【IWJ×鳳凰網】逃れられない「隣人」中国とどう付き合うか~岩上安身による天児慧氏インタビュー

記事公開日:2013.9.13取材地: テキスト動画
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 9月14日(土)、香港フェニックステレビがスペシャル番組「日中関係の大きな知恵を求めて~フェニックステレビ時事弁論会」を放送します。番組では、日本側、中国側からそれぞれ4人の有識者が出席し、外交・安全保障、経済、文化など、幅広いテーマで討論が行われる予定です。テーマが日中関係ということもあり、日本でのインターネット配信を模索していた香港フェニックステレビから、IWJに対し共同配信の打診がありました。

 そこでIWJは、香港フェニックスネットと協力し、この番組を配信することになりました。配信チャンネルは、新たに開設した「IWJ香港」。日時は、9月14日(土)の17時5分から。番組は、リアルタイムの中継に関しては、IWJ定額会員以外の方も無料でご覧いただけます。他方、IWJ定額会員の皆さまは、番組放送後1ヶ月間は、動画アーカイブをご覧いただけます。この機会に、ぜひIWJ定額会員にご登録ください。

【IWJ&フェニックスネット共同配信】

IWJと香港フェニックスネット(鳳凰網)が協力し、9月14日(土)に日中討論会を共同配信することが決定しました。

[日時]9月14日(土)17:05~18:45(日本時間)

[配信チャンネル]IWJ香港 http://iwj.co.jp/feature/iwj-ifeng/view

[キャスター] 黄海波(フェニックステレビ中文チャンネル副編集長)

[日本側ゲスト] 天児慧(早稲田大学現代中国研究所所長)、柳澤協二(元内閣官房副長官補)、宮家邦彦(元駐中国日本公使)、城山英巳(時事通信社北京特派員)

[中国側ゲスト] 李秀石(上海国際問題研究院前日本研究センター主任)、朱鋒(北京大学国際戦略研究センター副主任)、林泉忠(台灣中央研究院近代史研究所副研究員)、邱震海(フェニックステレビコメンテーター)

[詳細]IWJ&フェニックスネット共同配信特設ページ
http://iwj.co.jp/feature/iwj-ifeng/

※事前アンケートにご協力ください。アンケートの結果は、番組内で取り上げさせていただきます。アンケートはこちら→
http://iwj.co.jp/feature/iwj-ifeng/questionnaire1

※IWJ定額会員の皆さまは、この番組の動画アーカイブを、放送終了から1ヶ月間視聴することができます。この機会に、ぜひIWJ定額会員にご登録ください。http://iwj.co.jp/join/

 このスペシャル番組の配信を控え、私は9月11日、日本側パネリストの1人である、早稲田大学現代中国研究所所長の天児慧氏に緊急インタビューを行いました。尖閣諸島をめぐる日中間の領有権争いなど、日中関係が「国交正常化以来最悪」と言われるほど冷え込んでいる今、日中関係はどうあるべきなのか。天児氏へのインタビューとあわせ、ぜひ9月14日の番組をご覧ください。

■ハイライト

※動画記事(本編)はこちらから

■以下、インタビュー実況ツイートのまとめに加筆・訂正したものを掲載します

中国に存在する4つの断層

岩上安身「9月11日は尖閣諸島の国有化からちょうど1年です。日中関係は今後、どのようなものになるのでしょうか。そして、中国は今後、どのような戦略を描いているのでしょうか。また、日中間には米国が介在していますが、米国のことをどのように考えていけばよいのでしょうか」

天児慧氏(以下、敬称略)「私は、1986年から88年の2年間、北京に滞在して、日本大使館の世論調査員を務めました。そこで、中国全土を調査して回りました。農村に入ったりですとか、中国共産党の幹部と話したり、といった具合です。

 当時はまだ、プートンホワ(普通語)、つまり北京語が通じませんでした。上海は上海語。広東は広東語、というように。風俗も土地ごとに全然違います。中国というのはとんでもない国だな、と思いました。

 私は、中国には4つの断層があると考えています。一つ目は都市と農村。二つ目はエリートと大衆。三つ目は制度と人間関係。四つ目は政治と経済。日本と違い、中国ではこれらがはっきりとした断層を形成しています」

