「70数年前も、こうして『物言えぬ空気』が作られ、私たちの国は破滅へ向かったのではなかったか」──翼賛体制構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明 2015.2.9

記事公開日:2015.2.12取材地: テキスト 動画
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(IWJテキストスタッフ 関根かんじ)

※2月12日テキストを追加しました!

 「普段、こういうアピールに名前を出すことはしない作家たちも、『今回はがまんできない。言論人がスクラムを組まないと、この国は手遅れになる』と賛同してくれた。NHKはじめ大手メデイアの現職の人々も参加して、今、1200人になった」──。

 2015年2月9日、東京都千代田区の参議院議員会館にて、「自粛という名の翼賛体制構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」についての記者会見が行われ、今井一氏、古賀茂明氏、小林節氏、マッド・アマノ氏、雨宮処凛氏、おしどりマコ氏、大芝健太郎氏が出席した。なお、IWJの岩上安身も賛同人に名前を連ねている。

 2015年1月20日、「イスラム国」が湯川遥菜さん、後藤健二さんと見られる日本人の映像をインターネットで公開し、日本政府に身代金を要求した。中東歴訪中に、「イスラム国」の脅威にさらされている地域への支援として2億ドル拠出を表明したばかりの安倍首相は、急遽帰国して対応にあたったものの、「イスラム国」は1月24日には湯川さんを、2月1日には後藤さんを殺害したとする映像を公開。邦人人質事件は最悪の結末を迎えた。

 そして、この間、安倍首相の言動や、日本政府の対応について、疑問を呈したり批判することを控えるべきだという同調圧力が、マスメディアや言論の場において日に日に高まっていった。

 このような権力批判の萎縮や自粛は、かつての翼賛体制の構築につながると危惧した言論人らが、2月1日、「自粛という名の翼賛体制構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明」をインターネット上で発表して賛同人を募った。反応は大きく、すでに1200人の賛同者、1500人の支持者が集まっている。(2015年2月9日現在)

 2月9日の会見では、この声明を出すに至った経緯が、ジャーナリストの今井一氏から語られた。テレビ番組で「I am not Abe」と発言した古賀茂明氏は、報道の自由が失われていく3段階について説明し、「このままでは、選挙による正当な民主主義の手続きで、独裁政権が誕生する」と懸念を表明した。憲法学者の小林節氏は、この状況を、「日本国憲法を持つ日本の社会ではない」と断じた。

 また、この人質事件について、国会で野党議員が安倍首相の責任を追及する様子を、テレビの報道番組がどれくらいの時間を使って報じたかという比較検証を行ったところ、多くの番組が数十秒から3分未満の扱いだったという。「これでは国民に伝わらない。マスコミは自粛も萎縮もしていないと言うなら、ちゃんと報道しろと言いたい」と今井氏は力を込めた。

■ハイライト

  • 賛同人 想田和弘氏、宮台真司氏、小林節氏、古賀茂明氏、坂本龍一氏、内田樹氏、マッド・アマノ 鈴木耕氏、飯田哲也氏、関口祐加氏、是枝裕和氏、島薗進氏、石井彰氏、香山リカ氏、森達也氏、原一男氏、古舘寛治氏、ヤンヨンヒ氏、吉田照美氏、平田オリザ氏、小林聖太郎氏、平川克美氏、松本侑子氏、井上淳一氏、雨宮処凛氏、深田晃司氏、溝口敦氏、岩上安身氏、田中龍作氏、木野龍逸氏、綿井健陽氏、中島岳志氏、浮田哲氏、津山恵子氏、中野晃一氏、谷口真由美氏、小原美由紀氏、鎌仲ひとみ氏、笑福亭銀瓶氏、今井一氏、ほか960人(敬称略)

どんな時でも、権力に対する批判は控えてはならない

 冒頭で今井氏は、「イスラム国」による身代金要求メッセージの公開から、湯川さんと後藤さんの惨殺という残念な結果に至るまでの間、「日本政府に対する批判や異議申し立てが、憚られる雰囲気が急速に広まった」と口火を切った。

 共産党の池内さおり衆院議員が、ツイッターで(政府の対応を)「言語道断」とツイートしたら、共産党の志位委員長が『このご時世だから控えたほうがいい』と助言して、池内議員はツイートを削除している。これについて、今井氏は「私は、どんな時でも権力に対する批判は控えてはならないと考えているので、共産党まで(自粛するのかと)とびっくりした」と振り返る。

