「日本と中国が近づくことは、世界平和のキーワードに」 〜東アジア青年交流プロジェクト報告会 2014.3.19

記事公開日:2014.3.19取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 「戦争記念館は、平和を発信する基地として機能しうる。日中の若者が歴史を学び、話し合うことが未来を作る」──。

 2014年3月19日、大阪市浪速区の討論Bar “シチズン” で、東アジア青年交流プロジェクト事務局長の佐藤大氏が、昨年11月の中国訪問について報告した。

 同プロジェクトは、前衆議院議員の服部良一氏を代表に、2013年に発足。東アジアの5つの国の若者が相互訪問し合い、交流を通して、東アジアの平和を築くネットワークの構築を目指している。

 服部氏は「日本が福島原発事故で、アジアに多大な心配をかけていることを率直に認めた上で、原発に頼らないエネルギー政策を進めることを、アピールすることが重要だ」と語った。

■全編動画 ※映像と音声が少しずれています。ご了承ください。

数千年の歴史を踏まえて東アジアの交流を考える

 服部氏はプロジェクト結成について、「安倍政権が発足してから、ヘイトスピーチをしながらデモをする人の中に、若い人が少なからずいる現実に衝撃を受けた。東アジアの平和、あるいは歴史を理解している人に、日本の将来の政治を担ってほしいという思いから、この青年交流プロジェクトを立ち上げた」と述べた。

 服部氏は東アジアの関係にも触れ、「数千年の歴史から考えると、日本には、中国から朝鮮半島を経由して文字が伝わり、あるいは稲作が伝わり、さまざまな文化が伝わってきた。また、環境の点から見ても、偏西風が吹き、必ず東アジアの環境や気候は一体で動いている。日本の、中国あるいは朝鮮半島に対する侵略の歴史はあるが、数千年の長い歴史からすると、ほんの100年という近い現代で起きた事柄である。私たちは数千年の中で、日本と中国あるいは朝鮮半島、東アジアの歴史あるいは文化交流を、考えていかなければならない」と語った。

戦争を繰り返さないために、若者が歴史を学び、話し合うこと

 佐藤氏は中国訪問を決めたことについて、「国交正常化40周年に、何もできなかったという悔しさを翌年に持ち越したくないと考え、2013年に訪問した」と話し、「世界平和の問題を考えると、日本と中国が近づくことは、米中対立という構造を変えるキーワードになる。したがって、お互いにいがみ合うのではなく、すでに活発な経済交流を発展させ、お互いの国を行き来しやすい関係を作っていくことが必要である」と主張した。

 訪中にあたり、課題と設定した歴史認識に関して、盧溝橋(ろこうきょう)の戦争記念館を訪問したことを報告した。「中国の人たちが、日中戦争をどう記憶しているかを見てきた。日本軍が女性や子どもを含めて殺りくしたという写真が展示され、拷問に使った機材も残されていた」。

 「一方、中国側の随行者から聞いて驚いたことは、この記念館の表現は、すごく緩和されているということだった。その意図は、訪れる子どもや若者が、戦争の実態を学びながらも、いかに日本との未来の関係を築いていくかを考えてほしいから、ということであった。したがって、日本の人たちも、ここを訪れて日中の歴史を学び、中国の子どもたちと話し合うことが、戦争を繰り返さないために必要だ。記念館は、平和を発信する基地として機能しうる」との見解を示した。

農村戸籍と都市戸籍で社会保障に格差

 佐藤氏は、北京に住む若者の雇用や社会保障の実態について、「北京の5歳から35歳の青少年人口約一千万人のうち、8割程度は農村戸籍者である。農村出身者に対する改革として、優良企業で10年間働くと都市戸籍の申請権利が得られるところまで進んできた。農村戸籍の人は、北京戸籍の人たちと失業保険や医療保険、雇用保険の負担割合が違うのだ」と説明し、次のように述べた。

 「給料はどうかというと、一般的な北京の初任給は3000~4000元、日本円で5~6万円だ。非正規でアルバイトをしている人たち、たとえば、マクドナルドだと時給が5元、1ヵ月で1000元くらいにしかならない。北京に住んで、働いていても不安がつきまとう。一方で高額所得者は、1ヵ月で10万元から100万元もらう人もいる。所得格差と社会保障の格差が問題である」。

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