2023年6月21日午後2時より、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて、ウクライナの停戦を呼びかけるシンポジウム「Ceasfire Now! 今こそ停戦を」が開催された。
登壇者は、東京大学名誉教授の和田春樹氏、東京外国語大学名誉教授で元アフガン武装解除日本政府特別代表の伊勢崎賢治氏、青山学院大学名誉教授の羽場久美子氏、東京大学名誉教授の姜尚中氏、ジャーナリストの田原総一朗氏、京外国語大学名誉教授の西谷修氏、元オランダ大使の東郷和彦氏、立憲民主党の階猛衆議院議員、前岩波書店社長の岡本厚氏、。
IWJは、「Ceasfire Now!今こそ停戦を」について、第1回目(4月5日)と第2回目(4月24日)の記者会見の模様を中継収録している。ぜひ、以下の記事を御覧いただきたい。
「Ceasfire Now!今こそ停戦を」は、5月12日、日本外国特派員協会にて、英語圏に向けた急遽記者会見も開催している。録画動画は、「デモクラTV」をご参照いただきたい。
- デモクラTV RADIO HIKESHI Live! 「今こそ停戦を 〜市民の寄付でウクライナ戦争の停戦を呼びかける新聞広告が成立するまでの紆余曲折と広島G7へ」外国特派員協会記者会見(デモクラTV、2023年5月13日)
また、4月29日には、テレビ朝日『朝まで生テレビ』「どーするウクライナ戦争」に羽場久美子氏らが出演し、ようやく地上波でも、停戦についての噛みあった議論が紹介された。
5月11日には、BSフジ『プライムニュース』「ウクライナ戦争は条件をつけずに停戦すべき(全編・後編)」に伊勢崎賢治氏らが出演した。
5月12日には、アメリカ大使館に署名7454筆(5/10段階のChange.org署名と別途署名の合計)と、英語版の宣言文を手交し、代理戦争の背景にある国々である英国大使館、フランス大使館、ドイツ連邦共和国大使館、カナダ大使館、イタリア大使館、および、岸田総理宛にも郵送している。
そのほか、5月13日の『東京新聞』朝刊に掲載された全面意見広告、サミット初日の5月19日に『ジャパン・タイムズ』に掲載された半面意見広告、および、その掲載のための費用を募ったクラウドファンディングの取り組みなど、「Ceasfire Now! 今こそ停戦を」の活動の詳細については、公式ウェブサイトをご参照頂きたい。
「Ceasfire Now! 今こそ停戦を」がシンポジウムを開催するのは、この6月21日が初めてとなる。
シンポジウムは二部構成で行われ、第一部は、「G7サミットが終わり、”徹底抗戦”がはじまる」、第二部は、「停戦の過程を実務的に考える」というテーマで、それぞれ、登壇者のスピーチ、活動報告、提言、討論、会場の参加者との質疑応答が行われた。
シンポジウムは全体でほぼ4時間に及んだ。
第一部の冒頭で、和田氏は、G7広島サミットについて、次のように総括・評価を行った。
和田氏「G7広島サミットというものは、基本的な問題は、ウクライナ戦争問題でした。(中略)
ゼレンスキー大統領を招いてなされるということではなくて、ゼレンスキー大統領が到着する前に、討議は終わっておりました。
で、G7広島サミットの首脳声明に含められた文言ですが、『ロシアの違法な侵略戦争に直面する中で、必要とされる限り(as long as it takes)、ウクライナを支援する』ということが打ち出されました。
- G7広島首脳コミュニケ(仮訳)(外務省、2023年5月29日:PDF)
この文言は、ウクライナに関するG7首脳声明でも繰り返されております。
で、この「as long as it takes(必要とされる限り)」という、ここの言葉が両義的なものでして、ある意味では曖昧なことになっております。
ウクライナ戦争にかかわる目的につきましては、この宣言は、『我々はロシアに対して侵略をとどめ、国際的に認められたウクライナの領域全体から、即時、完全かつ無条件に、部隊、及び、装備を撤退させるように強く求める』ということを、この『撤退なくして、公正な平和は実現されない』ということが、主張されています。これが基本的な主張です。
この内容は何を意味しているか、ということですが、ロシアの侵攻以前の状態、2022年の2月24日以前の状態に戻せという主張であるというふうに理解します。
で、つまり、それはどういうことかというと、『クリミア奪還』というウクライナの主張は、明瞭には支持されていないというふうに思います。
引き続き、宣言は、『我々は、本年2月に、国連総会決議であるウクライナにおける包括的・公正かつ永続的な平和の基礎となる国連憲章の諸原則決議というものを改めて想起して、ウクライナの包括的・公正かつ永続的な平和を実現するための取り組みを引き続き追求していく。国連憲章に沿った基本原則を、平和フォーミュラにおいて掲げる、という、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の真摯な努力を歓迎し、支持する』と、こういうふうに述べています。
ここで述べられているのは、昨年11月、ゼレンスキー大統領が提案した、『和平のための10項目フォーミュラ』のことですけども、この『10項目フォーミュラ』を丸ごと支持するということは、述べられておらず、あいまいな表現になっております。
つまり、1991年、ウクライナ独立時の国境の再確立を目指す、というのは、ゼレンスキー大統領の願望ですけども、それには留保がつけられていると考えられます。
G7サミットは、ロシアに武器を供給する第三者を許さない、ということが、はっきりと述べられておりますが、その点で、北朝鮮と中国に、特別な注意を払っております。
中国に対して取られた態度は、相対的に穏やかな姿勢でありました。それに引き換え、北朝鮮に対しては、非常に厳しい態度が述べられました。
しかし、新たな制裁措置というものが取られるということはなかったのであります。
さらに、ウクライナ戦争を推進する体制を世界に拡大するために、グローバルサウスの国々をサミットに招いたわけですけども、この点では、成功はありませんでした。
ブラジルのルーラ大統領は、はっきりと、明確な異議を唱えたわけでして、グローバルサウスの取り込みには成功していない。
結局のところ、G7広島サミットは何を達成したかというと、岸田首相がキーウで結んだウクライナ・日本の『グローバル・パートナーシップ』というものを、広島サミットのオブラートにくるんで日本国民に支持させる、ということを果たしたということではないかと思います。
そのことは、サミットを経て、岸田内閣の支持率が56%上昇したということによって示されております」。
- 日本とウクライナとの間の特別なグローバル・パートナーシップに関する共同声明(仮訳)(外務省、2023年3月21日)(2023年3月21日に行われた、日・ウクライナ首脳会談において、日本とウクライナの二国間協力の大きな可能性を認識し、二国間の関係を「特別なグローバル・パートナーシップ」に格上げすること、そして、その連携をこれまで以上に強化することを合意した声明:PDF)
シンポジウム終盤(動画の2時間50分過ぎから)では、登壇者と参加者との間で、「停戦の是非」をめぐり、激しい議論が行われた。
詳しくは、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。