【第361号】岩上安身のIWJ特報!自民党改憲草案の緊急事態条項は戦前の国家総動員法の起動スイッチ!? 衆院解散で「ナチスの手口」がいよいよ現実に!? 岩上安身による早稲田大学・長谷部恭男教授インタビュー(その6) 2018.2.27

記事公開日:2018.2.27 テキスト独自
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(岩上安身)

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その5の続き

▲長谷部恭男氏(右)と岩上安身(左)(http://bit.ly/2GIG8va

ボン基本法の中にある緊急事態条項、最も重要だと思われる「防衛事態に対応する緊急事態条項」には厳重な縛りがあり、「戦前の繰り返しは起こさない」という体制になっている!

岩上「ボン基本法の第1条には、『人間の尊厳は不可侵である』とあります。これは『基本的人権』ということですよね」

長谷部「そうですね」

岩上「そして、国家というのは、それを守るため、尊重し保護するためにある、それが義務であるということと、ドイツ国民は、そのかけがえのない人権をあらゆる平和及び正義の基礎として認めるということを謳っています。さらに、この基本権は、立法執行権及び裁判を拘束するとも言っています。三権もこの基本権に拘束されるんですね。やはり、人権がものすごく大事だということを謳っているんですね」

長谷部「はい」

岩上「そして、この基本法は『戦う民主主義』といわれていますけれども、『抵抗権が定められている』ということはどういうことなんでしょう?」

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▲「抵抗権」を定めた「戦う民主主義」(http://bit.ly/2EX31NZ

長谷部「抵抗権(※86)にもいろいろなレベルのものがあるんですけれども、このボン基本法の定める抵抗権の特徴は、『ドイツ憲法基本法が定めている自由で民主的な秩序を破壊するような勢力が現れた時には、それに対して国民は抵抗するべきだ』ということを定めています。その点が『戦う民主氏主義』『戦う民主制』といわれている所以です(※87)」

岩上「なるほど。戦前に、緊急事態条項が乱用され、主権独裁が行われてしまって、憲法が破壊された。それに対する歯止めにもなるということなんですね」

長谷部「理念的には、歯止めになっているということだろうと思います」

岩上「緊急事態条項とボン基本法について、ひと言いただけたらありがたいんですけれど」

長谷部「ええ。緊急事態条項は、ボン基本法の中に何種類かのものが入っているんですけれども(※88)、その中でも一番重要だと思われるのは、防衛事態に対応する緊急事態条項です。実はこれは、作られたことは作られたんですけれども、今まで発動されたことがないんです。やはり、戦前の歴史に対する記憶が、ドイツ国民の間にしっかり保たれていまして、『乱用されないように』と、何重にも歯止めの仕かけができているわけですね(※89)。

 ですから、『実際にはこれは使いようがないんじゃないのか』と思われるほど、非常に厳重な縛りがある。『戦前の繰り返しは起こさない』という体制になっております」

▲ボン基本法における緊急事態の分類(http://bit.ly/2EXPWUA

岩上「しかし、西ドイツには西側戦勝国が駐留していた。そういう意味では、日本も同じような経験をしてきたわけですけれども、信書の開封や電話の盗聴などが平気で行われた。要するに、基本的人権が侵害され、国民の主権が侵され、ドイツには主権がないような状態が続いていた(※90)。これにドイツ人は相当怒っていたというか、抵抗していた。それで、やはりドイツの主権は回復させなければいけないということになった。

 日本は主権を半分アメリカに受け渡し、安保の下、米軍の駐留を許し、そしてそこに馴染んでしまう道を選んで、いまだにそれが続いているんですけれども(※91)。『緊急事態に対する法整備をする』ということと『主権を回復する』ということが、結びついた議論として展開されたんだそうですね」

長谷部「そうですね。これは本の中で石田先生が詳しく議論されているところですが、主権を完全に回復するためには、『緊急事態、特に対外的な防衛事態に対処するための体制を整えなさい』ということが条件になっていたんです(※92)。

 普通の国であれば、そういう法律を作ればよさそうな話なのですが、ドイツはナチの歴史に鑑みまして、『連邦国家になってくれ』というのが、周りの国からの要求でした。そのために国、あるいは政府が果たすべき役割の、かなりの部分が州政府の役割になっていました(※93)。ですから、緊急事態に対処しようとすると、そういう州政府の権限を中央に吸い上げる必要があるんです。そのために、どうしても憲法にそういう条項を置く必要性が生じていたという事情があります」

▲緊急事態条項と国家の主権(http://bit.ly/2GxAUCs

岩上「なるほど。占領下において国民の秘密が守られていないような状態はあったけれども、2013年にスノーデンが明らかにしましたね。『アメリカは、まだ地球規模で盗聴をしている』と(※94)。これは、長谷部先生ご自身がこのことを気にされて、ご著書の中でお話しになっていますよね。

