フリーランス記者等43名で結成された秘密保護法違憲訴訟原告団は、2015年6月27日、公益社団法人マスコミ世論研究所(草の実アカデミー)との共催で、「秘密保護法、安保法制で、いよいよ戦争へ」と題した集会を行なった。
原告であるジャーナリスト林克明氏と寺澤有氏は、6月3日に開かれた本人尋問で、ジャーナリストの取材活動中に起きた事象を具体例としてあげ、秘密保護法によって取材が制限されることを指摘。その違憲性を訴えた。
(石川優)
※7月7日テキストを追加しました!
フリーランス記者等43名で結成された秘密保護法違憲訴訟原告団は、2015年6月27日、公益社団法人マスコミ世論研究所(草の実アカデミー)との共催で、「秘密保護法、安保法制で、いよいよ戦争へ」と題した集会を行なった。
原告であるジャーナリスト林克明氏と寺澤有氏は、6月3日に開かれた本人尋問で、ジャーナリストの取材活動中に起きた事象を具体例としてあげ、秘密保護法によって取材が制限されることを指摘。その違憲性を訴えた。
記事目次
■ハイライト
警察・防衛庁(省)の調査報道を続けてきた寺澤氏は、6月3日の原告側本人尋問の場で、特定秘密保護法により、取材活動にどう支障をきたしているかを訴えた。
そして、「自分(ジャーナリスト)が取材していることを公開の法廷で、今、こんな取材をしていて秘密保護法で困ってますと言うことはありえないことだ」と、訴訟において異例の証言を行なったことを報告した。
警察・防衛省の役人との人脈を築いてきた寺澤氏は、1998年、防衛庁(当時)の調達実施本部背任汚職事件で、スクープ記事を執筆している。
この日の集会で寺澤氏は、2015年5月14日、安全保障関連法案(平和安全法制整備法・国際平和支援法)の閣議決定直後に、現役自衛隊員に取材していた際にある話をされたと報告した。
安保関連法案が閣議決定された前後に、自衛隊員に対して、「隊員家族連絡カード」が配布された。
隊員家族連絡カードとは、自衛隊員の身に何かあった際、家族に連絡をする必要があることから、細かく連絡先を記載しておくものだ。
これまでにも、自分の住んでいる自宅の住所や単身赴任をしていれば、奥さんや子どもの住んでいる連絡先を記載することはあったという。ところが、隊員家族連絡カードでは、第1・第2・第3家族と、広範囲の親族に対してまで連絡先を記載することを求めているという。
この隊員家族連絡カードについて、寺澤氏に情報提供した自衛隊員は、「なんで細かいことを聞くんだ、それに加えて何かあった時と、今言われれば、我々が死んだ時だよね」と告げ、自衛隊員の間でこのカードが騒ぎになったことを明かした。
寺澤氏は、隊員家族連絡カードの現物を入手したいと思い、コピーを提供してもらえないかと情報提供者の自衛隊員に促したが、自衛隊員はそれを躊躇したという。
その理由について、寺澤氏は、安保関連法案が5月14日に閣議決定されたことや、特定秘密保護法が施行されたことを、取材の中で言及していたことが関係しているとした。
「特定秘密保護法が去年から施行されてますけど、と、そういう挨拶をしたから、逆にそれがまずくて…。
そのあとに安保法案でそんな話(隊員家族連絡カード)が出るとは思わなかったので、相手はマズイんじゃないのと当然思う。コピーを渡したりしたら。そういうことで、(コピーの提供を)躊躇されてしまって、口ではかなり細かく説明してくれたが、我々は現物を見ないことには報道できないので、現物を見たい。
後日、結局、画像をもらう。隊員家族連絡カードのコピーはもらえなくて、記入例だった。記入例をスマホで撮ったやつを画像でもらう。それでも、この記入例を撮ったものも、そのままどこかに出したりしないでくださいと言われる。
記入例の隊員のお兄さんが精神疾患を持っていて通院中だと、そういうことが備考欄に書いてある。そんなことまで書かせる。こんな細かいことまで書かせて、益々おかしいと思い、なんとかコピーをもらえないかと思ったが、説得するのも大変で。
そうこうしているうちに6月3日の本人尋問を迎えた。どうしようかと思ったが、今の取材経過を全部喋っちゃうかということで、今言ったことを法廷で喋った。
