【検証レポート】2015年1~2月、岩上安身が北の大地で倒れるまでの道程~IWJスタッフあてメールも検証。「心臓の動脈の痙攣」を引き起こしたストレス、過労の実態と、追い打ちをかけた「世界の危機」の正体 2015.3.5

記事公開日:2015.3.5 テキスト
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(本文記事:原佑介、ぎぎまき リサーチ協力:平山茂樹)

 IWJ代表・岩上安身が2月21日(土)に、取材先の北海道・帯広で体調不良を訴え、深夜の病院に緊急搬送されて以降、皆様には多大なご心配、ご迷惑をおかけしています。

 「冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)」の発作であると診断を受け、一晩を北海道の集中治療室で過ごした翌日、早朝から追加検査を重ね、無事、その日に退院ができたものの、今も心臓に爆弾を抱えている状態であることに変わりはありません。冠攣縮性狭心症という発作は、急性心筋梗塞や突然死と無関係ではないと、近年、注目されてもいます。

 と、わかったようなことを書きましたが、にわか勉強です。そして、私たちスタッフだけでなく、当の本人の岩上さん自身が、狭心症について、倒れるまで何も知りませんでした。

 岩上さんは、数年前から高血圧と診断され、内科医に指示されて、血圧を下げる降圧剤をのみ続けていました。病院通いをしていますから、不調があればその都度、心電図をとったり、採血したり、検査も受けてきましたが、今まで一度も心臓でひっかかったことがなかったそうです。

 高血圧が続くと、心臓の病気や脳梗塞などのリスクが高まる、という漠然とした忠告しか耳に入っていなくて、我が身に突如、「心臓の動脈の痙攣」というかたちでふりかかるとは、まったく予期していなかったそうです。だから、予備知識もなし。カテーテルを入れてから、やっとわかったそうです。すべてが不意打ちでした。

 本人にとっても、不意打ちだったのだから、スタッフにとっても不意打ちでした、ですませられそうなものですが、そうではないだろうと考えたのが、北海道に同行していて、倒れた岩上さんの顔色を見て、救急車を呼んだ、原佑介でした。

 彼は、岩上さんに付き添い、病状をつぶさに見て、スタッフにその様子を伝えてきた貴重な証言者です。たぶん、症状が現れた時の深刻さは、誰よりも一番よくわかっています。

 その彼が、誰に言われるでもなく、ここ2ヶ月の岩上さんのツィートやスタッフあてに書いたメールなどを収集して、並べ、その頃、何が起きていたかを書き加える作業をはじめました。

 たぶん、彼は、帯広での発作を点としてとらえるのでは、岩上さんがどうしてこうなったのか、自分たちも理解できない、という思いがあったのだと思います。

 私たちスタッフも、つくづく反省しなくてはいけませんが、岩上さんに過剰な負担がかかり、過労になっていること、たびたび体調不良を訴えていることを耳にしながらも、深刻に受け止めずにきてしまいました。弁明めいた言い方になりますが、私たち自身も余裕がなさ過ぎて、受け止めきれなかった、というのも実情でした。

 それじゃいけないと、原佑介が、これまでの流れをふりかえり、平山茂樹が時事的な出来事を加筆して、検証したのが、本稿です。IWJを支えてくださっている方々への報告であると同時に、何よりも私たち自身にとって必要な検証作業でした。

 これまで、日刊IWJガイド等で、岩上さんの近況については繰り返しお知らせしてきましたが、この稿では、今回の狭心症による発作に至るまでの一連の流れを整理し、時系列ごとに、世界で起こった諸問題と重ね合わせて、まとめてあります。

 これを読むと、岩上さんが倒れるには明確な「流れ」があったことがわかります。まず、身体の不調を訴えながらもこなしてきたインタビューの本数と内容に驚愕します。それに加え、宮城や北海道への遠征出張、経営者としての日々の膨大な実務がこの上にのしかかっていたわけです。

 なぜ、ここまで騙し騙し、身体を酷使してまでも、岩上さんは走り続けてきたのか。

 1月に入ってからフランスで起きた「シャルリ・エブド襲撃事件」や、沖縄・辺野古新基地建設をめぐる、市民と機動隊の衝突、20日にはイスラム国による邦人人質事件が起こり、年明けから、世の中は待ったなしの毎日でした。胸を圧迫するような事態や事件が、連日、国内外で発生するのとリンクするように、岩上さんの体調もみるみる悪化していきました。

 そのプロセスが手に取るように分かるこの検証レポートは、読んでいて具合が悪くなる方もいるかもしれませんが、2015年という激動の年の冒頭6分の1の貴重なドキュメントとしてもお読みいただけると思います。また、岩上安身という人の生き様の記録でもあります。ぜひ、ご一読をお願いします。

岩上さんが倒れなくても済むような世の中がくると信じたいと思います!

