2013年2月26日(火)10時から、北海道札幌市の北海道大学農学部で「緊急来日 モザンビーク農民組織によるセミナー@北海道大学」が行われた。アウグスト・マフィゴ氏は、モザンビークで行われようとしている大規模農場開発に対して危機感を表明するとともに、「農民が本当に求めていることは、自分たちの食料を自分たちで育てることである」と訴えた。
※一部音声が聞き取りにくい場面がございます。何卒ご了承ください。
(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)
特集 TPP問題
2013年2月26日(火)10時から、北海道札幌市の北海道大学農学部で「緊急来日 モザンビーク農民組織によるセミナー@北海道大学」が行われた。アウグスト・マフィゴ氏は、モザンビークで行われようとしている大規模農場開発に対して危機感を表明するとともに、「農民が本当に求めていることは、自分たちの食料を自分たちで育てることである」と訴えた。
※一部音声が聞き取りにくい場面がございます。何卒ご了承ください。
■全編動画
TPPを考える市民の会共同代表のレイモンド氏が冒頭、挨拶に立った。レイモンド氏は「プロサバンナ事業とは、日本とブラジルの政府が共同して、モザンビークの1400万ヘクタールという広大な農地を開発し、安い農作物を輸出する事業である。この事業が実現されると、その土地の人々を養っている自給的な農業が破壊されていくことになる」と警鐘を鳴らした。その上で、「食料主権とは、市民の取り組みの中で、国際的に広く使われるようになってきた言葉。市民が自分たちの食べる食料が、どこで、どのように作られ、そしてどのように分かち合われているかということを、主権を持って自ら判断し、コントロールするという意味である。現在、その重要性が増してきている」と語った。
マフィゴ氏は、モザンビークについて「小農による農業をベースにした国で、人口の7割以上は農村部に暮らしている。近年、農業分野における民間投資の大量流入が起こっているが、これは食物を作る投資ではなく、バイオディーゼル作物や商業植林という、食べられない物を作る農業分野の投資であり、この投資により小農の生活の場が奪われている。こうしたことが、農村部から都市部への人口流入につながっている。そして、2010年の絶対的貧困は人口の52%に達する一方、国内の耕作地の9割を使う小農に対する投資と政府によるサポートは、非常にわずかである。そのため、食料安全保障の問題が生まれ、社会的な地位の格差が広がり、飢餓が深刻になっている」と現状を説明した。
続けて、「プロサバンナ事業は、ブラジルで行われた事業と類似点がある」と話し、「その事業は大豆、とうもろこし、さとうきびの生産を20万ヘクタールもの農場で行う、植民地的な農業生産であり、大規模な機械を使い5000ヘクタールをたった2人で耕作するものである」と説明した。さらに、「ここで生産されているのは遺伝子組み換え作物であり、虫などの問題が生じた時には飛行機で農薬を撒く。 例えば、この農場の隣に小農があると、そこにも農薬が飛散してきて、自分の農業ができなくなる。小農が生き残れない地域が作られていくことになる」と、小農が消えていくことを危惧した。
このような事業に危機感を持ったモザンビーク全国農民組織は、声明を発表している。その内容について、マフィゴ氏は「ブラジルの経験から、プロサバンナ事業は小農にとってネガティブなものであり、破滅的である。現在、食料の問題に直面しているこの国が、必要としている事業ではない。私たちが求めているのは、自分たちの食料を、自分たちで育て、暮らしを充実させることである」と説明した。そして、日本へのメッセージとして、「日本の小農とモザンビークの小農が、連携してお互いの技術を伝え合うような支援を求めたい」と述べた。