2022年5月26日、東京都千代田区の日比谷コンベンションホール大ホールで、同日実施された「311子ども甲状腺がん裁判」の第1回口頭弁論の報告集会が行われた。
この裁判は、東京電力福島第一原子力発電所事故当時、福島県内に居住し、現在、福島県と首都圏在住の男女6人が、事故に伴う放射線被曝により甲状腺がんを発症したとして、東京電力に損害賠償を求めて2022年1月27日に東京地裁に提訴した裁判である。
原告は事故当時6歳から16歳(現在17歳〜27歳)。6人のうち4人は、再発に伴う手術で甲状腺を全摘し、生涯、ホルモン薬を服用しなければならない状態だという。がん発症や手術、薬の服用などが、若い原告たちの進学や就職にも影響し、大きな損害が発生。原発事故の放射線被曝による損害について、公衆(原発作業員以外)が同社を訴える集団訴訟は、本訴訟が初とされる。
福島県実施の甲状腺検査では現在までに約300人の小児性甲状腺がんの発症が確認されている。
報告集会では、弁護団による口頭弁論の報告とともに、原告の一人が前日行った、意見陳述の練習の約17分に及ぶ音声が流された。
陳述内容は、中学校の卒業式で震災に遭遇してから、甲状腺がんの検査、診断、3回にわたる手術などの、過酷な体験と、その時々の気持ちが詳細につづられている。
弁護団の中野宏典弁護士は、意見陳述により「会場全体からすすり泣きが聞こえるような、切実な思いをお話しいただいた」と報告。音声が流された報告集会も同様の状況だった。
弁護団副団長の河合弘之弁護士は、「裁判官は『意見陳述は初めの1回は認めるが、後は制限したい』との意向だったが、陳述を聞いた後は、『よく考えましょう』という態度に変わった」と指摘。東京電力も「『科学的裁判』のためには、被害者の声を聴いて感情的な訴えを聴く必要はない」と言っていたのが、陳述により「法廷が『被害者の声なんか聴く必要がない』なんて言えるような雰囲気ではなくなった」として、意見陳述に法廷を動かす大きな力があったことを指摘した。
ぜひこの意見陳述(22:06頃から)を含めて、報告集会の内容を、全編動画で御覧いただきたい。