2015年、年明け早々、怒涛の日々

 振り返れば、2015年は、まだ2ヶ月しか経っていないというのに、怒涛の日々の連続でした。

 年が明けてすぐの1月7日、フランス・パリでは、「シャルリ・エブド襲撃事件」が発生。沖縄では辺野古新基地建設をめぐり、市民と機動隊、海上保安庁の間で激しい衝突が繰り返されました。そして1月20日には「イスラム国(IS)」が湯川遥菜さんとジャーナリストの後藤健二さんを人質に、身代金を要求するビデオメッセージを公表。日本中に衝撃が走りました。

 この時、岩上さんは、我々周囲のスタッフには、「パリの事件と今回のISによる人質事件は、ひとつながりでつながっている」と話し、取材やリサーチの指示を出しています。

 岩上さんはすぐに東京大学名誉教授・板垣雄三さんに電話取材し、「『はめられた』安倍総理の決定的な政治的ミス! 〜イスラエル国旗と日章旗が並ぶ前で、『イスラム国との戦い』を事実上宣言」と題した記事を発表( 「はめられた」安倍総理の決定的な政治的ミス! 〜イスラエル国旗と日章旗が並ぶ前で、「イスラム国との戦い」を事実上宣言 2015.1.21)。記事は瞬く間に拡散しました。

 さらに翌日からは、全国を飛び回り、イスラム世界の専門家へインタビューを重ねました。

・20日〜 午後3時前、「IS」による人質殺害予告事件発生

21日〜元内閣官房副長官補・柳澤協二氏インタビュー( 2人の邦人の命を救うため、イスラム国を挑発した張本人、安倍首相が「辞任」することを提案~ 岩上安身による緊急インタビュー 第505回 ゲスト元内閣官房副長官補・柳澤協二氏 2015.1.21
21日〜放送大学教授・高橋和夫氏インタビュー( 「安倍政権の外交についていくなら、覚悟が必要だ」――邦人人質事件は「やがてきた道」か!? 放送大学教授・高橋和夫氏が岩上安身のインタビューでイスラム国の真の狙いに迫る~ 岩上安身によるインタビュー 第506回 ゲスト 高橋和夫氏 2015.1.21
22日〜元在シリア大使・国枝昌樹氏インタビュー( 「今は、政府の交渉を全面的にバックアップすべき時」 イスラム国邦人殺害予告事件について、岩上安身が元在シリア大使・国枝昌樹氏に聞く~ 岩上安身によるインタビュー 第507回 ゲスト 国枝昌樹氏 2015.1.22
24日〜桜美林大学教授・加藤朗氏インタビュー( 衝突する米国発のグローバリゼーションとイスラム世界 「近代国民国家」から「グローバル・リヴァイアサン」へ~岩上安身によるインタビュー 第508回 ゲスト 桜美林大学教授 加藤朗氏 2015.1.24
24日〜東京大学名誉教授・板垣雄三氏インタビュー( イスラム国による邦人殺害予告事件、その背景に日本とイスラエルとのかつてない異常接近~岩上安身によるインタビュー 第509回 ゲスト 東京大学名誉教授・板垣雄三氏インタビュー 2015.1.24

・24日〜午後11時過ぎ、「IS」が湯川氏殺害ビデオを公表

25日〜ジャーナリスト・志葉玲氏インタビュー( 「米軍がシーア派を使いスンニ派を虐殺。そのスンニ派から生まれたのがイスラム国」イラク戦争の傷あとから立ち上がった怪物・イスラム国の正体 ~岩上安身によるインタビュー 第510回 ゲスト 志葉玲氏 2015.1.25
26日〜京都大学教授・岡真理氏インタビュー( 「今度は、日本がガザを殺す立場になる」日本とイスラエルの協調姿勢を糾弾、「暴力の根源」を探り解決を見出す必要性 ~京都大学教授・岡真理氏に岩上安身が聞く~岩上安身によるインタビュー 第514回 ゲスト 岡真理氏 2015.1.26
31日〜元外務省国際情報局長・孫崎享氏インタビュー( 「政府にとって一番重要なのは西側(アメリカ)との連携」人質解放が優先ではなかった!? 安倍政権の対応「真剣に検証を」 元外務省国際情報局長・孫崎享氏に岩上安身が聞く~岩上安身によるインタビュー 第513回 ゲスト 孫崎享氏 2015.1.31

・2月1日〜早朝5時頃、「IS」が後藤氏殺害ビデオを公表

2月2日〜元経産官僚・古賀茂明氏インタビュー( 日本が「戦争なしでは生きられない国」になってしまう――岩上安身が元経産官僚・古賀茂明氏に聞く~岩上安身によるインタビュー 第515回 ゲスト 古賀茂明氏 2015.2.2

 この間にも、「IS」関連以外のインタビュー、例えば1月28日には、『資本主義の終焉と歴史の危機』の著者である水野和夫・日本大学国際関係学部教授へインタビューなども行っていました( 機能不全に陥った資本主義 「フロンティア」なき時代、私達はどのような社会を作るべきか ~岩上安身によるインタビュー 第511回 ゲスト 日本大学国際関係学部教授 水野和夫氏 2015.1.28)。

 水野先生は、日本の利子率が最低水準で推移していること(日本に続いて米欧も)、これはいくら投資をしても儲からないことを意味し、飽くなき儲け=利潤を追求しようとする資本主義が400年ぶりに行き詰まりに至ったのではないか、と指摘されました。

 需要がないとは、資本も蓄積し、インフラも整備し、経済も成熟した証拠なのだから、あとは過剰な儲けを追求せずに穏やかに社会を営むべきだ、と提案されます。

 しかし、岩上さんは、このインタビューの時に、需要がなくなり、儲けが出ないなら、戦争によって破壊してまでも、需要を生み出そうとするのではないか、と懸念を示しました。

 現在進行形で進んでいる事態は、まさに通常の民生中心の経済では利益がでないから、と、ごり押しで戦争経済へと舵を切ろうとするような、恐ろしい事態です。

 こうしたことに気がついてしまう、というのは、ジャーナリストとして、必要な資質に違いありませんが、神経は常に休まらなかったことでしょう。

 また、インタビューだけではなく、裏では原稿の執筆、スタッフへの指示出し、人事、経営…ジャーナリストとしてだけではなく、経営者として、さまざまなハードワークを重ねに重ねていました。

