「プロサバンナ事業のドラフト(草案)は、大豆や綿花、トウモロコシなどの換金作物に重点を置き、輸出重視が明白だ。安全保障の観点からも、自国の食料自給が蔑ろにされているのは問題。また、自由耕作地を作り、投資家を呼び込もうとしている」──。モザンビーク全国農民連合(UNAC)のヴィセンテ・アドリアーノ氏は、このように訴えた。
2015年6月8日、東京・千代田区のフォーリンプレスセンターにて、「日本政府開発援助(ODA)『プロサバンナ事業』に関するモザンビーク、ブラジル、日本3ヵ国市民社会緊急共同声明発表&現地調査報告」が行われた。
プロサバンナ事業とは、正式には「日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発プログラム」という。東アフリカのモザンビーク北部地域を対象にした、ODAによる大規模な農業開発事業で、1970年代に日本がブラジルで行なった同様の開発事業を成功モデルに、日本とブラジルが連携してモザンビークで実施するものだ。
しかし、プロジェクトの意思決定プロセスの不透明さや、現地農民の主権が蔑ろにされるなどの問題点が指摘されており、2012年10月、モザンビーク全国農民連合が、事業の透明性、情報開示不足、小農民・市民団体の排除、アグリビジネスによる環境破壊などに基づく声明を出している。その後、2013年からドラフト策定に入っていたが、2015年4月に突然、改定案が公表され、現地では矢継ぎ早に公聴会が開催されるなど、急な展開を見せている。
今回、現地公聴会に参加した日本国際ボランティアセンター(JVC)の渡辺直子氏は、反対農民への弾圧や公聴会への参加妨害なども多く見受けられたとし、「正しいプロセスでの開催ではなく、私たちの危惧が現実化していた」と報告した。
さらに渡辺氏は、「こういうプロセスを許すことは、モンザビークにおいて(悪しき)前例となる。民主主義にも反し、誰が援助の対象なのかも不透明で、援助国のブラジルと日本の責任が問われる。今回の声明は、モザンビーク全国農民連合の『公聴会の無効化』の呼びかけに連帯するために、日本、ブラジル、モザンビーク3ヵ国の市民の共同声明となった」と述べた。
会見では、大企業のアグリビジネスへの進出で、何百万人もの小農民が土地収奪を受けたブラジルの例がビデオメッセージで語られた。また、国際電話を使って、モザンビーク全国農民連合からの報告や質疑応答も行なわれた。
- 現地調査・公聴会参加報告 渡辺直子氏(日本国際ボランティアセンター)
- ブラジル農民代表によるビデオメッセージ ジルベルト・アフォンソ・シュナイダー氏(ブラジル小農民運動)
- モザンビーク全国農民連合(UNAC)代表による3カ国共同声明発表
- 質疑応答 ヴィセンテ・アドリアーノ氏(モザンビーク全国農民連合)、オリンダ・クーナ氏(モザンビーク環境NGOリヴァニンゴ)
- 日時 2015年6月8日(月) 15:00~
- 場所 フォーリンプレスセンター(東京都千代田区)
突然、公表されたプランと急な公聴会の開催
はじめに、恵泉女学園大学教授でODA改革ネットワーク世話人の高橋清貴氏が、「モザンビーク北部における、日本、ブラジル、モザンビーク3ヵ国による大規模農業開発事業プランに反対する現地の市民活動に連動し、日本の市民団体も外務省と意見交換を行なってきた」と述べ、これまでの経緯を報告した。
2013年1月25日の1回目の意見交換会において外務省は、「本事業は小農民のためで、現地農民との対話を行なう」としていたが、2年後の2015年3月、突然、修正されたマスタープランを公表。そして翌4月には、直前の事前告知だけで現地で公聴会が行われた。
高橋氏は、「これに対する現地農民の憤りはとても強く、世界の73団体が共同声明を発するに至った」と説明した。
行政官が「これは政府事業、反対は受け入れられない」
JVCの渡辺直子氏は、「プロサバンナ事業は、『種などの環境開発(プロサバンナ-PI)』『事業の青写真を描くマスタープラン作り(プロサバンナ-PD)』『モデル策定(プロサバンナ-PEM)』の3事業で構成される。今回、モザンビーク北部3州(ナンプーラ州、ニアサ州、ザンベジア州)で、それぞれ10日間、マスタープラン作りに関する公聴会が開催された」と話し、自身が現地で参加した公聴会のスライドを見せて、このように続けた。
「公聴会には、与党党員、行政関係者、トレーダーなど、事業の賛同者の出席が多く、小農民がきちんと参加できていたのかが疑われた。また、小農民の参加数の規制、突然のスケジュール変更、偽情報による参加妨害などもあった。
モナポ郡長が、『これは政府事業で、反対は受け入れられない』と公聴会で語るなど、反対勢力を牽制する言動も多く見られた。正しいプロセスでの開催ではなく、私たちの危惧が現実化していた」
現地では小農家への脅迫も始まった
一方、小農民からの反対意見が発せられた公聴会では、大資本による土地収奪、政府の強引なやり方などを批判する声が多く上がっていたという。
小農家たちの参加がなければ公聴会の意味がない、と断じた渡辺氏は、「現地では、すでに政府筋による小農家への脅迫行為も始まっている。今後、公聴会は州、国レベルと続くが、モザンビーク政府と日本政府は『事業はうまくいっている』と宣伝している。また、外務省・JICAによる議員へのブリーフィングでも、『議員たちは事業の促進を望む』との報告がされている」と語った。
さらに、「小農のための事業と言いながら、こういうプロセスを許すことは、モンザビークにおいて(悪しき)前例となる。民主主義にも反し、誰が援助の対象なのかも不透明で、援助国のブラジルと日本の責任が問われる。今回の声明は、モザンビーク全国農民連合の『公聴会の無効化』の呼びかけに連帯するために、日本、ブラジル、モザンビーク3ヵ国の市民の共同声明となった」と述べた。
ブラジル「緑の革命」で小農家は崩壊
モザンビークでの日本のODA急展開に不安の声 「民主主義に反し、援助対象も不透明。日本の責任が問われる」 〜プロサバンナ事業に関する3ヵ国市民緊急共同記者会見 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/248418 … @iwakamiyasumi
日本政府が言う「丁寧な対話」は現地にはない。
https://twitter.com/55kurosuke/status/615987237763747840
モザンビークでの日本のODA急展開に不安の声 「民主主義に反し、援助対象も不透明。日本の責任が問われる」 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/248418 … @iwakamiyasumi
何百万人もの小農民が土地を奪われたブラジルのようになるのは目に見えている。大企業による植民地主義を後押しするのが日本の国際貢献なのか。
https://twitter.com/55kurosuke/status/1003237167399723014