岩上「中国にいらした80年代の終り、貧富の格差というものはどうだったのでしょうか」

天児「都市と農村の断層、そういったものの結果として貧富の格差が生じたと言えます。4つの断層がどのような変化をたどったかを見ることで、中国の実体を捉えられるのでは、と考えています。

 日中関係を考える場合、歴史を考えなければいけません。日中戦争のことだけではありません。もっと長い、文明史のようなものです。漢字や儒教は言うまでもありませんが、日本人が血肉化している考えのなかに、中国由来のものが入っていることを忘れてはならないと思います」

岩上「天皇という号も道教から来ていると言われていますね」

今に生きる鄧小平の「韜光養晦」(とうこうようかい)という教え

天児「日本人は、渡来のものを日本化する能力に長けているのだと思います。他方、中国は自己完結的で、自分の所で作り出す文化です」

岩上「文字も自ら作り出してしまう。皇帝が制定して、一挙に広めたりしますね。日本人にはこれはできない」

天児「現在、中国が経済的な力をつけてきたことで、元々あった自己完結的な力、これを海外に発信していこうという考えが強くなっているのだと思います。中国にとっては、民主主義も欧米由来のもので、絶対的なものではありません。どこか、相対化して見ているところがあります。

 鄧小平の『韜光養晦』(とうこうようかい)という言葉があります。国力が整わないうちは、国際社会の先頭に立とうとはせず、じっくりと力を蓄えておこう、という戦略です。冷戦が終わり、ソ連が解体するなかで、鄧小平は、政治的に目立つ行いは避け、経済に集中しようと呼びかけました」

岩上「御著書の『日中対立~習近平の中国を読む』(ちくま新書)には、冷戦終結後の91年に鄧小平が発した『二四文字指示』について触れられていますね。その中に『韜光養晦』という言葉も出てくる。『能力を隠し、ぼろを出さず、決して先頭に立たない』という戒め。

 国際社会の先頭には立たない、というこれまでの中国の姿勢、この大方針が変わってきているというのですね。現在、GDPの世界第1位は米国で、2位が中国です。中国は、米国にチャレンジすると格好の標的になってしまう、と考えてきたのでしょうか」

習近平が描く「2030年の中国」

天児「現在の中国の指導者は、非常に慎重に戦略を練っています。それは、米ソ対立のような構図を作らないようにする、ということです。

 習近平政権が発足した時、中国国務院にシンクタンクとIMFが、合同の研究プロジェクトを作りました。そして、『2030年の中国』というレポートを作成しています。IMFの実体は実質的に米国ですよね」

岩上「米中共同マネージメントのようなものですね」

天児「このレポートの内容は、驚くべきことに、いかに市場の自由化を徹底させるか、というものでした。中国の国営企業は、これまで手厚い優遇を受けていて、それが今の中国経済の飛躍に貢献しているんですね。しかし、習近平は、国営企業を既得権だと見なして、2030年までには徹底した自由主義社会を作ろうとしているのです」

岩上「そうなると、大変な市場が生まれることになりますね。しかし、中国が簡単に自由主義に移行できるのでしょうか」

天児「少なくとも、そういうプランがすでに存在するということは確かです。

 さらに、ホワイトハウスのNSC(国家安全保障会議)のアジア部長と中国側とで、『戦略的不信』という共著を出しています。これから、米中がどのようにして不信を乗り越えることができるのか、というものです。

 このように、どうすれば米中対立を避けることができるかということを、米中の要人は一生懸命考えている。これは、米ソ対立の二の舞いを避けようというものです。

 他方、今の日本は、中国を仮想敵国にして米国につく、という外交姿勢を取っています。しかし、そのことを中国側はすでに読んでいます。そのうえで、米国とすり合わせをやっているのです。習近平の訪米にも、そのような意味があります」

岩上「米中首脳会談では、西海岸のバームスプリングスに、オバマ大統領がわざわざ出向いて習近平を迎えました。他方、安倍総理は米国から非常に冷たい扱いです。日米首脳会談ではコールドランチだけ。共同会見もなければ晩餐会もない。ファーストレディー外交もありませんでした。そして、日中首脳会談はいまだに開かれていません」

