「日本の国益を真剣に考えた人たちがいたことを伝えたかった」アメリカとの隷属関係を断ち切ろうと奔走した政治家とは? ~岩上安身によるインタビュー 第237回 ゲスト 孫崎享氏 2012.8.23

記事公開日:2012.8.23取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根)

※2015年2月28日テキストを更新しました。

 「ジャパンハンドラーは、TPPで搾取を極め、安保については9条をなくせ、アメリカ軍とどこへでも一緒に動けるようにしろ、中国と対立しろ、と急き立てているが」――。

 この岩上安身の問いかけに、元外務省国際情報局長の孫崎享氏はこう応じた。

 「昔は、そういうことに歯向かう気骨のある政治家がいた。だから、われわれの選択肢に歯向かうこともできる、ということを本書で訴えたかった。イラクのエネルギー大臣が『われわれはアメリカに出て行ってもらう』と発言していて、驚いた。パキスタンも、アメリカとの隷属関係を切ろうとしている。中南米も同様だ。今、世界でアメリカと隷属関係を表明しているのは、日本と韓国くらいしかない」

 2012年8月23日、孫崎邸で、岩上安身による元外交官の孫崎享氏インタビューが行われた。孫崎氏は、「あるハーバード大学の教授は、今日ほど残虐でない時代はないと言う。潮流としては、平和に向かっている。国同士の戦争はなくなった。冷戦以降、9.11以前までテロは減っていた。今、アメリカが、他国に手出しをしなければ平和になる」と話し、自主グループの政治家として、重光葵、石橋湛山、芦田均、岸信介、鳩山一郎、佐藤栄作、田中角栄、福田赳夫、宮澤喜一、細川護熙、鳩山由紀夫の名前を挙げた。

■ハイライト

  • 日時 2012年8月23日(木)
  • 場所 孫崎邸

マスコミ、財界、官僚、学者すべてはウソつきだった

 岩上安身は「孫崎さんの著書『戦後史の正体』(2012年7月、創元社)は、予約だけで6000部。1ヵ月で実売12万部だ」と驚きの声を上げ、孫崎氏との対談DVD『Deep Night』3巻に言及した。

 孫崎氏は同書が売れた理由を、原発事故により、マスコミ、財界、官僚、学者に対する信用が崩れ、人々が真実探しの旅に出ようとしたからではないか、と分析した。

 そして、「原発、TPPのからくりはわかってきたが、増税のまやかしがわかっていない」と話す。1985年から、高額所得者と法人税が減る。現在の高額所得者の税と法人税を、1985年の水準に戻せば、消費増税は必要ない。さらに、1985年、中曽根政権の財政事情、安全保障面、労使関係、の3つについての研究が必要だと言う。

 岩上安身が「1985年は超円高とプラザ合意。ここから日本はバブル経済に突き進んだ」と言うと、孫崎氏も「それまでアメリカは、鉄鋼、繊維などモグラたたきでやってきたが、円高でまとめてやることにした。しかし、ドル安にはできず、アジア通貨に対しても円高になり、日本企業は海外に走ってしまった」と語った。

対米従属路線をつくった吉田茂元首相

 岩上安身は『戦後史の正体』の趣旨を訊いた。

 孫崎氏は、「日本の国益を真剣に考えた人たちがいたことを伝えたかった」と答え、鳩山由紀夫元首相の、普天間基地県外移転を例に挙げ、「ほとんどの国民は、当時、鳩山首相の言動に呆れたと思う。しかし、以前、日本の政治家で米軍基地の全面撤退を主張した人がいた」と述べ、あまりにも日本人は事実を知らなすぎると嘆いた。

 また、ミズーリ艦上での降伏文書調印にふれ、そこには「アメリカ最高司令官にすべて従う、公用語を英語に、通貨を米国の軍票に、裁判権を米国に、という条件を認めるよう指示してきた。しかし、これに抵抗し破棄させたのが、重光葵外相。しかし、2週間後に辞任。そのあとを吉田茂が引き継いだ」。