 あまりの激務から、2月初旬には咳が出るようになり、持病の腰痛も悪化し始めていました。

 誤解を呼んではいけないので、先に断っておきますが、岩上さんが一年中休みなく働き続けてきたといっても、IWJは従業員に休みを与えないブラック企業ではありません。IWJスタッフは全員、最低でも週に1〜2日、それぞれお休みをいただいています。IWJの活動自体は年中無休ですが、スタッフはローテーションを組んでおります。IWJが労働法規を遵守している企業であるということは、この機会に改めてお伝えしておきたいと思います。

 経営者である岩上さんだけが、自分の過労にストップをかける人がおらず、延々と働き続けてしまい、オーバーワークに陥ってしまったのです。

体調異変の最初のご報告

 最初にツイッターで体調の異変を皆さんにお知らせしたのは、2月8日(日)のことでした。この日は午後1時から「岩上安身による農業ジャーナリスト・日刊ベリタ編集長 大野和興氏インタビュー」をこなし、TPP問題、安倍政権による農協改革、解体問題などについて深く論じ合っていたところでした(※1)。

 この頃にはすでに体調が著しく悪化し、無事に「モニバ!」に出演できるのかといった懸念も示していました。岩上さんのツイートを抜粋して紹介します。

【2月8日 日曜日 Twitterへの投稿】

・数日前から、持病の腰痛と、風邪にダブルパンチで襲われている。腰痛はほとんどぎっくり腰のような急性症状だが、背面全部つながっていて、首から肩から背中まで全部痛む。右肩を下にして寝ると痛みで目覚めてしまう。左肩を下にすると左手の指先まで感覚がなくなるほど痺れる。
posted at 22:25:13

・夜中に寝ていて、無意識で横に向くなどの寝返りを打つから、どうしても痛みや痺れで起きてしまう。熟睡できず、それが風邪の治りを妨げているように思う。風邪も、引いて早々に、ひどい咳で、気管支炎と診断されたが、とうとう今日は38度台の熱まで出てきた。咳のたび、腰に痛みが走る。
posted at 22:27:54

・なので、明日、この集会に参加しようと思っていたが、自粛する。言論は自粛しないけど、仕事は自粛。→自粛という名の翼賛体制構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明http://t.co/k0TK3wGMzO (※)
posted at 22:31:20

・会計事務所の月次監査もあるのだけど、これも仕方ないので経理に任せる。夕方からロックの会だが、これも無理なので申し訳ないけど欠席。明後日のモーニングバード、出られるだろうか、という懸念。とにかく療養専一に、いたします。
posted at 22:34:01

・でもこんな状態でも、原稿は書いたので、アップされたら読んでください。まだ、何本か並行して作業しているものがあって、そういう欲張り方が仇をなした気はしますが。
posted at 22:37:18

 恐れていたことが現実化し始めます。戦争遂行体制のためには、国内の言論の自由を締め付ける必要が必ず出てきます。その動きが、現れ始めました。

 「IS」の事件をめぐり、安倍総理の一連の言動や、日本政府の事件対応についての批判を封じようとする同調圧力が、マスメディアや言論の場において日に日に高まっていきました。これについては岩上さんも、あるテレビ局の幹部から実態を聞き、皆さんに報せました(※2)。

 こうした権力批判に対する締め付けは、かつての翼賛体制の構築につながると危惧した言論人らが2月1日、「自粛という名の翼賛体制構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」をインターネット上で発表。岩上さんも賛同人に名を連ねています。

 反応は大きく、2月9日の時点で1200人の賛同者、1500人の支持者が集まり、今井一氏や古賀茂明氏などの賛同者らが会見を開きましたが、岩上さんは体調不良から、会見を欠席。IWJとしての中継・取材は行いました(※3)。

 始めてツイッターで体調不良をお知らせした8日、IWJスタッフ向けには、次のようなメールが届いていました。高熱があったせいで鍼治療もろくにできなかったのです。

【2月8日 日曜日 スタッフメーリスへの投稿】
本日、昼からインタビューをし、その後、ずっとテキストの仕事をして、9時半の鍼の予約のため、帰宅しました。

腰や背中や肩の痛みは、完全に元通り。風邪の症状もひどくなっていて、おさまっていた咳がぶりかえしてきました。帰宅して体温を計るとおよそ38度。平熱が35度台の僕には、高熱です。

昨日、今日と、休むわけにはいかなかったとはいえ、間違いなく悪化。

鍼灸師は、熱が高い時には治療はできないと、今日の治療は腰に少し刺しただけで取りやめに。明日、再び病院に行きます。

事務所には心を鬼にして、行きません。ロックの会も具合が悪いという連絡を入れておいてください。仕事をそろりそろり続けながら、治療するのは限界のようです。こじらせつつあります。

(※1)2015/02/08 60年ぶりの農協改革、その裏で資本参入に荒らされる民衆農業再興の道のりとは? 岩上安身が農業ジャーナリスト・日刊ベリタ編集長 大野和興氏に聞く

(※2)【岩上安身のツイ録】「イスラム国」の報道で官邸から圧力、番組責任者が更迭!? 翼賛体制はすでに始まっていた!

