ヨーガインストラクターの千葉麗子氏とジャーナリストの烏賀陽弘道氏によるトークイベント「言論ギグ!」の第6回が1月8日(木)19時より、東京都港区六本木のバニラムードで行なわれた。
ゲストには、43人のフリー表現者と共に特定秘密保護法の違憲差し止め訴訟を起こすなど、報道の自由の重要性を訴え続けるジャーナリストの寺澤有氏と、約18年博報堂で勤務した経験をもち、「電通と原発報道――巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ」(2012年6月、亜紀書房)、「原発広告」(2013年9月、亜紀書房)などの著者でもあるジャーナリストの本間龍氏が招かれた。
- 出演 千葉麗子氏(実業家、ヨガ・インストラクター)、烏賀陽弘道氏(フリージャーナリスト、元朝日新聞記者)
- ゲスト 寺澤有氏(ジャーナリスト)、本間龍氏(ジャーナリスト)
謝礼金の行方は特定秘密か?
寺澤氏について、烏賀陽氏は「警察取材を大学生の頃からやっている。警察取材一筋30年というキャリア」と紹介。特定秘密保護法について寺澤氏が思いつくことは、警察組織ぐるみの裏金作りだという。寺澤氏によると、警察にはさまざまな分野に情報提供者がいて、帳簿上は警察から彼らに謝礼金が支払われたことになっている。
しかし、実際には謝礼金ではない犯罪を見逃すなどの取引きが情報提供者との間になされているケースが多いという。そして、謝礼金は警察官の私利私欲に使われているというのだ。寺澤氏は、そのような裏金で自分の家を建てる者もいると語った。特定秘密保護法が施行された現在、スパイ情報は特定秘密になることから、情報提供者の情報がこれに該当する可能性があり、前述のような裏金が作り放題になることを寺澤氏は懸念する。
SLAPP訴訟での戦い
話はSLAPP訴訟に及んだ。SLAPP訴訟とは、公的に声を上げたために民事訴訟を起こされる報復的な訴訟である。提訴された者は精神的にも経済的にもダメージを受けてしまう。烏賀陽氏は寺澤氏を「SLAPP被害者の草分け」だという。
2003年に消費者金融大手の武富士から名誉毀損で寺澤氏は訴えられている。寺澤氏は武富士と警察の癒着について記事を書いていた。損害賠償額は実に2億円である。寺澤氏は武富士に対して2億円の損害賠償で反訴している。武富士側から和解を求めてきたが、寺澤氏は9999万円の和解金を拒否し、武富士に1兆円請求したと語った。最終的には武富士側が請求を放棄している。
烏賀陽氏は、危機が顕在化した時点で書いても無駄で、危機が顕在化する前の段階で警告を発するのがメディアの仕事だと語った。
接待や天下りによる懐柔策の横行
民間企業と警察の癒着は、原発関連にも通じると寺澤氏は語る。警察関係から東京電力に天下りした人数について、「各省庁の中でダントツの天下り人数」だと、独自に調べた結果、判明したことを語った。 寺澤氏は、原発取材を通して原発立地付近で警察に尾行されたり、原発反対派の車だけ恣意的に駐車違反で取り締まっていたことなどを体験している。
烏賀陽氏は、「当時の武富士や電事連のようなお金持ちは、マスコミを買うことは全く可能である。広告を出すというのは新聞、週刊誌の取材の手を緩めてもらうということができてしまう」と述べた。警察にもマスコミと同様に、接待や天下りが横行して同じような構造を生み出していると指摘した。
続いてステージに上がった本間氏は、「広告はひとつの手段でしかない」と語る。寺澤氏は、地方新聞などは地元のことなので原発を取り巻く公にはされない事情を知っているが、支局長など上の地位の者が接待を受けているために記事にはできない現状があると指摘。烏賀陽氏は、「先回りして気遣いできる記者ほど、偉くなっていく」と話した。
露骨な弱者排除が顕在化
本間氏は、詐欺罪で逮捕・有罪になったことがあり、刑務所内での暮らしについて語った。