原発メーカー訴訟「法戦術を駆使し『日立、東芝、米GE』の責任を問う」 〜島弁護団長が表明 2014.1.18

記事公開日:2014.1.18取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2014年1月18日、大阪市天王寺区の南YMCAで「1.18集会『原発メーカー訴訟の意義について』」が開かれ、弁護士の島昭宏氏と原発メーカー訴訟の会の崔勝久(チェ・スング)氏が講演を行った。原発メーカー訴訟の会は日立、東芝、米GE(ゼネラル・エレクトリック)の原発メーカー3社を相手取り、今月中に第1次の訴訟を起こす予定。

 「原発メーカーにも責任追及の矛先を向けない限り、今の原発体制は崩れない」と力説した島氏は、この訴訟で弁護団長を務める。「あんなに酷い福島原発事故を起こしたのに、東京電力に義務づけられた保険で賠償できるのは1200億円まで(9兆円は税金負担)。しかも、原発メーカー3社は完全に『免責』される」と、原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)に守られながら、原発ビジネスが展開されている実態に触れ、「日本の市民グループなどによる、東京電力や国を相手取った訴訟はすべて、体制側にとっては想定内の出来事で、痛くもかゆくもない」と述べた。

■ハイライト

  • 講演
    島昭宏氏(弁護団長)「原発メーカー訴訟の法的根拠」
    崔勝久氏(原発メーカー訴訟の会事務局長)「市民の国際連帯運動の拡がり―台湾・フィリピン・インドネシアを訪問して」

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 会場は約70人の市民らで満員状態。前半の登壇者、自称ロック弁護士の島氏は客席に向かって、わかりやすいスピーチを展開した。

 東電や国だけを糾弾する反原発のデモを、国会議事堂前などでいくら重ねても、日本の原発体制は崩れない──との認識を重ねて表明した島氏は、「原発メーカー訴訟」の意義を強く訴えた。

 同訴訟は、この集会の後半でマイクを握る崔氏が音頭をとって展開する、いわば「世界規模の市民運動」。過酷な原発事故が起きた折に、「戦争に匹敵する破壊力がある」(菅直人元首相談)、危険物(原発)を製造・販売したメーカーに、責任がないわけがないとの立場で、2011年3月に発災した福島第一原発事故を捉えるもので、同所の原発メーカーである日立、東芝、米GEの3社を相手に訴訟を起こす。それも、日本国内のみならず、海外からも反核の市民有志を募り、1万人以上の大原告団を組織するやり方で、だ。

裁判所に軽視されないために

 「原賠法」は、被害者の保護と原子力事業の健全な発達という2つの目的を掲げている、とした島氏は、これらは両立がほぼ不可能と指摘する。「原賠法の中身で、被害者保護を意味するのは『電力会社に対しては、過失を立証しなくていい』という1点のみ。それ以外の部分はどれも、原子力事業の発達を支援するものだ」。

 「日本の原賠法には、1961年に米国から原発を輸入する折に、急きょ国会で議論されて作られた経緯がある」。原賠法が日本にできたことで、米原発メーカーはもとより、日立や東芝といった日本勢も大喜びしたに違いない。自分たちが作って売った原発が、日本で、どんなに過酷な事故を起こしても、自分たちは「免責」されることになったからだ。

 島氏は「原発メーカー訴訟には、強い反発が予想されていた」とした。そして、「原倍法にメーカー側の免責が明記されている以上、裁判所に相手にされず、即日結審(敗訴)のオチがつく可能性を考慮に入れていた」とも語る。その上で、それを避けるには、裁判所に対し、多大なインパクトを与えることが肝要で、そこで思いついたのが、「世界中から、合計で1万人の原告を集める一手だった」と語り、次のように強調した。

 「世界中の人が、原発メーカーを訴える裁判の行方を見守っていることをアピールすることが、もっとも重要。(日立、東芝、米GEの3原発メーカーへの)請求額は、原告1人につき100円に過ぎない」。

 今回の訴訟を支える「法的理論構成」の説明に議論が移ると、島氏は「まずは、PL法(製造者責任法)に基づく請求を行う」と語った。

多重の理論武装を施す

 島氏はPL法の観点から、「日本という国で、地震や津波で事故を起こした原発は、本来備えているべき安全基準を備えていない」と主張し、1. 福島事故につながった地震や津波は想定できた、2. 福島第一原発は2000年以降にできた耐震を巡る「新指針」への適合が不十分だった、3. 部品の老朽化、4. 事故を起こした4基・米GE「マークI型」は米国議会で欠陥が報告されていた──の4つに触れた。