(※3)2015/02/09 「70数年前も、こうして『物言えぬ空気』が作られ、私たちの国は破滅へ向かったのではなかったか」──翼賛体制構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明

体調異変が続き、「モニバ」もやむなく欠席

 翌2月9日(月)、予告していた通り、岩上さんは病院に向かいます。ツイッターを引用します。

【2月9日 月曜日 Twitterへの投稿】

・寝床から這い出して、どうにか病院へ。38.5度だった熱は、明け方から解熱剤が効いてきて、今日の午前中には36.2度まで下がったが、また上がってきた。今、37度越え。ずーっと眠り続けたが、腰の痛みは変わらず、咳の苦しさも変わらず。快復の実感なし。困った。
posted at 15:47:11

 8日から9日にかけて、ずっとうつらうつらと眠り続け、安静にしていたようですが、風邪っけは去らず、咳は止まず、熱も上がり下がりが続き、腰も、肩も、すべてが痛いままだったと、IWJスタッフらに報告がありました。午前中は起きられず、病院にも行けませんでしたが、「這ってでも午後の診察に向かう」として病院に行きました。

 それでも熱や腰痛は残り、翌10日のテレビ朝日「モーニングバード!」はやむなく欠席してしまいました。

 10日、午後4時前。スタッフ向けに、岩上さんから現状の報告メールが入りました。

【2月10日 火曜日 スタッフメーリスへの投稿】
目が覚めました。

今の今まで、トロトロの弱火で煮込むように、寝込んでました。

断続的ではあるが、何時間、寝たんだろうか。15時間くらいだろうか。

体温を測ったら、35.2度、

ようやく平熱に。昨夜、モニバに行くかどうか迷っていた時は、まだ、37度前後と微熱がありました。

腰は変わらず、痛い。頭は朦朧とする。鼻、喉はおかしい、体は全身だるい。全体として風邪っけは抜けていない。

でも、熱だけは下がった、という感じ。まだまだ、安心できないですが。

仕事しないで、眠ったからだろうな。番組をやすませていただいて、健康上では、正解だったようです。

 この日は、ツイッターも配信の告知などを数回ツイートした程度で、モニバ欠席のご挨拶もできませんでした。鼻水も、のどの痛みも、全身を襲うだるさも、一向に抜けない。熱は下がったとはいえ、それは快方に向けた第一ステップに過ぎず、まだまだ静養が必要な状態だったのです。

 しかし、結局、安静にしていられた時間はわずかでした。その日の夜(10日夜から11日未明)、欧州での緊張が極限にまで高まっていることに気付いたのです。

第三次世界大戦の危機が襲った日

「この、僕がぶっ倒れている間に世界はまた、とんでもないクライマックスを迎えつつある。ぼんやりしている暇は、本当にない。世界戦争になる」――。

 2月11日(水)未明、床に臥せった岩上さんから、ウクライナをめぐる4か国首脳会談に全力を注ぐよう、スタッフにメールで指示が飛びました。

【2月11日 水曜日 スタッフメーリスへの投稿】
僕の体調の報告をすると、ずっと休んで、午後に点滴をうちにいきました。
熱は下がりましたが、風邪っけは抜けていない。声は枯れている。咳は出る。腰はぎっくり腰そのもので、ろくに動けず。

とにかく休むしかないのだろうけど、戦争となったら、そうは言っていられない。横になったままでも、仕事をします。

それこそ、横になりながらツイキャスするのでも、やります。

全力で、情報の収集を。勢力を拡散しないように。バラバラの仕事をしていても、効果は上がりません。みんな、協力を!

 この頃、ウクライナ東部で、ウクライナ政府軍と反政府派の親ロシア派武装勢力による衝突が激化していました。昨年9月に結ばれた停戦合意も形骸化し、キエフ政権の公式見解では、すでに1200名の兵士と5400名の市民、合わせて合計6600名もの死者が出ているといいます。「停戦」とは程遠い状況でした。

 しかし、「内戦」とは言いつつも、結局、これまでロシアは自国の軍隊を出しておらず、ウクライナ政府も、さまざまな国から武器供与されたりはしているものの、局地戦にとどまり、戦闘を本格化してはきませんでした。

 しかし、ここへきて、米国オバマ政権がウクライナ軍への武器供与を検討していることが発覚します。2月5日にはケリー国務長官がキエフを訪れ、ウクライナへの支援策について「あらゆる選択肢を検討している。防衛のための武器の供与もその1つだ」と発言し、殺傷能力のある武器供与を検討する考えを明らかにしました。本格的な戦争を望む米国の思惑が滲みました。

 事態を重くみたドイツとフランスが新たな調停に乗り出し、2月11日(日本時間12日未明)、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国首脳がベラルーシのミンスクで会談することが決定しました。しかし、もしこの会談がまとまらず、新たに停戦合意に至らなければ、そのときは世界戦争に発展してしまう――。

 岩上さんの指示は、そんな瀬戸際に飛んだのです。その後、ベッドで横になりながらも、12日(木)に、どうにか完成させた記事がこちらです。

2015/02/12 第三次世界大戦前夜!? もはや「プーチン悪玉論」は通じない! ウクライナ危機の解決へ向け、「最後の協議」が始まる 元バイエルン州行政裁判所裁判官・フォンナーメ氏特別寄稿!

