2025年6月17日、「岩上安身によるインタビュー第1196回ゲスト 一級建築士・建築エコノミスト森山高至氏 第2回 後編」を初配信した。
第2回インタビューの後編では、これから本格的な梅雨、そして厳しい暑さの夏を迎えるにあたって、大阪関西万博の会場での、落雷対策や、熱中症対策の問題点について、森山氏とともに検証した。
大阪関西万博の会場で、最も高い建造物である大屋根リングには、避雷針が立てられていない。鉄製の手すりが避雷針の役割を果たす設計になっている。
避雷設備に落ちた雷は、地中に電流を流す仕組みになっているとのことだが、その地中には、今もメタンガスが発生している。
森山氏は、「地中に杭を打って、かなり深いところまで電流を誘導しているのかもしれないし、どういう形になっているのかはわからない」とした上で、「地中のメタンガスが、雷によって爆発する例はある」と、明言した。
森山氏によると、現在、多くのビルの屋上などでは、避雷針を立てず、このように、手すりを回して、避雷設備にしているとのこと。しかし、こうしたビルは、屋上に人がいることを前提としていないが、大屋根リングは、屋上が展望施設となっている。
万博の大屋根リングの場合も、雷雲が接近してきた場合は、リング上にいる人を地上に降りるように誘導することになっている。しかし、そもそも学校の校庭などで起きる落雷事故では、近くに校舎などの高い建物があるにもかかわらず、遠くで雷の音が聞こえたと思っていたら、人に落ちたという例も多数ある。
- 奈良 落雷事故で警察が状況確認 学校側は安全管理指針を公表(NHK、2025年4月17日)
「これは、本当に心配」という森山氏は、木製の大屋根リングが、落雷によって焼ける可能性もあるとした上で、次のように指摘した。
「一番危ないのは、雷が来たというので、みんな(大屋根リングの)下に降りたと。そこまではいいですよね。
では、どうしましょうかと。駅に行くんですか、とか。そうすると、また行列でしょう。
雷が鳴り出して、あの行列だったら、ちょっと怖いと思います。そっちも、結構危ないですよね」。
さらに森山氏は、この大屋根リングについて、「これ(大屋根リング)って、許認可を『建築』として取ってないんですよ」と、意外な事実を明らかにした。
森山氏によると、床面積が一定以上の「建築」の場合、映画館や劇場などのように、人が大勢集まる場所は、燃えない建築にしなければならないとのこと。
そうなると、「木を使った建築」が実現できなくなるため、「建築の弁護士軍団みたいなのを集めて、『どう、この法的な解釈をOKにしようか』と、練りに練って、脱法してるんです」と、森山氏は明かし、次のように解説した。
「(万博という)一過性のイベントのためのもので、海の家と同じだから、何をやってもいいだろうという気構えでやってるんですね。
だけど、法律にうるさい人からしたら、『人が大勢集まるのに、こんな不燃じゃないのは、まずいだろう』と言う人がいるじゃないですか。
それに対して、『いやいや、これは床(建築)ではありません』みたいな立て付けで、そういう大規模な施設じゃないんだという解釈にして、『床じゃなくて屋根だ』と。
そこが、非常に脱法的なんです」。
森山氏は、「本当は、大勢の人が上がるところは、燃える材料は使っちゃいけない」と強調し、「そういう意味で、法解釈をすごく緩和しているのに、そのことは全然アナウンスしていないでしょう。そこが問題なんです」と指摘した。
続いて、熱中症対策のテーマになると、森山氏は「これは、本当に大変なことになる」と述べ、「真夏に、海の近くで、周りに何もないところの暑さは、本当にすごい」「万博会場は、今のところ、1時間待ちの、何時間も歩いて、みたいな話ですから、真夏はかなり厳しいでしょうね」と、懸念を示した。
さらに森山氏は、万博会場では「医療施設が脆弱」だと指摘し、「例えば、(冷房を効かせた)休憩用バスでも置いておけばいいのではないか。本当に具合悪くなったら、バスごと、病院に行く。それぐらいなら、今からでもできるんじゃないですか」と提案した。
森山氏は、「真夏に、ゲートで、行列ができて、待たされた時が地獄でしょうから、あそこに少し、ちょっと日陰になるようなテントでも、増やしておいてあげる必要がある」「お金がかからないし、すぐにやった方がいい」と断言した。
森山氏は、「もう本当に、とりあえず開幕して2ヶ月経って、『まだまだ問題が山積み』どころか、次々に新しい問題も起きているという、とんでもない感じですよね」と語った。
































