「六ヶ所再処理工場で出るヨウ素129の半減期は1570万年!」 〜原発事故現場どうなってるの?講師 末田一秀氏 2014.2.1

記事公開日:2014.2.1取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「福島第一原発の、4号機燃料プールから取り出した使用済み核燃料を保管するため、他の貯蔵プールに以前からあった使用済み燃料の移設作業も並行して行なっている。それらは、乾式キャスクで屋外に仮保管という、今までやったことのない方法で保管する」──。末田一秀氏は、原発事故現場の高リスク作業に懸念を表明した。

 また、「もし、青森の六ヶ所再処理工場が本格稼働したら、原発1年分の放射能を1日で放出する。再処理工場で出るヨウ素129の半減期は1570万年だ」などと、恐ろしい事実を明かしていった。

 2014年2月1日、大阪府茨木市の市民総合センターで「再稼働?とんでもない 原発事故現場どうなってるの?」が行われた。反原発・脱原発運動の交流紙『はんげんぱつ新聞』の編集委員である末田一秀氏が福島第一原発の現状やその汚染の現状、原発再稼働に向けた動きについて講演を行った。

■全編動画 ※配信状況により、録画が一部欠けております。何卒ご了承ください。

  • 講演 末田一秀氏(はんげんぱつ新聞編集委員)
  • 日時 2014年2月1日(土)13:30~15:30
  • 場所 市民総合センター(クリエイトセンター)(大阪府茨木市)
  • 主催 食と未来の会

津波を事故原因にして再稼働を企てる

 『はんげんぱつ新聞』編集委員の末田一秀氏は、まず、原子力発電の基本構造、福島第一原発事故の様子、公表された、津波による電源喪失の原因を列挙した上で、「しかし、本当に津波が原因だったのだろうか」と異議を唱えた。

 福島第一原発の運転記録を示しながら、「地震の直後(15時29分)、モニタリングポスト3で、高線量を記録している。津波到来前に、原子炉が壊れていた証拠が残っているにもかかわらず、東電は、それを認めようとしない」と述べ、さらに、「津波を原因にしたいのは、静岡県の浜岡原発が、防潮堤が完成したら再稼働申請をする予定だから。もし、福島第一が地震で壊れたとなれば、浜岡の再稼働は認められなくなる。だから、結局、3年たった今でも、事故原因をはっきりさせない」と指摘した。

絵に描いた餅でしかない東電の作業計画

 末田氏は「東電の資料によると、いまだ、大気中には1時間あたり1000万ベクレルのセシウムが放出されている。冷やし続けなくてはならない原子炉からは、汚染水が発生し続けている」と、その様子を図で説明。

 「そのために、汚染水処理装置アルプスで処理した水を海へ放出しようとするのだが、トリチウムは防げない」と話し、さらに、1日400トン湧き出る汚染地下水を貯えるタンクと、その水漏れの実態を語った。

 次に、4号機使用済み燃料プールの危険性と、燃料棒取り出し作業の方法、そのスケジュールをスクリーンに映し、「使用済み燃料を保管する別の共用プールがあり、そこに今回、取り出した使用済み燃料のスペースを作るという。しかし、すでに手狭なため、以前から貯蔵してあった使用済み燃料の移設作業も並行して行なっている。それらは、乾式キャスクで仮保管するというが、今までやったことのない、地上に保管する初の工法である」と、リスクの高い作業であることに懸念を示した。

 さらに末田氏は、1~3号機の原子炉に溶け落ちた燃料の取り出し方法に言及し、「釜に水を張り、クレーンを設置して取り出すというが、絵に描いた餅だ」と断じて、東電の計画に疑問を呈した。

除染をしても仮置き場も定まらない汚染地域

 次に、放射能汚染について、20年たっても高濃度汚染地域は変わらないという政府の試算や、避難区域の再編マップを掲示し、「帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除区域の線引きがあいまいで、補助金問題なども表出している」と話す。