 ドイツのメルケル首相は、携帯電話を盗聴されていることをすごく怒った(※95)。日本では、安倍総理の携帯が傍受されている可能性について、管官房長官が『全く問題ない。アメリカ政府に事実確認することも考えていない』と(※96)言った。なんの抗議もおこわないという、非常に対照的な態度を取ったんですけれども」

▲アメリカの盗聴に対する日独の対応の違い(http://bit.ly/2EWOzFS

長谷部「法律論を申しますと、米国憲法が保障する基本権は、米国国外に住んでいる外国人には及びません。だいたいの国の基本権はそうです。日本国憲法が保障している基本権も、日本国外に住んでいる国外の人には及ばない。そういうものですよね。

 その観点からすると、少なくとも、アメリカの諜報機関がアメリカ国外に住んでいる人の基本権を侵害するということは、アメリカの憲法違反ではないということですので、そういう意味では、やりたい放題ということだろうと思います」

岩上「われわれは日本国憲法の下にいて、例えば信書の秘密や通信の自由、秘密など、コミュニケーション上の自由や秘密やプライバシー権を侵されるいわれはないわけです。『主権がない状態だ!』と怒るべきじゃないですか」

長谷部「それはもちろん、日本法に反するような行為でしたら、当然日本法に照らして『犯罪だ』ということになりますから、対処はしなければいけないということなんですが。まあ、管さんは『問題はないんだ』とおっしゃるので。なぜそう言えるのか、私にはわかりませんけれども」

岩上「これは、日本の主権をアメリカに蹂躙されていても、安全保障をアメリカに託しているので、そのアメリカに『安全保障のために必要だ』と言われたら、もう、『唯々諾々従いますよ』と、主権放棄のような話に聞こえるわけですよ。この上、緊急事態条項を入れて、主権独裁を可能にするということは、言ってみれば、アメリカ隷従下、属領下の半植民地状態における傀儡独裁になるようなものです。

 帝国の中の、いわば属領・属国中で独裁がおこなわれるということは、古今東西あり得ることですから。今、アメリカという帝国の庇護の下の民主国家であるわけだけれども、アメリカの帝国の下、緊急事態条項を使って国家総動員ができるような、そういう属国になるという話にも聞こえます。どうでしょう?」

長谷部「これは実際のところ、『なにを考えていますか』と問えば、『そんなことは考えていない』ということになるんだろうと思うんですけれども」

岩上「まあ、彼は『全く問題ない』としか答えないでしょうけれどもね。でもやっていることを見ると、そう思えます」

長谷部「本当に、端から『全く問題ない』と言えるのかどうかということですけれども、少なくとも、冷戦が終わるまでの南アメリカの独裁政権(※97)のあり方はどうだったのかということは、少し反省すべき材料にはなるかもしれないですね。

 ただ、『アメリカ政府に事実確認することを考えていない』というのは、私は真っ当だと思っていまして。なぜかというと、アメリカ政府は実際にやっていても『やっています』と言うはずがありませんから」

岩上「なるほど。しかしそれならば、自ら防諜をするべきですよね。向こうが諜報行為をしている。それに対して防諜をするというのは、国家の主権ですから。アメリカのスパイがいたらつまみ出すのは当然じゃないですか。

 日米地位協定(※98)を見ますと、それができるような条約になっていないので、やりたい放題じゃないですか。本当に危険だと思います。主権がないまま独裁をしていくということは、恐ろしいことじゃないかな。そういう意味では、ナチとは違う方向で危ないんじゃないかなと思います」

長谷部「なるほど」

岩上「まあだから、ソ連のサテライトにされていた国々(※99)のように、ブレジネフに主権制限論(※100)を言われた、主権のない惨めな状態の、しかし独裁国家のようなものが、来たるべき未来の一番の似姿なのかと想像できるんですけれども」

▲レオニード・ブレジネフ
(Wikimedia commons、http://bit.ly/2EKHfxP

長谷部「なるほど。そうならないようにしないといけないですね」

岩上「そうならないようにしたいもんですよ」


※86)抵抗権:公権力の不正な行使に対して人民が抵抗する権利。正当な理由なく人民を抑圧する為政者を権力の座から引きずり下ろす/そのような政権を打ち倒すことを含意し、「革命権」「反乱権」等とも呼ばれる。思想的源流は古代に遡り、近代以前ではユグノー戦争期(1562-1598年)のフランスにおいて宗教的根拠に基づいて展開された「暴君放伐論(モナルコマキ)」(暴君に堕した君主は君主の資格を失っているがゆえに人民はその殺害まで許されるという思想)がよく知られるが、近代的「抵抗権」の理念の形成に重要な役割を果たしたのは、市民革命期のイギリスの哲学者ジョン・ロック(1632-1704年)である。
 ロックは、国家構成員の「信託」によって権力の行使を認められている政府がその「信託」に反して構成員の生命、健康、自由、財産を奪うなどの行為に及ぶなら、構成員はそれを背信行為として断罪し、政府を変更する権利があるとする思想を打ち出した。
 こうした自然権としての「革命権」の理念は、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言に大きな影響を与えたほか、現代では、ナチ独裁による深刻な国民の人権侵害を経験したドイツがこれを憲法に明文化(ドイツ連邦共和国基本法(ボン基本法)第20条第4項)している。
参照:
・ブリタニカ国際大百科事典「抵抗権」【URL】http://bit.ly/2AR995a
・日本大百科全書(ニッポニカ)「モナルコマキ」【URL】 http://bit.ly/2keRI8j
・Wikipedia「統治二論」【URL】http://bit.ly/2yR2nuD
・「ドイツ連邦共和国基本法 三カ国語対訳」【URL】http://bit.ly/2AqJ78N

