「ケネディは核戦争を止めたが、オバマは止めない」 〜第34回ロックの会 東ちづる、岩井俊二、長岡秀貴、岩上安身 2014.8.9

記事公開日:2014.8.12取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根)

 日本の若者のニートや引きこもりなどの問題をテーマに、2014年8月9日、東京都渋谷区代官山にあるカフェラウンジUNICE(ユナイス)で、「第34回ロックの会『ほとんどのことはどうでもいい~視点を変えれば~』」が行われた。

 オーガナイザーの松田美由紀氏が欠席のため、この日は女優の東ちづる氏が代役として出演した。岩上安身は、ウクライナとガザ、イスラエル、そして、それを操るアメリカについて解説し、核戦争への危険を指摘した。

■ハイライト

  • 日時 2014年8月9日(土)
  • 場所 代官山 カフェラウンジ UNICE(ユナイス)(東京都渋谷区)

混同されているボランティア、チャリティ、奉仕活動

 映画監督で同会主宰者のひとり、岩井俊二氏によるプロローグの後、女優の東ちづる氏が登場した。東氏は「本業の女優・タレント以外に、好きなことをやっている。世間では、それをボランティア活動と呼ぶ。当然、無償だが、それは決して褒められることではない。お金という道具は、うまく使えばいいのだ」と語る。

 以前、ボランティア活動をしていることを「売名行為」と週刊誌で批判されたという東氏は、「ボランティアの意味を辞書で調べた。ボランティアは自発的行為、または志願兵の意味。ヴォルケーノ(火山)のように、いてもたってもいられないから、おこなう行為、という語源が気に入っている」と話した。

 さらに、「『奉仕』は英語でいうと『サービス』だ。先生、医者、政治家なども、奉仕の精神の仕事。総理大臣は、国の最高峰の奉仕者であるべきだ。『チャリティ』は募金。だが、テレビのチャリティ番組に出るタレントはギャラをもらっている。チャリティと、それを扱う組織や人は別の話。お金のやり取りは決して悪いことではない」と言い、ボランティア、チャリティ、奉仕の意味が、日本では混同されていると指摘した。

「違いを排除しない社会」を創る社団法人Get in touch

 東氏が、ボランティアを始めたきっかけは、22年前、17歳の白血病の少年を取り上げた番組で、メディアの扱い方に疑問を感じたからだという。そして、いろいろなボランティア活動をした結果、すべての目標は「心豊かに暮らしたい」ということではないか、と語る。

 そういった経験から東氏は、社団法人「Get in touch」を立ち上げた。その目的は「混ぜこぜの社会を創ること。混ぜこぜがイヤな人も排除しない。違いを、排除しない。講演、シンポジウム、選挙なんて行かない人たちを巻き込んでいく」と話し、今年4月2日、国連制定の世界自閉症啓発デーに、ニューヨークで参加した国際会議や、日本で開催したイベントの映像を見せた。

 国際会議では、家族の自閉症をカミングアウトした有名人のことを聞かれたといい、プロゴルファーのアーニー・エルス、ファッション・デザイナーのトミー・ヒルフィガーらの自閉症の子どもが出演した啓発CMを映し、「現在、発達障害児はクラスに3~4名、LGBT(セクシャル・マイノリティ)は20人に1人だ」と話した。

 東氏は、東日本大震災での体験も語り、「避難所では、老若男女、国籍や宗教の違う人たち、病人、身体障害者、性同一性障害や自閉症の子どもたちなど、マイノリティも含めてすべてが一緒になった。世間は『絆』で盛り上がっていたが、ウソ。現場はとても厳しかった。しかし、そういう視点の番組企画を売り込むと『デリケートなテーマだから』と断られた」と語った。

厚労省の定義では39歳までが若者

 次に、長野県上田市のNPO法人侍学園スクオーラ・今人の理事長、長岡秀貴氏が登場した。まず、長岡氏自身の生い立ちと学校設立までの経緯を、映像でプレゼンテーションした。

 まず、長岡氏は「何歳までを若者と呼ぶか?」と問いかけ、「厚労省の定義では、16歳から39歳までだ」と告げると、会場にどよめきが起こった。厚労省が「若者」の年齢の上限を、従来の34歳から39歳に引き上げた理由は、若年者の非社会化傾向の急増と高齢化によるものだと、長岡氏は指摘する。

