ヨーガインストラクターの千葉麗子氏とジャーナリストの烏賀陽弘道氏によるトークイベント「言論ギグ」の第3回が「六本木・バニラムード」で7月3日(木)に行なわれた。ゲストにはWトンチ博士でもおなじみの東京大学教授・安冨歩氏が招かれ、立ち見の参加者も出るほどの盛況となった。
(IWJ・松井信篤)
ヨーガインストラクターの千葉麗子氏とジャーナリストの烏賀陽弘道氏によるトークイベント「言論ギグ」の第3回が「六本木・バニラムード」で7月3日(木)に行なわれた。ゲストにはWトンチ博士でもおなじみの東京大学教授・安冨歩氏が招かれ、立ち見の参加者も出るほどの盛況となった。
記事目次
■ハイライト
冒頭、安冨氏は自身が唱えた東大話法について話した。福島第一原発事故における官僚や専門家などのコメントが欺瞞的で傍観的な発言だったことから、安冨氏は著書『原発危機と東大話法』(明石書店 2012.01)を執筆したという。
元朝日新聞に勤めていた烏賀陽氏、芸能事務所に所属していた千葉氏も、東大話法が自分の所属下で使われていたと明かした。1985年、プラザ合意の時期に住友銀行に入社した安冨氏は、80年代の終わりとその後で、日本の組織が加速度的に狂って行くのを目の当たりにしたという。
安冨氏は仮説を立てており、いざという時に的確に動く窓際族と呼ばれた人々が、「リストラによりいなくなったことは大きかったと指摘。また、以前は人事部が人事をせず、派閥のボスが人を見て継承者を選んで経営していたが、そうした派閥がなくなっていったという。安冨氏は、経営学者のピーター・ドラッカー氏が、派閥経営では冒険的な経営ができていたと指摘していることを紹介した。
この2つがなくなったことが、組織を狂わせた理由だと安冨氏は推察している。「表面的秩序を徹底することによって、構造的無秩序を作り出している」と指摘し、それが様々な業界でハラスメントや言葉のすり替えなどの問題を横行させていると説明した。
安冨氏は、構造的無秩序が日本社会全体を動かしている理由について、立場主義が作用していると考えている。立場主義とは、次の3つの倫理が作動しているものを指す。
1 役を果たすためには何でもしないといけない
2 立場を守るためなら何をしてもよい
3 人の立場を脅かしてはならない
これに関して烏賀陽氏は、高度経済成長期に経済のパイが拡大していた時は、立場を守っているだけでパイが膨らんでいったが、現在はパイが縮小しているため、「立場を守るだけでは取り分が減っていくのでは」と指摘した。これに対して安冨氏は、「経済が成長するのを止めると、立場の堅い者がパイを全部取るようになった」と説明した。
「これにより格差社会が生まれた。堅い立場の者は、国債や放射能の電気などでパイを守っている」
安冨氏はこう述べ、「みんなの立場が失くなり、最後に残っている立場が日本人だ」と分析した。
若者がネトウヨを支持するのは、ネトウヨが「日本人」という立場を提供しているからで、これにより堅い立場の者と立場を失った者が、今の安倍政権を支持しているという。続けて「今は日本立場主義人民共和国。問題は立場主義は30年前に終わっているところ」だと語り、基本的にはコンピューターの出現で、あらゆるもの、作業が自動化されたことにより、立場主義が役に立たなくなってしまったと解説した。
トークイベント後半は、打楽器奏者の片岡祐介氏による即興演奏で幕を開けた。
安冨氏は歴史学者・網野善彦の言葉を引用し、「無縁者」という家制度や公的な様々な有縁とは関係なく無縁の世界を作り出している人々が存在していることを紹介。無縁と有縁がバランスを取って、一つの社会を作り出し、人間の自由を確保していたという網野氏の指摘を解説した。
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