現在、イスラエル国防軍によるレバノンの地上侵攻が進んでいます。
イスラエルは、レバノンへの侵攻を、イスラエル北部住民を、ヒズボラの脅威から守り、ヒズボラを排除して、避難しているイスラエル市民を北部に帰還させることだとして正当化を図っています。
ヒズボラは、すでにお伝えしているように、1982年に、イスラエルがPLOを攻撃するために行った、レバノン侵攻に対する抵抗組織として誕生しました。
イスラエルのレバノン侵攻もガザ侵攻も、先住民であるパレスチナ人を虐殺追放し、ユダヤ人中心の国家である「イスラエル」を1948年に建国したときに始まる「パレスチナ問題」が根底に存在します。
今日、お伝えする【IWJ号外】は、歴史研究者でジャーナリストのエバン・リーフ氏が、多くの研究や歴史資料を踏まえて、ユダヤ人の国家である「イスラエル」の建国を正当化し、その後の「イスラエル」という国家形成を推進してきた「ユダヤ人のパレスチナにおける先住性」という「シオニズム」には、歴史的な根拠がまったくないことを暴露しています。
現在のイスラエルのレバノン侵攻もガザ侵攻も、ディアスポラ(離散)したユダヤ民族の故郷への帰還という行為の結果、起きている出来事ではまったくなく、イスラエルが、本来自分たちの土地ではないレバノンやパレスチナを民族浄化していることをつまびらかにしてくれます。
その民族浄化の目的は、先住民を虐殺し、追放し、土地を略奪し、ユダヤ教徒である、というだけのヨーロッパ系移民による定住と搾取のために、あらんかぎりの暴力をふるうことだったのです。
今回の【IWJ号外】は、第一部です。ぜひ、お読みください。
第二部では、さらに突っ込んで、「聖地におけるユダヤ人の先住性という概念がどのように作られたのか、その目的と、それを広めた人物たちについて取り上げる」とエバン・リーフ氏は述べています。
ぜひ、第一部、第二部と連続してお読みください。
以下から、エバン・リーフ氏の記事となります。
- The New Man: Part 1(DD Geopolitics、2024年10月1日)
新しい人間:第一部
シオニストが別の人々を抹殺するために、いかにして新しいタイプの人間を作り出したか
「現代において均質な集団を促進するためには、現在の共同体のすべての構成員の父親と『祖先』を時間と空間の中で結びつけるような長い物語を提供することが、他のことと並んで必要だった。
このような密接な関係が、国家の体内で脈打っているかのように主張されているが、実際にはどの社会にも存在しなかったため、記憶の担い手たちは懸命にこれを創り上げる努力をした。
考古学者、歴史家、人類学者の助けを借りて、様々な発見が集められた。これらはエッセイスト、ジャーナリスト、歴史小説の著者たちによって大きな化粧直しが施された。
その整形された過去からは、誇らしく美しい国家の肖像が浮かび上がったのである」。
他のすべての形態のファシズムと同様に、シオニズムは新しい国家を築くだけでなく、この新しい土地に住む「新しい人間」を創造することをも目的としている。
これは国家プロジェクトでは珍しいことではなく、多くの国々が新たな「エトノス」(「ethnos(エトノス)」は、ギリシャ語に由来し、基本的に「民族」「民族集団」または「共同体」を指す言葉)を作り出そうとしているのだが、その詳細こそが問題なのだ。
シオニストたちが信じさせようとしていることとは裏腹に、パレスチナの占領地は実際には非常に多様である。人類の定住の長い歴史の中で、無数の民族がこの地に住んでおり、今もその子孫が多く残っている。ユダヤ人とアラブ人という二元論を越えて、この地には小規模で文化的絶滅の危機に瀕している多くの民族集団がいる。例えば、サマリア人のような古代の宗派は、何千年にもわたる迫害の中で伝統を守り続けており、この事実はユダヤ人と共通の大義を持っていい理由となるはずである。
多様な人々をまとめて共通の目的のもとに統一しようとするのではなく、シオニストたちはユダヤ人だけに奉仕する民族国家を作ろうとしている。つまり、「イスラエル」は、その市民の国家ではなく、ユダヤ人のための国家なのだ。
もしイスラエルがその市民の国家であれば、(欧州から入植したユダヤ人である)アシュケナージ系少数派は権力の傍観者であるはずで、彼らが意図したように国家を支配することはないだろう。したがって、その自国の法律にもとづいても、いわゆる「イスラエル」という国家は、その市民の国家ではなく、ユダヤ人の国家である。
明らかな影響を越えても、このアパルトヘイト体制は答えよりも多くの疑問を生む。この体制を一国に強制するためには、まず「ユダヤ人とは何か?」を理解する必要がある。ユダヤ教は単なる宗教なのか、それとも人種なのか? 改宗者は人種が変わるのか? その子供たちはどうなのか? なぜこの宗教だけが継承される要素を持つのか?