 続けて、不登校者13万人、非正規雇用やニート84万人、6ヵ月以上、親以外との接触がまったくない引きこもりが100万人以上いるとし、「日本には6300万人の就業者と、4800万人の無業者がいる。失業率は低いが、長期失業者の比率は世界的に高いというのが実態で、一度離職すると復帰しにくい構造だ」と話した。また、就労から3年以内の離職率は中卒者が7割、高卒者5割、大卒者3割で、「七五三現象」との言葉があることも紹介した。

引きこもりに2つのタイプ

 長岡氏は「孤立無業者(家族以外と会話がない非労者)は、1996年に35万人だったが、2006年には107万人。10年で一挙に3倍になった」と言う。

 そして、「自分の欲望がわからず、社会との関係を絶つ『タイ無し』は、ニート、引きこもりにつながる。引きこもりにも2通りあり、家に引きこもるのと、さらに、家族とも会わなくなる自室引きこもりに分かれる」と話し、20年間自室に引きこもっていた人を立ち直らせた体験を語った。

 このような人たちが増加していることに、「国は何の策も講じてこなかった」と長岡氏は指摘する。「15歳から引きこもって30歳で何とか外に出たとしても、就業経験が皆無では定職につけず、結果、生活保護受給者になる。現在、30代の引きこもりの人は約30万人いると見られている。これらの人たちが月5万円の生活保護費を受けると、最低でも年間1800億円かかる。そして、彼らには納税した期間がないので、実質、国の負担は2倍の3600億円になる。これは、米軍への思いやり予算に匹敵する」。

 長岡氏は、若年者支援は福祉事業ではなく、即効性のある社会投資事業だと訴える。「現在、15歳から39歳の若者15人に1人は就労していない。自分たちの活動は、すぐに社会貢献にはね返る」と述べ、25歳の引きこもりの若者を例に挙げて、「彼が就職できなければ、社会保障費がマイナス6300万円。しかし、そこから脱して65歳まで働いたら、納税額は5100万円を超える。25歳の若者ひとりの自立が、結果、1億円の国益になる」と説明した。

 さらに、「われわれが行っている若年者支援は、社会投資事業として即効性が高い。一度も働いたことがない25歳の若者が、引きこもりから脱して働き始めた瞬間から国益が生まれる。彼が25歳から65歳まで働いて、消費や納税をすれば、最大で1億円の社会的便益となる」と語り、若年者支援は社会投資事業であると力説した。

 長岡氏は、「自分は、いろいろなことをやっているが、誰かに幸せを感じてもらえればいい。東日本大震災の時は2週間後に現地に入り、戦場のような光景を見た。しかし、そのあと繰り広げられた、絆や命が大切との連呼には違和感があった。それまでにも、この国には年間3万人の自殺者や、精神病院からの死亡退院者1万5000人がいた。それだけ心を病んで死んでいく人がいる国が、本当に豊かなのか。そういう世の中を、次世代に手渡したくはない」と述べて、トークを終了した。

考えない、しゃべらない、問題意識を持たない若者たち

 岩上安身が会場に到着。東氏、長岡氏、岩井氏も交えて、日本のマイノリティに関して、お互いの意見を交わした。

 岩上安身は、マイノリティを生み出す社会構造があることにふれて、ミクロ(個々)とマクロ(国家)を同時に考えなくてはならない時代にいると語った。「長岡さんのように、個々の若年者への就労支援が国益になるという考えがある一方で、たとえば外国人を安く使いたい人間(企業)もいる」とし、「今は大不況だが、メディアはそれを見せない。マスコミは広告で成り立ち、その広告主はグローバル企業で外資だから、日本の国益には関知しないのだ」と話した。

 東氏は、「若い人たちの政治への意見を聞いても、『しょうがない。みんながそう言っているから』と、何も考えていない。そして芸能界では、自分の言葉で話す人たちは嫌われる」と明かした。岩井氏は「若者たちは、考えない。しゃべらない。問題意識を持たない」と嘆いた。

 岩上安身は、「世界は核戦争に向かっている。サイバー、宇宙、ドローン(無人機)に、日本の記者たちはまったく興味がない」と述べ、アメリカン大学教授のピーター・カズニック氏の話を紹介。安倍首相の進める集団的自衛権の行使、武器輸出三原則の緩和などについて、「人権感覚はゼロ。公務員が拷問をしてもいい、という憲法改正を進めている」と述べた。

 長岡氏は「巷の若者は、そのような話はまったくキャッチ(理解)できない。小学校3年生で『公務員になりたい』と言う時代。戦争は大義で大きくなっていくが、その種は家庭内の小さなところから、すでに芽生えている。女子高生にとって、69年前の太平洋戦争は、武田信玄、織田信長と同じ距離感だ」と話した。