 孫崎氏は、日本が、今日まで対米従属国になった理由は、吉田茂元首相と、それを美化した高坂正堯京都大学教授らだと批判。それは推論ではなく、チャールズ・ウィロビー(参謀第2部長)自身の回想録を証拠に示した。岩上安身が「吉田茂などを描いた戦後史は、フィクションであり美化され、事実はねつ造されていた」と言い添えた。

米軍縮小、中国接近を唱えた政治家は必ず失脚する

 なぜ、今『戦後史の正体』なのか。孫崎氏は、こう語る。

 「それは、2009年民主党が勝利し、新しい日本ができた、と国民は信じたが、現在、野田政権で、すべてが裏切られた。なぜなら鳩山首相と小沢幹事長の失脚だ。それは裏を返せば、敗戦時から一貫して、米軍縮小、中国接近を唱えた政治家だったから。悲しいかな、官僚、検察、マスコミなど、日本人の手によって排除される。日本はこれでいいのかと、本書で問いたかった。

 日米地位協定もまったく不平等だ。吉田茂が調印した安保から続き、普天間基地など米軍基地に対して、電気・水道を止める、ゴミの収集も止めればいいと思うが、それも許されないように地位協定で決められている。

 たとえば、1946年、米軍駐留経費が国家予算の32%を占めていたのを、大蔵大臣の石橋湛山が、米軍に縮小を要求。すると、すぐに公職追放令により放逐された。石橋は『自分のあとの蔵相も同じことをすれば、いつかはGHQも反省する』と言葉を残しが、そうはならなかった。それは、今回の鳩山首相のあとの菅首相も同じだった」

自分をアピールするために安全な尖閣に上陸する

 また、孫崎氏が「新聞記者が少しはマシになった」と言うと、岩上安身が、それに反駁する場面も。

 「竹島、尖閣がマスコミを賑わす。北方4島、竹島、尖閣諸島の実行支配は、どこか。勘違いがある。ロシアは経済協力しようと言い、決して領土問題は持ち出さない。石原慎太郎はなぜ、尖閣を言ったのか」と岩上安身が水を向けると、孫崎氏は、尖閣を問題にするなら、その前に横田基地をちゃんとしろ、と石原慎太郎に指摘したと言い、「竹島、北方領土は実行支配されているから、石原慎太郎も、右翼議員も行かない。なぜなら捕まるからだ。アピールするために、安全な尖閣に上陸する」と揶揄した。

 さらに、「韓国のイ・ミョンバク前大統領は、人気取りのために竹島に行った。石原慎太郎は死に体の政治家だったのが、尖閣発言で息を吹き返す。しかし、それは国益にかなっているのか」と述べると、「困ったときの反日、反韓だ」と岩上安身は言い添えた。

増税、原発再稼働、秘密保護法、共謀罪も戦争のため

 孫崎氏は「ヨーロッパは、戦争をしない努力をした。中南米も安定に向かっている。しかし、極東が今、おかしくなっている。次のマーケットが極東になっている」と言う。

 岩上安身は「インターネット規制の危険なACTAを、先頭切って日本は批准した。増税、原発も、秘密保護法、共謀罪も戦争準備のため。リチャード・アーミテージ、ジョセフ・ナイは、原発再稼働、TPP、消費増税を押し進める。彼らは、中国と戦争準備を企てている」と言及した。

 孫崎氏は、「安保屋がなぜ、エネルギーにこだわるのかは明らかだ」と言い、アメリカの2001年のおかしな動きを説明した。「安全保障関係者は、イスラエルとの連携が重要で、サウジアラビア=石油からの脱却が見てとれる。アメリカの中東依存は5%しかない。ホルムズ海峡は、もう関係ない」と言及する。

利益共同体ではないアメリカと日本

 岩上安身は、「孫崎氏はイランのハタミ大統領の訪日(2000年)を実現させ、推定埋蔵量260億バーレルを誇るアザデガン油田の開発権をもたらした。しかし、アメリカから強い圧力がかかった」と述べ、孫崎氏にどんな圧力がかかったかを訊いた。

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「日本の国益を真剣に考えた人たちがいたことを伝えたかった」~岩上安身による孫崎享氏インタビュー http://iwj.co.jp/wj/open/archives/27537 … @iwakamiyasumi
    今、世界でアメリカと隷属関係を表明しているのは、日本と韓国くらいしかない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/580504892491563009

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