 プーチンだけを「悪魔化」し、単純な正義と悪の二極化を図ってきた欧州諸国。その実態が、フォンナーメ氏の寄稿に綴られています。しかし、この瀬戸際になって「プーチンは悪魔だ」とも言っておられず、フランス・ドイツは米国を抜きにした首脳会談を実現。結局、4カ国首脳が約16時間におよぶ協議の末、一応の「停戦合意」に至りました。

 しかし、今も衝突は続いており、すでに停戦合意は崩壊の縁にあるともいえます。

 ちなみに、このウクライナを中心とする戦争の可能性についての原稿は、ほとんど書き上げてあるのですが、岩上さんはその長編原稿を携えたまま、北海道へ旅立ち、倒れてしまったので、未発表のままです。

 その原稿の中では、IMFによって借金漬けにされ、もはやウクライナに自国の政策の決定権がないこと、キエフ政権に3人の外国人が閣僚入りしたこと、ウクライナの肥沃な土地が外資に買い占められ、モンサントなどのアグリビジネスに侵食されていることなど、ウクライナのシビアな現状を分析しています。体調が回復次第、完成稿にして出せると思うので、どうぞお待ちください。

 また、ウクライナをめぐって4カ国首脳会談が開かれた2月11日(水)は、産経新聞がやらかした日でもありました。

 産経新聞朝刊には、作家の曽根綾子氏が南アフリカで行われた人種隔離政策(アパルトヘイト)を賛美するようなコラムが掲載されて話題になり、こちらも岩上さんがトリセツを書き上げました。

 この日は奇しくも、アパルトヘイト撤廃運動の指導者として長年勾留されていたネルソン・マンデラ元大統領が1990年に釈放された記念日でもありました。そんな日に「アパルトヘイト」の日本導入を主張する曽野綾子氏と、その主張を堂々と紙面に載せる産経新聞。あまりの愚かしさに、岩上さんの体調もより悪化したに違いありません。

※【岩上安身のニュースのトリセツ】安倍総理の「ブレーン」曽野綾子氏が産経新聞のコラムでアパルトヘイトを肯定 世界中から批判の声 〜移民ではない、「現代の奴隷制」を推し進める安倍政権

どんな体調でもキャンセルできない仕事

 熱が下がってはきたものの、喉や腰の痛みは引かず、それでも騙しだましこなさなければならない仕事もあります。

 岩上さんは宮城県の「JA栗っこ」が14日(土)に主催する講演会に招かれていたため、2月13日(金)夜、宮城県に前乗りしました。その時のツイートを引用します。

【2月13日 金曜日 Twitterへの投稿】

ずーっと家で伏せっていたが、そうもいかなくなって、東京駅に。明日、宮城県のくりこま高原駅の近くで、地元のJA栗っこが主催する講演会で講演を。なので、今夜のうちに仙台まで先乗り。新幹線のホームで風にさらされながら待っていたら、右側の頬がカチンカチンになった。寒すぎる。
posted at 22:25:58

【2月14日 土曜日未明】

仙台到着。恐ろしく寒い。東京駅で風に吹かれていた程度の寒さに、寒い、と言っていた自分が許せなくなるほど、寒い。この寒さ、腰には当然悪い、気をつけて動かないとギクッとくる、そう思っても、急ぎ足に。ゆっくり歩いていられない。ホテルまで大急ぎ。
posted at 01:42:39

チェックインして、バスにつかってあったまって、明日の資料に目を通す。農業、農政を論じると言ったって、農業だけ論じていればいいわけでもない。たとえば、ウクライナの猛烈な内戦。誰も彼もが、戦争の拡大を止めたいのに、ひとり火をつけ、騒ぎを拡大したがってきたのがアメリカ。
posted at 01:45:26

そのアメリカが、ウクライナで何をしてきたかといえば、世界有数の肥沃な穀倉地帯であるウクライナの大地のランドグラビングである。つまり、土地を巨大資本が買い占めてしまうのだ。カーギル、モンサント、デュポンなど。そしてウクライナの閣僚にはこの前まで米国人だった人間が国籍をとって就任。
posted at 01:47:50

やっていることが、国丸ごとの乗っ取り。ムチャクチャである。そうしたことが、バレないように、戦火の焔で包装する。そして、「全部、プーチンが悪い!」という大合唱をさせる。アホか、と思う。
posted at 01:50:24

寒い夜に、もうひとつ疑うのは、地球温暖化。今でも、納得がいかない。疑問だらけである。このテーマも、ちょっと落ち着いたところで、一連振り返る連続特集を組もうと思う。
posted at 01:52:59

 14日、ホテルを出た岩上さんは、予定通りに講演をこなすため、会場のあるくりこま高原に向かいました。寒さが応えたのかもしれません。ここでもツイッターで体調不良を訴えていました。

【2月14日 土曜日 Twitterへの投稿】

・風邪っけが抜けない、腰がまだ痛む、など、もう一週間以上になるが、今日も完全なコンディションとは言えず。元気で、健康な状態とはどんなことだったか、すっかり忘れてしまった。熱は今日はないようで何より。仙台からくりこま高原へ向かう。刈り取られたあとの田が雪で白い。冬だ。東北の冬だ。
posted at 11:47:52

 体調不良をおして、なんとか講演会をこなしました。その模様は2月22日、会員限定で配信済み。東京への帰路、体調を心配してくださった皆さんと少しツイッターでメンションのやり取りをしました。

【2月14日 土曜日 Twitterへの投稿】

・おどかさないでー。宮城への出張、すごくくたびれました。寝ます。RT @pion2355: 腰がだるい、風邪が後を引くというと溶連菌感染から腎炎とか突然の腎盂腎炎など耳にします。致命的な転帰もあり得るので心配です。札幌のカフェトークには万全の体調でお越しになれますように。
posted at 19:20:11

