【IWJ号外】ピューリッツァー賞ジャーナリスト、クリス・ヘッジズ氏が、ガザでのジェノサイドに加担させられた米空軍兵士の抗議の焼身自殺に対して、「アーロン・ブッシュネルの焼身自殺は『神聖なる暴力』であり、強力な政治的メッセージであり、大衆の反対運動の結集点隣、革命的な大変動を引き起こす可能性がある」と指摘! 2024.3.7

記事公開日:2024.3.7 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東

 IWJ代表の岩上安身です。

 ピューリッツァー賞を受賞した作家・ジャーナリストであり、『ニューヨーク・タイムズ』の海外特派員を15年間務めた、フリージャーナリストであるクリス・ヘッジズ氏が、現役の米空軍兵士で、ガザのジェノサイドに加担させられたことに抗議し、焼身自殺したアーロン・ブッシュネル氏について、3月1日、「アーロン・ブッシュネルの神聖なる暴力―アーロン・ブッシュネルの焼身自殺は、究極的には宗教的な行為であり、善と悪を根本的に区別し、私達に抵抗するよう呼びかけるものだった」という記事を、『サブスタック』上に発表しました。

 現役の米空軍兵士であるアーロン・ブッシュネル氏が、「私はもうこのジェノサイドに加担するつもりはない」と静かに述べたのち、「パレスチナを解放せよ!」と叫びながら、ワシントンDCのイスラエル大使館の前で、焼身自殺した件については、6日の『日刊IWJガイド』でお伝えしました。

 ブッシュネル氏の焼身自殺について、『ニューヨーク・タイムズ』をはじめとする西側メディアは、「動機」を「精神疾患」だとする印象操作記事を出したり、人々を不安に陥れる暴力だと批判しました。

 しかし、『日刊IWJガイド』では、ブッシュネル氏が時間をかけて「極端な抗議活動」を準備して熟慮の上、細部まで計算した上で焼身自殺を行ったのではないか、と推測しました。

 また、第70諜報・監視・偵察(ISR)航空団に配属されたサイバー防衛作戦のスペシャリストであったブッシュネル氏が「米軍がガザでのジェノサイドを直接行っている、米軍が地下トンネルで戦っている」と、ガザで行われているジェノサイドに文字通り主体的に加担していることを、告発していた可能性についてもご紹介しました。

 さらに、ブッシュネル氏の焼身自殺が米国内、そして世界でも反響を呼んでいる様子をお伝えしました。

※はじめに~現役の米空軍兵士が「私はもうこのジェノサイドに加担するつもりはない」と叫びながら、在米イスラエル大使館の前で、抗議の焼身自殺! 米国よ! シオニスト・イスラエルよ! 世界よ!「パレスチナを解放せよ!」という最期の叫びを聞け! 西側メディアは「精神疾患」か「暴力」だと非難し、卑劣なスピンコントロールを展開! 彼の抗議内容の報道をも抑制する中、『ニューヨーク・ポスト』が、ブッシュネル氏は「ガザの地下にあるハマスのトンネルで、米軍が戦っている、殺人に参加しているのは米兵だ」「パレスチナで起こっているジェノサイドに米軍が関与している」と述べていたとする証言をスクープ!
(日刊IWJガイド、2024.3.6号)

 クリス・ヘッジズ氏は、ブッシュネル氏の焼身自殺を、ベトナム戦争時の仏教僧らによる焼身自殺や、米国の反戦運動家の焼身自殺、「アラブの春」につながった、チュニジアでの露天商の青年による焼身自殺、チェコスロバキアでソ連軍の侵攻に抗議した大学生の焼身自殺などの事例を挙げながら、「いつの日か、イスラエルの企業国家とアパルトヘイト国家が解体されれば、ブッシュネルが自分に火をつけた通りは、彼の名を冠することになるだろう」と論じています。

 詳しくは、ぜひ、IWJの会員となって、以下の仮訳・粗訳をお読みください。


アーロン・ブッシュネルの神聖なる暴力
――アーロン・ブッシュネルの焼身自殺は、究極的には宗教的な行為であり、善と悪を根本的に区別し、私達に抵抗するよう呼びかけるものだった。

