JR倉敷駅から高梁(たかはし)川沿いに北へ約5キロほど走ると、堤防が決壊して街全体が水没、死者50名の犠牲者を出した倉敷市真備町(まびちょう)地区に着く。8ヶ所の堤防が決壊した小田川とその支流では、復旧工事が急ピッチで進み、決壊部分には土嚢が積まれて原形を取り戻しつつあった。しかし現場を回って驚いたのは、高梁川も小田川も河川敷(中州)に大量の木々が繁茂、スムーズな川の流れを妨げていたことだ。
▲小田川も河川敷(中州)に繁茂した大量の木々(2018年7月19日、横田一撮影)
「これは人災です」
こう言い切ったのは、家がほぼ全壊して岡田小学校で避難生活を続ける竹内昇さん(70)。安倍晋三総理が11日に訪れた時に河川管理のずさんさを次のように直訴。奥さんも警戒警報の切迫感のなさを訴えていた。
- 安倍総理「段ボールベッドありますんで」発言2018.7.11 倉敷市 真備町(7月10日から11日にかけて現地入りした草島進一・山形県鶴岡市議が撮影、動画を公開)
避難所の住民が安倍総理に直訴!小田川は河川管理がまったくできていなかった!?
以下は7月11日の竹内昇さん夫妻と安倍総理、伊原木隆太(いばらぎ りゅうた) 岡山県知事との会話である。
安倍総理「今回は大変でした」
竹内昇氏「水に浸かって、二階でやっと助かった」
奥さん「警報が3回鳴ったのですが、警報の内容が2回目は『小田川が決壊して真備地域が避難指示』とか言われたのですが、それだけど切迫性がないから『逃げよう』という感じの言い方ではないから皆、どういう状況かわからない。『どういう方向に水が流れていますよ』というような切迫感がある放送だったら、みんな、『避難しないといけない』と思うけれど。
この主人がたまたま人が両方から水が来るのを見ていたので、それから避難をしたのです。テレビで何ぼ、どうのこうのと言っても心理的に『逃げよう』という気にならない」
安倍総理「伝え方がね」
竹内氏「(堤防が決壊した)小田川なんだけれども、河川敷に砂が堆積して、ススキは生える、柳の木はものすごく生える。それを切っていない」
奥さん「2年前にこの人がたまたま通って、そういう状況を写真を撮って、それを支所に言わなかった。2年前にそういう状況を知っていた」
伊原木隆太(いばらぎ りゅうた) 岡山県知事「河川は県の責任で」
竹内氏「橋が4、5本かかっているけれども、橋の真ん中に行ったら下の(中州の)柳の木が大きくなって、手でさわれるぐらい伸びている。水さえあれば、ものすごく大きくなるのだから」
奥さん「管理が悪いのだから」
伊原木知事「備中(びっちゅう)県民局がかなり予算を投入していたつもりなのですが」
竹内氏「県はやっていなかった」
このように安倍総理に直訴した竹内夫妻に詳しい話を聞きたいと思って19日、避難先の岡田小学校を訪ねた。取材を快諾してくれた竹内夫妻の話から浮き彫りになったのは、二重三重の「人災」である可能性だ。
ダム優先で堤防強化を後回しにしたことに加え、河川の維持管理も怠った上、水没危険区域なのに避難訓練もしていなかった。しかも上流のダムの異常放水と堤防決壊のタイミングが一致、ダム放水起因説も浮上している。
▲避難所となっている岡田小学校(2018年7月19日、横田一撮影)
竹内氏「血管と同じですよ。コレステロールが貯まってしまって、ほんの一部しか流れないようになっていた。4分の1ぐらいしか流れない状態になっていた」!?
「堤防強化後回し」と「木の繁茂(河川維持管理の欠如)」と「ダムの異常放流」――これほど人為的要因が重なれば、全財産を失った住民たちが損害賠償を求めて集団提訴してもおかしくない。
竹内夫妻に、まず河川の維持管理を怠っていたことから聞いてみた。
横田「安倍総理に訴えた小田川の維持管理の様子を見て来ました。すごく木が生えていて、橋の真ん中に行くと、触ることができました」
竹内昇氏「2年ほど前に『河川の維持管理が大切』ということを小耳に挟んでいて、それで見に行ったのです。小田川に4本ぐらい橋があって、ほとんどきれいな河川はないわ。どこも大なり小なり柳の木は生えておる。
橋の真ん中まで行って手を伸ばすと、柳の木に届くくらい生えていて。『これは危ないな。もう少し掃除しないといけないな』ということを総理に言いました。総理の隣に伊原木知事もいて耳が痛かっただろうと思うけれども、わしは声を大にして言った。あれは『天災』ではなくて『人災』だ。河川の維持管理をしていなかったので、こういうことになった」
横田「木を切って、小田川の水がスムースに流れていれば、全然違ったと」
竹内氏「残念です。木を切って維持管理をきちんとしていれば、恐らく、こんな結果にならなかった。木の間に流木とかゴミが貯まって小さなダムができてしまう。そこで堰き止められて堤防が決壊したのではないか。2年前に気がついて写真を撮った。
県は『10年計画で合流部分の改修工事をやる』と言っていたけれども、工事が終了するまでの間、梅雨は毎年来るわけだから、暫定的に河川管理対策を進めておかないといけなかった。堤防強化と河川敷や中州をきれいにすることを両方やらないといけなかった。すぐにでも木を切っておけば、全然、違った。そういうことを報道してもらいたい(ここで、小田川の中州に木が繁茂している様子を撮影した写真を示す。なお「一級河川高梁川水系小田川」の河川管理者は国交省である)。
実際の川幅を1としたら、そのうち4分の3くらいは木が生えていて、水が流れるのは4分の1くらいでしかない。今回のような豪雨になったら、川幅すべて4分の4、水が流れないとおかしい。川幅全体で流れていたら堤防も切れません。それを総理に言った。総理は『大変でしたね』と言っていましたが、社交辞令ですよ。すぐ反映させないといけない」
横田「本流の高梁川と支流の小田川の合流地点で、本流の流量が大きくて支流に逆流(バックウォーター)が起きて堤防が決壊したと言われています。ということは支流の水量を上げておかないといけなかった」
竹内氏「川の機能を果たしていなかった。4分の3は木が生えて流れない状態になっていた。血管と同じですよ。コレステロールが貯まってしまって、ほんの一部しか流れないようになっていた。4分の1ぐらいしか流れない状態になっていた」
▲竹内昇氏(2018年7月19日、横田一撮影)