福島第一原発の原子炉を製造した企業を相手に裁判を起こす「原発メーカー訴訟」。その原告団代表の崔勝久(チェ・スング)氏と、弁護団長の島昭宏氏による記者会見が、3月12日、日本外国特派員協会で行われた。
「原発メーカー訴訟」は、原告が今年1月30日に、米ゼネラル・エレクトリック社、東芝、日立製作所の3社を相手取り、東京地裁に損害賠償を求めて提訴したことが始まりとなった。これは電力会社以外の企業を相手に起こした初の訴訟であり、1415名が原告に名を連ねた。
そして、3月10日には2度目の提訴があり、原告の数も2720名にのぼっている。原告には、日本の被災者だけではなく、米国、イギリス、スイスの他、日本政府が原発輸出を進めようとしているインド、フィリピン、インドネシアなどの途上国の人々も加わっている。
「原賠法の死角」を突く、原発メーカー訴訟
日本の原子力損害賠償法(原賠法)は、原発事故の賠償責任について、電力会社など原子力事業者のみが負うと規定しており、原子炉を製造したメーカーには、賠償請求できないことになっている。
リーガル・チャネリング(法的責任の集中)と呼ばれるこのような規定は、憲法29条の財産権保障や13条の幸福追求権、25条の生存権などに反しており、違憲であると、原告側は主張している。
これまで、東京電力に対する損害賠償請求は何十件も提訴されているが、原発の製造業者に対する訴訟はなかった。今回の「原発メーカー訴訟」には、そうした法律の不備に風穴を開ける目的がある。
今回の訴訟において、原告側は、リーガル・チャネリングによって被った「精神的苦痛」に対する賠償請求(原告一人あたり100円)を提訴している。
日本は脱原発を世界に働きかける責任がある
「原発体制を問うキリスト者ネットワーク」(CNFE)の共同代表で、「ノー・ニュークス・アジア・アクション(NNAA)」事務局長を務める崔勝久氏は、「福島原発事故に苦しむ日本から、世界に対して原発再稼働や原発輸出にノーを言わなければならない」と、世界の市民が連携して原発推進の動きを止めることの重要性を語った。
韓国や台湾の法律でも、日本と同じようなリーガル・チャネリングの規定があることから、崔氏はアジア各国で数々の抗議集会を主催。台北に建設予定の「第四原発」に対する市民の反対運動にも参加した。
崔氏は、「台湾で稼働している原発は、福島第一原発と同型であり、日本から海外に最初に輸出された原発だ」と指摘。脱原発のために、日本は海外と協力していく必要があると語った。
「GEが1960年の始めに日本に最初の原発を建設して以来、日米両国の政府によって原賠法のような仕組みが決められたことを、日本国民は知らされていない」と、崔氏は語る。原発メーカーの免責規定は、世界中の法律で定められている「構造的問題」であると主張した。
崔氏は、「人間の生存のために、このような構造を破壊しなければならない」と述べ、「それは市民の力と、国際的な連帯によって可能だ」と、今回の訴訟の意義を訴えた。
果たして勝訴の見込みはあるのか