・かかりつけの内科で、尿検査、血液検査はしましたが、それでは足りませんかね? RT @Cisibasi: 腰と思い込んでいるのは腎臓への負荷かも知れません。余裕があるなら循環器科で見て貰った方が。
前立腺を痛めると後が大変です。

・ようやく帰宅。そんな遅い時間でもないのだが、ものすごく遅い時間のような気がする。自分の講演のあと、早めに失礼させてもらった。2部は島田洋七さんで、「佐賀のがばいばあちゃんの話」をしていたので、聞きたかったがもう気力なく。新幹線の中で気を失ってました。つかれたーーー。
posted at 19:47:31

 ちなみに、岩上さんが宮城県に前乗りした2月13日は、自民、公明両党が、集団的自衛権行使容認に関する与党協議を開始した日でした。

 昨年7月1日に、安倍政権によって閣議決定された、集団的自衛権の行使容認。憲法の解釈を一内閣の閣議決定で変えてしまうという途方もない暴挙です。以来、日本は平和国家のレールから脱線し、あらぬ方向へ逸脱と暴走を続けています。

 「原発を抱えたまま、自国の防衛のためではなく、米国の戦争の道具として、日本が鉄砲玉にされてしまう!」と、岩上さんは何度となく訴えてきました。

 今国会では、安倍政権は、日本を「戦争のできる国」にするための安全保障法制を議論しようとしています。

 この日の与党間協議では、政府側から、米軍以外にも、オーストラリア軍の艦船も防護対象に含むべきだとの意見が出されました。同盟国である米国以外の戦闘行動にも日本は巻き込まれていくという話です。こうなるともう、歯止めはありません。

 米軍だけでなく、その他の国々の戦争、たとえばNATOによる対ロシア戦争が火蓋を切った場合、集団的自衛権を理由として、日本も参戦させられる羽目になります。ウクライナが内戦どまりではなく、NATOとロシアの戦争に拡大した場合、欧州戦争で終わらず、日本も参戦することで世界戦争になってしまう。これも、岩上さんが危惧し、さんざん警告してきたことでした。

 しかし、安倍政権は、よその国の戦争に巻き込まれることで、国民が受けるダメージにまったくお構いなしです。自衛隊による他国軍の戦闘支援を、その都度新たな法律をつくることなく随時可能とする恒久法の制定を求めています。

 「JA栗っこ」の講演で岩上さんは、ウクライナ情勢などを例示しながら、集団的自衛権行使容認により、日本が米国の世界戦略に巻き込まれようとしている現実を指摘しました。岩上さんが体調不良の中、講演をこなしている間にも、安倍政権は「よそ様のための戦争」の準備を着々と進めていきつつありました。

2012年、福島第一原発入構取材以来の体調悪化

 今にして思えば、この宮城での疲労が、後の決定的なダウンへと繋がるダメージとなりました。

 宮城から帰京した翌15日(日)。スタッフ宛に、岩上さんから体調の現状報告のメールが届きます。熱も腰も、一定程度は落ち着いた様子が綴られていますが、身体へのダメージが深刻であることがわかります。

 このメールを受け取ったときは、スタッフ一同、「少しずつ回復の兆しが見えてきたのかな」とも思ったのですが、その認識はあまりに甘かった。

【2月15日 日曜日 スタッフメーリスへの投稿】
スタッフの皆さん

いろいろご心配をおかけしてます。また、業務にもしわ寄せが出ていて、申し訳ない。

僕の体調のリアルを報告します。

腰は激痛で動けない、という状況を一応脱しましたが、痛みがなくなったわけではなく、ちょっとした拍子に爆弾が爆発しそうな、非常に怪しい気配を抱えています。

風邪は、熱は下がりましたが、咳は相変わらず出るし、完治と言えません。

週末から本日まで、下痢も続いています。お腹の前も後ろも痛むという、厄介な事態です。本調子でないことは明らかです。

週末、宮城まで往復して講演をこなすという仕事を久しぶりにしましたが、ものすごく疲れました。

帰りの新幹線、ずっと気を失うように眠っていました。

昨夜、帰京して帰宅して、まるまる14時間くらい、トイレのために2度、3度起きましたが、眠り続けました。

それだけ休んだのですが、すごく疲れています。

今の特徴は、とにかく疲れている、だるい、ということに尽きます。痛み、発熱の一歩手前まで下がったが、累積した疲労がなんだかものすごく、持ち前の馬力とか気力、体力で、はね返せない、という地点にいます。

いくらなんでも、こんなに休み続けたのに、どうしたんだ、とも思いますが、どうしようもない。

こんなに長いこと、復調しないというのは、2012年の福一入構取材以来で、自分の体ではない気がして、よく理解できず、大丈夫なはずと頭で勝手にしやがれ思い込もうとするところがおかしい。現実離れしているほど、弱っていて、シュール過ぎる。なんでこんなに弱々しいんだ? 首をひねります。

正直なところ、これが、情けないですが、リアルな現状です。

とにかく、キャンセルできないスケジュールが迫っています。

明後日、火曜日のモーニングバード、そして翌水曜日から北海道行き。二つのインタビューとイベントの司会と、トークカフェ、どれも手を抜けません。

北海道行きにすべての照準を合わせ、それ以外の負担を軽くします。

今日、事務所に久々に出所し、仕事を片付けましたが、全部は終わらせられず、切り上げて、この時間に帰宅しました。今夜から明日にかけても、できるだけ身体を休ませて、備えたいと思います。

いろいろ、僕の分まで、皆さんにがんばってもらったり、僕がやらなくてはいけないことを後回しにしたりして(経理の書類処理、ごめんなさい!)、迷惑かけてますが、すんません!

