「こういう失敗になった理由を検証し、『ここがおかしかった。では、これを変えていきましょう』とするのが筋だ。今までの文科省とJSCという体制とは違うものができると思う」──。
舛添要一東京都知事は、2015年7月21日に行った定例会見で意気込みを語った。さらに新国立競技場の今後の建設について、「政府が新しい組織を立ち上げる。そこに都庁からもエース級の人員を参加させる。また、民間人も登用するよう提言している」と話した。
質疑応答でも、新国立競技場に関連する質問が集中した。その中で舛添都知事は、「今までの、『造るのは政府だ。君らは黙っていて、あとで金を出せ』という国の姿勢が、こういう事態を招いたのではないか。新国立競技場は、東京都のど真ん中へ造るわけだから、われわれもできるだけの協力をするし、協力するにあたっては情報を共有する必要がある」と主張した。
東京MXテレビの記者は、「3日前、知事のツイッターに、新国立競技場について、『大失策に至った経緯を検証し、責任者を処分することが不可欠』とあった。今日、下村文部科学大臣の会見で、辞任についての質問が出たが、下村大臣は『批判は謙虚に受けとめ、確実に間に合うよう、スキームを作ることが責任を果たすことだ』と辞任を否定した」と述べて、舛添都知事の見解を求めた。
これに対し舛添都知事は、「誰が、どういう責任を持っているかが、まったくわからない。下村大臣は『もうちょっと早く知っていたら、何かできただろう』とこぼしていたが、大臣に役人から情報が上がらず、都知事より情報量が少ないというのはおかしい。JSCの河野一郎理事長も、『僕らは言われてやっているだけだ』と言ったが、無責任体制で最悪だ。新しい組織では、その点について、ちゃんと検証してほしい」と苦言を呈した。
下村文部科学大臣は引責辞任すべきかについては、「それは、ひとり一人の政治家の決断だ。任命権者である総理が決断すればいい話。とにかく不思議な世界だ。ひとつの組織で、どこに責任があるかわからないというのは問題だ」と答えた。
IWJの沼沢記者は、「猪瀬前知事は『東京オリンピックは既存の施設を使い、世界で一番金のかからないオリンピックになる』と発言していたが、今回、競技場の建設費が2500億円までに膨れ上がったことについて、どう思うか」と訊いた。舛添都知事は、「そういう議論は、今となっては意味がない。見直して新しくやるのだから、これから先のことを考えた方がいい」と答えた。
会見では他に、携帯電話の無料充電スタンドの設置、災害時の非常用電源にもなる燃料電池バスの実証実験、都が共催する東日本大震災被災地の復興支援イベントについて報告があった。
- 日時 2015年7月21日(火)14:00~
- 場所 東京都庁(東京都新宿区)
「おもてなし」のひとつ、携帯電話の無料充電サービス
この日、舛添都知事からは、携帯電話の無料充電サービス「シティチャージ」、燃料電池バス試乗会及び実証実験、東日本大震災の被災地復興支援イベント「スタンド・アップ・サミット2015」の説明に加えて、新国立競技場関連の報告も行われた。
「シティチャージ」とは、携帯電話やスマートフォン向けの、日本初の無料充電サービスだ。太陽光パネルによる充電スタンドは、夜間や雨天時でも利用できるように蓄電池を内蔵している。舛添都知事は、「東京の町に調和したデザイン標識(ピクトグラム)を使い、外国人でもわかりやすい」とそのマークを見せ、同様のものはニューヨークやドバイで設置されているが、日本で導入するのは東京都が最初だと強調した。
東京都環境公社が募集をかけ、設置事業者にはシャープ株式会社を選定。今年の秋、東京タワーと虎ノ門ヒルズの2ヵ所に設置し、その後、観光スポットなどの利用状況を検証して、設置場所を拡大していく予定だという。舛添都知事は、「観光客への『おもてなし』のひとつになり、都民にも便利になる」と述べた。
災害時の非常用電源として有効な燃料電池バスの導入
