「この判決から、何か新しい対立軸が生まれる予感がする」──。
2014年5月23日、京都市内で行われた「緊急!Wトンチ博士のモーレツ!政治経済教室」では、5月21日に関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じる判決を下した福井地裁の判決文を巡り、意見が交わされた。安冨歩氏(東京大学教授)も平智之氏(前衆議院議員)も、判決文の正当性を重ねて強調、自身の良心に忠実だった樋口英明裁判長の勇気を称賛しつつ、「大いに気になるのは、今後の展開である」とした。
(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)
「この判決から、何か新しい対立軸が生まれる予感がする」──。
2014年5月23日、京都市内で行われた「緊急!Wトンチ博士のモーレツ!政治経済教室」では、5月21日に関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じる判決を下した福井地裁の判決文を巡り、意見が交わされた。安冨歩氏(東京大学教授)も平智之氏(前衆議院議員)も、判決文の正当性を重ねて強調、自身の良心に忠実だった樋口英明裁判長の勇気を称賛しつつ、「大いに気になるのは、今後の展開である」とした。
■ハイライト
「通常、裁判の判決文はこういう書き方はされない」——。安冨氏は冒頭で、こう強調した。「はじめに」で、理念がドンと明示されていることに驚いた、とのこと。「全体の論理構成も出色だ」とし、その判決文は、学術論文的な佇まいを見せていると話した。「論理的に、非常にわかりやすい内容だ。この判決文は、裁判長が自分の考えを表明したものと解釈できる」。
日本国憲法では、裁判長はその良心に従って独立してその職権を行い、この憲法および法律のみに拘束される、とされている。だが、安冨氏は、それは空言とし、「今の日本の司法制度には、憲法にそう書かれていることを、実践してはいけないという暗黙の了解が存在する」と苦笑する。「その良心は個人的なものでなく、職業的なものでなければならない。言い換えれば『裁判所』という集団的良心でなければならない」。
運転差し止めの判決文の論理が一貫していることが、樋口裁判長が自身の良心に従ったことを示す何よりの証拠、と訴える安冨氏。平氏がこれを、「判決文としては確かに特異だが、われわれ一般人からすれば、実に論理的に筋が通った判決文である」とフォローすると、安冨氏は「その点が、私にとっては実に衝撃的だった」と応じ、「平さんが(2012年6月に)亀岡でのコンポジウム(コンサート+シンポジウム)で、国会議員の立場で『原発はただちに止めるものだ』と演説されたシーンが、私の中に一気に甦った」と言及した。
平氏は、その直後に民主党を離党した。「当時の私の主張は、与党(民主党)の中では異端扱いされた。よって、私は離党せざるを得なかった」と説明した平氏は、「樋口裁判長は、司法の世界で自分と同じようなことをやったことになる」とも口にした。その上で、「控訴され、高裁に行った時に、どういう展開になるかが非常に気になる」と強調。安冨氏は「高裁の段階では、覆されると見るのが一般的」と語った。
安冨氏は、樋口判決について、いわゆる「良心的判決」が出されるのは、その裁判長が定年間際であるか、もしくは退職を覚悟しての場合がほぼすべてである、と指摘。樋口裁判長については、「定年間際とは言い難い61歳という年齢や、過去の実績などに照らすと、そのどちらにも当てはまらない印象があり、ちょっと不思議だ」との見解を示した。
(…会員ページにつづく)