自民党行政改革推進本部は9月25日(木)、多方面から問題が指摘されている新国立競技場建設の問題について、文部科学省と日本スポーツ振興センター(以下、JSC)から説明を受け、有識者との意見交換を自民党本部で行なった。
(IWJ・松井信篤)
特集 新国立競技場問題
自民党行政改革推進本部は9月25日(木)、多方面から問題が指摘されている新国立競技場建設の問題について、文部科学省と日本スポーツ振興センター(以下、JSC)から説明を受け、有識者との意見交換を自民党本部で行なった。
■イントロ ※中継不可のため、ペン取材のみとなります(動画は冒頭部分)
JSCの山崎雅男・新国立競技場設置本部長は、現在、新国立競技場が実施設計の段階に入っており、2019年3月に完成すると報告。
新競技場がコンペ時に選ばれたものより縮小されたデザインに変更されていることについて、デザインをしたザハ・ハディド氏は了解しているという。デザイン監修料は約13億円となっており、すでに支払われているようだ。
有識者として出席した建築エコノミストの森山高至氏は、契約書の公開とハディド氏の責任範囲、監修料である13億円の根拠に対する説明をJSC側に求めた。自民党行政改革推進本部長の河野太郎衆議院議員からも、公の国費を使うものだから「公開するように」とJSCへ要請があった。
グラウンド設備に関しては、南側に高透過な素材やグローイング・ライトの導入、芝生育成に必要な通風のために大型扇風機を導入したり、補助システムとして地中温度制御や土壌空気交換なども行なわれる。また、年2回の芝生の張り替えも計画されているとJSCから説明があった。
ザハ案に早くから警鐘を鳴らしていた建築家の槇文彦氏のグループからは、総合計画事務所代表の中村勉氏が有識者として出席。中村氏は、槇グループとしての質問を読み上げ、人口通風装置の運転費や南面透過ガラスの初期費用の高騰、その後のメンテナンスコストや室温上昇の懸念などを示した。
JSC側は、近隣への遮音について、スタンドによる遮蔽と天井部分の膜が設置されることにより、現状の競技場と比べると15~20dB程、遮音性能が向上するとシュミレーションしている。観客席には伸縮型可動スタンドを採用して、様々なスポーツやイベントに対応するフレキシブルな空間になるという。開閉式遮音装置(屋根)に関しては、積雪荷重が平地において積雪深30cmに設定されており、膜材には屈曲性に富むC主膜が採用されている。
しかし、C主膜に関して中村氏は、不燃材料ではなく、耐久性も弱く、遮音性能も低いと指摘。さらに、7~10年でC主膜は取換えが必要であり、取換えに必要な仮説足場コストの費用、期間も含めて非常に高額だという。
新国立競技場の概算工事費は、2013年7月時点の単価による概算で、合計1625億円となっている。改築後50年間に必要な大規模改修費の試算は約656億円である。収支見込みは3億3000万円の黒字となっているが、修繕費は収支計画に含まれていない。
この収支は一般勘定において法人内の他の事業(代々木体育館、国立スポーツ科学センター、味の素ナショナルトレーニングセンター)とが経理上一体となっている。これに対して河野氏は、区分経理を求め、加えて国から運営費交付金や施設整備費補助金等は措置されない独立採算でのランニングコストを計上して、「明確に黒字になる区分経理をしていただかなければ困ります」と述べた。
中村氏は景観環境について、周辺の森は工事でほとんど伐採され、明治公園の森は人工地盤で壊滅すると指摘。建設費に関しても、現在の建築市況が高騰しており、全体工事費は2000億円を超えると予測した。
一方、この工事費について、競技場コンペの専門アドバイザーを務めた東京工業大学名誉教授で前日本建築学会会長の和田章氏は、「1900億とか確かに大金ですけど、オリンピック・パラリンピックの4週間は全国民がエンジョイする。1億人で割れば1人1900円です。一週間飲みに行けば家族分ぐらいは使っている。ちまちまケチることはない」と見解を述べたが、河野議員は「社会保障費をどうやって切り詰めるかという議論をしている時ですから、オリンピックだからお金をいくらかけてもいいという議論は慎んでいただきたい」と苦言を呈した。
(…会員ページにつづく)