天児「米国は、日本を邪魔者扱いしているわけではないと思います。これも演出のひとつです。冷たい扱いをすることで、暗に安倍総理にメッセージを送っているのだと思います。

 今までの日中関係では、実体では日本のほうが強かったわけです。歴史認識などで文句は言うけれども、なんだかんだ言って、中国は経済の面で日本からの支援を必要としていました」

岩上「日本に対してチクチクとは言うけれども、関係を破綻させることはしない、という関係だったのですね」

尖閣を問題化したのは誰か

天児「しかし、中国が経済力をつけると同時に、日本への姿勢が変わりました。日本に対しては、『韜光養晦』という言葉はもう古い、ということになっているのです。

 中国人は、近代史を屈辱の歴史として認識しています。西欧列強に踏みにじられ、日本にも侵略されました。しかし今、経済力がついてきたことによって、そのトラウマを回復しようとしているところがあります。

 日中関係は過去最悪とも言われていますが、私は、対日感情はそれほど悪いとは思っていません。抗日デモでも、中国人が中国人の店を焼き討ちをしている所もある。中国から日本に来る旅行者も、最近になって再び増えています。

 尖閣諸島の問題に関しては、あそこを国有化をせざるを得なかったというのは、日本の国内問題ですよね。日本は中国側に、攻撃的なメッセージを送ったわけではありません。なんとか穏便にすまそうとした。しかし、中国側は、反日行動という威嚇で応じてしまいました」

岩上「尖閣の問題がスタートしたのは、昨年の4月16日、当時の都知事の石原慎太郎氏が、ワシントンのヘリテージ財団という保守系シンクタンクで、東京都による国有化を宣言したことがきっかけでした。そのヘリテージ財団のクリングナーという研究員が、昨年秋、『中国に対する日本の民衆の増大しつつある懸念は、ワシントンが日米同盟に致命的重要な幾つかの政治的目的を達成する絶好の機会』という論文を書いています。

私はこの論文について、石原さん本人に質問しました。「米国の筋書きに乗せられたんじゃないですか」と。石原さんは否定していましたが」

天児「中国では、当時の野田総理が9月11日に尖閣の国有化に踏みきったときに、『野田総理、乾杯!』ということが言われています。日本側が国有化を言い始めたことによって、尖閣が問題になったんです。尖閣は日本が実効支配していますから、あそこが問題化することは、中国にとってはチャンスだったわけですね」

日本側に求められていることとは

岩上「日本が戦略的になって、中国のプライドを満たしつつ、ガス抜きをするというような外交政策を取ることが重要なのではないでしょうか」

天児「中国が日本に対して上に立とうとする。その場合、『どうぞ、上にたってください』と言うくらいの余裕が必要でしょう。しかし、その代わり、『国際社会に貢献するようにしてください』としっかり言う。このような視点が大切なのではないでしょうか。

 中国人は非常に合理的です。日清戦争をやるまでは、中国は日本を馬鹿にしていました。しかし、日本に負けてしまった。ところが、そうなると、中国人の留学生が大挙して日本にやってくるわけです」

岩上「先ほど、IMFと一緒に中国の構造改革を行うというプランがあると言われましたが、仮に、中国の構造改革派が勝利し、構造改革が今よりも劇的に進んだとします。そうすると、今でも格差の大きい貧富の差がさらに拡大し、政権への反発も大きくなると思います。中国はダイナミックに王朝の交代を繰り返してきました。政権は不満をどうコントロールしていくのでしょうか」

天児「中国にはすでに、国際社会とのリンケージが出てきています。開明的な政府ができれば、国際社会の注意を聞くということもあると思います。Twitterなどの市民レベルのメディアも育ってきています。

中国というと独裁国家だというイメージがありますが、下からの要請をすくい上げるメカニズムが育ってきています」

岩上「なるほど、この点、日本人にはあまり知られていないことかもしれませんね。

今度、香港フェニックステレビでの討論会にお出になられますね。視聴者が1億2000万人もいると言われていますが。

天児「香港フェニックステレビは、大陸への影響が非常に大きいんです。尖閣の問題も含め、今日、お話したようなことを、中国側のパネリストの方々と、討論してみたいと思っています」

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