※87)戦う民主主義:ドイツ連邦共和国基本法(ボン基本法)第20条は、ドイツは国民を国家権力の源泉とする民主主義国家であると規定し、この秩序の破壊を企てる者に対して国民は抵抗権を有すると定めている(第5項)。
 これはナチスの教訓に基づく、緊急事態条項の濫用に対するひとつの歯止めであると同時に、第9条第2項(「憲法的秩序もしくは国際協調の思想に反する結社は、禁止される」)や第18条(「〔基本法が保障する諸権利を〕自由で民主的な基本秩序を攻撃するために濫用する者は、これらの基本権を喪失する」)、第21条第2項(「政党で、その目的または党員の行動が自由で民主的な基本秩序を侵害もしくは除去し、または、ドイツ連邦共和国の存立を危くすることを目指すものは、違憲である」)などとともに、憲法原理の擁護義務規定の一環をなす。そして、こうした憲法原理たる民主主義の擁護をかくも強く求める姿勢を評し、「戦う民主主義」と呼ばれるのである。
 とはいえ、長谷部氏も著書の中で指摘しているとおり、それは一方では「多様な意見が存在すること、つまり自由の敵にも自由を認める」という「民主主義の本来のあり方」に反するとも言え、現行の民主主義制度の脆弱性を示すともみなしうることに留意する必要がある。
参照:
・Wikipedia「戦う民主主義」【URL】http://bit.ly/2B80HTo
・長谷部恭男・石田勇治『ナチスの「手口」と緊急事態条項』p.136−138.
・「ドイツ連邦共和国基本法 三カ国語対訳」【URL】http://bit.ly/2AqJ78N

※88)ドイツ基本法における緊急事態条項:ドイツ連邦共和国(西ドイツ)は1968年、憲法にあたる「ドイツ連邦共和国基本法」の改正(第17次改正)を行い、緊急事態に関する規定を有することになった。そこでは「緊急事態」はワイマール憲法のように包括的に規定されるのでなく、次のように定義を明確化されたうえで具体的なケースに分類され、各々の場合について詳細な要件や手続、効果が定められている。
「対外的緊急事態」
「防衛事態」(第115a~l条):連邦領域が武力で攻撃される、またはそのような攻撃が直接に切迫している事態
「緊迫事態」(第80a条第1項および第2項):明確に定義されていないが、一般に「防衛事態の前段階」、すなわち「防衛事態」の確定要件は満たしていないが、その発生が高い可能性をもって予測される状況。
「同盟事態」(第80a条第3項):連邦政府が同意した同盟条約(NATO理事会等)の決議に基づき、「緊迫事態」の確定があった場合
「対内的緊急事態」
「憲法上の緊急事態」(第87a条第4項、第91条):連邦もしくはラントの存立又は自由で民主的な基本秩序に対する急迫の危険が存在するような事態
「災害事態」(第35条第2項および第3項):自然災害又は特に重大な災厄事故が生じた状況
参照:『「非常事態と憲法」に関する基礎的資料』平成15年2月衆議院憲法調査会事務局【URL】 http://bit.ly/2bGtuzj

