IWJ代表の岩上安身です。
トルコのエルドアン大統領が10月25日、与党公正発展党(AK党)議員への演説で、イスラエルがガザで民間人に残虐行為を行なっていると述べ、一般のパレスチナ人に対して「人道に対する罪」が犯されていると非難しました。
さらにエルドアン大統領は、イスラエル訪問の予定を中止したと明らかにし、「理性と良心を持った他のすべての国に対し、イスラエル国家を正気に戻すよう、圧力をかけるよう呼びかける」と訴えました。
また、エルドアン大統領は、欧米諸国が「テロ組織」と認定しているハマスについて、「テロ組織ではなく、自由と、国土と国民を守るために努力している、ムジャヒディーン(戦士)の集団だ」と表明しました。
トルコの国営メディア『TRT』は、このエルドアン大統領の演説が、世界中で取り上げられたことを、10月25日付け記事で、次のように報じています。
「エルドアン大統領の発言は、世界のメディアで広く報道された。
アラビア語チャンネルの『アルジャジーラ』と、英国通信社『ロイター』は、エルドアン大統領の発言を生中継した。
フランスの新聞も、エルドアン大統領の声明を紙面に掲載した。
『ル・モンド』、『ル・エクスプレス』、『ル・フィガロ』、『ル・パリジャン』などのフランスの新聞は、エルドアン大統領のネタニヤフ批判に注目した。
『エルドアンは、イスラエルに行かない』。
米国の新聞『ウォール・ストリート・ジャーナル』も、エルドアン大統領のハマスについての発言を強調した。
『ユーロニュース』と『ドイチェ・ヴェレ』も、ハマスに関するエルドアン大統領の発言を強調した。
インドで放送している『CNBC』と『TV18』も、エルドアン大統領の言葉を報道した放送局の一つだった」。
- ガザに関するエルドアン大統領の発言は、世界のメディアで取り上げられた(TRT、2023年10月25日)
このニュースは、日本の大手メディアでも、『テレ朝ニュース』や『時事通信』、『産経新聞』など、一部で報じられましたが、それほど大きなニュースにはなっていません。また、その中身もくわしくは報じられていません。
- 「ハマスはテロ組織ではない」トルコ大統領がイスラエルを批判(テレ朝news、2023年10月26日)
- ハマスは「テロ組織でない」 トルコ大統領、対イスラエルで強硬(時事ドットコム、2023年10月25日)
- トルコのエルドアン大統領がハマス擁護「テロ組織ではない」 中東、欧米の「二重基準」批判広がる(産経新聞、2023年10月26日)
『TRT』は25日付け記事で、このエルドアン大統領の演説の『ハイライト』を報じています。演説は、トルコ共和国の建国100年を前に、国内政治や外交姿勢、テロ対策などを包括的に語ったものです。しかし、イスラム主義政党であるAK党での演説ということもあり、パレスチナにおける、シオニズム国家イスラエルの成り立ちにさかのぼってのイスラエル批判に、多くの時間が割かれています。
エルドアン大統領は演説で、イスラエルの後ろ盾となって、パレスチナ人虐殺に目をつぶり続けてきた西側諸国へも、厳しい批判を展開しています。
- エルドアン大統領「政治ショーは平和をもたらさない」(TRT、2023年10月25日)
以下は、『TRT』が報じたエルドアン大統領の演説ハイライトの中から、パレスチナ問題について語った部分の、IWJによる粗訳・仮訳です。くわしい内容を、ぜひ、お読みになってください。
「(前略、トルコ国内でのテロとの戦いにおいて)彼らテロ組織は国家としての要件や国際法を遵守していませんが、私たちは自らの尊厳を果たすことを決して放棄しません。
私たちは新たな作戦によって、国境沿いに確立しようとしているテロ回廊を破壊し続け、私たちの国と私たちの信仰に対して行われる汚いキャンペーンに対して毅然とした態度を取っていきます。忘れないでください。私たちは抑圧され、犠牲になっている人々に対する姿勢を変えるつもりはありませんし、個人的な利益のために、この名誉ある姿勢を決して変えるつもりはありません」。
・『私たちは常にパレスチナ問題を、主に「人間の視点」から見てきた』
「パレスチナ人への迫害に対する、私たちが当初から示してきた原則的なアプローチは、その最も具体的な例です。そう、私たちは常にパレスチナ問題を、主に『人間の視点』から見てきました。他の地域と同様に、ここでも私たちは、人々、人命、そして人々を人間たらしめている古代の価値観を守りました。10月7日以来、私たちは危機がさらに拡大するのを防ぐために、あらゆる努力をしてきました。
ガザ地区の人々のニーズにある程度応えるため、私たちは、医療・人道支援物資を積んだ飛行機計8機を、エジプトのエル・アリシュ空港に送りました。また、私たちは負傷者の治療のために、医療従事者25名をエジプトに派遣しました。同様に、我々は、誰が犯したとしても、イスラエルの民間人を含む、民間人を標的とした行為を決して容認しないことを明確にしました。私たちは、昨日と同様に、この原則的な姿勢を今日も堅持しています」。
・『我々はイスラエルによる残虐行為を承認しなかったし、今後も承認しない』
私たちは、イスラエルが犯した残虐行為や、イスラエルが国家としてではなく、(テロ)組織として行動するようなやり方については、決して承認したことがありませんし、今後も決して承認しません。
10月7日以来、イスラエルはガザ地区の罪のない人々に対して、史上最も血なまぐさい、最も忌まわしい残忍な攻撃を続けています。イスラエルによるガザ攻撃で死亡した人のほぼ半数は子どもで、残りの半数は母親や老人です。
この写真を見るだけでも、その目的が正当防衛ではなく、人道に対する犯罪を目的とした意図的な残虐行為であることが、十分わかります。戦闘機が、昼夜を問わず都市を爆撃し、病院、礼拝所、学校、市場、建物、道路に火を放ちます。子どもたちを殺すためだけに、戦車や大砲、武器を使って、このような非人道的な行為を続ける国家や軍隊は、イスラエルの他に、世界中のどこにもありません」。
・『西側諸国はあなたたち(イスラエル)に多くの借りがあるが、トルコはあなたたちに何の借りもない』
「今、私はここから、イスラエルと世界に呼びかけています。彼らは会議を開催しています。彼らは前回の会談で再び団結し、西側諸国全体が、ハマスをテロ組織とみなしています。
今、ここから声をかけています。おお、イスラエルよ、あなたは(テロ)組織かもしれない。西側諸国は、あなたにたくさんの借りがあります。しかし、トルコはあなたに何の借りもありません。ハマスはテロ組織ではなく、領土と国民を守るために奮闘する解放派、ムジャヒディーンのグループなのです。
私たちは人類の一員として、子どもたちが殺されたり、引き裂かれたりすることを決して許すことができません。(中略、トルコ国内野党に対する批判)」。
・『イスラエルへ行く計画があったが、中止された』
(…会員ページにつづく)