正確な理解とは?いまだ拭えぬ放射性物質による健康不安 ~省庁主催のシンポジウムで 2014.3.18

記事公開日:2014.3.19取材地: テキスト動画
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(IWJ・古田晃司)

 消費者庁、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省の主催で、3月18日、「食品に関するリスクコミュニケーション 食品の放射性物質に関する現状と今後の取組 ~正確な理解のために~」と題したシンポジウムが千代田区の星陵会館で開かれた。

 放射性物質による健康問題がテーマということで、会場にはNPOや市民団体はもちろん、福島から参加した市民も目立ち、食品がもたらすリスクに関して、市民の問題意識の高さがうかがわれた。政府主催のシンポジウムということもあり、市民らが政府側の姿勢に疑問を呈する場面も見られた。

 このシンポジウムは、食品中の放射性物質とどう向き合うか、その課題や対策について意見交換を行い、理解を深めていくことが狙い。震災から3年を経た今、改めて、食品中の放射性物質の基準値や、人々の健康への影響、生産現場での取り組み、国や地方公共団体が実施する検査などに関して、福島県内で様々な取り組みをしている専門家、生産者、事業者それぞれの立場から、報告が行われた。

記事目次

■ハイライト

心配や不安をどのように“管理”していくか

 会の冒頭、福島県立医科大学災害医療総合学習センター副センター長の熊谷敦史氏が基調講演した。熊谷氏は、「放射性物質による健康問題の心配や不安をどのように“管理”していくか、食品の点から見直してみたい」と食品に関するリスクコミュニケーションの必要性を強調。

 モニタリング調査の結果をはじめ、ストロンチウムやプルトニウムの分布にも言及した上で、熊谷氏は、個人線量計のデータや食品のデータが、ほとんどの地域で目標値をより低い値を示しており、生涯10ミリシーベルト以下と見込まれることから、自身の見解を次のように述べた。

 「放射線によるリスクのみを特別扱いして、その他の(肥満や野菜不足、運動不足などの)リスクを高めてしまわないように、バランスをもった判断が求められている」

生産者、事業者それぞれの立場からの報告

 「パネリストからの情報提供」と題したスピーチコーナーでは、JA伊達みらいの一又清市氏が、福島県の名産品でもある「あんぽ柿」などの果樹栽培を例に、現状の食品検査体制と放射性物質低減のための対策を紹介した。

 独立行政法人水産総合研究センターの森田貴己氏は、水産物に関して、福島県の小名浜港で行われている試験操業の状況や、魚介類のストロンチウム90の測定結果について報告した。

 日本生活協同組合連合会(CO-OP)の山越昭弘氏は、家庭での食事から、放射性物質の摂取量を調査する取り組みについてスピーチした。「コープふくしま」などでは、調査に参加した家庭から2日間6食分の食事を提供してもらい、実際の食事に含まれる放射性物質の濃度を測定するという陰膳(かげぜん)検査を実施。一般的な食品測定よりも、生活に則した方法で測定している取り組みを紹介した。

 最後にスピーチした一般社団法人FOOD COMMUNICATION COMPASSの森田満樹氏は、食品のリスクについて、科学的根拠に基づく客観的な情報を消費者へ提供するために、ステークホルダー(利害関係者)が相互にやりとりしながら理解を深める、すなわちリスクコミュニケーションを継続していくことの必要性を主張した。

(…会員ページにつづく)

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