※89)幾重にも張り巡らされた安全装置:「防衛事態 Verteidigungsfall」は国家防衛のための戒厳令に相当し、ワイマール憲法の教訓を踏まえて次のような規定がもうけられている。
 まず、要件は連邦領域に武力攻撃が加えられた、もしくはその危険が迫った場合であり、その認定は連邦政府の申し立てにもとづき、「連邦議会 Bundestag」(国民の直接選挙で選ばれる議員からなる議会。下院)および「連邦参議院 Bundesrat」(各州政府が人口に応じて決まった議席数の代表者を送り出すことによって成り立つ議会。通常は各州の首相もしくは閣僚が出席する。上院)の同意を得ておこなわなければならない(第115a条第1項)。
 緊迫した状況下にあって連邦議会の集会や議決が行えない場合は、両院の議員で構成される「合同委員会 Gemeinsamer Ausschuss」にその権限が与えられる(第115a条第2項)。
 ワイマール憲法のもとで、大統領の解散権の濫用によって議会が機能不全に陥った反省から、「防衛事態」の発動中は連邦議会の解散が禁じられている(第115h条第3項)ほか、連邦憲法裁判所およびその裁判官の地位と任務の不可侵も定めてあり(第115g条)、憲法の規範性の維持に対する配慮もなされている。
 そうして「防衛事態」が確定されてはじめて、軍隊に対する命令権・指令権の、連邦国防大臣から連邦首相への移動(第115b条)、各州の専属的立法事項に対する連邦の競合的立法権の取得(第115с条1項)、緊急立法の手続(第115d条)といった統治機構上の措置をとることができる。
 つまり、「緊急時だからといって政府に権力を集中させるのではなく、むしろ国会の関与と権限を強化する仕組み」(石田氏、p.202)が整えられているのである。緊急事態の発令中は、職業の自由(第12a条)、移転の自由および住居の不可侵(第17a条2項)、通信の秘密(第10条2項)、移動の自由(第11条2項)など、基本的人権に対して一定の制限または変更を加えられるとされるが、基本法には国民に「抵抗権」を保障する規定(第20条第4項)も併せて盛り込まれており、緊急事態を理由とする政府の権力濫用を阻止する道も開かれている。
参照:
・『「非常事態と憲法」に関する基礎的資料』平成15年2月衆議院憲法調査会事務局【URL】http://bit.ly/2bGtuzj
・『主要国の議会制度』国立国会図書館調査及び立法考査局 2010年3月【URL】 http://bit.ly/2bcO89m
・Wikipedia「連邦参議院」【URL】http://bit.ly/2BynfJV
・長谷部恭男・石田勇治『ナチスの「手口」と緊急事態条項』p.127−131, 202.
・「ドイツ連邦共和国基本法 三カ国語対訳」【URL】http://bit.ly/2AqJ78N
・【第275-281号】岩上安身のIWJ特報! 立憲主義を「保守」することの意味 憲法学の「権威」が語る、自民党改憲案の危険性 東京大学名誉教授・樋口陽一氏インタビュー 2016.9.30【URL】http://bit.ly/2FajAGy

※90)西ドイツでは西側戦勝国軍が駐留、基本権の侵害も:第二次世界大戦におけるナチス・ドイツ軍の無条件降伏(1945年5月8日)後、ドイツは米英仏ソの連合国四カ国軍によって占領され、中央政府の不在および軍政開始を宣言するベルリン宣言(6月5日)を経て、以後4年間にわたり同四カ国による分割統治が実施された。
 ベルリンに4カ国軍司令官の共同運営による管理理事会が置かれ、ドイツの統一性を維持しつつその完全な非ナチ化、民主化を推進するための共通の指導を行う方針だった。ところが、各占領区域の軍政当局は事実上、地方住民に対してめいめい異なった方針の施策を行ったうえ、1948年6月には、ソ連の意向に反して西側三か国が新通貨ドイツマルクの発行および自由価格制導入を強行したため、ソ連による対抗措置(「ベルリン封鎖」)とともにドイツは東西に分断される。かくして1949年、西側連合国占領地域にドイツ連邦共和国(西ドイツ)、ソ連占領地域にドイツ民主共和国(東ドイツ)が誕生した。
 こうして冷戦の最前線と化した両国には、その後も大規模な外国軍が駐留し続けた。西ドイツは「ドイツ連邦共和国と3連合国との間の関係に関する条約」(1952年5月26日調印。「ドイツ条約」「ボン協定」とも呼ばれる)により主権を回復したが、同条約には3連合国の西ドイツ駐留権の留保、および駐留軍の安全を保護するための諸権利も併せて規定されていたのである。この「三国留保権」を利用して、駐留軍は様々なことをおこなった。軍隊の安全を脅かす恐れがあるという名目での、電信、電話、通信、信書、郵便物などの盗聴や傍受、録音、開封、複写などは日常的に行われた。しかも、こうした措置は該当者に一切の通告もなしにおこなわれ、基本権の侵害に対する法的救済の道もいまだ開かれていなかった。
 つまり、「1949年に暫定国家としてスタートした西ドイツは、主権を制限された準主権国家で」あり、「これが完全な主権国家になるのは、1990年の統一」を待たねばならなかった(石田氏)のである。
参照:
・Wikipedia「連合軍軍政期(ドイツ)」【URL】 http://bit.ly/2kitPgo
・ブリタニカ国際大百科事典「ドイツ条約」【URL】 http://bit.ly/2oKDBMF
・清水隆雄「ドイツ緊急事態法の制定過程と NATO 軍」国立国会図書館調査及び立法考査 局『主要国における緊急事態への対処』2003 年
・長谷部恭男・石田勇治『ナチスの「手口」と緊急事態条項』p.119−122.