もう少し、助けてください。

 覚えている方もいらっしゃるかと思いますが、2012年2月の福島第一原発入構取材のすぐ後、岩上さんは著しく体調を崩しました。当時、たびたびツイッターでもご報告はしてきました。

 当時のツイートを遡ると、こんなコメントが出てきます。

【2012年 4月20日 Twitterへの投稿】

・ご心配を皆さんにおかけしているので、中間報告をしておきます。これまでの経過をかいつまんで言いますと、2月20日、福一入構取材の翌々日から、腹痛と下痢、その後、発熱にも見舞われ、虫垂炎との診断を受けました。5日間の絶食療法のあと、回復。虫垂炎は、一過性の病気かと思いましたが、その後も、整腸剤を飲み続けているにもかかわらず、下痢が続き、時々、発熱。今週末も、この一ヶ月半で四回目の発熱でダウン。

 もう3年も前の話ですが、この時も相当しんどそうだったのを覚えています。そんな中でも、「どうしても桜が観たい」と岩上さんが言うので、車を出し、夜の千鳥が淵にライトアップされた桜を見にいったことを思い出しました。検索してみると、当時の投稿が出てきます。

【2012年 4月8日 Twitterへの投稿】
・千鳥ヶ淵の桜、連投。桜の趣をまったく知らない若者に伝える。
http://t.co/6pXgXWJq http://t.co/iZfbN9YO http://t.co/IVJ48Txb http://t.co/JRZhfbsZ
posted at 20:53:54

 あまりに弱っていたので、「これが最後の桜になるのではないか」と心配したものです。それほど辛そうでしたが、今回は、そのときと同レベルの体調不良を訴えていることになります。しかも今回は、「モーニングバード!」と「北海道取材」が控えているので、危機感もひとしおでした。

無理を重ね、「神経ブロック」へ注射も

 さらに翌16日(月)、「モニバ」の事前準備と、書きかけの原稿チェック、事務への指示出し、北海道取材で使うパワポの作成作業などのため、結局、岩上さんは事務所に出社。休みたくても休めない状況にありました。

 繰り返しになりますが、基本的にIWJのスタッフは、最低でもそれぞれ必ず週1〜2日は休みをいただいています。もし出張などで10日間休めないことがあっても、後で調整し、結果的に2週間で2回、3週間で3回といった具合にしっかり休めるようにし、身体に疲労を溜めないようにしています。

 17日(火)、岩上さんは2週間ぶりに「モニバ」に出演。夜には、その日1日を次のように振り返りました。無理に無理を重ねたことが、誰の目にも明らかです。

 そして18日(水)未明、17日のことを次のように振り返っています。

【2月18日 水曜日未明 Twitterへの投稿】

・先週お休みしたモーニングバード!に本日は出演。関係者の皆様にはご迷惑をおかけしました。皆様には、ご心配おかけしましたこと、あらためて、お詫びいたします。とはいえ、腰痛は治ったとは到底言い難い状態。
posted at 01:44:12

・しかし、明日から北海道へ出張に行かなくてはならない。札幌、そして帯広へ。13日には、帯広で、石川知裕元衆議院議員の裁判報告会が開かれる。ここで、主任弁護士をつとめられた安田弁護士が講演し、石川知裕氏とともにディスカッションを行うが、その司会役を仰せつかっている。
posted at 01:49:13

・僕の元に石川さんご本人から連絡があり、ご依頼があって、この役をお引き受けすることになった。本当は去年のうちに開かれる予定だったのだが、突然の解散総選挙で、予定が繰り延べになっての2月開催。僕の事情でご迷惑はかけられない。
posted at 01:55:20

・先週の火曜のように高い熱まで出ていては無理だが、そうではないなら、這ってでもいかなくては。ということで、今日、番組の後、ご紹介を受けた都心のペインクリニックに受診。事情を話して、痛みを軽減する神経ブロック注射をしてもらった。こうした注射は初めて。
posted at 01:57:21

・たしかに、ぐっと痛みは鈍くなった。なくなったのではない。どこかそう遠くないところでごろごろ鳴っている気配はある。油断は禁物だが、なんとか一週間、持ってくれればと願う。石川さんと3日前に電話で話したが、帯広は零下20度に達することもあるという。防寒の用意をしなくては。
posted at 02:00:52

・そのペインクリニックの院長先生、気さくで、親切な方で、なぜか普段着。友人を医療事故で亡くしてから白衣を着ないことにした、という。初めてお会いするのだが、3.11以来、ずっとお世話になりっぱなしで、と御礼を言われる。IWJの会員さんであるという! びっくり!
posted at 02:10:11

・都心という場所柄、「明日、なんとか舞台に立たせてくれ」とか、「なんとか試合に出させてくれ」という人がよく来るから、無理を言われるのは慣れている、と言う。しかし診察しながら「この状態、最悪の痛みが100ならいくつ程度?」と聞くので「10〜20ぐらい」と答えると、絶句。
posted at 02:14:18

・「これは、本来ならドクターストップで、帯広行きは医者としては止めなきゃいけないレベルですよ。でも、事情はわかるから、なんとかしましょう」と。「これで10程度とは、よっぽど、痛みを堪えてきたのね」と。そう言われて初めて、自分の首、肩、背中、腰が大変なのだと再認識。
posted at 02:17:11