 東氏は「それは、彼女たちの責任ではない」と述べて、教える側の責任に言及し、「今の若者たちは、本当に小さなコミュニティや人間関係にとらわれていて大変だ」と同情を見せた。その上で、「今回のテーマの『ほとんどのことはどうでもいい』というのは、宇宙視点で考えろ、という意味だ」と力を込めた。

ウクライナとイスラエルとガザの点と線

 続いて、岩上安身のワンマン・トークに移り、現在の世界情勢について、ウクライナとマレーシア民間機17便撃墜事件、ガザのジェノサイドとのつながりを解き明かした。

 まず、ガザ空爆の映像を映し、「ガザは、東京23区程度の広さに180万人の難民が暮らす地域」だと説明。「ガザ封鎖というが、監禁ジェノサイドをメディアは報じない」と語る岡真理氏(京都大学教授)へのインタビューや、反シオニストのヤコブ・ラブキン氏(モントリオール大学教授)のアメリカの免責性の話を紹介した上で、「世界の80数人の資産が、35億人の資産に匹敵する」と述べ、背景にある富の一極集中を指摘した。

 続いて、板垣雄三氏(東京大学名誉教授)が、マレーシア17便撃墜事件とガザ地上戦開始のタイミングや、ウクライナ首都のキエフでの、2月18日の決定的な武力衝突と、元IDF軍人青ヘル隊という元イスラエル兵のウクライナ軍への関与を語る映像を見せた。

 「スヴォボーダ(全ウクライナ連合「自由」。反ユダヤ・極右政党)に協力しているのが、ナチスを一番嫌っている元イスラエル軍人たち。また、マレーシアのナジブ・ラザク首相は、ファタハとハマスの連立政権(2013年5月)を導いた立役者だが、それをイスラエルは大変怒った」。

 加えて岩上安身は、「マレーシアはイスラム国。TPPにも反対している。そこに、マレーシア航空17便の撃墜事件が起きた。親ロシア派の仕業だと言われているが、信憑性がない。また、マレーシア調査団は、事故後、武装集団が支配する中で、すぐに現地に入り、ブラックボックスやオランダ人の遺体を回収している」と指摘し、次のように続けた。

 「ウクライナは、公用語だったロシア語を禁止した。2014年5月2日、オデッサで市民をビルに閉じ込め、火をつけて焼き殺すジェノサイドが起きた。市の警察は、ネオナチの犯行が明らかなのに、彼らを警官にさせる。ガザで市民1000人が殺されたと言うが、ウクライナでも、おなじ数の市民が殺されている。ロシアに逃げるウクライナ人は14万人を超えた。東ウクライナで民族浄化が行なわれているが、それは誰も言わない」。

ピーター・カズニック教授「オバマ大統領は核戦争を止めない」

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「「ケネディは核戦争を止めたが、オバマは止めない」 〜第34回ロックの会 東ちづる、岩井俊二、長岡秀貴、岩上安身」への2件のフィードバック

  1. 居残り佐平次 より:

     東ちづるさんの活動を初めて知りました。ハンディキャップを持つ人にとって、確かに日本の社会は生きづらいでしょう。ひとつも弱者に優しくないですね。私たちの在り方、社会の在り方・・・いろいろと考えさせられる内容でした。
     長岡さんの取り組み、そして若者のひきこもりの実態も全く知らない話でした。長岡さんの話はもっと詳しく知りたいですね。
     岩上さんの話は、普段のIWJのダイジェストのダイジェストという内容で、しかも重要なテーマでした。

     今回松田さんが不在だったせいか、とっちらかったロックの会だったかもしれませんが、次回も楽しみです。

  2. うみぼたる より:

    イスラエルのガザ攻撃についてまとめてある映像が見やすかったです。
    (他の講演で岩上さんが使われていたIWJの映像も見やすいし、かっこいい作り。古田隊長さんかしら?)
    前半を見逃してしまったので後半の感想になりますが、
    イスラエル・パレスチナ問題に関して、岡先生からはガザの深刻さが悲痛なほど伝わってきますし、ラブキンさんのお話は、多民族社会に生きる人と日本の違いを言葉の端々から感じました。
    そして板垣先生。現在進行形の百科事典状態なので、アーカイブさえ20分ごとに止めないと濃縮された言葉を岩上さんがひも解いても、私はついていけません。マレーシアにおけるシンガポールの位置づけがどうなっているのか、とても気になったというか、気をつけなくてはいけないことのように感じました。

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