※91)日本は半分主権をアメリカに受け渡し、安保のもと米軍の駐留を許し、そこに馴染んでしまう道を選んだ:日本は1951年9月8日のサンフランシスコ講和条約によって独立を果たし、国家としての主権を回復した。しかし、そこには第5条および第6条として以下のような文言があった。
「第5条(c) 連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する」
「第6条(a) 連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。但し、この規定は、一または二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない」
 これらの条文を法的根拠として、日本は同日、米国と安全保障条約(旧日米安保条約)を締結し、その第1条に基づいて米軍の本土駐留を承認した。翌1952年2月28日には、 前文と29条の本文からなる日米行政協定(「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定」)に調印し、在日米軍の取扱や権利について具体的に取り決めた。その内容は、占領中に使用していた施設・区域の恣意的運用、治外法権、免税、有事における「統一指揮権」(日本軍が米軍の指揮下に入る)等、占領体制下における米軍の権利をほぼそのまま承認するものだった。
 1960年における日米安保条約改正(新安保)にともない、日米行政協定は日米地位協定(「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」)と名称を変更。日米両国議会の承認手続を経て批准書が交換され、条約として正式に締結されたが、内容は行政協定における米軍の特権を事実上そのまま継承し、一度も改定されぬまま今日に至る。
 また、同協定第25条に基づき、日米両政府の代表者による協議機関「日米合同委員会」も設置。ここで合意された事項は、日米両政府を拘束する強大な権限を付与され、米軍基地の周辺住民はもちろん日本国民の生活に密接に関わるものでありながら、その内容および文書は日本国民にはまったく知らされていない。
参照:
・孫崎享『戦後史の正体』創元社「戦後再発見」双書1、2012年.
・矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』集英社インターナショナル、2014年.
・前泊博盛 編・著『本当は憲法より大切な「日米地位協定」入門』創元社「戦後再発見」双書2、2013年.
・中野文庫「日本国との平和条約条文」【URL】http://bit.ly/1ziaABJ
・Wikipedia「日米地位協定」【URL】http://bit.ly/1CbUcrR
・新原昭治『日米「密約」外交と人民のたたかい――米解禁文書から見る安保体制の裏側』新日本出版社、2011年
・IWJ「「戦後再発見双書」プロデューサーが語る、日米関係に隠された「闇の奥」~岩上安身による『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』著者・矢部宏治氏インタビュー 2014.10.13」【URL】 http://bit.ly/2C72DvS
・IWJ「国際社会の「敵国」であることを自ら望む日本の病 ~岩上安身による『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』著者・矢部宏治氏インタビュー第2弾 2014.11.2」【URL】 http://bit.ly/2Ck2HVU
・IWJ「「米軍の占領体制は今も継続されている」――謎の権力機関「日米合同委員会」の知られざる実像とは!? 「戦後最大のタブー」について岩上安身がジャーナリスト・吉田敏浩氏に訊く! 2016.12.2」【URL】 http://bit.ly/2pRgVv3

※92)主権回復のための緊急事態法整備?:1949年の制定当時、「ドイツ連邦共和国基本法」には、緊急事態条項に相当するものはなかった。1948年8月に専門委員会が起草した草案には、その第111条として、「公共の秩序と安全に対する差し迫った危険に対処するため、連邦政府は緊急命令を発することができる。これによって、言論、出版、集会、結社の自由および通信の秘密の基本権が停止されうる」という規定が盛り込まれていたが、濫用に対する抗しがたい不安や全権を確保しておきたい西側戦勝諸国の意向もはたらき、この草案第111条はドイツ基本法から欠落することとなった。そして、一度断念された緊急事態条項の導入が再び問題となったのは、西ドイツと西側三ヵ国が1952年に締結した「ドイツ連邦共和国と3連合国との間の関係に関する条約(ドイツ条約)」(前註※90参照)の、1954年の改定を契機としてであった。
 同条約は、占領の終了と西ドイツの主権回復を認めるとともに、三連合国の西ドイツ駐留権の留保も規定したものであり、駐留軍の安全を保護するために駐留三ヵ国が緊急事態宣言を発する権利を有する取り決めがなされていた(第5条)。これが1954年、次のように改定されたのである。
「第5条第2項 西ドイツに駐留する軍隊の安全に関して、三ヵ国が従来保有し、又は行使していた権利で、一時的に三ヵ国に留保されるものは、所管ドイツ当局がドイツの法令にもとづいて、これらの軍隊の安全を保護するために有効な措置を講ずる能力を獲得すれば、直ちに解除される。それには、公共の安寧と秩序の重大な障害に対処する能力が含まれる」
 ようするに、現時点で西ドイツに駐留している米英仏三ヵ国は西ドイツが緊急事態法制を整備するまで留保権を維持するが、緊急事態法制を西ドイツ政府が整備すれば、それは解消されるというわけである。
 「西ドイツに駐留する軍隊の安全」を確保するためと称して数々の基本権侵害(監視・盗聴など)がなされていたこともあり、かくのごとき半占領状態(半植民地状態とも)を一刻も早く終わらせるために、緊急事態法制の整備が必要だという声が高まった。冷戦の深化にともない、東側からの万一の武力介入に備えるという考え方も、この動きを後押しした。そうして緊急事態法制の整備が進められることになったのだが、ただしそれは建前、口実にすぎないという見方もあると、石田氏は読者の注意をうながす。
 石田氏によれば、緊急事態法制に着手した内相ゲアハルト・シュレーダーは、元ナチ党員で、戦後はアデナウアー政権下でドイツ共産党を禁止させた人物であり、労働組合のゼネストや学生の反体制運動も緊急事態として抑圧することを考えていた節がある。
参照:
・清水隆雄「ドイツ緊急事態法の制定過程と NATO 軍」国立国会図書館調査及び立法考査 局『主要国における緊急事態への対処』2003 年.
・長谷部恭男・石田勇治『ナチスの「手口」と緊急事態条項』p.118−126.

