2024年4月5日、「底なしの自民党裏金問題! 岸田総理と後援会代表らを次々と刑事告発!『闇政治資金パーティー』の徹底捜査と『裏金』の真相解明が必要!」と題して、岩上安身による神戸学院大学法学部・上脇博之(かみわき ひろし)教授への緊急インタビューが行われた。
2023年11月17日、『週刊文春』が、自民党・安倍派、二階派、岸田派の政治資金パーティ収入の一部が政治資金収支報告書に記載されていなかった、「総額は5億7949万円」と報じて、「自民党裏金問題」が発覚し、政界を揺るがす大問題に発展した。
しかし、実は、この政治資金パーティを最初に報じたのは、2022年11月6月付の『しんぶん赤旗日曜版』だった。
同紙が、自民党の総裁派閥・岸田派を含む主要5派閥に政治資金規正法違反(不記載)の疑いがあることを取り上げ、上脇教授がコメント。その後、上脇教授が、次々と疑惑の議員達を刑事告発し始めた。『週刊文春』の報道よりも、1年前のことだ。
上脇教授こそが、一連の政治資金パーティと裏金問題の端緒を作ったキーパーソンなのである。
上脇教授は、闇政治資金パーティーと裏金の真相解明を求めて、2022年から継続して「裏金問題」で、自民党議員らを刑事告発し続けてきた。
上脇教授は、『しんぶん赤旗』が報じた2022年末段階では、まだ「不記載」問題であり、「裏金」とは言いきれなかった、「裏金が作られているであろう」と推測する段階だった、と振り返った。
2023年12月の時点で「5年で5億円」という数字が報じられるようになり、野党からも追及があり、自民党としても調査せざるを得なくなっていったと、上脇教授は振り返った。
しかし、「裏金」として告発するには、「誰が、どの時に、いくら」と書かなければならないため、この時点の「5億円」だけでは、まだ政治資金収支報告書への不記載で告発することしかできなかった。
単なる「不記載」問題から「裏金」問題になった転機は、問題が大きくなり、自民党が調査をして結果を発表し、議員や派閥が政治資金収支報告書を訂正したことだった。
この政治資金収支報告書の訂正によって、「誰が、どの時に、いくら」という具体的な証拠が出てきた、と上脇教授は述べた。そのため、やっと2024年1月になって、「裏金」問題として、キックバックや中抜きをしている議員の告発ができるようになった。
上脇教授が刑事告発してきた自民党議員らは、以下の通りである。
・2022年11月2日、寺田稔総務大臣ら3人。
・同年11月9日、「清和政策研究会」(清和会=現安倍派)細田博之氏(故人・元衆議院議長)ら3人。
・同年12月、「平成研究会」(茂木派)茂木敏充衆議院議員ら3人。
・2023年11月、二階俊博元幹事長、自見英子大臣ら9人。
・同年11月24日、自民党の5派閥の政治団体。
・同年12月29日、茂木派(平成研究会)事務総長を務めた新藤義孝経済再生担当相と山口泰明元衆院議員。
・同年12月8日、安倍派の事務総長を務めてきた松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、下村博文元文科相、高木毅国会対策委員長ら。
・同年12月、政治団体「志帥会」事務総長経験者・平沢勝栄衆議院議員、山口壮衆議院議員、武田良太衆議院議員。
・同年12月25日、麻生派の事務総長を務めていた棚橋泰文衆議院議員、森英介衆議院議員。
・同年12月29日、2018年以降に事務総長を務めていた山口泰明元衆議院議員と新藤義明衆議院議員。
・2024年1月2日、自民党東京都連の代表を務める萩生田光一衆議院議員ら3人。
・同年1月9日、池田佳隆衆議院議員と安倍派の元会長・森喜朗元総理大臣、参院安倍派会長・世耕弘成前参院幹事長ら12人。
・同年1月17日、政治団体「平成研究会」茂木敏光会長、新藤義孝事務総長ら4人。
・同年1月19日、政治団体「宏池政策会」岸田文雄内閣総理大臣と根本匠事務総長ら4人。
・政治団体「志師会」二階俊博会長、山口壮事務総長、宮内秀樹衆議院議員、福井照元衆議院議員ら16人。
自民党以外でも、維新に1億円相当の計算が合わないカネがあり、告発したものの、大阪地検は不起訴にした、と上脇教授は述べた。
そのほか、公明党の岡本三成議員の闇パーティー疑惑も刑事告発したが、不起訴にされた、とのことである。
