2022年10月3日、東京都千代田区の司法記者クラブで、10月7日に行われる「種子法廃止等に関する違憲確認訴訟」第8回口頭弁論(最終弁論)に向け、原告側弁護団が記者会見を行った。
同訴訟は、戦後、良質な農産物の種子を生産してきた「主要農産物種子法」(種子法)を、2018年4月1日に国が廃止したことは、憲法25条の生存権の保障等に抵触するとして、全国の農家や消費者らが国を相手取り、2019年5月に第1次訴訟、21年6月に第2次訴訟、22年4月に第3次訴訟の提訴を、東京地裁に行ったものである。
請求内容は、「主要農産物種子法を廃止する法律」の違憲無効の確認、採種農家、一般農家、消費者が種子法にもとづく活動を行う地位の確認、1~3次あわせて原告1533人への、各1万円の損害賠償を求めている。
後述するように、IWJは、これまで種子法の問題について、同訴訟を呼び掛けた元農林水産大臣・山田正彦氏への岩上安身によるインタビューをはじめ、繰り返し報じてきた。
この日の記者会見では、弁護団の山田正彦弁護士(元農林水産大臣)、田井勝弁護士、平岡秀夫弁護士(元法務大臣)が登壇した。
主任弁護人の田井弁護士は、訴訟の概要について、以下の6点に沿って解説した。
1.本裁判の経緯、2.本裁判で原告が求めたもの(請求の趣旨)、3.種子法とは、4.種子法廃止に伴う影響、5.憲法上の権利侵害、「食料への権利」について、6.判決に向けて。
この中で特に「種子法廃止に伴う影響」については、(1)種子の高騰(値上がり)の危険、(2)地域ごとの多様な種子がなくなること、(3)食の安全の問題、の3点を指摘した。
平岡弁護士は、特に「種子法の廃止がどういう観点から憲法違反なのか?」を説明した。
平岡弁護士は、2022年6月3日の証人尋問での土屋仁美・金沢星稜大学准教授(憲法学)の証言をふまえ、「食料への権利が憲法上認められている」のに対して、「憲法上の権利として認められるものについて、立法措置が取られたならば、それを『後退』させるような措置をとることは、正当な理由がなければ『禁止』されているという憲法理論、『制度後退禁止原則』がある」と指摘。これにもとづき「種子法廃止は、食料への権利を認めて制定された制度を後退させる」と主張した。
さらに平岡弁護士は、土屋氏の「種子法廃止の審議と決定のプロセスにおいても、審議および議論が不十分」との証言に関して、「『立法過程統制論』というものがあり、国会が行う立法過程については、司法は立法府の判断を尊重するが、審議があまりにもずさんで、審議すべきことを審議していない等の場合には、憲法違反であると言える」と主張。「野党が要求した資料を、行政府は提供せずに議論を進めた」「本来、農政審議会で審議する必要があったが、審議しなかった」と、種子法廃止の違憲性を指摘した。
山田弁護士は、「憲法25条の、健康で文化的な最底限度の生活を営む権利」により、「我々は、安全なものを持続的に安定して、国家から供給を受ける権利がある」「国は、防衛と同じように、国民にそれを与える義務がある」という基本的考え方を説明。これに関する、前回の口頭弁論での、種子の価格高騰状況など、様々な証言を集めた冊子『私たちに「食料への権利」を! 種子法廃止・違憲確認訴訟 証言集 2022』を発行したことを紹介した。
- 『私たちに「食料の権利」を! 種子法廃止・違憲確認訴訟 証言集 2022』発行のお知らせとお願い(TPP交渉差止・違憲訴訟の会、2022年9月26日)
質疑応答では、国側の主張の骨子は何か、種子法廃止に伴う財政上の実際の影響、民間が参入すると安くなりそうだが種子が高騰する仕組みは何か、等の質問が記者から出された。
会見内容について、詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。
岩上安身による元農水大臣・山田正彦氏へのインタビューは、こちらのURLから御覧いただきたい。
また、IWJがこれまでに報じてきた種子法廃止に関する記事も、ぜひあわせて御覧いただきたい。