※93)「かたい」連邦制、西側三ヵ国の要求:ドイツ連邦共和国は、16のラント Land(州)から構成される連邦国家である。各州は中世以来の独立した王国を起源とし、各々独自の歴史と文化を担ってきた。それぞれの州は、各々主権を有し、独自の州憲法、州議会、州政府および州裁判所を擁する国家Staatであり、特に基本法(憲法)に定めのない限り、国家の権限の行使および任務の遂行は州の所管とされる(基本法第30条)。そして、ドイツ基本法がかくも「かたい連邦制」を採用していることの背景には、「ドイツに二度と世界大戦を起こさせない」ために「権力の分散」を求める「戦勝国側の関心事」があった(長谷部氏)。
参照:
・Wikipedia「ドイツの地方行政区分」【URL】 http://bit.ly/2oLiKsT
・長谷部恭男・石田勇治『ナチスの「手口」と緊急事態条項』p.122−124.

※94)スノーデンの告発『アメリカは地球規模で盗聴をまだやっている』:元CIA職員エドワード・スノーデンは、2013年5月、在職中に常時接触する機会のあった機密文書のコピーを携えてアメリカを脱出し、アメリカ国内をはじめ世界各国に対するNSA(アメリカ国家安全保障局)の監視・盗聴の実態と手口を告発。世界中に大きな衝撃を与えた。
 それによれば、NSAはベライゾン・ワイヤレス社等の大手通信事業社の協力のもとで、電話回線の傍受や加入者の通話情報を収集していたほか、アプリケーションプログラミングインターフェースのような形で忍ばせたバックドア(利用者の監視・操作・情報の詐取を目的として、秘密裏にソフトウェアやシステムに仕込まれるプログラム)を通じてインターネットも傍受。Microsoft社をはじめとする大手コンピューター・ソフトウェア会社も、通信暗号化を回避するバックドアを設けて、NSAによる通信傍受や情報取得に協力していたことが判明した。
 さらに、NSAがこうした手口を用いて、個人にとどまらず友好国を含む他国の大使館等を常時監視していたことが、機密文書のその後の解析から次々と発覚。欧州各国からは、主権国家として容認し難い行為であると激しく非難され、国際社会におけるアメリカの信用は大きく揺らぐこととなった。
 なお、カナダ・クイーンズ大学大学院博士課程在籍中のジャーナリスト・小笠原みどり氏は2016年5月、日本人として初めてスノーデン氏への単独ビデオインタビューに成功した。
 8月には同氏の講演会が開かれ、通信監視プログラムPRISM(GoogleやFacebookといったインターネットサービス各社の協力を得て、政府が利用者のアカウントを特定し情報提供させるというもの)やSSO(太洋横断通信ケーブルを利用し、ケーブルを経由するすべての情報が自動的にコピーされNSAに転送されるシステム)といった、アメリカによる情報窃取の具体的手口が伝えられた。また同年、オリバー・ストーン監督がこの「スノーデン事件」を映画化。
 2017年1月18日には日本公開に合わせて来日し、事の重大性を日本国民に訴えている。IWJ岩上は両氏への質問・インタビューを行っている。ぜひ参照されたい。
参照:
・Wikipedia「エドワード・スノーデン」【URL】http://bit.ly/1ec4YPO
・Wikipedia「バックドア」【URL】http://bit.ly/1twHjRP
・IWJ「米国NSAの全世界的情報傍受システムが監視するのはテロリストではなく市民! スノーデン氏にインタビューしたジャーナリストの小笠原みどり氏が監視社会の恐ろしさを伝える! 2016.8.27」【URL】 http://bit.ly/2zvXyXP
・IWJ「「日本政府も企業も個人もすべて米国NSAに盗聴されている!」元NSA職員スノーデン氏が暴く!米国による巨大監視システムの実態とは――スノーデン単独取材に成功した小笠原みどり氏に岩上安身がインタビュー 2016.12.26」【URL】 http://bit.ly/2kWVuUh
・IWJ「米国の同盟国をやめた瞬間に、CIAのマルウェアが日本中のインフラを崩壊させる!? その真偽は!? ――映画『スノーデン』のオリバー・ストーン監督に岩上安身が直撃質問!会見全文起こし! 2017.1.18」【URL】 http://bit.ly/2zvEc58

