2020年東京オリンピック・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場建設問題が揺れている――。
下村博文文科相は2015年5月18日、新国立競技場建設計画を見直す方針を明らかにした。開閉式屋根の設置を大会後に見送り、8万人収容のスタンドの一部を仮設に変更するという。新国立競技場は、当初のザハ・ハディド氏のデザイン案から規模を縮小させていたが、建設費を抑えるために、さらなる計画の変更を余儀なくされたかたちだ。
新国立競技場建設のための予算は、当初は1625億円だったが、ザハ氏のデザイン案通りに作ると3000億円まで膨らむことが判明。これを受け、文部科学省は、ザハ氏によるデザインのテイストを残しつつ、総工費1692億円で建設できるよう、大幅に計画を修正した。
さらに下村文科相は、東京都に対し、580億円の負担を要求。これに対して舛添要一都知事が反発すると、都が負担する根拠法を作る意向を示した。下村文科相によるこうした強引な進め方に対し、舛添知事は定例の会見で「協力は惜しまないが、税金を払うのは都民。もっと情報を開示してほしい」と述べるなど、両者の溝は深まっている。
今回の大幅な計画見直しによって、莫大な建設費の問題が改めて注目を集めたが、新国立競技場の建設をめぐっては、これ以外にも、環境への影響や、景観とのミスマッチなど、建築家を中心に様々な問題が指摘されてきた。
新国立競技場の問題に取り組んでいる市民団体「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」の共同代表である作家の森まゆみ氏は、6月20日に岩上安身のインタビューに応じ、「新国立競技場を作るのではなく、既存のスタジアムを改修して活用すべきだ」と述べ、神宮外苑の景観や環境に負荷のかからないオリンピックを目指すべきだと主張した。
インタビューでは、過去のオリンピックで使われ、今は廃墟と化してしまった海外のスタジアムの事例も振り返りつつ、リーズナブルで環境にやさしい、市民にとってよりよいオリンピックのあり方を模索した。
- 日時 2015年6月20日(土)14:00〜
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
下村博文文科相と舛添要一都知事が対立~どうなる、新国立競技場
岩上安身(以下、岩上)「本日は、『神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会』共同代表である森まゆみさんに、新国立競技場の建設問題についてお聞きします。街をウォッチングしてきたプロである森さんに、景観の問題や、建設費の問題などについて、お聞きしたいと思います。
まず、今何が起きているのか、ということを押さえておきたいと思います。5月18日、下村博文文科相が、新国立競技場の計画を見直す方針を明らかにしました。開閉式屋根の設置を2020年オリンピック後に先送りした他、8万人収容のスタンドの一部が仮設に変更されます。また、国は、東京都に580億円の負担を要請しました。
そして、下村文科相は、『東京都が負担する根拠法を作る』と言い出しました。これは、非常に強引なやり方ではないでしょうか」
森まゆみ氏(以下、森・敬称略)「舛添知事は、2016年の招致にも2020年の招致にも関係していなかったので、こういうことを言えるのだと思います」
「建設計画の白紙撤回を!」~「新国立競技場現行案に対する緊急市民提言」とは
岩上「森さんたちが出した『新国立競技場現行案に対する緊急市民提言』について、ご説明いただきたいと思います」
森「まず、現行案をあきらめること。ザハ案には技術的困難があります。あのような狭い場所で、どのようにしてキールアーチを作るのでしょうか。また、維持費も非常に高くかかります。前の国立競技場は5億円で済んだのに、新国立競技場は35億円かかる、と言われています。さらに、20年たったら、改修費が1000億円かかります。2050年には、東京の人口が半減すると言われていますから、負担が大変です。
次が、過去の競技場を指針とすること、です。神宮の内苑と外苑は、明治天皇を偲ぶよすがとしてできたという、歴史的文脈があります。そのため、1924年に作られた神宮外苑競技場と1958年の国立競技場は、環境に負荷がかからない、適切な規模で作られました。
3つ目が、アスリートやスポーツ関係者の意見を集約すること。競技場は『アスリート・ファースト』であるべきです。なのに、今回は選手の意見を聞かず、先にデザインを決めてしまいました。JSC(日本スポーツ振興センター)は、選手団体にお金を出している組織なので、選手が声を上げられないのではないでしょうか」
岩上「デモは、明治公園がスタート地点になりますね。そこが、この新国立競技場の建設によってつぶされてしまう、ということになりますね」
森「さらに、今ある都営住宅を潰してしまいます。しかし、住んでいる人には、何の相談もありませんでした。
私たちは、新国立競技場ではなく、他の場所にある既存のスタジアムを改修して活用することもあり得る、と思っています。横浜の日産スタジアムや、浦和の埼玉スタジアム、調布の味の素スタジアムも使えますよね。予定地は、森に戻すのがよいのです。
東京は2016年の招致に失敗してから、本当はやる気がなかったそうです。そこで、森喜朗元総理が2019年のラグビー・ワールドカップを取って、そのためにスタジアムが必要だということで、2020年の立候補に動き出した、と言われています。
2013年8月15日に、建築家の槇文彦氏が論文を発表したことをきっかけに、建築界で新国立競技場を問題視する声が上がり始めました。ザハ・ハディド氏が選ばれたコンペも、正当なものではないのでは、という指摘があります。
設計費も90億円と言われています。建築家の方に話を聞くと、高すぎると。解体された国立競技場は本当に見晴らしの良い立地。木を植えれば良い公園になる。安藤忠雄さんは神戸の震災後や東京湾岸で木を植える活動をしているのに、なぜここでは木を切るのか。
神宮外苑では多くの木が伐採されました。国立競技場自体も、7億円かけて改修工事もしたのに、なぜ解体するのでしょうか」
「ホワイトエレファント」~廃墟化した競技場
計画見直しで揺れる新国立競技場建設問題、「ザハ案はあきらめ、既存のスタジアムを改修して活用を」~街をウォッチするプロ、作家の森まゆみ氏が岩上安身のインタビューで提言 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/250027 … @iwakamiyasumi
五輪は癒着と汚職の祭典と化している。
https://twitter.com/55kurosuke/status/619111325210292224