 そして、ほかにもそんな危機感を覚えている人がいるかもしれないと思い、ニューヨーク在住の映画監督の想田和弘氏や元経産官僚の古賀茂明氏と話し合い、今回の声明文の発表に至ったという。

 今井氏は、「声明文は1月27日から書き始めて、2月1日にネットにアップ。翌日のアクセス数が2万380件、その翌日も1万5000件を超えた。私たちがお付き合いのなかった作家の方々も、賛同者に名前を連ねてくれている」と述べて、声明文を読み上げた。

70数年前も、こうして「物言えぬ空気」が作られた

 声明文では、まず、「イスラム国」による卑劣極まりない邦人人質惨殺事件を強く非難しつつ、憎しみと暴力の連鎖を懸念している。同時に、現政権への批判を自粛する空気が日本社会を覆っていることに危機感を表明して、このように続く。

 「政府の行動や施策は、主権者や国会議員(立法府)やマスメディアによって常に監視・精査・検証され、批判されるべき事があれば批判されるのは当然の事であろう」

 そして、「『非常時』であることを理由に政権批判を自粛すべきだという理由を認めてしまうなら、原発事故や大震災などを含めあらゆる『非常時』に政権批判をすることができなくなってしまう」とし、「そうなってしまっては、他国を侵略し日本を焼け野原にした戦時体制とまったく同じではないか? 70数年前も、こうして『物言えぬ空気』が作られ、私たちの国は破滅へ向かったのではなかったか?」と問いかける。

 さらに、日本国憲法第21条の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」、同第12条の「国民に保障する自由及び権利」を挙げて、この日本国憲法の精神は「非常時」である時にこそ、尊重されなければならないと訴え、最後に、「言論・表現活動に携わる者は、政権批判の『自粛』という悪しき流れに身をゆだねず、この流れを堰き止めようと考える。誰が、どの党が政権を担おうと、自身の良心にのみ従い、批判すべきだと感じ、考えることがあれば、今後も、臆さずに書き、話し、描くことを宣言する」と表明している。

NHKプロデューサーやディレクターも名を連ねる1200人署名

 今井氏は、「賛同人になるのは自己申告制で、当初、主婦の方々の賛同がとても多かった。そこで現在は、『言論人、報道人、表現者として名を連ねる』と『この動きを支持し応援する』という2つに分けた。今、支持し応援するが8割(1500人)、名を連ねるが2割(1200人)になっている」と話し、賛同者の一部の名前を読み上げていった。

 作家の中沢けい氏や馳星周氏については、「こういうところに名を連ねることは一切しないスタンスの人たち。ゆえに、なりすましかと思いコンタクトをとったら、中沢さんは『今回は、もうがまんできない。言論人が本当にスクラムを組まないと、この国は手遅れになる』と言ってくれた」と述べた。

 今井氏は、NHKの現職のプロデューサーとディレクターが賛同したことにも触れた。そのプロデューサーからは、「黙っていることは、もはや同意と見なされかねない」、ディレクターからは、「日本という国が、いかに個人を守らない国であるのか、よくわかった。のみならず、このことを利用し、戦争のできる国にしようとしている。間違った道を、この国が選択することのないよう、個人としては微力であっても、口を閉ざすことなく、言い続けていく必要があると思う」というメッセージが寄せられたという。「ほかにも大手新聞社や出版社の方々も賛同してくれている」と、今井氏は声を弾ませた。

すでに安倍さんから恫喝を受けていたマッド・アマノ氏

 続いて、会見出席者たちが短いコメントを語っていった。権力への辛辣なパロディ表現で知られるマッド・アマノ氏は、「私は(小泉政権の)2004年の参院選で、『この国を想い、この国を創る』という自民党のポスターを、『あの米国を想い、この属国を創る』と茶化したら、当時の安倍晋三幹事長の名前で通告書が届いた。弁護士との連名で『名誉毀損だ、2日以内に答えろ』と恫喝しており、とても高圧的な内容だ」と語った。

 マッド氏は「そこで、こちらも通告書を送ってやったら、選挙が始まったせいか、そのままになった。風刺というものは、権力が一番嫌がる表現だ。彼らは茶化されると理屈で返せないので、風刺を封殺する動きが出てくるのだと思う」と、その通告書を掲げて見せた。