※95)メルケルもアメリカによる盗聴に激怒:CIA元職員エドワード・スノーデンが持ち出した機密文書の解析結果にもとづき、NSA(アメリカ国家安全保障局)が電話回線やインターネットの傍受を通じて各国に行っていた諜報活動の実態が次々と明らかになる中、ドイツ政府は2013年10月23日、NSAが独首相メルケル氏の私用携帯電話の通話も傍受していた疑いがあるとの声明を発表。著しく信頼を損なう行為であるとアメリカに抗議するとともに、事実関係の説明を求めた。
 さらに、翌年6月27日には、米通信大手でありNSAの電話回線傍受に協力していたとされるベライゾン・コミュニケーションとの契約を解消することを発表したことに加え、7月10日には在独アメリカ大使館において情報部門の責任者を務めていた人物に国外退去を命じるなど、アメリカの諜報活動に厳しく対処する構えを示した。
参照:
・ハフィントンポスト「ドイツのメルケル首相、アメリカ情報機関が通話を盗聴か 「安倍首相は問題ない」菅官房長官」【URL】http://huff.to/1IIinlU
・47News「独政府、米通信との契約打ち切り 盗聴問題で」【URL】http://bit.ly/1K2ITHl
・CNN「ドイツ、米大使館の情報責任者を国外退去に」【URL】http://bit.ly/1E4Z7KT

※96)菅官房長官『全く問題ない』『アメリカ政府に事実確認することも考えていない』:CIA元職員エドワード・スノーデンが持ち出した、NSA(アメリカ国家安全保障局)の機密文書の解析結果に基づき、英国紙『ガーディアン』は2013年6月30日、NSAが日本をふくむ38カ国の大使館に対しても盗聴をおこなっていたことをスクープ。同年10月23日には、メルケル独首相の私用携帯電話の通話も傍受していたことが判明した。
 これを受け、菅義偉・官房長官は翌24日に記者会見をおこない、安倍首相の携帯電話は大丈夫かとの問いに「まったく問題ない」と強調。アメリカ政府に事実確認をすることも考えていないと答えた。
 翌月11月2日には、日本がブラジル等とともにアメリカの「経済的優位性」を得るための監視対象となっていることや、米軍基地等を通じてNSAが情報収集活動を行っていることが米紙『ニューヨーク・タイムズ』を通じて報じられたが、小野寺五典・防衛大臣は記者団に対し、「あくまで報道があったということで、アメリカ政府がそのようなことを言っているとは承知していない。同盟国との間も含め、さまざまな友好国との信頼を傷つけるような行為は決して望ましいことではない。報道は信じたくない」とコメントした。
 同じくアメリカの盗聴を受けていたことが判明したドイツなどが、アメリカに厳しく抗議し釈明を要求したのとは対照的に、日本政府は事実関係の究明に後ろ向きで、アメリカ政府との対立や軋轢をひたすら避けようとする姿勢であることが浮き彫りになった。
 なお、小笠原みどり氏によれば、アメリカは日本に対し、米国とアジア太平洋地域を結ぶ国際海底ケーブル「トランス・パシフィック・エクスプレス」を通じて「STORMBREW」というコードネームの監視・情報窃取活動をおこなっているとのこと。
 そもそもアメリカは同じアングロサクソン系の英語圏5か国(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)を『ファイブ・アイズ』と呼び、情報共有を通じた密接な連携関係を構築しているが、日本は「友好国の信頼」どころか全くの蚊帳の外扱いであるといい、日本の対応についてスノーデン氏は、「抗議しないのなら、自ら進んで不適切な扱いを受け入れているのと同じこと。自分で自分に敬意を払わないで、どうして誰かに敬意を払ってくれるよう頼めるだろうか?」と述べたという。
参照:
・ハフィントンポスト「ドイツのメルケル首相、アメリカ情報機関が通話を盗聴か 「安倍首相は問題ない」菅官房長官」【URL】http://huff.to/1IIinlU
・産経新聞「米、日本大使館も盗聴 38の大使館、公館を対象に 英ガーディアン紙報道」【URL】http://bit.ly/1ztPf7r
・J-Castニュース「米NSA、日本も「監視」していた 小野寺防衛相「あくまでも報道。信じたくない」【URL】http://bit.ly/1oqgJVW
・IWJ「米国NSAの全世界的情報傍受システムが監視するのはテロリストではなく市民! スノーデン氏にインタビューしたジャーナリストの小笠原みどり氏が監視社会の恐ろしさを伝える! 2016.8.27」【URL】 http://bit.ly/2zvXyXP

