「このスイカも、3分の1は原子力で冷やしたんだね」―。
これは、1985年7月14日に、東京電力が朝日新聞に掲載した広告である。3人家族の家庭で、一切れずつのスイカを食べようとしている画に、この文言が載せられている。約18年間、博報堂に勤めた本間龍氏は、このような「原発広告」を次々と披露していった。
2013年9月14日、TKP 有楽町ビジネスセンターで、グリーンピース・ジャパンとTHE PRESS JAPAN共催のトークイベント「史上最悪のプロパガンダ ~メーカー責任と原発広告~」が行われた。作家の本間龍氏がゲストとして迎えられ、グリーンピース・ジャパン事務局長の佐藤潤一氏とともに講演した。
本間氏は、9月25日に発刊予定の新著「原発広告」を紹介し、「日本国民は『原発はクリーン』、『原発はコストが安価』という刷り込みがされている。広告がその刷り込みをやってのけたのでは」と、広告が国民に与え続けた「原発安全神話」について語った。
- 出演 佐藤潤一氏(グリーンピース・ジャパン事務局長)
- ゲスト 本間龍氏(元博報堂、作家)
注ぎ込まれた巨額の普及開発関係費
加えて本間氏は、電力会社の普及開発関係費、いわゆる宣伝広告費に着目し、1979年のスリーマイル事故、1986年のチェルノブイリ事故などの原発事故直後に、この普及開発関係費が伸びていることを指摘。本間氏は、「言い方は悪いが、電力会社がマスコミに、お金をばら撒いたといえる」と分析した。
3.11以降、ピタリとやむ「原発広告」
1965年の東京電力の普及開発関係費が7億6千万円であるのに対し、震災前年の2010年の普及開発関係費は、269億円まで膨れ上がっている。注目すべきは、2011年の普及開発関係費が57億円まで減少していることだ。本間氏は、「以前はネットでも『原発広告』を見られたが、3.11以降、ネット上からはほとんど見られなくなった」と東日本大震災以降、「原発広告」が削除されている実態を明らかにした。
問われる原発メーカーの責任
佐藤氏は、原発メーカーの責任について講演。原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)の第4条1項に、「損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない」と明記されていることに言及し、電力会社以外に原発事故の賠償責任が伴わないことに異議を唱えた。