シオニストの勢力は、現代のユダヤ人と古代のユダヤ人との必要なつながりを作るために、ユダヤ教の民族的定義を強調する。このつながりは彼らにとって不可欠であり、そのプロジェクト全体の土台は、先住性にある。すなわち、ユダヤ人は、古代からこの地に住んでいた先住民であり、ついに奪われた家に戻ってきたのだという考えである。これがなければ、シオニズムは実際の姿、すなわちアシュケナージ系ユダヤ人の物質的条件に合わせたファシズムの一形態であり、ユダヤ教の教義に反するものとして見られるだろう。
「イスラエルは壁を越えて立ち上がろうとすべきではない。聖なる方、祝福されし御方は、イスラエルが世界の国々に対して立ち上がらないように戒められた。また、聖なる方、祝福されし御方は、偶像崇拝者たちがイスラエルを過度に奴隷化しないように戒められた」- ケトゥボート巻110b(「ケトゥボート」は、ユダヤ教の聖典タルムードの中の一部を指す。タルムードは複数の「巻」(トラクト)から成り立っており、「ケトゥボート」はその一つで、「結婚契約(ケトゥバ)」に関連する法律や議論をまとめた巻)
もちろん、シオニズムに関する他のすべての事柄と同様に、この先住性という概念もまた嘘である。
ユダヤ人がパレスチナの先住民であるとは言えないのは、ユダヤ人という存在が、一つの集団として定義できないからである。
いわゆる「イスラエル」という国家は、世界のユダヤ人すべてを代表しているわけでも、彼らの代弁者でもない。ユダヤ教は、古くから多様な宗教であり、ローマ人によってエルサレムから追放される前から世界中に広がっていた。
改宗者を(強制的にせよ、そうでないにせよ)常に受け入れてきた宗教として、ユダヤ教は一つの部族を代表する存在をとっくに超えて成長してきた。
したがって、今日アパルトヘイト体制を運営するアシュケナージ系ユダヤ人が古代ユダヤ人と関係しているのは、キリスト教徒がペテロと関係しているのと同じ程度であり、ムスリムがムハンマドと関係しているのと同じ程度である。
シオニズムの物語を終わらせるためには、その基盤にある虚偽を、歴史から分析し、明らかにする必要がある。
そこから、シオニズムの全体的なイデオロギーは崩れ落ちるだろう。
存在しなかった出エジプト
「パレスチナの現地住民は、セム系民族の中でもユダヤ人と最も近い人種的関係にある可能性が高い。パレスチナのファラヒーン(農民)は、ユダヤ人およびカナン人の農村人口の直系の子孫であり、ほんの少しのアラブ系の血が混じっているに過ぎない可能性が高い。
なぜなら、アラブ人は誇り高い征服者であり、征服した国の住民とほとんど混血しなかったことが知られているからである…旅行者や観光客の証言によれば、アラビア語を除けば、セファルディ系の荷運び人とアラブの労働者またはファラヒーンを見分けることは不可能である。したがって、ディアスポラのユダヤ人とパレスチナのファラヒーンの間の人種的違いは、アシュケナージ系ユダヤ人とセファルディ系ユダヤ人の間の違いよりも顕著ではない」― ベル・ボロホフ(※)
(※)ベル・ボロホフ(Ber Borochov、1881-1917)は、ロシア出身のユダヤ人社会主義者で、シオニズムとマルクス主義を結びつけた先駆的な思想家。後のイスラエルのキブツ運動(共同農場)や、シオニスト労働党の形成に大きな影響を与えた。
シオニストの存在において、歴史は困難な問題である。彼らがパレスチナとその何千年にも及ぶ人類の歴史にわずかな関わりしか持たないがゆえに、またはそのために、シオニストの学校では歴史の授業の代わりに聖書研究が行われている。
聖書は国家のものとして扱われ、ユダヤ人の歴史として描かれている。現代のユダヤ人が、自分たちと聖書時代の古代ユダヤ人との間に直接的で絶え間のないつながりを引くことができるという考えは、現代国家にとって非常に重要である。
いわゆる進歩的国家で歴史として教えられている物語は、聖書を学んだ私たち西洋人にとってもよく知られているものである。
すべてのユダヤ人はイスラエルの地にある、強大で繁栄した王国に住んでおり、それは神自身によって彼らに約束された土地であったが、ローマ人による第二神殿の破壊によってユダヤ人が追放され、約2000年にわたる離散が始まった、という話である。
シオニストによれば、現代のユダヤ人がパレスチナに戻ることは、反植民地運動であり、ユダヤ人に対する何千年にもわたる不当を正すものであるとされている。
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