次に、燃料電池バス試乗会及び実証実験に関して、「7月27日から燃料電池バスの走行実証実験を行う」と述べ、具体的には以下のように説明した。
「燃料電池バスは、都心部や臨海地域の都営バス路線を走行する。都心部のルートは、渋谷、中野、環七、練馬、六本木、東京タワー付近となる。臨海地域は、深川営業所から晴海、ゲートブリッジ、レインボーブリッジを回る。この走行実験で、渋滞など大都市特有の交通事情や、夏場の厳しい環境条件、また、車両性能の確認や整備上の課題などを洗い出す。
燃料電池バスは、CO2を出さない。さらに、バス1台で燃料電池自動車4台分の蓄電能力があるので、災害時には非常用電源になり、バス1台で小学校ひとつ分の電気を賄える。このため、2020年までに100台以上の導入を検討中だ。東京オリンピック・パラリンピックの際には、選手村や会場への輸送手段に活用し、人々に水素社会を実感してもらう。私も7月24日に試乗する」
3番目に、東日本大震災の被災地復興支援イベント「スタンド・アップ・サミット2015」(8月11日・東京ビッグサイト)の開催を告知した。若者を中心とした参加型のイベントで、東京都と株式会社ビッグサイトが共催。東北、東京、海外から、約350名の中・高・大学生が集結する。舛添都知事は、「東日本大震災から4年が経過した今、なお東北が抱えている課題について改めて認識し、復興について考える場としたい」と述べた。
今までは「造るのは政府、君らはあとから金を出せ」
そして、舛添都知事は、「ここに来る前、政府と連絡をとっていた。政府からも発表があると思うが……」と前置きをして、新国立競技場建設に向けての、政府の新体制について報告をした。
「今日夕方、国で、新国立競技場建設に向けて新しい組織を立ち上げる。明日(7月22日)午前9時、遠藤利明五輪担当大臣が、説明のため都庁に来られる。こういう形で東京都と国とが協力して、新国立競技場問題を着実に、前向きに片づけていく。ある部分で、私の提言を聞いてもらったと理解している」
質疑応答に移ると、新国立競技場の建設計画をめぐる質問が集中した。「新国立競技場について、都知事は建設本部と作業委員会の設置を提言しているが、それぞれの役割はどういうものか。また、政府側の新しい組織とは?」という質問があった。
舛添都知事は、「新国立競技場の件は政府主導ではあるが、自分なりに検証した結果、現状の体制ではダメだと考えた。政府にはいろいろ提言をしていく。政府は関係閣僚会議を立ち上げる。座長は遠藤大臣、副座長は菅官房長官と下村文部科学大臣だと聞いている」とし、このように続けた。
「その下の作業チームに、都庁からも人員を参加させることについては了解を得た。また、民間人を入れることも提言した。今までの、『造るのは政府だ。君らは黙っていて、あとで金を出せ』という国の姿勢が、こういう事態を招いたのではないか。新国立競技場は、東京都のど真ん中へ造るわけだから、われわれもできるだけの協力をするし、協力するにあたっては情報を共有する必要がある。都庁のエース級を2人ぐらい参加させて、技術やお金について議論していく」
さらに舛添都知事は、「こういう失敗になった理由を検証し、『ここがおかしかった。では、これを変えていきましょう』とするのが筋だ。今までの文科省とJSCという体制とは、違うものができると思う」と意気込みを見せた。
どこに責任があるのかわからない、不思議な世界
【東京】「『造るのは政府、君らは黙って金を出せ』という国の姿勢がこの事態を招いた」 〜舛添都知事が新国立競技場の計画見直しで、政府とJSCの無責任体制を批判 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/254139 … @iwakamiyasumi
誰も責任を取らないのが、この国の伝統なのか。
https://twitter.com/55kurosuke/status/624549596463673344