西日本豪雨による被災地の中でも最も被害の甚大だった場所の一つ、岡山県倉敷市真備町(まびちょう)。一級河川の高梁川(たかはしがわ)が増水したため、支流の小田川の水がスムーズに合流できない「バックウォーター」という現象を引き起こしたため、小田川とさらにその支流8か所で堤防が決壊し、真備町は3分の1が水没、約4600戸の家屋が浸水した。
しかし雨の降り続いた6月28日から7月8日までの総雨量を見ると、岡山県は他地域よりも少なめだったという防災科学技術研究所の報告もある。
2018年7月20日、IWJ上杉記者は、「あまり報じられていないが、7月6日から7日にかけて、高梁川上流のダムからの放流により、急激な水位の上昇があった」という地元住民の証言を確かめるため、高梁川上流を取材した。
▲高梁川の各ダムと倉敷市真備町の位置概略図
高梁川は中流にある高梁市で西から流れてくる支流の成羽川(なりわがわ)と合流する。高梁川の上流には河本ダムが、成羽川の上流には中国電力の管理する黒鳥(くろどり)ダム、田原(たばら)ダム、新成羽(しんなりわ)ダムの3つのダムがある。
- タイトル 西日本豪雨被害・特派チームによる被災地レポート
- 日時 2018年7月20日(金)13:50~14:25
- 場所 高梁市成羽町(岡山県高梁市)
「あっという間に増えたんですよ。津波のごとく増えるんですから。豪雨だけだったらね、そんな増え方しませんよ」
高梁市中心部の落合で自宅と店舗が床上浸水した女性T氏は、降雨時の様子を次のように証言した。
T氏「最初は新見(にいみ:高梁川の上流にある岡山県北部の市)にある河本ダムが放流したので(高梁川の)流れが増えてきたんですよ。2回目は中国電力の新成羽川ダム(成羽川上流)が放流する言うて宣伝カーが回ったから、『またこれは増えるなー』と思って。それは確か、7月6日の午前。これだけ降雨がひどかったのに、また(新成羽川)ダムの放流、新見からの(河本ダムの)放流。だから『これは増えるな』とは思ってましたけど、ここまでひどくなるとは意識してなかったですね。
私は嫁に来たんですが、姑が言ってました。『昔はこんな増え方してなかった』って。あっという間に増えたんですよ。津波のごとく増えるんですから。豪雨だけだったらね、そんな増え方しませんよ。あっちこっちのダムを、本当に容赦なく放流する感じなんですね、我々から見れば」
▲高梁川上流の河本ダム(2018年7月20日、IWJ撮影)
「最初は放流を抑えてた。間に合わなくなって規定量の3倍を慌てて放流した。とにかくサイレンが鳴りっぱなしで、みるみるうちに水位が増してくるという感じ」
また、高梁市から成羽川沿いに上流へさかのぼった高梁市備中町(びっちゅうちょう)で浸水被害にあった旅館、朝日堂のご主人A氏は、降雨時の様子を次のように証言した。