「なぜジャーナリストは戦場へ向かうのか」――後藤健二氏に対する自己責任論にジャーナリストらが反論「火は燃えているのに、消防士に行くなと言っているようなもの」 2015.2.17

記事公開日:2015.2.21取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

※2月21日テキスト追加しました!

 「ジャーナリストが何人殺されようと、残った誰かが記録して、必ず世界に伝える。全てのジャーナリストの口を塞ぐことはできない。どんな強大な力を持った存在であっても、きっと誰かが立ち向かっていくだろう」

 後藤健二氏がイスラム国の人質となり、殺害された事件を受けて、戦場を取材してきたフリーのジャーナリストらが2月17日、後藤氏の行為に対して持ち上がった自己責任論によって、ジャーナリズムが萎縮していることに危機感を示し、情報の重要性を改めて考えるシンポジウムを開催。戦場取材の経験や意義を語った。

 冒頭の言葉は、2012年8月、シリア内戦を取材中、アレッポでシリア政府軍の銃弾に倒れた山本美香氏の言葉である。今回のシンポジウムは、山本氏の遺志を引き継ぎ、山本美香記念財団が主催。同財団の理事長であり、ジャパンプレス代表のジャーナリスト、佐藤和孝氏が生前、山本氏が残したメッセージを紹介した。

記事目次

■ハイライト

  • パネリスト 川上泰徳氏(元朝日新聞中東アフリカ総局長)、佐藤和孝氏(ジャーナリスト、ジャパンプレス代表)、関野吉晴氏(探検家、武蔵野美術大学教授)、藤原亮司氏(ジャーナリスト)、安田純平氏(ジャーナリスト)
  • 司会 野中章弘氏(アジアプレス代表、早稲田大学教授)

「なぜジャーナリストは戦場へ向かうのか」

 パネリストの一人、元朝日新聞中東アフリカ総局長の川上泰徳氏は、20年間、中東記者として活躍してきた大ベテランの一人だ。

 「パレスチナ、イラク、シリア、エジプトを見てきたが、なぜ、中東なのか。中東からは世界が見えると思っている。世界の歪みが現れている。日本も、援助やビジネスで中東と関わっている国であり、(今後、中東がどうなるのか)ジャーナリズムが『目』としてなければいけない」

 『対テロ』戦争という名目で2003年、アメリカがイラクを攻撃した当時、川上氏はイラク現地でアメリカ軍兵士による、市民への蛮行を目にしたという。また同年、イラクへ派遣されていた日本人外交官が2人殺害された時も、現場に直接足を運び、自分の目で検証した。それによって、アメリカ軍発信による報道には誤りがあったことを突き止め、正しい情報を報じることができたという。

 今回の人質事件を通して明らかになったように、安倍政権は「テロとの闘い」を全面的に打ち出し、日本と中東の政治的関わりをより強固なものにしようとしている。今後、中東がどうなるのかは、国民にとって不可欠な情報になったことは間違いない。徹底した現場主義によってもたらされる一次情報の重要性を、川上氏は強調した。

 「情報はある意味で、命をかけるものだ。国の命運、国民の命が左右されるものでもある」

 川上氏は続けて、危ないから行けないというのは、「火が燃えているのに、消防士に行くな」と言っているようなものだと持論を述べた。

後藤さんが伝えたかったことは何か

 同じく、中東の紛争地で長く取材を続けてきた、フリージャーナリストの安田純平氏は、過去、自身が拘束された経験について話した。

 「私を捕まえていたおじさんは、普通の農家のおじさんで、子どもたちが見物に来るような状況だった。しかし、彼らは『テロリスト』と呼ばれていた。『対テロ』戦争で殺されるのは、だいたいにおいて一般人であり、(テロリストという)『記号』で決めつけられた人たちにも事情があって、人生がある。現場に行く意味の1つは、その人の『顔』を見ることだ」

 シリアで死亡した山本氏とは同僚の仲だったという、フリーカメラマンの藤原亮司氏は、後藤氏に対するメディアの報じ方に異議を唱えた。

 「戦争は、人がいない所や、戦闘員がいる場所で起こっているわけではない。私たちと同じように、ご飯を食べ、子どもを叱って、友達と笑ってという生活の中に戦闘がある。そんな生活や命が理不尽に奪われていることを、後藤さんは取材していた。しかし、『イスラム国』や日本政府の対応という、本質ではないところで報道されていたことは、後藤さんにとって不本意ではなかったのか」

 危険な地域を取材するジャーナリストがいなければ、どこが危険なのかをどう知ることができるのか。藤原氏は、後藤氏の行動を『蛮勇』という軽蔑するような言葉で表現した、自民党の高村正彦副総裁を批判した。

パスポート返納問題「『迷惑論』の傾向は独裁国家の始まり」

 フリーカメラマンの杉本祐一氏が、外務省によって、パスポートを剥奪された問題は、同業者であるジャーナリストにとっては特に、人ごとではない。佐藤氏は、「マスコミ内でも『迷惑論』に傾いている人たちが沢山いる」と現状を報告し、続けて、「危ないかどうかをお上が決めれば、報道ができなくなる。報道は民主主義の根幹にあるものだ」と話し、今後、報道の自由が制限されることで、メディアが政府の広報誌となる危険性をはらんでいると警告した。

 川上氏も、自身の経験に触れながら、市民と国が1つになってしまう全体主義的な動きを強く懸念した。

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