇者の一人として、永井弁護士は「緊急事態条項」の危険性に警鐘を鳴らしている。ぜひこちらもご覧いただきたい。

▲「饗宴Ⅵ」登壇者の方々。

※DVD 【岩上安身サイン入り】 饗宴VI (2015年12月20日収録)→購入はこちらから

(中編「【国会ハイライト】「災害をダシに憲法を変えてはいけない」〜永井幸寿弁護士が憲法審査会で意見陳述!緊急時の国会議員の任期問題は「参議院緊急集会」と公選法「繰延選挙」で対処可能!(前編) 」に続く)

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