上脇教授は、「裏金告発」を最初にやったのは、2024年1月9日の池田佳隆衆議院議員からだと述べた。
今年に入って「山が動いた」わけだが、特捜部が捜査に入っても、最後の最後に不起訴になる可能性もあるし、処分が非常に甘くなることもありえる。上脇教授はまだ告発を続けており、この「裏金問題」は「まだ終わっていない」「僕からするとこの事件、終わったという感覚がない」と述べた。
岩上安身は、この裏金問題で多くの「使途不明金」が出ていることについて、これは「脱税」ではないのか、「脱税」として告発・起訴できないのだろうか、と上脇教授に質問した。
上脇教授は、「政治資金収支報告書に書いていないお金は、全部裏金です」と言いながら、しかし、確定申告したかどうかは、国税庁が個人情報扱いで秘匿し、誰にもわからないから、「脱税」であることを立証することは困難だ、と回答した。
上脇教授はもうひとつ、「重要な役割を果たしたと思われる人たちの共謀を立証できず、立件できない」ケースがあり、それが、立件されるのが「会計責任者(法的には会計責任者に責任があることになっている)」止まりになってしまう理由だと、法律上の課題を指摘した。
会計責任者が単独で、派閥の実力者に相談もせず、裏金工作などを組織的なレベルで行うことは考えられない。そもそも、会計責任者らが、着服したり、使い込んだりしたわけでもなく、彼らに利益動機がない。
上脇教授は、最大の問題は「2018年から2022年までの5年間」に、調査を限定したことだ、と述べた。裏金工作は2000年ごろから行われていたとされており、上脇教授は「僕から言わせたら、5年間だけなんですか? 本気で調査するならもっと遡らないと」いけない、と指摘した。
上脇教授は、調査対象年を5年間からせめて10年間に拡大すれば、また全然違う結果が出てくるはずだ、「500万円以上」だとしたら、全員が該当する可能性だってある、と述べた。
調査期間を5年間に限定することで、裏金問題が矮小化されているのである。
2024年4月4日、自民党は、派閥の政治資金問題をめぐって、39名の議員を処分すると発表した。「安倍派幹部や政治資金収支報告書の不記載が2018~22年の5年間で500万円以上にのぼった議員ら計39人が審査対象」だとされている。
もっとも重い処分になったのは、安倍派(清和政策研究会)座長の塩谷立氏、参院安倍派会長だった世耕弘成氏に対する離党勧告、次に重い処分になったのは、1年間の党員資格停止の下村博文氏と西村康稔氏である。世耕弘成氏は4日のうちに自民党を離党することを表明した。
過去にも、不祥事を起こした自民党議員が離党したことがあったが、無所属で当選すれば、「禊ぎは済んだ」として、結局、復党するのがお決まりのパターンである。離党など、たいした意味はない。
上脇教授は、これらの処分を受けた自民党議員らについて、「何億という裏金を作ったのだから、議員辞職は当然です」と述べ、「離党しても国会議員を辞めたわけではない」とコメントした。
今回の処分では、岸田文雄総理(党総裁)と、次期衆院選への不出馬を表明した二階俊博元幹事長を審査対象から外している。これはまったくおかしな話だ。
岩上安身は、反社会的組織に適用される暴対法では、犯罪の実行犯でなくても、組織のトップが使用者責任を問われることを例にあげ、自民党全体がこんなに腐敗しているならば、反社と同じであり、その組織のトップである岸田総裁と、No.2である二階幹事長の責任が問われて、当然ではないか、と質問した。
上脇教授は、脱税疑惑については、確定申告情報が公開されることはないから、立証は困難ではあるが、国民が脱税疑惑を問い続けるべきだし、岸田総理総裁に対しても、師水会のトップだった二階氏に対しても、国民が政治責任を問い続けるべきだと訴えた。
岸田政権の支持率は20%前後と低迷しているが、上脇教授は「支持率が下がっただけではダメ。選挙で結果を出さないと」と述べ、国民に油断しないように戒め、腐敗した自民党に自浄作用は期待できず、自民党が変わることはない、と断じた。
上脇教授は、2月29日、岸田総理と、その後援会代表者らを刑事告発した。広島地方検察庁に提出した告発状をもとに、事件を解説したが、3時間にわたる濃厚なオンライン・インタビューは、途中でいったん区切りとし、近日中に行う第2回のインタビューで、岸田総理と後援会代表らの告発について、詳しくうかがう予定である。