クリス・ヘッジズ
2024年3月1日
https://chrishedges.substack.com/p/aaron-bushnells-divine-violence

 アーロン・ブッシュネルは、ライブストリーミングをするために携帯電話を地面に置き、ワシントンD.C.のイスラエル大使館前で自分自身に火を放ち(※1)、過激な悪に対抗する神聖なる暴力を用いて、死に至った。

 「私はもう、ジェノサイドに加担するつもりはありません」。

 (イスラエル)大使館の門に向かいながら、彼はビデオで穏やかに語った(※4)。

 「私はこれから極端な抗議行動を起こそうとしています。しかし、パレスチナの人々が、植民地支配者の手によって経験してきたことに比べれば、まったく極端なことではないでしょう。

 これが、私達の支配階級が決めた『ノーマル』なのです」。

 若い男女が軍隊に入隊する理由はたくさんあるが、女性や子供を殺したり、飢えさせたり、爆撃したり、殺したりすることは、普通は理由のうちに入っていない。

 公正な世界では、米艦隊は、イスラエルによるガザ封鎖を解除し、食料、避難所、医薬品を提供すべきではないのか?

 米軍の戦闘機は、ガザ上空に飛行禁止区域(※5)を設定し、(イスラエルによる)飽和爆撃を停止させるべきではないか?

 イスラエルに対して、ガザから撤退するように、最後通告を突きつけるべきではないか?

 イスラエルに提供している武器輸送、数十億ドルの軍事援助と、情報提供を停止すべきではないのか?

 ジェノサイドを行う者、またジェノサイドを支援する者は、責任を問われるべきではないのか?

 ブッシュネルの死が私達に突きつけたのは、こうした素朴な疑問であった。

 「私達の多くは、自問自答するのが好きだ」と彼は自殺の直前に投稿した(※6)。

 「あるいは、ジム・クロウ法(※IWJ注1)下の南部? あるいはアパルトヘイト? 自分の国がジェノサイドを行っていたら、私はどうするだろうか? その答えは、あなたがそれをやっているということです。まさに、今」。

 第一次湾岸戦争の後、連合軍は1991年、クルド人を保護するためにイラク北部に介入した。クルド人の犠牲は甚大だったが、ガザでのジェノサイドに比べれば、小さく見える。イラク空軍に対して、飛行禁止区域が設定された(※7)。イラク軍は北部クルド地域から追い出され、人道的援助が、クルド人を飢餓、感染症、曝露による死から救ったのだ。

 しかし、それは別の時、別の戦争だった。ジェノサイドは、敵によって実行されるときは悪である。私達の同盟国によって実行されれば、ジェノサイドは擁護され、継続される。

 ヴァルター・ベンヤミン(ドイツの軍国主義と第一次世界大戦に抗議するため、1914年に友人のフリッツ・ハインレとリカ・セリグソンが自殺した)は、そのエッセイ『暴力批判』の中で、過激な悪に立ち向かうために、個人が行う暴力行為について考察している。

 過激な悪に逆らう行為は、正義の名の下に法を破ることになる。個人の主権と尊厳を肯定する。国家の強制的な暴力を非難する。自分の死をも厭わない。ベンヤミンはこうした極端な抵抗行為を「神聖なる暴力」と呼んだ。

 「希望を失った人々のためにのみ、私達には希望を与えられた」とベンヤミンは書いている。

 ブッシュネルの焼身自殺(ほとんどのソーシャルメディアへの投稿や報道機関が厳しく検閲されている)は、まさに核心をついている。それは見られるためにあるのだ。

 ブッシュネルは、子供を含む何千人ものパレスチナ人が消された(※8)のと同じ方法で、自分の命を消した。私達は、彼が焼け死ぬ姿を見ることができた。これがそのありようだ。これは、私達のせいで、パレスチナ人に起こっていることなのだ。

 ブッシュネルの焼身自殺のイメージは、1963年にベトナムで起きた仏教僧ティック・クアン・ドゥック(※9)や、2010年にチュニジアで起きた若い果物売りモハメド・ブアジジ(※10)の焼身自殺と同様、強力な政治的メッセージである。

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