ロシア国防省は2022年8月20日、ウクライナ軍がロシア兵に対して、生物兵器とみなされる有害物質「ボツリヌストキシンB型」を使用したと発表した。
また、前年米国からウクライナに、解毒剤とボツリヌス毒素、さらに使用法を指導する軍事教官までが送られていたことを、DPR(ドネツク人民共和国)の人民民兵局副局長が証言した。
ロシアはバイオテロの証拠をOPCW(化学兵器禁止機関)に送る予定とも報じられていることから、ロシアの発表がでっちあげである可能性は低いと言わざるを得ない。
なお、生物兵器の生産も保有も禁止する生物兵器禁止条約は、ウクライナ、ロシア、そして米国も加盟している。
- 生物兵器禁止条約(BWC)締約国等一覧(外務省)
ここで注目されるのが、バイオテロが行われた場所が、ロシアが占拠しているザポリージャ原発と同じく、ザポリージャ州である点だ。
ザポリージャ原発は繰り返し砲撃されており、火災発生など、極めて危険な状態にある。
これに対してIAEA(国際原子力機関)は、ラファエル・グロッシ事務局長と視察団が9月1日から原発を視察、以降IAEA職員2名を常駐させる方針を発表した。しかし同日も砲撃があり、原子炉の一部が緊急停止。さらに3日も砲撃され、主要な外部電源との接続を失って、予備送電線で原発と外部に電力供給しているという。度重なる攻撃を、ウクライナ、ロシア双方が相手国によると主張している。
- ザポリージャ原発の視察終え「職員常駐」の重要性強調 IAEA事務局長(テレ朝ニュース、2022年9月3日)
- ザポリージャ原発、主要な外部電源すべて失う 予備送電線は稼働(朝日新聞、2022年9月4日)
こうした状況に、日本の主流メディアと全西側メディアは攻撃主体を断定しないか、ロシアであるかのようにほのめかすが、レバノンのニュース・チャンネル『アル・マヤディーン』は明確に、攻撃しているのはウクライナ軍だと述べている。
そもそもすでに原発を占拠した上で、安全に稼働させているロシア軍を、わざわざ別のロシア軍部隊が、原発含みの仲間のロシア軍を攻撃する理由がない。戦略拠点を失うだけでなく、チェルノブイリ原発や福島第一原発のような大事故を起こせば、原発を守備しているロシア軍部隊はほぼ全滅し、ロシアまで放射能汚染が広がるだろう。そんな危険を冒すメリットはまったくない。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は「原発から攻撃してくるロシア軍人はウクライナ軍の特別な標的」と宣言していることから、ウクライナ軍がこの意向に従い、攻撃していると考えるのは自然だ。
ゼレンスキー大統領とウクライナ政権は、原発が事故を犯すリスクを冒して、ロシア軍を攻撃し、国際的な非難に対してはロシアの責任にする、ということだ。
ウクライナ軍が原発攻撃と生物兵器によるテロを、同じザポリージャ州で行っているとすれば、理由は何か?
それは、ロシアが9月11日に計画するザポリージャ州と隣のヘルソン州がロシア連邦に加わるための住民投票を、妨害するためではないのだろうか?
詳しくは、ぜひ、記事本文を御覧いただきたい!