※97)冷戦期における南アメリカの独裁/傀儡政権:たとえばチリのピノチェト政権。1973年9月11日、アメリカの支援を受けたチリ陸軍総司令官アウグスト・ピノチェト(1915−2006年)が、自由選挙によって合法的に樹立した世界初の社会主義政権、サルバドール・アジェンデ政権をクーデターによって転覆し、以後16年半にわたり軍事独裁体制を敷いた。
 彼はアメリカの意のままに、シカゴ大学のミルトン・フリードマンのもとで学んだ新自由主義者たち(「シカゴ・ボーイズ」と呼ばれる)を数多くチリに招聘。彼らの指導のもと、アジェンデ政権が推進した国有化政策を覆し、自国産業と公共サービスのあらゆる領域を民営化して市場原理主義の渦中にさらし、グローバル資本家たちの富の収奪に任せた。
 同時に、ラテンアメリカ圏内の他の軍事政権と協力しながら反体制派に対する大規模な政治弾圧を実施(「コンドル作戦」。ここにもアメリカ政府による資金的・技術的援助があった)。誘拐・投獄・拷問(そして殺人)が日常的におこなわれ、3000人以上の人々が「行方不明」となったことが知られる。アルゼンチンでも、ホルヘ・ラファエル・ビデラ大統領(在任期間1976−1981年)のもとで、チリと同様の状況が生じている。
参照:
・Wikipedia「アウグスト・ピノチェト」【URL】http://bit.ly/2BkySmS
・ナオミ・クライン著/幾島幸子・村上由見子訳『ショック・ドクトリンーー惨事便乗型資本主義の正体を暴く』、上・下、岩波書店、2011年

※98)地位協定:サンフランシスコ講和条約第五条(c)および第六条(a)に則り、独立後も引き続きアメリカ軍の駐留を承認する日米安保条約(1951年、旧安保)を締結した日本政府は、翌1952年2月28日、在日米軍の取扱や権利を具体的に定める日米行政協定(「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定」)に調印した。
 前文と29条の本文からなり、占領中に使用していた施設・区域の継続使用や、裁判管轄権や免税などの点での優遇、有事における「統一指揮権」(日本軍が米軍の指揮下に入る)等、占領体制下における米軍の権利をほぼそのまま承認する内容となっていた。
 1960年における日米安保条約改正(新安保)にともない、日米行政協定は日米地位協定(「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」)と名称を変更。日米両国議会の承認手続を経て批准書が交換され、条約として正式に締結されたが、内容は行政協定における米軍の特権を事実上そのまま継承するものとなっている。
 日米地位協定の全文および各条文についての註釈は、前泊博盛『本当は憲法より大切な「日米地位協定」入門』(創元社、2013年)を参照。
参照:
・Wikipedia「日米地位協定」【URL】http://bit.ly/1CbUcrR
・前泊博盛 編・著『本当は憲法より大切な「日米地位協定」入門』創元社「戦後再発見」双書2、2013年.
IWJ「[IWJ日米地位協定スペシャルVol.1] 岩上安身による『日米地位協定入門』著者 前泊博盛氏インタビュー 2013.3.5」【URL】http://bit.ly/2opj1PE

※99)ソ連のサテライト国家:第二次世界大戦後、ナチス・ドイツの占領下や同盟関係にあった東欧諸国には、ソ連軍が「解放者」として進軍・駐留し、その圧力のもとで共産主義政党による一党独裁政権が次々に打ち立てられた。ドイツ民主共和国(東ドイツ)、チェコスロバキア社会主義共和国、ハンガリー人民共和国、ポーランド人民共和国、ブルガリア人民共和国、ユーゴスラビア連邦人民共和国、ルーマニア人民共和国、アルバニア人民共和国などである。
 これらの国々は、ソ連を筆頭とする軍事同盟(ワルシャワ条約機構)や経済相互援助会議(コメコン)への加盟を通じて冷戦構造に組み込まれ、「盟主」と同様のスターリン主義的政策(計画経済、秘密警察、強制収容所など)をとった。
 1956年の「ハンガリー動乱」や1968年の「チェコ事件」のように、ソ連の影響下から脱しようとする動きは、ソ連によって武力で制圧された。
 このように、法的には完全な主権国家でありながら政治・軍事・経済・外交など国家運営のあらゆる面でソ連の支配を受け、自律的な国家運営を阻害されたこれらの国々を、西側陣営は一惑星の重力圏内を公転する天体、すなわち衛星(サテライト)になぞらえ、侮蔑の意味を込めて「衛星(サテライト)国」と呼んだ。
参照:
・Wikipedia「衛星国」【URL】http://bit.ly/2pATAxe
・Wikipedia「東側諸国」【URL】 http://bit.ly/2zAyJtW

※100)ブレジネフの「主権制限論」:ソ連の第5代最高指導者、レオニード・ブレジネフ書記長(1907−1982年)が1968年9月28日に発表した、社会主義諸国は共同体としての利益を個別の国家的利益に優先させなければならないとするテーゼ。ブレジネフ・ドクトリンとも呼ばれる。
 同年春からチェコで始まった一連の民主化運動(「プラハの春」)を、ワルシャワ条約機構に加盟する5カ国の軍を動員し武力制圧して押しつぶしたこと(「チェコ事件」1968年8月20日)を正当化するために打ち出された。社会主義陣営全体の利益を守るためなら、国連憲章でも確認された内政不干渉の原則を破り、国家の主権を侵害する行為も許容されるとするこの理論は、ソ連の帝国主義の現れとして同盟国からも激しい反発を招いた。
参照:
・世界史の窓「ブレジネフ=ドクトリン/制限主権論」【URL】http://bit.ly/2pGl052
・世界史の窓「プラハの春」【URL】 http://bit.ly/1N8yVmh

その7へ続く

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