 そして島氏は、民法290条に基づく不法行為で損害賠償請求を行うとした。これは「過失」の証明が要件で、「新指針への適合不備は東電の落ち度だとする見解は、示される公算が極めて大きいが、毎年行われる、原発の定期検査はメーカーの子会社が担当する。要するに、メーカーは事業者に対し助言する義務があるのだ」とのこと。

 これら2つの請求には「原倍法は憲法違反」との前提がある。具体的には、1. 免責を理由に裁判所が提訴を跳ね除けたとしたら、それは裁判を受ける権利に反する、2. 原子炉メーカーだけがPL法適用外という理屈は平等原則に反する、3. 憲法13条(幸福追求権)と同25条(生存権)を根拠にした、放射能の恐怖から逃れて生きる権利が侵害されている──の3つだ。

 さらにまた、島氏は「原賠法」に基づく請求も行うとも言明。同法の5条には、「事故がメーカーの故意であれば、事業者(東電)は被害者への賠償金をメーカーに求償できる」との旨が記されており、島氏は「故意とは、あえて、それをやったということだけではない。この場合、メーカーが事故が起こる可能性を把握していたにもかかわらず、放置していたことも含まれる」と説明した。

 島氏が降壇し、5分間の休憩中には、主催者の男性が客席に向かって、「原発メーカー訴訟」の原告団への参加を熱く呼びかけた。「印鑑は不要で、手続きはとても簡単。国内は1000人が目標で、すでに850人ほど集まっている」。

間違った常識を正す

 「先日、九州の私立大学で講演をしたところ、集まった計100人ぐらいの学生で、福島第一原発のメーカーの名前を知っている若者は1人もいなかった」──。後半の登壇者、崔氏はこう苦笑し、日本人が福島原発事故を問題視する際に、「原発メーカー」の責任を問う視点がすっぽりと抜け落ちている、と懸念を示した。「原賠法による、原発メーカーの免責を知っている日本人ともなると、1000人に数人ぐらいだと思う」。

 そして先ごろ、韓国、台湾、フィリピン、インドネシアの原発立地国・地域を訪れた折のことを話題にし、「想像通り、どこにも『原賠法』か、それと同質の、事故があった場合の責任は事業者に限定する法律が存在していた。だが、韓国や台湾の反核運動家は、そのことをまったく知らなかった」と伝えた。

 崔氏は、これを「米国が、核で世界を支配しようとしていることの表れ」とし「核兵器不拡散条約(NPT)」に言及した。これは、核兵器保有を米国、ロシア、英国、フランス、中国の5ヵ国だけに認めるもので、それ以外の国への核拡散を防ぐことが狙いの国際条約だ。「核兵器を持たないことを約束すれば、米国の原子力産業が基本技術を握っている『原発』は持っていいとするものだが、『核の恐怖』から本気で世界を救いたいのなら、『原発も持ってはいけない』という内容にすべきだ」。

 原発メーカー訴訟については、「メーカーを訴える試みは、われわれが世界初」と強調。「原賠法がある以上、原発メーカーを相手に裁判で争っても無意味、という助言はむろんあるが、私は『原賠法を変えればいい』という立場だ」。崔氏は、過去に日本で展開した市民運動で、国籍という障壁を打破して児童手当や年金の権利を勝ち取る成果を上げている。

インドネシアだけで「1万人」原告の目処が

 その上で崔氏は、「今は、世界の市民が国境を越えて『反核』というキーワードの下で一致団結する時だ」と訴えた。「私は在日であり、韓国人でもない、日本人でもない、という自分の立場に長らく悩んできたが、すでに『国籍など突破してしまえばいい』という確信を得ている」。世界はこうなってほしいという、自分が描く「理想像」を実現させることに、自分の存在理由を見い出せばいい、と力を込める崔氏は、「原発メーカー訴訟は、世界のしくみを変える戦いだ。全世界が『核の恐怖』という共通の問題を抱えているからだ」と言葉を重ねた。

 崔氏は、有識者らが頭の中で主張や提言を構築し、それを集会などで発表して終わりという、自己完結型の市民運動はほとんど無意味、との発言をしている。「原発メーカー訴訟では、『国際連帯』を観念ではなく、具体的な運動を通じて実現させる」と力を込めつつも、「それは、みんなで集まって『原発反対』を叫んで終わり、というものではない。実際に戦う意志を持った共同体を作っていかねばらず、難しい面がある」と打ち明けた。

 ただ一方で、こうも話すのだった。「訪問したインドネシアでは、実に1万人の原告を集められる目処がついた。正直なところ、疲れが一気に吹き飛んだ。日本国内では100人という単位を集めるのに、けっこう苦労していたからだ。今日、会場に集まった皆さんが加われば、国内原告団は900人ぐらいになるだろう。そして皆さんが、友人知人に声をかけてくれれば、すぐに1000人に達するはずだ」。

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