前衆院議員の服部良一氏の呼びかけによって、東アジア平和構築のために若者の交流の場を作ることを目的とした「東アジア青年交流プロジェクト」が設立され、発足集会が開催された。集会の冒頭で服部氏は「これまでの歴史認識を抜きに日本の未来を語ることはできない」と歴史認識の重要さを強調。そのために東アジアで共通の平和と歴史をテーマにした勉強会や意見交換の場を作っていく方針を示した。記念講師として登壇した立命館大学特認教授の徐勝氏は、そもそも東アジアというのは日本が便宜的に作り上げた地域概念であり、それを見直すことなしに真の平和構築はありえないとの意見を述べた。
- 設立報告 服部良一氏(東アジア青年交流プロジェクト 代表、前衆議院議員)
- 記念講演 徐勝(ソ・スン)氏(立命館大学 特任教授)
- プロジェクト提起 佐藤大氏(東アジア青年交流プロジェクト 事務局長)
プロジェクトの代表者である服部氏は、改憲問題にゆれる憲法9条を、アジアをはじめとする各国に対する不戦の誓いであると述べ、これを変えようとする自民党に強い不快感を示した。また、東アジアの平和構築のためには、過去の歴史と正面から向き合い理解することが必要不可欠であるとし、平和と歴史をテーマにした勉強会や意見交換の場を作っていくとプロジェクトの趣旨を説明。具体的には日本の未来を担う若者と中国、韓国、極東ロシアなどを歴訪して交流を深めると共に、各国から若者を招いて東アジアとして共通の問題解決や平和構築を目指す。
一方、徐勝氏は、西洋の軍国主義が便宜的にアジアやアフリカ、ラテンアメリカというくくりを作ったように、東アジアという地域概念は日本が自分たちの意図を露骨に見せないために着せた隠れ蓑であると指摘。西洋列強は植民地を文明化するのが自分たちの当然の権利、義務であるかのように不平等な条約を結んできたとした上で、日本は押し付けられた不平等条約を解消するために徹底的に西洋文明を学び、結果として西洋諸国と同じように文明という考えのもと侵略支配を繰り返し、東アジアという地域概念を形成してきたとの持論を展開。これによって日本が文明国になったかといえば真逆で、野蛮に合流したと言わざるを得ず、今日における差別の大半は文明と野蛮の二元的な世界観から生まれているとも論じた。
東アジアの問題を考えるにあたって、重要なのは国家間の独立平等という概念であると語る徐勝氏は、「日本は東アジアという歴史政治的概念をどのようにクリアにするかによって初めて世界への道が開ける。その道を通らずして日本が世界を語ってきたからこそ、日本は大きな歴史的な過ちを犯してきた」と述べ、「日本が世界を語るのならば、自分たちが作ってきた東アジアという概念を乗り越えていかななければならない。支配者の言葉ではなく、支配された側の言葉として、東アジアの概念を作り直すこともなしに、日本が世界に世界に向かって進めるというのは、まったくの偽善である」と強い口調で批判した。
国際交流については「大学で講義を受けるよりも、実際に同じ釜の飯を食い、酒を飲むほうが互いの問題解決に対しずっと大きな効果を生むと思うが、友好親善だとか外交といった文字を背中に担ぐのはよくない。どこまでも本音で、感覚で喧嘩や恋愛をしながらやっていくことが大切で、なるべくフォーマルではない交流を追求することが必要」と述べ、プロジェクトの成功を願って講演を締めくくった。