 次に小林氏が、「(現在の中東の混乱は)キリスト教とイスラム教の闘いなのだから、(日本としては)放っておくのが一番いいのだ。それなのに、ああいう刺激的な発言をする政治家は、批判されてしかるべき」と述べて、次のように言葉を重ねた。

 「政府批判を口にしたら、『黙れ、非国民、敵を利するのか』と言う。さらに、政府当局はメディアに公平な報道をするように、つまり政府を批判しないように、との通達を出している。これでは、日本国憲法を持つ日本の社会ではない。自由と民主主義をもとに、政権運営をする者がやることではないし、そんなことの自覚もなく、少しでも(自分たちを)批判する者に対してはヒステリックに反応している。本当に心配だ」

やがて民主的な手続きで、独裁政権が誕生する

 邦人人質事件の政府の対応に疑問を呈し、テレビ朝日『報道ステーション』出演時に「I am not Abeと言いたい」と発言して注目を集めた古賀氏は、「このマスコミ中心の自粛状況は、今始まったわけではない。私も、官僚を辞めてから圧力や迫害を感じたことは何度もある。東京電力の破綻処理に言及したら、動物の死体を玄関に置かれたりした。警察には電車に乗ったらダメだと忠告された。今回の『I am not Abe』発言のあとも、神奈川県警から警備強化の申し出があった」と語る。

 今の日本は、かなり危機的な状況だという古賀氏は、報道の自由が失われていく3段階について、1. ホップ:報道への自由の抑圧、2. ステップ:報道機関自らが体制に迎合、3. ジャンプ:選挙による独裁政権の誕生、と説明。「今は、2. ステップの段階に来ている」として、次のように警鐘を鳴らした。

 「政権からの圧力は日常茶飯事だ。新聞社には軽減税率などの懐柔でアメとムチを使う。政権が『これを言うな』といちいち言うわけではない。ただ時々、官邸から記者クラブにガーンと苦情が来る。その対応は記者にとって面倒くさいので、『ちょっと自粛しておくか』が積み重なる。政権が何も言わずとも(メディアが)自ら迎合するようになってしまうのだ。すると、国民に正しい情報が行きわたらない。その結果、国民も間違った判断をしてしまい、選挙による民主主義の正しい手続きで、独裁政権が生まれることになる」

 その上で古賀氏は、「安倍政権のメディアコントロールは格段にレベルアップしている。それを放置することは、とても危険だ。カウンターバランスになる情報を流していくためには、われわれにも相当な覚悟と知恵がいる」と表情を引き締めた。

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コメント “「70数年前も、こうして『物言えぬ空気』が作られ、私たちの国は破滅へ向かったのではなかったか」──翼賛体制構築に抗する言論人、報道人、表現者の声明

  1.  1993年の自民党下野の原因について日本記者クラブでテレビの民放キー局一社の報道のせいだと嘘をついたのは安倍晋三氏である。何故このような誰にでもすぐにバレるような嘘をつくのかは、50代の私にとってははなはだ理解をし難いものであった。しかし、直後のYoutube映像やブログや掲示板に立ったスレッドを見てその理由がわかった。当時の政治状況について無知な若者のミスリードを組織的に意図的にしているということだ。たまたまや、なんとなく時代の流れの偶然な出来事が重なっていると考えると組織的に意図的にしている連中の目指しているところまで行ってしまう。
     安倍極右政権にはネット戦略が最初から出来ており、他人のふりをした味方が沢山居るということだ。しかも、広告代理店がかんでいる。それが一番明快なのは、今回の安倍極右政権発足直後から突然として現れたYoutubeの某チャンネルだ。安倍首相への投票を呼びかけたりしていたが、ある日の映像の中で、業界で使う200字詰めの原稿用紙に毎回シナリオを書いていることを自らバラしているのだ。“普通の人”として出版や講演もしている。北海道に住んでいるはずの“普通の人”何故か対馬まで出かけたりしている。しばらくの間は日の丸が何故かバックにある、カメラの角度が最初から決まっているなど、素人としては不自然は点がはなはだ多い等の疑問が沢山有る。
     1993年の自民党下野の原因の原因はいくつもあるが、その中でもリクルート事件には安倍晋三氏の父親も登場した。それが一番隠したいことなんだろうか。あのリクルート事件の未公開株をバラ撒いた人々はどういう関係なのかはいまひとつ疑問が多い。元オイルマンが言っている事が本当なんだろうか。
     

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