こちらも、(特定秘密保護法の)違憲判決を何とか書いてもらうためには、裁判長に実例を示して、今、秘密保護法で、記事を書けないと強調した」 その後、隊員家族連絡カードのコピーを入手できた寺澤氏は、電子書籍でその内容を公開している。
寺澤氏は、2009年6月に栃木県小山市で起きた狂言強盗事件についても、特定秘密保護法施行によってジャーナリストの取材に悪影響を及ぼすであろう実例として、本人尋問の場であげた。
この事件は、小山に住む資産家で、パチンコ店を経営し、朝鮮総連の幹部でもあった人物の自宅に強盗が入ったというもの。主犯格とされる人物は、2013年末に逮捕されている。これまで10人ほど逮捕されているが、逮捕された10人目の主犯格の人物から、寺澤氏は逮捕直後に手紙を受け取った。
手紙の中で、その主犯格の人物は、事件が「狂言強盗だった」と証言しているという。
「その資産家の原資は脱税だとか、そういうようなことを言っていた。その資産家は北朝鮮に30億円ぐらい送金しないといけなく、それを庭に埋めているが、それを送金しないようにしたいという話を資産家から暴力団を通じて、間に人が入って、話が来た。警察の家宅捜査を装って、10人ぐらい人を集めて来てくれと。自分たちを適当に縛ってくれ、だけど、ケガはさせないでくれ、そして、庭に埋まっている金を金属探知機でドラム缶に入っているから掘り出して持って行ってくれ。それで後で半分返してくれという話をされ、実行するが…。
言われたとおり警察を装って家宅捜査で入って、資産家の人やお手伝いさんを縛って、自分たちは金属探知機で庭を探してとやるが、もうその時には、掘り返した後があって、何かおかしいと思い、2、30分で引き上げる。撤収してすぐ、警察の覆面パトカーが待っていた。しかし、誰も110番通報していない。それで、カーチェイスをやり、東京・神奈川の方に逃げるということがあった」
寺澤氏は本人尋問で、裁判長にこの事件で何がおかしいかを説明したという。
「そもそもこの話を持ってくる人がいるわけです。暴力団関係とされる人が。その人も現場にはいた。
マツダという人がいた。この事件で10人捕まっているが、1人だけ捕まっていない。そのマツダは金属探知機を持ってきている。これは米軍で使っている高性能な金属探知機だから、ドラム缶は見つかるからすぐ掘り起こして、車に積み込めと。金属探知機を持ってきて、実行犯たちに使い方を教えているわけです。
そのマツダが突然いなくなるわけです。前々日、金属探知機を持ってきて、前日使い方を教えていて、当日現場にもいた。しかし、そのマツダだけいなくなっちゃう。
そのマツダが(強盗に入る)当日に乗って逃げるための車が置かれている。遺留品も全部残っている。わざわざ車を置いて、金属探知機持ったまま、どこか行っちゃう。
小山なんかで外に覆面パトカーが何台も待っていたのに、金属探知機を持って歩いていたら、すぐ捕まる。ところがそいつだけ捕まらない。その山間地のすぐ隣が栃木県警の官舎。栃木県警の官舎に歩いて行ったとしかどう考えても思えない。警察官かOBか協力者のそいつ(マツダ)だけ捕まっていなく、そもそも、いないことになっている。捜査ではそういうやつがいたということになっているが、マツダに関してまったく捜査されていない。一番肝心なやつなのに。金属探知機も見つかっていない」
寺澤氏は、こうした狂言強盗事件や、朝鮮総連(北朝鮮)などの事件は公安警察が絡んでいることから、「特定秘密保護法で事件の真相は全部隠蔽されてしまう。取材を進めていれば、すぐ逮捕できる。マツダが何者かを暴こうとすれば、特定秘密保護法に触れる可能性が高い」と指摘した。
(…会員ページにつづく)
安保法案閣議決定前後に自衛隊員へ配られた秘密のカードとは――ジャーナリスト寺澤有氏が隊員への取材で明らかになった事実を公開、秘密保護法で制約される取材活動の実態を指摘 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/250838 … @iwakamiyasumi
すでに政府は戦死者を想定している。
https://twitter.com/55kurosuke/status/618732549997592576