大方の事前の予想を覆し、共和党のドナルド・トランプ氏が民主党のヒラリー・クリントン氏に大差をつけて圧勝するという驚きの結果となった、アメリカ大統領選挙。結果が確定してトランプ氏による勝利宣言が行われた翌日の11月10日、岩上安身は元外務省国際情報局長である孫崎享氏への単独インタビューを行なった。
中東情勢、日米安保、沖縄の基地問題、そしてTPPなど、トランプ大統領の誕生が今後の世界情勢に及ぼす影響について、インテリジェンスのプロである孫崎氏に見通しを聞いた。
孫崎氏は今回のトランプ氏の勝利を、「一流企業やメディア、学者といった既存勢力に対する大多数のアメリカ国民の強い不満が背景にあるのだろう」と、分析。今年6月のBrexit(イギリスのEUからの離脱決定)と同じく、世界的な「反グローバリズムの流れ」の一環であると語った。
- 日時 2016年11月10日(木) 16:00~
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
この期に及んでもなお国会でのTPP承認にこだわる安倍政権――孫崎氏「まったく理解できない。トランプ氏に喧嘩を売るようなもの」と一刀両断!
このインタビューが行われていた11月10日の午後5時すぎ、衆議院本会議でTPP承認案が、自民党、公明党、そして日本維新の会による賛成多数で可決された。政府・与党は今後会期の延長も視野に、今国会中の承認手続きを完了させる考えだといわれる。
しかし、たとえ日本が世界に先んじてTPPを承認したとしても、そのTPPが実際に条約として発効する可能性はほぼゼロに近い。なぜなら、これまで一貫してTPPの推進を日本に対して要請してきたアメリカの大統領に、「TPP反対」を強く主張するトランプ氏が就任することになったからである。
▲インタビューの様子――11月10日、IWJ事務所
トランプ氏は選挙期間中、TPPによって大多数のアメリカ国民の雇用が奪われるとの懸念を表明し続け、時には「特別な利害関係をもつ奴らが、アメリカをレイプするために、この協定を結ぼうとしてきた」という極めて過激な表現を使ってTPPを批判してきた。
それにも関わらず安倍政権は、おそらくはTPPが実際には発効しないことを重々承知のうえで、衆議院本会議での採決を強行したのである。こうした安倍政権の理解に苦しむ対応について、孫崎氏はインタビューの中で「正当性も合理性も欠いており、まったく理解できない。トランプ氏にあえて喧嘩を売るようなものだ」と斬って捨てた。
岩上安身はこれまで、日本と世界の政治状況が新しい局面を迎えるたびに、孫崎氏への単独インタビューを敢行している。いずれのインタビューでも、孫崎氏が岩上安身を相手に鋭い分析を披露しているので、ぜひあわせてご覧いただきたい。