新国立競技場をめぐり、建築家の槇文彦氏らが会見とシンポジウム開催 都の「7月解体」計画に疑問の声 2014.4.23

記事公開日:2014.8.28取材地: テキスト動画
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(IWJ・松井信篤)

特集 新国立競技場問題
※ 本記事は、2014年4月27日にアップした記事を再掲したものです

 2020年東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設計画に反対する建築家の槇文彦氏や、市民グループ「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」共同代表の森まゆみ氏ら6人が4月23日、東京都内で会見し、現在の国立競技場の取り壊しの延期や、新国立競技場における練習用のサブトラック設置計画の見直しなどを求める要望書を、近く文部科学省と東京都に提出することを明らかにした。

■ハイライト

  • 出席 槇文彦氏(建築家)、大野秀敏氏(建築家、東京大学教授)、古市徹雄氏(建築家)、元倉眞琴氏(建築家)、陣内秀信氏(建築史家、法政大学教授)、森まゆみ氏(作家、神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会共同代表)
  • 日時 2014年4月23日(水)
  • 場所 日本建築家協会・建築家会館JIA館1階建築家倶楽部(東京都渋谷区)
  • 主催 『新国立競技場、何が問題か』出版記念シンポジウム実行委員会

不明瞭な点が多い東京都のサブトラック計画

 新しい国立競技場を作るにあたり、以前から陸上競技に必要な練習用のサブトラックを、どこに設置するかが重要な問題の1つとして浮上していた。東京都は「国立競技場の建設に関する環境アセスメントに対するパブリックコメント」を募集、新国立競技場のサブトラックの配置場所として、聖徳記念絵画館の前庭を使うという計画を提示した。

 この計画について、建築家で東京大学教授の大野秀敏氏は、「短期間のパブリックコメントで、みなさんが知らないうちに承認の過程に入っている。極めて大きな問題だ」と述べ、東京都が提示した計画図は拙速なものだと切り捨てた。森氏が都の準備局に問い合わせたところ、「この図をいつ、誰が描いたのかわからない」などといった回答があったという。

また、東京都のウェブサイトで、この案件のパブリックコメントに辿り着くのに苦労するほど隅に書かれていることから、「都が既成事実を作ろうとする意図が見え隠れする」といった意見も出された。サブトラックが、依然として仮設か本設かという点についても明らかではないことも含め、このサブトラック計画には不明瞭な点が多い。

外苑の歴史的重要性

 以前より新国立競技場の建設案に懸念を示していた槇氏は、「内苑と外苑は明治天皇崩御の際に記念として造るという根幹がある。当時作った方は、誇りとして長く保存していくべきだとはっきり言われている」と述べ、外苑という土地が民間有志らの嘆願で整備された、歴史的にも重要な場所であると指摘した。

 建築史家の陣内秀信氏も、この一帯はバロック様式的な「造園と建築と都市計画と土木の集大成が全体を一体とした空間」と説明し、新国立競技場のような巨大な建築は、周囲の自然や歴史を破壊し、歴史的価値を傷つけるものだと主張した。

 また、7月から現競技場の解体が始まる中で、新国立競技場の基本設計は依然としてまとまっていないと大野氏は指摘。一部の専門家からは、現競技場を改修しても使えるのではないかとの声もあり、解体後では取り返しがつかない事態が起こる可能性もある事から、基本設計が了承された後に取り壊しを始めるべきだと訴えた。大野氏らは、解体時期の見直しを求め、関係各局に要望書を提出する予定だという。

実は存在した国立競技場改修案

(…会員ページにつづく)

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