 「除染をしても線量は下がらない。除染したごみ処理の問題も、仮置き場が定まらないので、仮・仮置き場で保管している状態。現在、国は、中間貯蔵施設を計画しているが、30年以内には福島県外で処分するという。どうなることか」。

 また、「福島県外での8000ベクレルを超える廃棄物は、指定廃棄物(放射性物質が、ごみ焼却灰、下水汚泥、浄水発生土、たい肥などに付着・濃縮したもののうち、環境大臣が指定したもの)として、各県内で処分するというのが、国の方針だ」と話し、栃木県矢板市の処分場建設に対する、1万人反対集会の写真を見せて、「放射性物質汚染対処特措法は、欠陥法」と指摘した。

 末田氏は「放射性廃棄物処分場は、原子力規制委員会の許可が必要で、一般廃棄物、産廃処分場は都道府県知事の許可が必要。ところが、指定廃棄物処分場には、許認可はいらない。そして、放射能が漏れ出しても、検査指導、改善命令を出す責任者がいない」と述べ、ずさんな国の対応に憤った。

甲状腺がんと震災関連死の増加は止まらない

 続いて、セシウムとヨウ素被曝に関する、福島県の県民健康管理調査に話題を変えた。

 「県民の不安を和らげるのが目的で始めた検査だったが、22万6000人中、59人(甲状腺がん26人、疑い33人)も見つかった。にもかかわらず、県の検討委員会は、被曝前の病症と言い逃れる。疫学の専門家の津田敏秀教授(岡山大学)は『危険な状態だ』と警鐘を鳴らすが、県は、聞く耳を持たない」。

 続けて、「20ミリシーベルト被曝」によるがん死について話し、食材中のセシウムの汚染基準、基準値を超えた主な食品リスト(魚が多い)を示し、「現在の関西だと、汚染した魚は、市場からは消えた状態になった」と話した。

 そして、被災者の現状について、「いまだ、約15万人が避難中だ。福島県民の、避難してからの震災関連死が1648人と、震災で直接亡くなった人の数(1599人)を上回った。また、子ども・被災者支援法もうまくいっていない」と述べた。

核兵器のためのもんじゅと六ヶ所再処理工場

 質疑応答を挟んで、再び、末田氏の講演に移った。

 「安倍政権の原発推進計画では、ベース電源として原発再稼働を是認。新規制基準で再稼働審査をするが、それはシビア・アクシデントが起きた時の影響緩和の基準で、決して、福島第一のような事故を起こさないことを課したわけではない」。

 また、核燃料サイクルについて、「すでに1兆円を費やした高速増殖炉もんじゅの稼働の目処がたたない。さらに、点検漏れも1万4000件、見つかっている。それでも廃炉にしない理由は、もんじゅが生産するプルトニウム239は、とても純度が高く、核兵器には最適だからではないか」と指摘して、次のように続けた。

 「自民党の石破幹事長は、『原発は、核の潜在的抑止力になっている』と発言。現在、日本は30トン超のプルトニウムを保有する。青森の六ヶ所再処理工場でプルトニウムを抽出するが、そこでも事故が発生し、うまく稼働していない。再処理工場は、原発1年分の放射能を1日で放出する。特に、ヨウ素131の半減期は8日だが、再処理工場から出るヨウ素129の半減期は1570万年だ」。

 さらに、「この3年間の試運転中でも、海産物はすでに汚染され、大気へ7億4000万ベクレル、海洋中に5億5000万ベクレルの放射性物質が放出されている。もし、稼働したら、大気中へ年間110億ベクレル、海洋中に430億ベクレル排出される」。そして、すでに六ヶ所村の村民が、ヨウ素129に基準の30倍も汚染されていた検査結果を明かした。

 末田氏は、先の見えない使用済み核燃料の行方と、自然エネルギーの可能性について語って、講演を終えた。再度、質疑応答と会場からの意見表明があり、自分の3.11後の避難体験、新設中のフルMOX燃料の大間原発(青森)の危険性などを、参加者が思い思いに語った。

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