 今回の北海道行きの大きな目的は、ここで書いているように、帯広で開かれる石川知裕・元衆議院議員の裁判報告会のコーディネーターを務めることでした。それに合わせ、札幌や帯広などで、様々な取材を組み込んだのです。

 もともとこの報告会は、昨年の12月13日に開かれる予定で岩上さんもその時に招かれていたのですが、安倍政権が突如、「消費税増税の延期の信を問う!」などとのたまい、大義なき解散総選挙に踏み切った影響で、報告会そのものが2ヶ月間延期となったという経緯がありました。

 ただでさえ1度は延期となった報告会で、岩上さんが欠席することで、また水を差すようなことになってはならない。岩上さんはそう考えていたようです。

 上記のペインクリニックの先生の言う「これで10程度とは、よっぽど、痛みを堪えてきたのね」というセリフは、「この症状であれば本来はもっと痛いはずだが、長い間我慢しすぎたせいで感覚が麻痺している。だから『10〜20ぐらいの痛み』などと言えるのだろう」という意味で、本来であれば完全に「ドクターストップ」の域だということです。

 ちなみにこの日、安倍総理が戦後70年を期に出す「総理大臣談話」、いわゆる「安倍談話」について検討する有識者会議のメンバーが発表されました。

 座長に「新日中友好21世紀委員会」の日本側座長を務めるなど、ハト派として知られる西室泰三・日本郵政社長を起用する一方、座長代理に、集団的自衛権行使容認を提言した安保法制懇のメンバーである北岡伸一・国際大学長や、核武装論者でタカ派の論客として知られる中西輝政・京都大学名誉教授をあてるなど、「安倍カラー」が色濃いメンバー構成となっています。

 「安倍談話」をめぐっては、過去の村山談話や小泉談話で用いられた「侵略」「心からのおわび」といった文言が引き継がれるかどうかが焦点となっています。安倍総理は、現在のところ具体的な文言に関する明言を避けていますが、安倍総理の歴史修正主義的な認識が談話に書き込まれることになれば、中国や韓国との関係は、これまでにない緊張をはらむことは避けられません。

 岩上さんがペインクリニックで神経ブロック注射を打っている間に、日本の右傾化と近隣諸国との関係悪化は、より一層進んでいると言えます。

 自身がジャーナリストであるだけでなく、エディターでもある岩上さんは、この安倍政権の歴史を書き換えようとする動きと呼応するかのように、産経が、南京虐殺否定の記事を一面トップで取り上げたことを重く見て、北海道へ旅立つ前に、能川元一さんに寄稿を依頼。その原稿のタイトルには、歴史の書き換えを行おうとする者が、日本の国際社会における地位を危うくすることへの危惧が込められています(※)

※【IWJブログ・特別寄稿】「南京虐殺否定論」の虚妄をふりまく「産経」は、サンフランシスコ講和条約「破棄」の覚悟があるのか!?(前編)能川元一・大学非常勤講師

※【IWJブログ・特別寄稿】「南京虐殺否定論」の虚妄をふりまく「産経」は、サンフランシスコ講和条約「破棄」の覚悟があるのか!?(後編)能川元一・大学非常勤講師

痛みをごまかして北海道へ出発

 2月18日(水)、痛みを無理矢理ごまかした岩上さんは、予定通り13時発の札幌行きの飛行機に搭乗し、北海道へと向かいました。岩上さんのもとには、体調を案じるメンションが未明から朝にかけて、大量に届いていました。

【2月18日 水曜日 Twitterへの投稿】

・ありがとうございます。ソチ五輪の時からウクライナ政変は始まったんです。RT @liangjyao: お大事になさってください。身は一つですから休めず大変ですね。頸椎関係ですか?思えば一年前の2月はソチオリンピックやってました。たった一年で世の中どうなっちゃったんでしょう。
posted at 03:40:07

ありがとうございます。RT @OosakanoOtusan: @iwakamiyasumi ありゃありゃ、大変だ! 岩上さん!! お大事に!
posted at 03:43:05

ありがたいです。RT @yoshtanaka: @iwakamiyasumi 岩上さん、良い先生にめぐりあわれましたね。よかった。
posted at 03:43:19

ありがとうございます。RT @AMomoiroakachan: @iwakamiyasumi 岩上さん、いつもありがとうございます。腰痛は辛いですよね。月並みな言葉で申し訳ありませんが、お大事になさって下さい。
posted at 03:50:24

 岩上さんは羽田で、「痛みは驚くほどなくなったが、腰に爆弾を抱えている実感は確かにある」と話していました。しかし、IWJの出張取材は、荷物との戦いでもあります。

 大型カメラ1台、小型のハンディカム1台、それぞれに見合った三脚を2本、マイクとマイクのコード、スタンド型の照明、パワポを映す用のノートPC1台と、それに接続する27インチほどのモニター1台、さらには動画配信用の別のノートPC1台に、本などの資料、着替え…などなど。

 これらを詰めたスーツケースを、岩上さんと原佑介の2人でそれぞれ2つずつ、合計4つ持ち運びます。ここにさらにリュックやカメラバッグが加わります。今回、羽田でスーツケースの重さを測ったところ、4つで合計80キロほどになっていました。

 腰に爆弾を抱えた岩上さんには、あまりに厳しい荷物の量でした。スタッフが可能な限り引き受けましたが、原佑介の腕も2本しかなく、岩上さんの分を引き受けるにも限界があります。岩上さん本人も常にスーツケース2つとリュックを自ら運ぶなど、最低限の負担は避けられませんでした。

 この日から、北海道取材が始まりました。

 この稿続く。

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